10/11/13 21:35:44 +NvOjuSi0
『フクロウ』
私が以前住んでいた地元は、住宅街エリアあり、田んぼエリアありの、中途半端な田舎でした。
その両方の境目あたりに割と新しいスーパーがあり、向かいの田んぼエリアとの間に大通りもあるせいか訪れる人も多く、
便利なので、我が家も買い物と言えば常々そこでした。
私がいつものように母親にお使いを頼まれ、そのスーパーを訪れた、ある日曜日のこと。
休日で賑わいを見せる、照明と音楽で飾られた明るい店内。
食材を買うため、籠を持って目当ての物を探しながら歩いていると、陳列棚に人の首が並んでいました。
うぇ
と思って咄嗟に顔を背けても、視界の隅にはまだその首がチラチラと映ります。そして反対の視界の隅には別の首の影。
ギリギリ横目でそれを見ると、今度はいくつもの首が、コーナー案内表示に紛れて天井からぶらさがっていました。
血がポタポタと落ちる気配に床を見ます。血は広がっていません。
他の人は気付いない様子で、気味が悪くなった私はとっとと買い物を済ませてその場を後にしました。
別の日に、私の良き相談相手でもある仲の良いお婆さんの家にお邪魔しました。
怖いもの好きな好奇心あふれる人で、両腕が無いにもかかわらず、それを気にもしていないようにいつも明るい人です。
「首ねぇ……。あのスーパーが出来る前に、あそこに大きな木があったのを知ってる?」
知っています。確かあれが切られて何年も経ってから、あのスーパーが建ったのです。
小さい頃からお墓参りの行き帰りに毎回あの前を車で通っていて、その不気味な佇まいにいつも目を逸らしていました。
「スーパーの前って大通りでしょ。大昔からあそこは大きな通りで、人もいっぱい通っていたんだって。
それで昔はね、貴方が見たそういうのを、そんな人のよく見る場所に晒したそうな。台に乗せたり、木に掛けたり……」
特にあの場所では、その木が丁度良かったのか基本的に木に掛けて晒すことの方が多かったと言われているそうです。
「梟首(きょうしゅ)っていうんだって。『フクロウ』に似てるかねぇ……、似てないよねぇ……」
また一つ勉強になった、とは思いませんでした。