10/11/12 20:57:52 iJpxplwB0
以前、両腕の無いお婆さんから聞いた話を書かせていただいた者です。
前回投下した後に色々と反応を下さった方々、本当にありがとうございます。
では今回も早速……。
『手拍子』
私が以前住んでいた地元は、住宅街あり、田んぼあり、森ありコンビニありの中途半端な田舎でした。
私の家は住宅街の方にあり、その住宅街地区では昼夜問わず、『手拍子』の音が町を徘徊していました。
パチ、パチ、パチ、パチ、
という断続的なその音は、初めて聞いたのがいつだったかもわからないほど以前から聞こえていたもので、
いつの間にか聞こえるのが普通のことのようになっていて、私はそれを人か人ならざるものかなどで区別せず、
聞く度にただ漠然と「あぁ、いるなぁ」と、ぼんやり思うだけになっていました。
近所の人や友人も以前から聞いていて、その誰もが今までに正体を見たことが無く、
そしてその誰もが「あれって何だろうね」と首をかしげる、謎の『手拍子』。
自分が町を歩いていても、その『手拍子』の主とばったりと会うようなこともないのです。
犬の散歩をしていると、家々を挟んだ一本隣の通りを通り過ぎる音が聞こえてきたり……、
夜に部屋で、涼むために窓を開けていると、宵闇の向こうから何処からともなく彷徨うように聞こえてきたり……。
救急車などのサイレンが聞こえるけど何処を走っているかわからない。という経験はある方も多いと思います。
それが『手拍子』の音になったような感覚。だけどサイレンなんかより、多分もっと近くを徘徊する音。
きっと知らない間に、何度か私の家の前だって通り過ぎていたのかもしれません。