【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ15【友人・知人】at OCCULT
【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ15【友人・知人】 - 暇つぶし2ch600:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/31 21:42:58 9iORuRxR0
メリーあぼーんだらけw
通報しました

601:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/31 22:23:04 0Ln9NDCD0
「渡目? 三途の渡しに目付けで、渡目?」
「理沙?」
「ケッ!これからテメーを理沙!メリーさんって呼んでやるぜ!」
「はあ…どうもありがとうございます」


602:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/31 22:28:41 TBal4/T40
ラーメンとカツ丼の俺さんは、忙しいのかな

603:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/31 22:36:11 0Ln9NDCD0
間延びした声で、少女はけだるそうに返事をした。
その声に女学生はイラついた声をあげる。
「コラ!さっさと脱がんかい!バスが来ちょったろが!チンタラしてっと
その型遅れの携帯も取り上げっど!」


604:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/31 22:50:44 0Ln9NDCD0
その言葉を聞いて少女の手がピタリ、と止まった。
「おい……先輩、あんた今…アタシの携帯の事何て言った!」
先ほどとは違う、地獄の底から響くようなドスのある声。
その迫力に、女学生達はたじろいだ。


605:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/31 22:54:56 0Ln9NDCD0
「……え?」
あんぐりと口をあげていた女学生の一人が、次の瞬間空を待った。
周りの人間も何が起こったのか理解出来なかった。
苦しそうに女学生がのた打ち回る。


606:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/31 23:00:02 0Ln9NDCD0
(今…こいつ「携帯」を見せた…今たしかに…携帯に何らかの画像がみえた!)
テケテケの横で見ていた女性だけが、事の成り行きを理解していた。
肩をいからせて、少女は倒れている女学生に近づいていく。
「アタシの携帯にケチつけてムカつかせたヤツぁ何モンだろうーと許さねぇ!


607:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/31 23:08:12 0Ln9NDCD0
この携帯がPCエンジンGTみてぇーだとォ?」
「え!そ…そんなことだれも言って…」
弁解しようとした女学生だったが、顔を少女に踏み潰され二の句を言う事が出来なかった。


608:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/31 23:16:02 0Ln9NDCD0
「確かに聞いたぞコラーーーーッ!」

メメタァッ!

「やれやれ……こいつが…こいつが探していた…じじいの身内だとは!」



609:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/11/01 01:56:11 C4cee32HO
間が空いたなあ……
 
 呪いの本
 
高一の冬頃の事だったと思う。
その日A宅に行くと、家の主はソファに体を横たえて本を読んでいた。
俺は人並み程度には本を読むが、Aは時折昔の作家の全集を開くくらいだ。何の本を読んでいるのか気になりタイトルを尋ねると、
「呪いの本」
なんて答えが返ってきた。
「読んだら死ぬってか?」
好奇心と呆れ混じりに聞くと、Aはニヤニヤと笑いながらこちらに顔を向ける。相変わらずどこに焦点を置いているか分からない目。
「死にはしない。けど、お前が読んだら寿命縮むんじゃない?」
そう言ってぱたりと本を閉じる。見ればその本は装丁こそ立派であるもののさして厚くもなく、表題すらも書かれていない。
Aがああ言った以上、もとよりまともな本では無いのだが、それがますます怪しくなってきた。
「読むか?」
とん、と軽い音を立て、俺の前、テーブルの上に本が置かれる。
「寿命削れってか?」
とは言ってみたものの、興味はあるし特段長生きしたい訳でもない。俺は本を手に取って意識を集中する。
……何も感じない。何のイメージも得られない。俺は拍子抜けしてAを見たが、彼女はニヤニヤと笑ったまま言葉を続けた。
「ああ。寿命削れるね。読めば。読む事が出来ればね」
俺には読めないと? 安い挑発だ。相変わらず何が言いたいのか分からないし。
そう思って、結局俺は本を開いた。

610:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/11/01 01:57:22 C4cee32HO
目が合った。
え、と思った。
本を開いた瞬間俺の視界に飛び込みそうして視界を埋め尽くしたのは眼。
あまりに突然で唐突だった。
開いた本のページは見れない。何が書いてあるか分からない。一対の眼が見せてくれない。
眼は俺の顔の間近にあり、俺の目はその眼だけを視界に映していた。
存在する霊なのか俺の感覚に引っ掛かったイメージなのか分からない。霊であるようにもイメージであるようにも見える。
だが、そこに気配は無い。存在するという現実感のない一対の眼は、イメージであるという実感の無い凪いだ瞳は、ただただ俺の目を見続ける。
なんだこれ。
ぱし、ぱし、と一対の眼は瞬きをする。背筋が粟立つ。
―そこに居る。
ヤバい、ヤバい、ヤバい。
さっきまでイメージであるか霊であるかも分からないような、現実感の無いその瞳が気配を持ち始めた。
絵のように平面的で希薄だった存在感が唐突に実体を得た。立体的な、確かにそこにあるという実感がある。
また瞬きを一つ。俺は目を離せない。一対の眼は徐々に現実感を増して行く。まるで現実を侵食していくように。
来るな、来るな、来るな、来るな。
けれど、目が離せない。目が奪われる。徐々に現実感を増していく、一対の眼に。
ヤバい、ヤバいと思ったところで―
 
ぱたん、と。
……音がした。
気付けば一対の眼は消え去り、俺の視界に映るのは閉じられた本と、本を閉じた自分の両手だった。
それを見て俺は俺が本を閉じたことを知った。

611:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/11/01 01:59:37 C4cee32HO
「読めなかったな」
Aは強張った俺の手から本をひょいと奪い去り、ニヤニヤと笑いながら言った。
「……なんだよ、あれ。今のが呪いか」
まるで現実になっていくような一対の眼に、寿命が縮んだような思いがした。
「いいや? 呪いじゃない。中身読んでないだろ?」
Aは何でも無いようにパラパラとページを捲り、背表紙に近い所を開く。
「ブックカース。この本を侵す者に災いあれ、ってな。本を盗んだりとかしたやつに災いが訪れるように願う呪いだ。
 ……こう書くんだなぁ」
Aは私も実際に見るのは初めてだ、と言って本に眼を落とす。
未だに手が強張り、緊張したままの俺はAの軽い口調に苛立ちを覚えた。
「じゃあさっきのはなんなんだよ」
「さあて。……ただ、中身は日記だよ」
「……日記?」
誤魔化されたと感じたが、言われて見ればその本は高そうな手帳をそのまま大きくしたような装丁をしている。
でも、なんで日記なんだ? そう思ったところで、Aが口を開いた。
「それも、ただの日記じゃない。夢日記だ」


612:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/11/01 02:00:14 C4cee32HO
「夢日記?」
「そう。しかもこの日記を書いたやつは、魔術の実践者だ。儀式魔術のな」
ペラペラとページを捲りながら、Aは笑みを深めて話を続ける。
「因みに日記の最後にはこう書いてある。退去に失敗した、ってね」
そこまで言って、Aは笑い声を漏らす。
「なあ、意味分かるか?」
俺は首を振った。
「じゃあ、これだけは言っておく。……夢日記なんて書くんじゃないぞ。
 夢の中の出来事を文章にして現実に持ち込むなんて、ろくな事になる訳が無い」
それだけ言って、Aまた本に熱中し始めた。
結局あの眼の正体はなんなんだと俺は聞いたが、Aは本から眼を離さずに、さあて、と言うだけだった。
彼女の目付きの悪い眼に何が映っているか、俺には解らなかった。


 呪いの本、了。

613:自治スレでローカルルール他を議論中
10/11/01 02:17:18 nZsjvzPX0
↓はい、メリーさんよろw

614:自治スレでローカルルール他を議論中
10/11/01 04:26:39 kPnKU1ul0
わたし、メリーさん。もう寝てるの

615:自治スレでローカルルール他を議論中
10/11/01 04:33:20 kZtzgSAk0
>その日A宅に行くと、家の主はソファに体を横たえて本を読んでいた。

人の家を訪ねて勝手に部屋に入ったらその状態なのか、
呼び鈴鳴らしても玄関にも出てこないのか、
リアリティーが無さ過ぎ(=創作としての文章力なさすぎ)で最初から萎えてしまう。

616:自治スレでローカルルール他を議論中
10/11/01 04:54:39 GgFF10EG0
>>612
乙です!眼を想像してびびってたら隣で彼氏がネッペして心臓止まるかと思った…

617:自治スレでローカルルール他を議論中
10/11/01 05:16:21 Mon5d2ZEO
俺とAの人は急にパワーダウンしたな。
ここよりモバゲー行った方がいいんじゃないか

618:自治スレでローカルルール他を議論中
10/11/01 06:11:00 KmTFDypwO
>>俺たんAたん稲男たん、そして女三人話の新参たん乙♪
誰が何と言おうと私は投下楽しみにしてるからぁ~~

批判たんとメリーたんは、いつも現れる
このスレッドの悪霊みたいな存在だから気にしないで!

これからも投下宜しくなの♪
勿論ウニたんと赤緑たんもね!('-^*)ニコ

619:自治スレでローカルルール他を議論中
10/11/01 06:51:22 m+UKA/1SO
>>609
俺くん乙!
まとめにも4、5話のってたね
おめでとう!

620:自治スレでローカルルール他を議論中
10/11/01 07:07:33 QRq3nrx90
>>615
え?学生時代とかそんな友人だらけだろ?

621:自治スレでローカルルール他を議論中
10/11/01 07:24:22 8fPcP+kC0
>>614
支配人が「一種に寝てくれないか」と言ったリアルな話はおもろかったけど、
「とん、と軽い音をたてて」とか書くようになっちゃったんだねぇ

622:自治スレでローカルルール他を議論中
10/11/01 08:14:59 xFoVPBtMO
忍の人と枯野は近況plz....

623:本当にあった怖い名無し
10/11/01 19:32:27 Na31bqMr0
「私メリーさん。今、バス停の前にいるの…」
「私メリーさん。今、玄関の前にいるの…」
「私メリーさん。今、部屋の前にいるの…」
「私メリーさん。今、モンゴルにいるの…」




624:本当にあった怖い名無し
10/11/01 19:38:38 Na31bqMr0
「私、メリーさん。今あなたの家の……え、身に覚えがない?
  ちょ、ちょっと待ってください…………。あの、お名前は○○さん、ですよね?
    ち、違う!? すみません。間違えでした。どうもすみません……」ガチャリ

携帯に残る電話番号。それ以来毎日かけている。



625:本当にあった怖い名無し
10/11/01 20:26:05 Na31bqMr0
「わたし、メリーさん。今、駅前にいるの」

「わたし、メリーさん。今、ラーメン屋の角にいるの」

「わたし、メリーさん。今、交番の前にいるの」

「わたし、メリーさん。今、交番にいるの」



626:本当にあった怖い名無し
10/11/01 20:30:28 Mon5d2ZEO
メリーさん 了

627:本当にあった怖い名無し
10/11/01 20:38:36 Na31bqMr0
「……わたし、メリーさん。今、交番にいるの」

「…………わたし、メリーさん。今、交番に、いるの……」

「…………わ、わたし、メリーさん。今、交番に、いるのぉ……」



628:本当にあった怖い名無し
10/11/01 20:47:57 Na31bqMr0
「わ、わたし、メリーさん。今、こうば……ダメ、電話取っちゃダメぇ」
「夜中にすみません、○○交番です。お宅の娘さんを補導しておりますので、引き取りに来てもらいたいのですが……」



629:本当にあった怖い名無し
10/11/01 21:06:24 Na31bqMr0
「私メリーさん、今あなたの家の前に居るの」
「……おふくろ、いい加減にしてくれよ」
携帯にかけてきた母親に向けて、俺は嘆息する。


630:本当にあった怖い名無し
10/11/01 21:29:38 Na31bqMr0
ったく、こちとら容疑者の確保に忙しいってのにたまったもんじゃねえ。
俺は、『自称メリーさん殺人事件』と揶揄される事件を追う刑事だ。
「今はまだ職場だよ。悪いが今日は帰ってくれ」
「目里さん! ホシの奴の携帯が割れました!」


631:本当にあった怖い名無し
10/11/01 22:07:47 Mon5d2ZEO
はい次

632:本当にあった怖い名無し
10/11/01 22:10:52 Na31bqMr0
部下の一人が慌てた様子で声をかける。
「ああ、分かったすぐいく! じゃ、そういうことだから」
ぽちっと電源を切ると、俺はホシの番号を打ち、発信ボタンを押す。
数回の呼び出し音の後、がちゃり、と音がした。


633:本当にあった怖い名無し
10/11/02 00:02:48 NOestRqa0
「……もしもし?」
見知らぬ番号からかかってきた電話に、ホシと思しき男は怪訝そうな声を出す。
俺はにやり、とほくそえんだ。
急に家を訪ねてくるような迷惑なおふくろだが、一つありがたいもんを俺にくれている。


634:本当にあった怖い名無し
10/11/02 00:08:53 NOestRqa0
「……私、メリー。今、あなたの後ろに居るの」
そう呟いた瞬間。俺は一人の男の後ろに立っていた。
唖然とした顔でこちらを振り向いた男の手に、手錠をかける。



635:本当にあった怖い名無し
10/11/02 00:16:33 NOestRqa0
俺の名は『目理 伊三(めり いぞう)』
元祖『メリーさん』の【血】を受け継ぎ、彼女の最大の能力である瞬間移動を、
『相手の携帯電話に私メリーと名乗る』という条件下で発動することのできる妖怪刑事である。



636:本当にあった怖い名無し
10/11/02 02:36:52 IDlqqvBRO
「私メリーさん。今あなたの家の前にいるの」
 
「私メリーさん。今あなたの…」
 
「私メリーさん。今…」
 
「私メリーさん…」
 
「私メリー…」
 
「わたし…」
 
「わた…」
 
「…」
 
あの事件から十数年の月日が流れた
もう鳴らない携帯電話を墓の前に
とん、と置くと私は歩き始めた
 
 
メリーさん 了

637:本当にあった怖い名無し
10/11/02 06:34:20 Fe5QLdnhO
シリーズ物は初めから自分でまとめた方が良いような気もする。
ナナシシリーズも作者が結局自分で携帯サイト作ってまとめてたし

そうすれば別に興味ある人しか来ないし、叩かれることもないだろうし……
まぁ、そういうサイト二つほど知ってるけどコメントはほとんどないけどさ

638:本当にあった怖い名無し
10/11/02 09:47:00 VdRnioJ20
>ナナシシリーズも作者が結局自分で携帯サイト作ってまとめてたし
kwsk
なんか補完されたりとかしてた?

639:本当にあった怖い名無し
10/11/02 10:19:09 AMsggURE0
オマエらより水嶋ヒロのが上!
by ayaka

640:本当にあった怖い名無し
10/11/02 10:49:52 Fe5QLdnhO
>なんか補完されたりとかしてた?

改編バージョンとか新しいものも乗ってた気がす

てか探したら残ってた↓
URLリンク(96.xmbs.jp)

641:本当にあった怖い名無し
10/11/02 14:38:21 BJxIcaveO
お前らなら水嶋ヒロのがまだ上

642:本当にあった怖い名無し
10/11/03 01:32:36 W+zTn/r30
俺が水嶋だ

643:本当にあった怖い名無し
10/11/03 05:38:29 84gm8IPH0
>>640

ありがと~

644:本当にあった怖い名無し
10/11/03 20:58:19 xEOVGX1ZO
>>640
やべぇ見てたら普通に感動した

645:本当にあった怖い名無し
10/11/03 21:00:09 YI7lQZtT0
>>640
宣伝乙

646:本当にあった怖い名無し
10/11/03 21:15:19 IG1YAs1s0
レスのコピペ転載にお悩みのスレ住人の皆様へ。

以下の規制議論板でのレス転載コピペ荒らし報告スレをご覧下さい。
いずれも最近報告スレが立てられ、以下の流れを経過した報告スレです。
 運営による芋掘り
 書き込みログの開示
 アクセス規制の発動

★101026 comic「レス転載|抽出転載」コピペ荒らし報告
スレリンク(sec2chd板)

★101029 anime4vip samba 過去レス転載荒らし報告(再)
スレリンク(sec2chd板)

★101030 occult「レス転載|抽出転載」コピペ荒らし報告
スレリンク(sec2chd板)

継続的な過去レスの転載は2chに対する迷惑行為扱いになりますので、
上記報告スレのような形式を作って報告すれば、荒らしをアクセス禁止に
してくれますよ。

報告スレを作るか否かは住人の皆様次第ですけど。
来るか来ないか分からない削除人を待つよりはよっぽど効果的かと。


647:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/11/03 21:51:42 AtsuyNR5O
先輩が、女連れだった。
そりゃ、大学生にもなれば彼女の一人くらいいてもおかしくない。
ただ、先輩はヨーコさん一筋だから、他の女性と付き合うって事は考えられない。
と、勝手に思っていたわけだが、どうやらそれは思い違いだったらしく、先輩は俺の知らない女性と並んで歩いていたのだ。
それだけで彼女と断じるのもどうかと思うが、先輩はとにかく女性に人気がなく、全く近寄りもされなかったので、一緒に歩く程度でもかなりの仲に思えた。
俺は声を掛けようとしたが、二人の時間を邪魔するのもアレだなと思い直し、微笑んで見なかったことにした。
翌日、先輩を問い詰めてやろうと思いながら。

「いつだ」
翌日、いつものように図書館でその話をしたら、先輩は険しい表情で言った。
先輩をからかってやろうとしていた俺は、予想を裏切る真剣さに驚いた。

648:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/11/03 21:52:58 AtsuyNR5O
「昨日です。夕方、駅前のコンビニらへん歩いてましたよね?二人で」
先輩の眉間に深い皺がよる。
「女の特徴は」
「顔はわからなかったです。髪がこう、長かったんで。なんていうか、アレ、貞子みたいに」
手で顔の横に垂れた髪を表す。
女性は真っ黒な髪を背中の真ん中あたりまで伸ばしていた。
さらにうつむいていたので、俺の見た角度からでは顔が見えなかった。
先輩は溜め息を吐く。
「そうか。やっぱり」
どうやら彼女や何やの話では全く無かったらしい。
良く良く考えれば、いくらなんでもあの女性は異質すぎた。
それでもなんとなく納得出来たのは、あの先輩の知り合いならあり得るかと思ったからだった。
「なんなんです?」
先輩は肩をばきっと鳴らす。
今日は何やら疲れているようだ。
「そうだな、使い魔ってわかるか」
はい、と答える。
「コウモリだとか、カラスだとかのイメージありますけど、それが?」
「まずそこから説明しようか。日本だと使い魔ってのは、式神と呼ばれる。知ってるな?」
式神。
使鬼神とも言う。
特定の術式を介して、術者の手駒となる精霊などを使役する術。
そうか、言われてみればこれも使い魔の一種だ。

649:本当にあった怖い名無し
10/11/03 21:53:34 84gm8IPH0
しえん

650:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/11/03 21:54:18 AtsuyNR5O
「陰陽師なんかが使ってたってアレですよね」
「そうだ。付け加えるなら、犬神やくだ狐なんかもそうだな。自分の……術力とでも言おうか、エネルギーを分け与え、手駒を生み出し使役する。つまり、女はそれだ」
ん?
使い魔というと、知能を持たない低級な連中を思っていたが。
「人間霊でも式神に出来るんですか」
先輩は首を振る。
「まだ半分だ。というより、こっちの方が重要か。お前の見た女は、生き霊なんだよ」
「つまり?」
先輩は逆の肩を鳴らす。
「お前の見た女は実在する。そいつがとにかく俺の所に行きたいって願った結果、エネルギーが俺の所へ来たわけ。式神のように」
「じゃあ、知り合いなんですか」
先輩はまた首を振る。
「俺が行ってる病院で、二言三言話しただけ。あそこ精神科あるだろ。そこの患者」
俺はぞくりとした。
精神科にかかるような人間の、それも女の妄執は、想像出来ないほど恐ろしかった。
ただ二言三言話しただけで、自分の魂を割って先輩の所へ飛ばしてしまう程に。
「……やっぱり、害があるんですよね」
先輩は疲れた様子だった。
きっとその女は先輩の精神にも影響を及ぼしたりするのだろう。
先輩は神妙な面持ちで言った。

651:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/11/03 21:55:52 AtsuyNR5O
「いや、全く。見られてる気がしてちょっと寝不足なくらい」
「あ、そーすか」
予想外に軽い被害だったため、若干拍子抜けしてしまう。
「まあ害意がなけりゃそんなもんだ。それもそろそろ終わりっぽいし」
終わりっぽい?
「なんでです?」
先輩が笑う。
嫌な笑顔だ。
「お前、見えたんだろ」
「はい、確かに」
確かに、女は見た。
「それがどうかしましたか?」
「言ったろ、エネルギーだ。より強く存在するには、当然多くのエネルギーを使う。俺ならともかく、お前程度に見える程はっきり存在するってことは」
あ。
なるほど。
「もしE線切っても飛ばしてたら、最後にはそりゃ……なあ?」
はっはっはと笑って先輩は立ち上がる。
「逃げ戻る先が無くなれば、俺なりのやり方で追っ払える。まあ、もう少しの辛抱だ」
手をひらひらさせながら図書館を出る先輩の背中に、昨日の女が見えた気がした。
彼女の体は、今どうなっているだろう。
考えるのは、やめておいた。

先輩と生き霊 終

652:本当にあった怖い名無し
10/11/03 21:57:30 YI7lQZtT0
オトューン

653:本当にあった怖い名無し
10/11/03 23:51:13 IxHN/lVj0


654:本当にあった怖い名無し
10/11/04 00:16:16 /XNyFBH2O
いなおとこ乙

655:本当にあった怖い名無し
10/11/04 00:19:15 EJpMsx4j0
今日のは結構良かった。乙

656:本当にあった怖い名無し
10/11/04 19:44:31 o6b6XmOu0
「私、リカちゃん。今あなたの後ろにいるの・・・」

テリーマン「俺もいるぜ」
キン肉マン「テリーマン」
ブロッケンJr「お前だけに、いいカッコさせるかよ」


657:本当にあった怖い名無し
10/11/04 19:46:32 o6b6XmOu0
キン肉マン「ブロッケンJr・・・」
ロビンマスク「正義超人は、おまえだけじゃないんだぜ 」
ウォーズマン「コーホー」
キン肉マン「みんな・・・」

悪魔超人「こ、これが友情パワーか」



658:本当にあった怖い名無し
10/11/04 19:52:40 o6b6XmOu0
「私メリーさん、今あなたのうしろにいるの」

「(クルリ)メリーさんが好きだ!」
「・・・はっ? い、いきなり何言いだすの?」


659:本当にあった怖い名無し
10/11/04 20:29:40 v+9JuyoxO
>>658
純粋にこのスレ楽しんでるのゆ
いつもコイツうざ杉!
暫く来るの止めるよ

660:本当にあった怖い名無し
10/11/04 21:04:44 MlM/LKw50
>>659
スルーしとけっての
スレ埋まったらまた立てればいいんだし

661:本当にあった怖い名無し
10/11/04 21:19:22 o6b6XmOu0
思わずメリーさんににじり寄る・・・。
「メリーさん・・・」
「ちょっ! ち、近すぎ・・・!」


662:本当にあった怖い名無し
10/11/04 21:29:09 o6b6XmOu0
恐る恐る両手をあげると・・・メリーさんも怖いのか同じように両手をあげる・・・。
ガッシ! その細い手首を捕まえて・・・
「なっ! は、放して!!」
「メリーさん!! お願いっ! 君を抱きたいんだ!!」


663:本当にあった怖い名無し
10/11/04 21:31:33 o6b6XmOu0
「何言ってるのよ! なんであんたなんかに抱かれなきゃいけないのよっ!!」
「でも抱いちゃう!!」
今度は腕をメリーさんの背中にまわして・・・


664:本当にあった怖い名無し
10/11/04 21:32:50 o6b6XmOu0
あっ、胸のふくらみが直に感じるよっ・・・。
身をよじれば余計に・・・。
「や! やめて! 警察を呼ぶわよ!これ、完全に痴漢じゃない!!・・・あっ そこヤダ!!
放してっ! 手を・・・いれないでよっ!」


665:本当にあった怖い名無し
10/11/04 21:41:43 o6b6XmOu0
「じゃ、じゃあさ、何もしないからこのまま抱きつかさせていて・・・。
キミの肌の柔らかさを・・・心臓がトックントックンいってるのを聞いていたい・・・。
キミの唇から洩れる息遣いも・・・。」
・・・


666:本当にあった怖い名無し
10/11/04 21:53:56 i6cA+ayv0
>>659
●持ってるから規制でも建てられるし安心してくれ

667:本当にあった怖い名無し
10/11/04 22:11:24 o6b6XmOu0
「・・・ねぇ?」
「何?」
「あなた、・・・いつまであたしに抱きついているの?」
「あ、ごめんね? なんかこのままキミの中に入りたくなっちゃった。
・・・入れていい?」



668:本当にあった怖い名無し
10/11/04 22:31:30 EC5IJ7T40
>>646
俺が規制議論板いってもいいけど
でも全板共通だか野次馬だかで吟味して貰った方がいいんじゃね?

669:本当にあった怖い名無し
10/11/04 22:35:59 o6b6XmOu0
======中略==============

・・・こうしてメリーさんの復讐の旅が始まったのである。


670:本当にあった怖い名無し
10/11/05 03:06:32 l7AkKE7gO
はい次

671:本当にあった怖い名無し
10/11/05 11:12:15 8UUizOeT0
>>647
女と歩いていることに先輩自身が気づいていないっぽいのに、
「俺ならともかく、お前程度に見える程はっきり存在するってことは」
ってのは微妙な気がするけど…

でも、面白かった。乙

672:本当にあった怖い名無し
10/11/06 03:14:21 UfCEj2QuO
>>640
怖い話だと思って読んでたら久しぶりに泣いたわww
ありがとう

673:本当にあった怖い名無し
10/11/06 03:28:21 MDUKx/C/O
>>671
その内、蚤の心臓がバクバク言い出したり、膝がガクガクなりそうだけどな
その前に師匠の彼女の予知夢とシンクロするのが先か

674:本当にあった怖い名無し
10/11/06 17:58:13 yHn05caFO
>>666
㌧!
メリーのせいでスレ死んでる

675:本当にあった怖い名無し
10/11/07 00:19:31 BG60/eSDO
>>671
気が付いてるでしょ。
ただ、何時の話なのか確認しないと特定できないかな問い正しただけじゃね?


676:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/11/07 01:35:46 cxJgfVtTO
俺は奥手だ。
奥手な方だと思う。
多分、奥手なんじゃないかな。
まあ、少なくとも積極的に異性と関わろうとしない。
そんなわけで、いない歴は刻々と記録を伸ばしていた。
だが、別に気になる人がいなかったわけじゃない。
先輩のクラスに、その人はいた。
彼女は、失礼だがとりたてて美しい容姿ではない。
外観より実益を見るタイプなようで、過剰な装飾もしていなかった。
あるいは、それが良かったのかも知れない。
はっきり言えば地味な女性だったが、気が付けば、俺は彼女を見ていた。
ある日、偶然ドアの近くに彼女がいて、俺は話しかけることが出来た。
声も普通、徹底して地味な性質だった。
先輩の不在を確かめる会話の中、俺は気付いた。
俺は彼女の唇に心惹かれていたのだ。

「お前、アイツの事好きなのか」
俺は椅子から転げそうになった。
全くこの人は、見てないようで良く見てる。
色恋話には殊更厳しい図書委員が俺を睨む。
「なんのことですか」
平静を装ってみたが、自分でもはっきり失敗とわかる。
静かな図書室に、ボリューム調節を失敗した声が響いてしまった。
「まあ、どうだっていいんだ。そんなのは」
追求が無さそうでホッとした。

677:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/11/07 01:37:35 cxJgfVtTO
実際の所、良くわからない。
俺は彼女に惚れているのだろうか。
それにしては、違和感がある。
今まで、本気で女性を好きになった事が無かったから、感覚がわからないのかもしれない。
「唇が、綺麗なんですよ。絶対、悪口とか出てこなさそうな唇してるんす」
ぽつりと呟いてみる。
先輩は興味無さげに、辞書のページをめくっている。
しばらく無言でパラパラ眺めた後、俺の発言がようやく届いたのか、急に顔を上げた。
「思い出した。ラパシーニの娘だ」
知らない名前だ。
ラパシーニ、とは誰だろうか。
外国人?地名?
「いや、ラパチーニだったか。まあいい。ドクムスメだ」
ドクムスメという言葉が理解出来ず、一瞬固まってしまった。
「急になんですか」
先輩は一人ですっきりしている。
どうやら思い出せ無かった事が出てきてご満悦なようだ。
俺は全くわからなかったので、少しだけ不愉快だった。
「ああ、知らんのか。……昔、そういうタイトルの小説を読んだ。内容は、いずれ自分で読んで確認してくれ」
なるほど、小説のタイトルだったか。
この図書室には無いのだろうか。
「それがどうしたんです?」

678:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/11/07 01:38:45 cxJgfVtTO
先輩は笑った。
あの顔だ。
人の不幸を嘲笑う時のような、真っ黒な笑顔。
「だから、ドクムスメだよ。あいつに関する噂を聞いた事があってな。どっかで似たような話を読んだのがどうにも思い出せ無かったんだ」
「で、何が言いたいんですか」
苛々する。
俺をからかうのは良いが、あの人まで悪く言うつもりだろうか。
「小学生の頃、あいつが飼ってた犬が死んだらしい。それから、学校で飼ってた兎も。花壇の花も全部枯れたんだと」
その、ラパシーニだかラパチーニだかの娘の話を読んでいれば、ここでピンとくるのだろうか。
「ヒントはこれまで。図書館にあるはずだから、読んでみろよ。面白いぜ」
そういうと、先輩は荷物を持って立ち上がる。
「それから、あいつ、彼氏いるぞ」
言いたい事だけ言って、先輩は帰った。
後には、何一つ理解出来ないままの俺と図書委員が残された。

しばらくして、彼女は死んだ。
自殺だったらしい。
彼氏と言われていた人は、それは酷く落ち込んでいた。
俺は図書館でラパシーニの娘を読んだ。
先輩の言いたかった事はすぐにわかった。
俺の惹かれたあの唇は、言葉以外にも吐き出す物があったんだろう。

679:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/11/07 01:40:53 cxJgfVtTO
もしかしたら、彼女が何かを愛した時に、それは起こるのかも知れない。
最初は、飼い犬。
次に、可愛い兎。
それから、綺麗なお花。
……そして、素敵な彼。
彼女は恐らくそれを防いだのだ。
彼を殺す事を恐れて自らが犠牲になった。
俺が彼女を想う時、必ず浮かんだラベンダー色の靄。
あれはきっと、運命を狂わせる毒だったんだろう。
今にして思えば、彼女に惚れていたわけじゃないとはっきりわかる。
蛾が、電灯に近寄るように、ただあの唇に吸い寄せられていただけだ。
本を閉じ、表紙をなぞり、目を閉じる。
彼女の薄紫の人生を想って、少しだけ泣いた。

毒娘 終

680:本当にあった怖い名無し
10/11/07 01:51:46 8kjkSGr60
>>671
稲男に見えるようになったのはいつからか、ってことを聞いたんだろ。
見る力が弱い人にも見えるくらいにまでなっても、その前から見えてる先輩には違いが分からないんだろうな。



681:本当にあった怖い名無し
10/11/07 11:44:19 7mPFnhgt0
「もしもし。私、メリーさん。今テレビの前に居るの」

『はい、こちらフジテレビの笑っていいともテレフォンショッキングです。貞子さんに替わります』

『……もしもし?メリー?』



682:本当にあった怖い名無し
10/11/07 12:20:45 Bx1Fq64D0
稲男乙

683:本当にあった怖い名無し
10/11/07 12:59:40 7mPFnhgt0
「こんにちわ貞子ちゃん。今アルタの前に居るの」

『早いよ。今タモさんに替わるね』

『こんにちわ、メリーさん。明日、大丈夫ですか?』

「私メリーさん。今スタジオの前に……」



684:本当にあった怖い名無し
10/11/07 14:07:11 EH8zAj8sO
>>679
それでオカルト要素はどこにあるの?

685:本当にあった怖い名無し
10/11/07 14:56:49 1Yy8oDSRO
晒しといてなんだがナナシシリーズって結構人気あったんだな、知らなかった。

個人的な怪異体験集みたいなのは幾つか知ってるけど、一貫した背景やキャラが出て来るような
2chに投稿されてない個人まとめサイトは中々見つからんね。


686:本当にあった怖い名無し
10/11/07 15:00:51 7mPFnhgt0
『ええ?もしかしてダメなんですか?』

「え、いや、あの……い、いいとも!」

『はぁい、じゃあ明日お願いしま~す』

私、メリーさん。

今、テレビ界へと羽ばたこうとしているの。



687:本当にあった怖い名無し
10/11/07 15:07:48 7mPFnhgt0

「私、メリーさん、今、あなたの部屋の前に居るの……」

「私、メリーさん、今あなたの後ろにうわなにするやめくぁwせdrftgyふじこlp



勝者:ゴルゴ13




688:本当にあった怖い名無し
10/11/07 15:36:12 7mPFnhgt0
「なあ、あんた? 口裂け女って知ってるか?」
俺が今電話をしているのは、通称『カシマ事件』と呼ばれる事件の犯人だ。
「そう、マスクをして私綺麗? って尋ねてくるあの都市伝説だ。
 お前が騙ってるカシマさんと同じ類の化け物だな。


689:本当にあった怖い名無し
10/11/07 15:50:24 7mPFnhgt0
 で、だ。その口裂け女ってのは、一説には狐憑きの一族の娘だった説があるんだ」
部下を誘拐した、と向こうから脅迫電話がかかってきたため、俺の能力は使えない。
だが、何の問題もない。


690:本当にあった怖い名無し
10/11/07 20:47:22 YHt9H5FM0
忍の人と、お姉さん、どうしてるかなぁ…

691:本当にあった怖い名無し
10/11/08 00:32:42 0bqxEGrs0
もう何ていうか、自演臭がきつ過ぎて気持ち悪いな…

692:本当にあった怖い名無し
10/11/08 02:58:53 cIlXw7310
そげですか

で、どれが自演?

693:本当にあった怖い名無し
10/11/08 09:14:19 VGmR/L7dP
ドゥーン!!  -=・=-  -=・=-

ようこそ、呪いのスレへ。
実は今君に呪いをかけたんだ。
このレスをみてしまうと君はもう一生、異性を拝めなくなる。そんな呪いだ。
もちろん童貞なら一生童貞のまま人生を終える。処女もしかり。
災難だと思って諦めてくれたまえ。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
だけど一つだけ呪いを解く方法があるんだ、それは・・・

「 男湯に女性を入れてる浴場名を報告スレ 」
でgoogle検索してこのスレに行って

「 >>1は40代で就職なんか無理だろ 」
ってコピペでいいから書き込むんだ。

では、健闘を祈るよ

694:671
10/11/08 17:03:14 tWzMo6G60
>>673
>>675
>>680

なるほど。それなら納得。
すっきりした。どうもありがとう。

695:本当にあった怖い名無し
10/11/09 16:15:49 dyym7yWwO
ナナシでガチ泣きしたよ・・・

696:本当にあった怖い名無し
10/11/09 19:30:04 rIo2diyn0
ていうかコンビニの恐怖体験雑誌に載ってる程度の情報を
キャラにご大層に喋らせてる時点で痛い

697:本当にあった怖い名無し
10/11/11 02:33:39 T1oIH5oLO
とりつかれたかのように何でもかんでも自演、自演……

自演臭いのが実は自演じゃなかったりするっていう考えはできないのかご貧相な頭だな

まぁ>>696は良いこと言ってるが

698:本当にあった怖い名無し
10/11/11 02:39:01 88rPnNFQ0
自演認定する奴って自分が普段から自演してるから、他の人もそう見えちゃうらしいよ!

って師匠が言ってた。

699:自治スレでローカルルール他を議論中
10/11/11 02:50:03 Ku3+p+pR0
あー、あるよな・・・w

700:本当にあった怖い名無し
10/11/11 03:32:16 4vr4E2VV0
この流れは自演臭いな。
うん。

701:本当にあった怖い名無し
10/11/11 10:09:57 Ks/c5lLUO
自演なんてどっちでもいい。
新しい話が読みたい

702:本当にあった怖い名無し
10/11/11 10:46:22 QxNUb1hu0
スレが最近正常なんで自重してたが、
荒らしがまた湧き始めたし、そろそろ続き書いてもいいかの?
うちのはカオス状態の方が都合がいいし。

703:本当にあった怖い名無し
10/11/11 17:49:27 rDc5Wf4LP
>>702
誰か知らんけど書けばいいじゃん

704:本当にあった怖い名無し
10/11/11 18:13:56 88rPnNFQ0
>>702
荒らしってどれさ。メリーさんなら常駐してるよ。

705:本当にあった怖い名無し
10/11/11 18:16:49 6YD3uQspP
誰だか知らんが構ってちゃんはお引き取り下さい

706: ◆DJINKbmZw2
10/11/11 20:00:03 uRd0rgL+O
お久しぶりです。
近況といっても何の情報もないままです。
昔、忍と姉と付き合っていた男性に偽造した身分証やトバシ携帯を売っていた男性が懲役を終えていた事を知り、会う事が出来ましたが売った相手の個人情報等も押収されていたため手がかりはまるでありませんでした。

唐突ですが、酉の変更をします。今の酉は姉の名前だったので。

707: ◆kclGkH8MuXPd
10/11/11 20:01:57 uRd0rgL+O
今後はこちらに酉を変更します。


708:本当にあった怖い名無し
10/11/11 20:08:37 9ZZL3JZQ0
日本語で(ry

709:本当にあった怖い名無し
10/11/11 20:12:40 lASDUdI00
>>702
うぜえ・・・・いちいちお伺いたてんなカス

710:本当にあった怖い名無し
10/11/11 20:22:40 4JoDlcRC0
知らねえよ誰だよww

711:本当にあった怖い名無し
10/11/11 20:35:47 FQLFqbb90
忍って書いてあんじゃん
行方不明のお姉さん探してる人だよ

712:本当にあった怖い名無し
10/11/11 22:33:05 s+7cJD/B0
忍さんのまだ続くんなら、ぜひとも書いてほしいのですが。

713:本当にあった怖い名無し
10/11/11 23:49:51 l5YRKZ+rO
>>706
忍の人の近況は気になってたのでしりたいです

714:本当にあった怖い名無し
10/11/12 01:06:14 X5FP+XwfO
忍は気になるなぁ

715:本当にあった怖い名無し
10/11/12 10:59:37 /bBvNt5/0
忍は最終回の衝撃がハンパなかったからこのまま終わってくれた方がいいかも
後日談とか追加してグダグダになるのはみたくないよ
姉さんが無事見つかって忍を半殺しにしましたって現実的な報告は欲しいけれどもね
決してアンチではないです

716:本当にあった怖い名無し
10/11/12 19:28:58 MtsECXaM0
ああ、あいつか
実の姉が失踪してるのに、それをネタに嬉々としてラノベまがいの創作書いてた鬼畜だろ
人として終わってる


717:本当にあった怖い名無し
10/11/12 19:32:54 kLPkbRHA0
師匠が失踪した

718:1/5 便乗者 ◆iWdAqLU3ds
10/11/12 20:57:52 iJpxplwB0
以前、両腕の無いお婆さんから聞いた話を書かせていただいた者です。
前回投下した後に色々と反応を下さった方々、本当にありがとうございます。
では今回も早速……。

『手拍子』


私が以前住んでいた地元は、住宅街あり、田んぼあり、森ありコンビニありの中途半端な田舎でした。
私の家は住宅街の方にあり、その住宅街地区では昼夜問わず、『手拍子』の音が町を徘徊していました。

 パチ、パチ、パチ、パチ、

という断続的なその音は、初めて聞いたのがいつだったかもわからないほど以前から聞こえていたもので、
いつの間にか聞こえるのが普通のことのようになっていて、私はそれを人か人ならざるものかなどで区別せず、
聞く度にただ漠然と「あぁ、いるなぁ」と、ぼんやり思うだけになっていました。
近所の人や友人も以前から聞いていて、その誰もが今までに正体を見たことが無く、
そしてその誰もが「あれって何だろうね」と首をかしげる、謎の『手拍子』。

自分が町を歩いていても、その『手拍子』の主とばったりと会うようなこともないのです。
犬の散歩をしていると、家々を挟んだ一本隣の通りを通り過ぎる音が聞こえてきたり……、
夜に部屋で、涼むために窓を開けていると、宵闇の向こうから何処からともなく彷徨うように聞こえてきたり……。

救急車などのサイレンが聞こえるけど何処を走っているかわからない。という経験はある方も多いと思います。
それが『手拍子』の音になったような感覚。だけどサイレンなんかより、多分もっと近くを徘徊する音。
きっと知らない間に、何度か私の家の前だって通り過ぎていたのかもしれません。

719:2/5 便乗者 ◆iWdAqLU3ds
10/11/12 21:02:21 iJpxplwB0
さて、いつしかこの町で当たり前になっていた『手拍子』に、一度だけおびやかされた経験があります。

田んぼ地区との境目あたりにあるスーパーで買い物をした帰り道のこと。
夏で、夕方なのに日もまだ落ちていない、まだまだ明るい住宅街の中。西の方へと私がのんびり歩いていると……。

 パチ、パチ、パチ、パチ、

あぁ、またかぁ……。
どうやら一つ南の通りを、私とは反対の東の方向に、すれ違うように進んでいる様子。
その頃の私の中では、彼もしくは彼女は人間であると仮定されており(それもこの日まででしたが)、
まぁキチ●イなら仕方ない ←本当の意味で。と思っていつもどおり聞き流そうかと思った時、
ほんの、ほんの思い付きで、
「そういえば、返事するとどうなるんだろう……?」
という考えが頭を過ぎったのです。
相変わらず『手拍子』の音は、絶え間なく断続的に鳴り、今まさに丁度私とすれ違うような位置関係にいるようです。

私は怖いもの見たさというか好奇心を抑えきれず、期待と不安を胸に、持っていた買い物袋を手首に掛け直しました。
そして空になった両手を自分の胸の前に構えます。一つ南から聞こえる、あの音……。

 パチ、パチ、パチ、パチ、

それに答えるかのように、いえ、からかうように、私は自らの両手を打ち鳴らしました。

 パチンッ、パチンッ


720:3/5 便乗者 ◆iWdAqLU3ds
10/11/12 21:09:20 iJpxplwB0

 ……

音が、止んだ……?
と思った途端、

 パチパチパチパチパチパチパチパチ!

一時停止した『手拍子』はすぐさま速さを増して再度鳴り響き、今までの自らの進行方向へと再び進み始めたのです。
そして速くなったのは音だけでなく、その進行速度も。
『手拍子』は一つ南の通りを、あっという間に東に走り去って行きました。そして、十字路を、左折して来る気配。
「あ、こっちに回り込んで来る……?」
思わず振り返ると、音はものすごい勢いで北上し、ここから見えるあの交差点から今にも姿を現そうと……。
その瞬間私は前を向き直り、そのまま家の方へと猛ダッシュしました。直後、背後のあの交差点を何かが曲がって来る気配。
2つの角をコの時型に回り込み、奴は既に私と同じ通りにいる。振り向いたら、たぶんいる。
振り向けない。やめておけば良かった。
『手拍子』の正体はきっと私のすぐ背後にまで迫って来ているのです。そしてそれは人間でないのでは。足音が、しない。
足音はしないのに、手を叩く音だけが大きくなってきている。距離が縮まってきている……。
あぁやばい!

 パチパチパチパチパチパチパチパチ!!

本当にやばい! 追い付かれる!
やめておけば良かった!
その瞬間、

 バシンッ!!

張り裂けるような凄まじい音と、背中に激痛。そして突然の静寂……。

721:4/5 便乗者 ◆iWdAqLU3ds
10/11/12 21:14:57 iJpxplwB0

 ……

痛みに噎せながら振り向いても、ただの明るい住宅街。近くに誰もいません。遠くにはちらほらと人影は見えますが……。
あまりの日常の風景に、さっきまでの異常事態がすべて白昼夢だったかのような感覚に囚われてしまいました。
しかし実際に背中はヒリヒリと痛い。ジンジンと痛い。そしてアイロンを当てられたように、熱いのです。

家に帰った私は、鏡で背中を確認しようなんて思いませんでした。
背中に手形でもついていたら嫌だったのもありますが、その頃私は鏡を見ない生活をし続けており、
その規則をここで崩したくなかったのです。
私は買い物の荷物をダイニングのテーブルの上に放り、すぐさまある家へと向かいました。
近所に住む、仲の良いお婆さんの家です。

チャイムを鳴らすと女性の声で応答がありました。お婆さんと二人暮らしだという娘さんの声です。
50歳前後の落ち着いた声に自分の下の名前で応答し、家の中へと入れてもらいました。


「あ~、あの拍手みたいな音ねぇ」
しどろもどろな私の体験談を聞きながらも、落ち着いた様子でそう返すお婆さん。
「拍手できるなんて羨ましいわぁw」
そんな自虐ネタを言われても困ります。
「でもね、あぁいうのは無視無視。もし人間じゃなかったら嫌だから、探らないのが吉」
「確実に人間じゃないですよ~」
「叩いた後すぐ隠れたのかも知れないじゃない? 何にせよ決めつけるとろくなことがないから……」
決めつけるとろくなことがない。という言葉にはお婆さんのある意思が込められていました。
私がその話を聞くのはもっと後のことなのですが、それより今はこの背中の痛み。どうしたら良いか、尋ねます。
「放っておけば治ると思うけど」
「え~、でも……」

722:本当にあった怖い名無し
10/11/12 21:25:27 i2t0DmhY0


723:5/5 便乗者 ◆iWdAqLU3ds
10/11/12 21:29:30 iJpxplwB0
「不安なんだねぇw まぁ人間の仕業じゃないと思うなら……、ちょっと○○! 来てくれないかねぇ~!」
娘さんの名前を呼んでいます。返事とともに、すぐに娘さんがタオルで手を拭きながら奥から出てきました。
お婆さんは娘さんを自分のすぐ近くへと呼び寄せ、何か耳打ちをしているようでした。
それが終わると、娘さんが私の方へと近づいてきます。そして畳に座る私の後ろに立ちました。
お婆さんは椅子に腰かけたまま、「少しだけ我慢してね」と、微笑みながらも少し申し訳なさそうな顔をしました。
私の後ろでは娘さんが「ゴメンね、ちょいと失礼~」と言いながら私の服の背中側をたくし上げました。
続けて「あぁ……」という声。
あぁって……。
「え? 何ですか? やっぱり、どうかなってるんですか?」
「ちょっとコレ外すね」
「あ、はい……」
「……それじゃあ、えい!!」

 バシンッ!!

張り裂けるような凄まじい音と、背中に激痛。
「い、イッタぁ!!!!」
私は思いっきり仰け反った後、すぐさま今度は前のめりに崩れ、畳の上に頭をゴンッと打ちつけました。
それにも「痛っ」と呟いて、それからようやく上体を起こし、涙目でお婆さんの顔を眺めます。
お婆さんはとても優しい顔をしており、私は背中にとてつもない痛みを背負いながらも、何故か安堵してしまいました。
娘さんは一仕事終えたように「これでよし!」と言いながら、一回だけ私の背中を優しく撫でて、
とっとと切り上げるようにまた奥へと戻って行きました。
お婆さんはそんな娘さんの後ろ姿に「ありがとねぇ」と言った後、今度は私の目をまっすぐ見つめました。

「幽霊にやられた痛みなんて、人間の痛みで上書きしちゃえばいいのよ」

724:便乗者 ◆iWdAqLU3ds
10/11/12 21:34:41 iJpxplwB0
ありがとうございました(途中のご支援もありがとうございます)


3/5での訂正……  × コの時型 → ○ コの字型

失礼いたしました。

725:本当にあった怖い名無し
10/11/12 22:04:25 MtsECXaM0
なんでここに投稿する奴って長文ばかりなんだろ
上の話なんて半分で済むだろ。大した内容でもないのにだらだら伸ばしすぎ
読むこっちの事も考えてくれ

726:本当にあった怖い名無し
10/11/12 22:09:11 i2t0DmhY0
読まないって選択肢もあるんだぜ

727:本当にあった怖い名無し
10/11/12 22:11:40 a5KPPwXv0
>>724
便乗者さん、おひさです
後半、あのお婆ちゃんが登場して、なんかホッとしました
娘さんが背中に見たもの、一体何を外したのかが気になる

728:本当にあった怖い名無し
10/11/12 22:19:24 +YNSVBaSO
一番やっちゃいけないのが「読まずに批判」
 
冗談抜きで無駄な描写が多すぎる
もっと短く纏めてから投下してくれ

729:本当にあった怖い名無し
10/11/12 23:19:50 ZnS7JK3MO
このスレで簡潔な文章書いても歓迎されてないじゃん。
無理して冗長にしてる感じもしないではない。

730:便乗者 ◆iWdAqLU3ds
10/11/12 23:42:11 iJpxplwB0
>>725 それでも読んでくださってとても嬉しいです。ご意見に関してもこの場だけでなく、今後も役立てていきたいです。
>>727 前回も反応くださった方でしょうか、今回もありがとうございました。
>>728 一ヶ月前とかの文章を見て自分でも長いと気づくことが多々あります; 肝に銘じておきます。

文章を長くするのも、短くまとめるのも、とても難しい事なのだと実感いたしました。
皆さま本当にありがとうございます!

731:本当にあった怖い名無し
10/11/12 23:48:45 a5KPPwXv0
>>730
前回、シリスレでびゅーに遭遇しました
腕がないのに明るくて不思議なお婆さんがいーんだよね
娘さんもそっちの人だったとわ

732:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/11/13 02:32:40 emextffq0
先輩は、何かを思案する日を設けているようだ。
不定期なのだが、一日中思案顔をしている日がある。
一度、何か悩みでも?と尋ねてみたことがあったが、
「お前には関係ないよ」
の一言でばっさり切られてしまった。
恐らく本当に関係ないことなので、深く追求することも無かったのだが。

その日も、先輩は考え事をしていた。
悪友ハナヤマから仕入れた話を持ち込もうと、アパートに行ってみたのだが、一応迎え入れてはくれた先輩は俺を無視して思案を続けているのだった。
どうやら今日は話を聞いてもらえそうもないと思って、携帯を取り出してメールをチェックする。
相変わらずどうでもいい物ばっかりだ。
一応、適当に返信しようとぽちぽちしていると、先輩が俺を見ているのに気付いた。
「肩凝ってるんだな」
どうやら、無意識に肩を回していたのを見られたらしい。
「ああ、最近酷いんですよ。パソコンやってるからだと思うんですけどね」
「右肩だろ」
その通りだった。
ここ一週間ほど、右肩が重くて仕方ない。
まあ俺は右利きだから、それで良く使っているせいなんだろうと思っていた。
「当たりです。何でそう思ったんですか?」
先輩はまさに心ここにあらずという面持ちだった。
しかし、会話は成立している。
「子鬼が乗っかってるぞ。お前の右肩、首筋に近い辺りに」
こおに。
なんだか可愛らしい響きだ。
しかし、幽霊妖怪の類には大分親しんだはずの俺も、鬼というのは初めてだった。

733:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/11/13 02:33:22 emextffq0
「それ、大丈夫なんですか」
「大丈夫なわけないよ。子鬼って言っても、小さい鬼の小鬼じゃない。子供の鬼の子鬼だ。子供は成長するよな。すごい速さで」
いつもならもっともったいぶって、俺の恐怖心をあおる言い方をするが、今日は淡々としている。
それが逆に怖かった。
事実として、右肩にいるという子鬼が成長すると害を成すというのだから。
「ちょ、と待ってくださいよ。それどうしたらいいんですか。大体鬼ってなんなんですか」
先輩は少し迷惑そうな顔をした。
もしかしたら、そんなことも知らないのか馬鹿め、という顔だったかも知れない。
「鬼は鬼だ。説明が必要か?」
小馬鹿にしたように言われ、多少悔しかったが背に腹は変えられない。
「すんません。お願いします」
先輩はそこでようやくしっかり俺の顔を見た。
どうやらしつこい後輩を処理してから悩むことを続けることにしたようだ。
「鬼、っていうのは、つまり人の思念だ。鬼は……怨嗟の怨、おんという字から来ている」
頭の中に字が入ってくる。
怨嗟。怨。怨み。
そういった思念が、おん、つまり鬼になる、らしい。
「でも、怨まれるような覚えは全く無いですよ。自慢じゃないですが当たり障り無く生きてますから」
覚えの無い怨みで体に不調が出るのではあまりに理不尽な気がする。
「もうひとつある。おんって読む字を知らんか。恩義の恩だ。恩返しの恩」
なんでだ、と思う。
怨はともかく恩なら害になる理由がわからない。
「恩があるならなんで俺を呪ったりするんです。おかしいじゃないですか」
先輩は顎を擦る。
いつもは剃っているらしい無精髭がぞりぞりと擦られるのが見えた。

734:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/11/13 02:34:56 emextffq0
「そうだな、たとえばお前がピアノの発表会に出たとする。だが出演前に、お前の事が嫌いな奴が楽屋にやってきて、『お前にいい演奏なんぞ出来るものか』と言って罵った。どうだ?」
想像してみる。
「嫌ですね。すごく。もしかしたら演奏に影響するかもしれないです。本当にミスしちゃうかも」
「そうだろうな。じゃあ今度はお前のファンだ。『いい演奏期待してます!』って応援される。どうだ?」
想像してみる。
「うれしいんじゃないでしょうか。応援されると、やっぱり」
「普通はそうだな。じゃあそのファンが毎回毎回来て、毎回毎回応援してくれたらどうだ?百回でも千回でもだ」
想像してみる。
…………。
「ちょっと嫌ですね、プレッシャーっていうか。落ちつか無そうです」
言った後、あ、と思う。
「まあ、そういうことだ。過ぎた好意は、時に悪意より厄介になる。ちなみにその子鬼、元凶と決着つけない限り居なくならないだろうな。まあ、頑張って探せよ」
怨まれる覚えは無い、が、好かれる覚えは何の因果かあったりする。
いつか、先輩に執着するあまり、自身の魂を削って生き霊を作り出した女を思い出した。
「先輩、これってあの時の、生き霊のケースに似てませんか」
先輩は意外そうな顔をした。
「お前にしちゃ頭が回るな。もちろんその子鬼も、素になってる人間のエネルギーで動いてる。長い間放っておいたらまず共倒れだろうな」
ああ、やっぱりそうだ。
最近、様子がおかしかった人がいる。
そしてその人は、俺に好意を寄せてくれている。
放っておくわけには、やっぱりいかないだろう。
先輩にも怒られてしまいそうだし。
「……素の人ときっちり話をすればいいんですね?」
俺は覚悟を決めた。
話し合う必要がある。徹底的に。
「さあ、どうだろうな。話し合った結果、その鬼が本物の災厄になる可能性だってある。お前の立ち回り次第だ。どうしても駄目だったら、無理やりひっぺがしてやるけど」
「それは、スマートじゃないでしょう?」
先輩は愉快そうに笑った。
「そう言うだろうな。俺なら問答無用だが、お前は違う。無理やり剥がした場合、勿論鬼の親には影響がある。そうならないように頑張れよ」

735:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/11/13 02:35:52 emextffq0
全く人間というのは面倒なものだ。
好きでも嫌いでも、結局相手に面倒をかけてしまう。
どうしてこうなってしまうのかはわからないが、不思議とそれが面白く思えた。
どうにも胸の奥がわくわくして、顔が緩んでしまった。
この人も、人全体も、どこまでも興味深く、面白い。
先輩は楽しそうな俺が気に入らないらしく、少し不機嫌そうだった。

「ところで、だ」
急に笑顔になった先輩が言う。
すっかり馴染みの、いつもの悪意のある笑顔だ。
緩んだ頬がきゅっと引きつる。
「おん、っていう漢字、他にも思いつかないか?ほら、すごく馴染み深い言葉があるだろう。言ってみろ」
俺は少し考える。
一番身近な、おん、おん……。
音?
「おと、でしょうか」
「正解」
先輩は自分の口に人差し指を当てる。
「言霊ってのがあるだろう。音には力があると信じられていて、信じられていたから音には実際力が宿った。言った事は現実に影響を及ぼすんだ。口からも、どんな形かわからないが鬼、『おん』が産まれる」
さて、と、一旦区切って続ける。
「それを踏まえた上で、お前、今日俺に相談があるって言ってたよな。どんな懸念でも言ってみろ」
先輩の最高の笑顔を見ながら、俺は口を硬く結んで首を横に振った。

子鬼 終

736:本当にあった怖い名無し
10/11/13 05:21:55 qFBUMD2TO
やっぱりベースは師匠シリーズなんだな

737:本当にあった怖い名無し
10/11/13 09:49:55 FwtXrdsIO
>>718
恐いし婆さんに和むしで面白かった


738:本当にあった怖い名無し
10/11/13 12:13:29 MJblfKqT0
最近、ラーメンとカツ丼の俺君来ないね

739:本当にあった怖い名無し
10/11/13 16:01:50 Cl6tlJqMO
Bに捕まったんだよ
元々のBに

740:本当にあった怖い名無し
10/11/13 16:34:11 qFBUMD2TO
面白くないとか自分で言わないで元Bとの話を投下して欲しいな

741:1/1 便乗者 ◆iWdAqLU3ds
10/11/13 21:35:44 +NvOjuSi0
『フクロウ』


私が以前住んでいた地元は、住宅街エリアあり、田んぼエリアありの、中途半端な田舎でした。
その両方の境目あたりに割と新しいスーパーがあり、向かいの田んぼエリアとの間に大通りもあるせいか訪れる人も多く、
便利なので、我が家も買い物と言えば常々そこでした。

私がいつものように母親にお使いを頼まれ、そのスーパーを訪れた、ある日曜日のこと。
休日で賑わいを見せる、照明と音楽で飾られた明るい店内。
食材を買うため、籠を持って目当ての物を探しながら歩いていると、陳列棚に人の首が並んでいました。

うぇ
と思って咄嗟に顔を背けても、視界の隅にはまだその首がチラチラと映ります。そして反対の視界の隅には別の首の影。
ギリギリ横目でそれを見ると、今度はいくつもの首が、コーナー案内表示に紛れて天井からぶらさがっていました。
血がポタポタと落ちる気配に床を見ます。血は広がっていません。
他の人は気付いない様子で、気味が悪くなった私はとっとと買い物を済ませてその場を後にしました。


別の日に、私の良き相談相手でもある仲の良いお婆さんの家にお邪魔しました。
怖いもの好きな好奇心あふれる人で、両腕が無いにもかかわらず、それを気にもしていないようにいつも明るい人です。
「首ねぇ……。あのスーパーが出来る前に、あそこに大きな木があったのを知ってる?」
知っています。確かあれが切られて何年も経ってから、あのスーパーが建ったのです。
小さい頃からお墓参りの行き帰りに毎回あの前を車で通っていて、その不気味な佇まいにいつも目を逸らしていました。
「スーパーの前って大通りでしょ。大昔からあそこは大きな通りで、人もいっぱい通っていたんだって。
それで昔はね、貴方が見たそういうのを、そんな人のよく見る場所に晒したそうな。台に乗せたり、木に掛けたり……」
特にあの場所では、その木が丁度良かったのか基本的に木に掛けて晒すことの方が多かったと言われているそうです。
「梟首(きょうしゅ)っていうんだって。『フクロウ』に似てるかねぇ……、似てないよねぇ……」
また一つ勉強になった、とは思いませんでした。

742:本当にあった怖い名無し
10/11/13 22:38:04 F6zq22NI0
うに信者ってなんでこんな気持ち悪いの

743:本当にあった怖い名無し
10/11/13 23:15:18 KT6vgWlI0
Bが増えている

744:本当にあった怖い名無し
10/11/14 10:41:47 pO6kiWWJ0
>>741
便乗者さんも見えちゃう人だったんですね

しかし、、フクロウには似てないと思うけど
ミネルヴァの梟とか、ギリシャの知恵と戦争の女神アテナとか
フクロウのポジションは結構高いんだけどねぇ
フクロウの子供飼ってみたい



745:本当にあった怖い名無し
10/11/14 11:28:51 wgqDFVtM0
「……お前、覚えてるか? さっきそいつと交わした会話を」
『そのキレイな顔を、ズタズタにしてやるぜ、ひゃはははははは!』
「キレイ? わ、私、キレイ?』
『ああキレイだな、ズタズタにしてやりてえ!』


746:本当にあった怖い名無し
10/11/14 11:30:29 wgqDFVtM0
まさか、と電話口で呟く声がした。
「これでも……キレイかああああああああああ!!」
電話の向こうで、獣のような声が響いたのを確認して、俺は電話を切った。



747:本当にあった怖い名無し
10/11/14 15:29:30 wgqDFVtM0
数分後。部下の携帯にかけなおし、監禁場所へ向かう。廃工場のようだ。
「あ、目里さん! とりあえず、半殺しにしておきましたよ!」
「弧月……だから、3割り殺しにしろって言ってるだろ?」


748:本当にあった怖い名無し
10/11/14 15:41:13 wgqDFVtM0
狐耳をぴょこぴょこと動かしながらえへへーと笑う部下の女刑事の頭を軽く叩く。
ホシを確保しようとした瞬間。がらり、と音がする。
「なっ……!」
ガラガラと音を立てて、倒れ伏す犯人の上にガレキが崩れ落ちる。


749:本当にあった怖い名無し
10/11/14 16:35:31 wgqDFVtM0
「……困るんだよ。私の名を騙る奴が、性犯罪に手を出すと」
いつの間にか、そこには一人の老人が立っていた。
掘りの深い顔立ちは、おそらく奴がハーフであることを示している。
「……てめえ、カシマ!」


750:本当にあった怖い名無し
10/11/14 16:54:36 wgqDFVtM0
老人は、ガレキの下から男の腕を拾い上げる。
「リカ。これをいつものところに」
「はいお父様」


751:本当にあった怖い名無し
10/11/14 17:12:42 wgqDFVtM0
パチンと指を鳴らすと、奴の隣に金髪の女が現れた。その腹には異形の足が蠢いている。
「では、さらばだ。警視庁第零科の諸君」
男が手品のように消えてしまうのを、俺は唇を噛んで見送った。



752:本当にあった怖い名無し
10/11/14 17:14:23 wgqDFVtM0
俺の名は目理 伊三。妖怪刑事である。
そして俺の部下の弧月 咲(こつき さき)。弧月とはすなわち『狐憑』。
彼女は、初代口裂け女の娘の、俺と同じ妖怪刑事だ。
先程の奴らは『カシマ』と『リカ』の親子。


753:本当にあった怖い名無し
10/11/14 17:16:17 wgqDFVtM0
米兵に犯され、両手足を奪われたカシマの母の復讐と称して殺人を犯す妖怪である。
俺はタバコをくゆらせながら、やっぱ妖怪の血なんて厄介事しかよばねえと思う限りである。
ああ、おふくろの作った肉じゃがが食いたい。




754:本当にあった怖い名無し
10/11/14 18:41:33 z89uXdInO
目理 伊三 了

755:本当にあった怖い名無し
10/11/14 21:36:54 wgqDFVtM0
メリーが来た次の日、俺は学校を休んだ。
サボったわけじゃない。体力的に無理だったからだ。


756:ねむん
10/11/14 22:30:52 6KT8qMuK0
師匠シリーズスレに書き込めない..

757:本当にあった怖い名無し
10/11/14 22:33:34 wgqDFVtM0
昨日の夜はメリーが家に来て、近くのコンビニで夕飯買ってあげたりしたら十二時を回っていたり、
そのあと寝ようとしてメリー用に布団を出してあげたら俺に抱きついて「一緒の布団がいい…」って言ってきて、
そのあと一緒に寝るのはいいとして執拗に俺に抱きついてきて結局ものすごい勢いで俺の心臓が脈を打って、
結局一睡もできなかった。しかもかなり寿命が縮まった気がする。


758:本当にあった怖い名無し
10/11/14 22:38:58 wgqDFVtM0
「陸久、大丈夫?」
昨日すやすや眠っていたメリーが俺の顔を見て言った。
「ごめん…今日は休む…」
「うん…昨日はごめんね?」
「大丈夫…気にしてないから」


759:本当にあった怖い名無し
10/11/14 23:01:08 wgqDFVtM0
そういうなり俺はベッドに突っ伏した。
ああ、布団が気持ちいい…。
五分も経たずに俺は眠った。



760:本当にあった怖い名無し
10/11/14 23:29:51 wgqDFVtM0
「ふぁぁぁあ…ゲッ!?」
起きたらもう五時を回っていた。
(早く夕飯の支度とかしなきゃ…)
ガバっと起き上がってベッドに両手を置く。


761:本当にあった怖い名無し
10/11/14 23:31:46 wgqDFVtM0
……やわらかい感触があった。
(…まさか…)
恐る恐る手を置いたところを見る。
そこにはやはりメリーが寝ていた。ネグリジェで。


762:本当にあった怖い名無し
10/11/14 23:33:37 wgqDFVtM0
しかも俺の手はメリーの胸の上に、ちょうどわしづかみしているような形で置いてあった。
「ん~…あ、陸久起きたんだ。おはよ~」
などとのんきに言うメリー。俺の額からは汗がダラダラ流れてくる。
「うわあ!?」


763:本当にあった怖い名無し
10/11/15 04:35:03 NkRP7VNJ0
メリーさんw

764:本当にあった怖い名無し
10/11/15 17:27:56 MoYymnm7O
ウニさん風味じゃない作品がなかなか出ないよね。
喪中さんとかに書いて貰えると俺得なんだけど。
ウニさんの師匠シリーズから外れた短編とか熱望してます。


765:本当にあった怖い名無し
10/11/15 20:09:38 tf55GkgSO
ていうかシリーズ物の大半がオカルト大好きな俺と
霊感があり霊に詳しい先輩の組み合わせなのがな
それ以外の設定の話を書いて欲しい

766:本当にあった怖い名無し
10/11/15 20:43:54 Z2bwN1jA0
俺としては師匠シリーズ序盤みたいなのが読みたい
今の師匠も悪くないんだが、短い中に一捻りも二捻りもいれるセンスは異常

767:本当にあった怖い名無し
10/11/15 20:55:12 N93Se3XC0
バッとメリーの胸から手を取る。
俺の顔がまた熱い。
「ん?どうしたの?陸久、顔赤いよ?」
「どうしたって…胸、触られたんだよ?」


768:本当にあった怖い名無し
10/11/15 20:58:08 N93Se3XC0
「うん。それがどうしたの~?」
「その…恥ずかしいとか、ないの?」
「ないよ~?」
どうやら気にしてないらしい。元人形だったからか?
「いや、気にしてないならいいんだ。それよりお腹すいてない?」


769:本当にあった怖い名無し
10/11/15 21:15:36 N93Se3XC0
「うん。朝から食べてないからすごいお腹すいた」
やっぱり。
「なんか食べたいもの、ある?」
メリーは「んー」と言いながら少し考えた後、
「陸久の手料理が食べたい」
と言った。


770:本当にあった怖い名無し
10/11/15 21:26:20 N93Se3XC0
「……は?」
「だから陸久が作ったものなら何でもいいよ?」
(俺何も作れないんだけど…)
などとは言わない。言ってはいけない。言ったら男が廃る。
「簡単なものでいいの?」
「うん、いいよ」


771:本当にあった怖い名無し
10/11/15 21:37:25 N93Se3XC0
早速俺はカセットコンロを取り出して料理を始めた。
材料はさっきコンビニで買ってきたベーコンと卵とバター(総額およそ千円)。
「メリー、たくさん食べたい?」
「ん~、少なめでいいよ」
(じゃメリーは卵三つで俺四つかな…)


772:本当にあった怖い名無し
10/11/15 21:48:42 N93Se3XC0
取り出したボウルに卵を三つ割って溶く。
卵を溶き終わった後はベーコンを四列ほど切ってフライパンに放り込む。
ジュゥゥといい音を立てながらベーコンが焼けていく。
その中にバターを放り込んで一気に揚げる。


773:本当にあった怖い名無し
10/11/15 21:53:48 N93Se3XC0
ベーコンがカリカリに焼けたところでさっき解いた卵を一気にフライパンに流し込む。
卵の焼けるいい香りが部屋を満たす。
俺のそばからメリーがひょこっと顔を出してフライパンを覗く。



774:本当にあった怖い名無し
10/11/16 21:33:48 ms+UiJmx0
>ていうかシリーズ物の大半がオカルト大好きな俺と霊感があり霊に詳しい先輩の組み合わせなのがな

恐らく第三者を事実上の主人公にした方が反感を買い難いからじゃね?
それも身内じゃない方がつっこまれた時に色々便利なのと
さらに先輩とかある程度の上下関係が見え隠れする方が持ち上げやすいんだろ

小汚い先輩だろうが、美人の妹だろうが、普通の同僚だろうが
一貫したキャラを主軸に回るんだったら同じような結果になると思う。

オカルト好きな俺をストーリーテラーに置いてそれ以外のキャラクターを固定しない
設定で話しを書いても同じような結果になる気もするが

775:本当にあった怖い名無し
10/11/16 22:23:57 Xc0kbvDG0
>>756
どうやら落ちてたらしい。新スレ立ってたぞ

776:本当にあった怖い名無し
10/11/16 23:24:39 Gm2IYWQ40
>>774
師匠と弟子ものじゃない人も何人かいたけど、ここでは師匠ものが圧倒的に支持される
そう言うスレだなと最近は思っているし別に自分はどっちでもいい

でもまあ帰って来て欲しい人はいるけどね、師匠ものじゃない人で

777:本当にあった怖い名無し
10/11/17 01:08:40 2bFU1MSC0
過疎りすぎて落ちたのか。
ここはメリーが定期的に荒らしてるから安泰ですね。
スレ潰すつもりが保守とは皮肉なものよの。

778:本当にあった怖い名無し
10/11/17 08:38:05 K9XyfCytO
バリエーション尽きないなぁってメリーは毎回目ぇ通してるけどねぇ
普通に長文にまとめて投稿してほしいかな

779:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/11/17 08:59:30 OXPrs4CH0
[計画の進行(前)]

1/8
その日―

午後16時過ぎ、汐崎家に一台の車が着く。
訪問者は、往来会の女性2人。
高城沙織からの命令で、汐崎真奈美を連れに来たとのことだった。
2人は真奈美に、急いで来て欲しいと言い、すぐに来れば父親に会える、と言った。

真奈美は、高城本人に確認しようかと考えたが…止めてしまった。

往来会本部に行くのなら、高城に会えることは分かっていること、その2人の女性からは、藤木に比べ、危険な気配を感じなかったことがその理由だった。

2人の女性は―暗い目をした2人の女性は、真奈美を速やかに本部へと連れ去った。

桐谷に言われるまで、高城でさえ気付けなかったその怪しい目に、汐崎真奈美が気付くはずもなかった。


780:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/11/17 09:01:04 OXPrs4CH0
2/8
―午後17時。神尾宅。

大学での講義を終え、真っ直ぐ自宅に帰った私は、この時間までラット君と見つめ合っていた。

往来会の副会長さんとの待ち合わせは、18時。
場所は、私の家の最寄り駅だ。

どう考えたって…普通に考えれば、怪しい。それに、危険。
うら若き乙女が、1人でどこに行こうというのやら。

…でも、行かないとな。
私は、行かないといけない。
理由は分からないけど、ただ、そんな風に思う。

私「キミは、どう思う?」
私は”彼”を抱えあげて、聞いてみる。
優理ちゃんがくれた、クマのヌイグルミ。
ちょっと不思議な、ヌイグルミ…。

私には分からないけど、古乃羽や雨月君には、この子はどう見えているのだろう。
ひょっとしたら、この子を通じて優理ちゃんと会話ができたり…?
…なんて事を、考えてしまう。


781:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/11/17 09:03:50 OXPrs4CH0
3/8
私を助けてくれるという、この子。
確かに、一緒に寝たり、抱きかかえていたりすると、気持ちが落ち着く。

できれば…この子も連れて行きたい。
不安な気持ちがあるから、一緒に居て欲しい。

でもそんなの、どう見てもおかしいよね。
優理ちゃんくらいの年恰好の女の子ならまだしも、私なんかが、どこに行くにもクマのヌイグルミを抱きかかえていたら…ちょっと変だ。

それに、今から行くところ―会う人のことを考えると、逆に危ない気がする。
普通のヌイグルミじゃないってことは、すぐにバレてしまいそうだ。

私「だから、キミはお留守番ね」
私はそう言ってラット君を棚に置き、頭を撫でてあげる。
そして、その代わりに翡翠のキーホルダーをポケットに入れる。
古乃羽の話では、これ自体にはお守りとしての効果はあまり無いってことだけど…私にとっては、大切なもの。

そうして出掛ける準備を済ませた私は、部屋を出る。

…ただその前に、私はラット君にお願いをしておいた。
私に何かあったら、古乃羽に「ごめんね」って伝えて欲しい、と。


782:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/11/17 09:07:07 OXPrs4CH0
4/8
―午後18時前。往来会本部、本部長室。

三島「…それでは、お疲れさまでした」
私「お疲れさま」
1日の事務報告を終え、いそいそと部屋を出て行く三島課長。
今日は、これから用事があるらしい。
きっと彼のことだから…奥さんとの用事だろうな。

三島課長は、知る人ぞ知る愛妻家だ。
奥さんは落ち着いた感じの綺麗な人で、何回か会ったことがある。

その度に、あんな風になれたら良いな、なんて思う。
揺ぎ無い信頼関係があって、深い所でしっかりと繋がっている2人。
彼らは結婚して30年近くになるらしいけど、羨ましい限りだ。
私の描く、理想の夫婦像に近い。

…そういえば。

今日は、汐崎さんの姿を見なかった。
最近は、ちょっと顔を合わせることを避けていた感があるけど、居るのと居ないのとでは大きな違いだ。

ちょっと様子を見に行こうかな…

そう思い、私は例の宿直室に向かった。


783:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/11/17 09:23:13 OXPrs4CH0
5/8
「清掃中」の札が掛かっている会議室の前を横切り、宿直室への長い廊下を歩く。

…歩きながら、どんな顔をして会うべきかを考える。
やっぱり上司モードで会うべき?それとも…?

素の自分で彼に会ってしまうと、どうなるだろう。
真奈美ちゃんとの仲が深まるにつれて、私の中での彼への想いも強くなっていた。
私が突然甘えるような事をしたら…きっと驚かれるか、引かれるのは目に見えている。
だから、そういうのは止めた方が良い。…今は、まだ。
こんな事態だし、少なくとも、この場所でそんな態度は見せたくない。

でも、少しくらいは―

そんな事を思いながら、宿直室のドアの前に立つ。
そしてノックをする…が、返事は無い。
また考え事をしているのかな?と思いながら、私はドアを開けて中に入る―

―と同時に、首の後ろに強烈な衝撃を受け、私はその場に崩れ落ちる。

…薄れていく意識の中、私の目には、部屋の中で倒れている真奈美ちゃんの姿が映った…。


784:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/11/17 09:28:00 OXPrs4CH0
6/8
―午後18時。某駅前。

神尾美加が夏目川と会い、彼の車に乗り込んでいく。
人通りの多い場所と時間故に、彼女も安心しているのだろう。

その様子を、俺は少し遠くから見守っていた。
そして奴の車が出た後、ワンテンポ遅らせてから、俺も車を発進させる。

…計画通りだ。
神尾はこのまま、壷のある場所まで連れて行かれるのだろう。
一応、相手の車を見失わないように注意はするが、目的地は奴の別荘だと分かっている。
そこまでは調査済みだ。

後はタイミングを見計らって、上手く壷を手に出来れば良い。
手に持ちさえすれば、それが壊れてしまうことを恐れる奴は…部下も含めて奴らは、こちらに手出しは出来ないだろう。

気を付けるべきことは…例えば、ダミーの存在か?
でも、それも大丈夫だ。
俺は既に、夢の中でアレを見ている。
あの禍々しいものを見間違えることは無い。

問題はない。全て、問題はない。
兄貴の無念を晴らし、桐谷家の呪いを消せるのも後少しだ。
そう思いながら、俺は2,3台前の車を睨み付ける。

…このとき既に、自分自身が見張られていたことに、気付くことはできなかった。


785:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/11/17 09:29:38 OXPrs4CH0
7/8
―午後19時。夏目川の別荘、地下室。

目を覚まして辺りを見渡しても、ここがどこだか分からなかった。
宿直室で急激な眠気に襲われ…気が付けばスーツ姿のまま、この冷たい床で横になっていた。

小さな電球が1つだけの、薄暗い部屋。
出入り口らしい扉を開けようとはしてみたが、ビクともしなかった。
大声を出しながら叩いてみても、何の反応もなし。

どうやら…どこか、辺鄙な場所に閉じ込められたようだ。
そう思うと共に、軽い絶望感を感じる。

軽い…

…軽い?
とんでもない。
これは、どうしようもない事態だ。
自分の今の状況からして、これは明らかに―

…いや、考えたくない。
気が滅入ってしまうのを飛び越して、おかしくなってしまいそうだ。

真奈美…真奈美の事を考えよう。
あの子は、今どうしているだろう?


786:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/11/17 09:32:50 OXPrs4CH0
8/8
腕時計を見ると、時刻は19時過ぎだった。

真奈美は夕食を食べただろうか。
今はきっと、たった1人での夕食だろう…可哀想に。
母親が亡くなってから、あの子に寂しい思いはさせたくなかったのに…。

真奈美のためにも新しい母親を、なんて考えたこともあったが、私はどうもダメだった。
女性相手には奥手で、しかも子持ち。こんな私のところに、誰が―
…と思ったところで、何故か本部長の姿が頭に浮かぶ。

そういえば、彼女には最後まで酷い態度を取ってしまった。
誰かに苛立ちをぶつけたくて、最低なことをしそうになって…それ以来、どうも顔を合わせるのを避けてしまった。
真奈美を守ってくれる、とまで言ってくれたのに。

本部長がそれを本気で言ってくれた事は、分かっていた。
彼女はそんな嘘をつく人じゃない。
だから、真奈美をお願いしますと、それだけでも言いたかったのに…。

後悔ばかりしながら、私は冷たい床に座り込む。

…2人の無事を祈ろう。真奈美と、本部長…高城沙織の。
そして、勝手なことだが―情けないくらい、本当に勝手なことだが―信じよう。
彼女が、真奈美を守ってくれることを…。




787:本当にあった怖い名無し
10/11/17 10:09:53 9FattDyRO
メリーさんは随分と新しい手口で攻めてきたな

788:本当にあった怖い名無し
10/11/17 10:18:34 SeZVdDtfP
赤緑乙

789:本当にあった怖い名無し
10/11/17 13:59:06 AOADQXQSO
あかみどり毎度☆

790:本当にあった怖い名無し
10/11/17 15:52:12 tnOUZxo30
>>778
たまに以前見たのと同じのが投稿されてるからバリエーション尽きつつあるんじゃない?
どちらにせよ、せめてまとめて書いて欲しいというのは同感。

791:本当にあった怖い名無し
10/11/17 16:56:46 i52ElKlJO
赤緑久しぶり、超々乙!
あとは枯野待ち

792: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/11/17 18:30:06 RCMQAUqL0
第2幕の始まりでございます。ほとんど望まれてなさそうなのに、続いてすまんな。
前後その他に興味を持った方は、"Aと師匠とおかん"でググってくださいな。

自己責任で読んで下さい。警告したので始めます。

"歌"

歌が聞こえることがある。
どこかの国の古典的なポップスの、印象的なサビだけを取り出したような感じで
いつも同じフレーズで、同じ歌声だ。
歌われている言語は、現代日本語で無いことだけは確かだが、
どこの国の言葉なのかは分からない。

町の中の様々な場所から流れてきて
マンホールの中や、ビルとビルの隙間などから漏れてくる。
時には街頭テレビやスピーカーからや、
母親に手を引かれた通りすがりの女の子が鼻歌で歌っていることもある。
家族や友達にもそれとなく話したが、誰も分からないようだし、
もしかして幻聴だったとしたらかなりヤバイが
毎日忙しいし、今のところ不快感を感じたりとかの害は無いので放っておいた。

今日は予備校が午前中に終わったあと、
夕方に車の教習があり、今はそこから近くの自宅まで歩いて帰る途中だ。
そろそろ日も沈みそうだし、
女の夜道の独り歩きは危ないので、すこし足早に進んでいる。
その最中も町の様々な場所からずっと歌が聞こえ続けていた。
いつもと同じように性別のよく分からないが、とても透明な声で
悲しんでいるような、喜んでいるような旋律だ。
「不思議だなあ」と思いながら、その旋律を初めてハミングしてみる。
ああ、とても懐かしくて、温かい、どうしてだろう。

793: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/11/17 18:30:53 RCMQAUqL0
そんなことを考えていると不意に
キャッキャッと数人の小さな男の子達が目の前に走ってきた。
この子達も家路を辿っているんだろうか。
はやく帰らないと危ないよ。なんて思いながら
そのまま彼らとすれ違う、すると
一番最後尾に居た帽子を目深に被った子だけが立ち止まり、振り返って声をかけてきた。
「ねぇ、お姉ちゃん、憑き護なんだってね」
驚いて私も振り返る。耳慣れない言葉だが「ツキゴ」というのは私のことだろうか。
「これから大変だよ。でも頑張ってね。負けないで」
男の子は帽子を取ると、丸坊主の頭でニコッと笑い、
素早く私に一礼してから、
数メートル先を行く他の子達に「まてよぉ!」と叫びながら、
追いつこうと走っていった。

私は少し頭がボーっとしたまま、立ち止まっていた。
あれ…「ツキゴ」という言葉、どこかで聞き覚えがあるような…
目の前を飛んでいく数羽のカラスがあのフレーズを歌っている。
いつもと同じ、とても綺麗な歌声で。
それらに合わせるように町のあらゆる所から、ハーモニーを奏でるように、
様々な音程と多様な歌声で、
一斉に同じフレーズが流れ出した。
私は硬いアスファルトの上、歌の柔らかい波の中に飲み込まれていく
それは懐かしく温かい感触の中に、どこか哀しい響きのある合唱だった。
まるで、いままで無くなった沢山の大切な何かを懐かしむように、
そして、これから亡くなっていく沢山のかけがえの無い何かを悼むように。

静かな大合唱の中、私は呆然として立ち尽くし
その背後では、夕陽がゆっくりと沈んでいく。
町は、暗闇に包まれていった。

了。

794:本当にあった怖い名無し
10/11/17 18:48:29 EhoneLhH0
ウニさん待ち

795:本当にあった怖い名無し
10/11/17 19:05:23 9FattDyRO
やっぱり無駄な描写が多いな
ラノベ風らしいから仕方がないか

796:本当にあった怖い名無し
10/11/17 20:15:10 jeO1Isb10
「うわあ、すごくおいしそう!」
「うちの母さんがよく作ってくれたんだよ。中学の間習ったんだ」
焼けてきた卵を箸で端に寄せ、一気にひっくり返す。
またジュゥゥと卵の焼ける音が少しした後、俺は卵焼きを皿に置いた。


797:本当にあった怖い名無し
10/11/17 21:39:00 jeO1Isb10
「よし、あとはご飯をっと」
先週買い溜めたパパッとライス(こしひかり100%)をレンジに突っ込みチンしてスペアの茶碗に突っ込んでメリーに渡した。
「さ、召し上がれ」


798:本当にあった怖い名無し
10/11/17 23:42:01 3ABXtIn80
完全にラベノじゃね・・・?

799:本当にあった怖い名無し
10/11/18 00:17:02 EIUNH18p0
らべの・・・・?

800:本当にあった怖い名無し
10/11/18 03:38:22 x/s697sbO
めりぃうぜぇよまじうぜぇ書いてるヤツ死ねよ死ねよ死ねよ!
もしくは死ぬ程痛い目に遭えよ!遭えよ遭えよ!
でなければ、書くのいい加減やめろよ!!

801:本当にあった怖い名無し
10/11/18 05:14:20 nEkJreJK0
いいか、やつはそー言うレスを待っているんだ・・・

802:本当にあった怖い名無し
10/11/18 10:48:28 x/s697sbO
ごめん。

803:本当にあった怖い名無し
10/11/18 14:11:09 3VW2N3Dc0
不思議とメリーの存在を受け容れている自分に気付いた
間違っても歓迎はしないが、他の駄作がサラサラ流れていくのには爽快感すら感じる

まあ頑張れやw

804:本当にあった怖い名無し
10/11/18 14:18:27 Y5D9NIfJ0
>>803
何が読みたくてこのスレにいんの?

805:本当にあった怖い名無し
10/11/18 20:04:52 n+1/3jniP
俺は師匠シリーズとメリーさんシリーズが読みたくてこのスレを覗いてるけど。

806:本当にあった怖い名無し
10/11/18 23:46:50 qiq91EEZ0
ID変わりまくりんぐなんやなw

807:本当にあった怖い名無し
10/11/19 01:56:06 CuMYTvZ5O
1日5レスもないのに同じIDがいた方が不気味でしょう?

808:本当にあった怖い名無し
10/11/19 02:12:27 m/8BFvaK0
>>804
師匠シリーズとお婆さんシリーズだけど?


809:本当にあった怖い名無し
10/11/20 00:31:10 Fv0CD2ARO
過疎化怖い

810:本当にあった怖い名無し
10/11/20 00:48:28 NQCcjFmp0
オカ板では細々やってるスレはけっこうあるよ

811:本当にあった怖い名無し
10/11/20 07:24:34 qk487UrN0
ウニさ~ん!
仕事終わって寝る前の唯一の楽しみがなくて、つまらないよ~。
待ってますよ。

812:本当にあった怖い名無し
10/11/20 11:10:56 VqPR/47B0
つまらないのはそんな楽しみしかないお前の人生だろ

813:本当にあった怖い名無し
10/11/20 13:56:35 PlumDgAQ0
目からウロコがっ
寝る前の楽しみは、これから寝るってことと
一杯のシナモンふりかけココア。うまー
寝坊しても大丈夫なように明日の準備もして
明日の予定を考えながらのひととき
休み前ならサイコー

814:本当にあった怖い名無し
10/11/20 21:51:12 VqPR/47B0
予定もねーくせにww

815:本当にあった怖い名無し
10/11/20 21:58:14 bcJD6PMk0
>>814のレスのほうが負け犬臭く見えるな

816:つ
10/11/20 22:31:05 uuPuNAPu0
813だけど、明日の予定を考えるってのは
仕事内容、昼飯、晩飯なに食うかな…とかね。しょぼっ
休み前は違うけど
オカスレは通勤時と寝る前にチェック

817:本当にあった怖い名無し
10/11/21 07:39:21 m/2Uqh6P0
>>815
禿同。卑屈すぎ。

818:本当にあった怖い名無し
10/11/21 11:29:13 jHLTMg3Z0
一年中夏休みの人なんだろ
察してやれよ

819:本当にあった怖い名無し
10/11/21 22:38:33 jEVRLSmQ0
>>604
携帯バカにされてキレるか(笑)
すげーオモロイド

820:本当にあった怖い名無し
10/11/23 00:18:37 ZjqRWK3O0
俺君は?便乗者さんは?もー書いてくんないのか

821:本当にあった怖い名無し
10/11/23 21:51:12 kuqOOdkM0
>>815-818

過剰反応ワロス

822:本当にあった怖い名無し
10/11/23 22:17:22 D3a0d/3w0
これはネタ?マジ?

823:本当にあった怖い名無し
10/11/23 23:50:09 EqGx+Dsh0
んで、忍はどーなった?

824:1/4 便乗者 ◆iWdAqLU3ds
10/11/25 18:25:59 VRYjfjyZ0
『この街』


私が以前住んでいた田舎は中途半端な田舎でしたが、町は豊かで人々も仲が良く、私も近所のお婆さんと仲良くさせてもらってました。
これはそのお婆さんが、ある人から聞いた話です。

その人は30代後半あたりの男で、私が生まれるよりもずっと前にこの町に引っ越して来たそうです。
お婆さんと男は世間話をしたりといった近所付き合いをする仲になりましたが、
ある日、彼は自分が引っ越してくる前の地元で起きた“ある出来事”をお婆さんに話しました。


男がまだ地元に住んでいた頃、彼には妻がいました。しかし妻は赤ん坊(娘)を産む際に命を落としてしまったそうです。
妻の葬儀の後、お坊さんが男にこっそり話掛けてきたかと思うと、
「奥さん亡くなった直後に言うのも何だが、ちょっと言っておかなければならないことがある」
と前置きし、とんでもないことを話し始めました。
「貴方の奥さんが亡くなったのはその娘さんのせいだ。娘さんは、言いにくいが、非常にまずいものをもって産まれて来た。
何のせいかはわからんが、言うなれば貴方の娘さんは地獄をそのまま人間にしたようなものだ。
娘さんが悪いわけでもない、貴方や奥さんが悪いわけでもない、ただ原因もわからないが、端から娘さんは厄そのものとしてこの世に存在している。
きっと娘さん自身、今後の人生で友情にも愛にも恵まれず、死後成仏することもない。それだけでなく、彼女の親族……つまり貴方や、貴方の親族でもあるが、
普通の人よりは長生きできんし、その子孫までにもそれは残るよ。そして貴方も彼らも死後成仏できんだろう」

男は息を呑んでお坊さんの話を聞きました。そしてお坊さんは最後に男に対して深く頭を下げて言ったそうです。
「こんな時にこんな話をして本当に申し訳ない。ただ知っておいてほしかった。覚悟をしておいてほしかった。
何せ娘さんが産まれたことで貴方たち一族が背負うことになったこの災い、私にはもう、どうすることも出来ないので」

825:2/4 便乗者 ◆iWdAqLU3ds
10/11/25 18:28:35 VRYjfjyZ0
それから年月が経ち、娘が3歳になった頃。男は娘を小さな託児所に預け、時には土日も仕事へ向かうような忙しい日々を送っていました。
娘は、言葉も教えていた割に口数が少なく、表情も乏しく、託児所でも一人ぼっちで、話しかけられても無反応な子になっていたそうです。
男はそんな娘の様子を見る度に、あの日お坊さんに言われたことを思い出していました。
そして彼自身、霊感と呼ばれるものなど持ち合わせていないにも関わらず、娘そのものに言い知れぬ違和感というか、妙な空気を常に感じ取っていました。
それは後で考えると「負」、つまり「マイナス」という言葉がしっくりきたそう。


そんなある日のこと、男の住むその町をある出来事が襲いました。
映画化もされた、有名な大水害です。

それは男が託児所に娘を預けたまま職場にいる時に起きました。
男はもともと危機意識の薄い性格であり、さらに当時その町の人々の間では水害と土地との関係等の知識が一般的でなく、
多くの人が事を甘く見ていました。男もこれぐらいの暴風雨なら大丈夫だろうと、託児所を信用し切っていたそうです。

男がそもそも自分自身が職場から出られない状況であると気付いたのは、職場の建物が停電し、同僚が外の様子を見ようと玄関まで向かってからでした。
同僚に呼ばれて皆で玄関へ向かうと、玄関がまるで浴槽のように水を波打たせていたそうです。
雨戸で塞がれた窓から外の様子など知ることもなく、暴風雨がここまで町を水没させていることに皆気付いていなかったのです。
しかしそれでも、この水没がまだマシな方だったなんて、彼らは知る由もありませんでした。
男が後に知る、自分の家や託児所のある南西地区の状況は、こんな生易しい水没などではなかったのです。

渦巻きのような巨大な天気とともに暴風雨が過ぎ去り、汚い湖だけが残された町の中。
男はその湖に足止めされ職場に束縛されている中でも、状況の知れない南西地区での災害程度もここと同じぐらいの状況だろうと高をくくっており、
停電状態で情報も入らなかったこともあって、その時すでに数千もの命が失われいていることなど夢にも思っていなかったのです。

826:3/4 便乗者 ◆iWdAqLU3ds
10/11/25 18:31:23 VRYjfjyZ0
ようやく帰途についた男が事の重大さを知った時、すでに全てが遅く、ただ目の前には悪夢が広がっていました。

託児所の建物が無い。家が無い。知っている人の多くも亡くなり、何より娘は、行方不明になっていました。
後悔だなんて言葉では物足りない程の感情が押し寄せていると、男の名前を呼びながら知り合いが話しかけてきたそうです。
「おい、お前の娘が何処にいるかわかったぞ!」
知り合いは泥まみれの崩れた町の中を先導し、男をどんどんと引っ張って歩きました。
男は無我夢中でそれに着いて歩き、知り合いが「こっちだ」「こっちだ」と右へ左へと曲がるのに従って行きます。
そしてかなりの距離を歩き、来たこともないような地区へと辿り着きました。
こちらの方は大した被害を受けておらず、水没の痕跡すら見当たらなかったそうです。2人は役場のような建物に辿り着きました。
ここも託児所をやっている、とのこと。

建物に入った男は、職員らしきおばさんに「娘がここにいると聞いて来た」と告げました。
「あ~はいはい。今座敷の方で一人で遊んでます。すみませんねぇ、私たちもバタバタしてて、あの子に構ってやれずに……」
「いえいえ、元々一人で遊ぶのが好きな奴でして、預かって下さっているだけで十分ありがたいです」
「そうですか、なら良かった。あ、こちらの部屋です」
おばさんが部屋の扉を開けると、広い座敷が広がっていました。畳の上には散らかったおもちゃ。
その中心に娘は、
いない……?

困惑するおばさん。外に出たらわかるはずだから、外には出ていない、はず、だけど……と、おばさんは大慌てで建物内を探しに行きました。
男はわけもわからず、とりあえず娘がいたというおもちゃの散らかった場所へ近づくと、おもちゃに囲まれて、何とも言えないものがありました。
なんと呼べばいいか分からないもの。今までの人生で知らないもの。
強いて言えば、「花瓶」「壺」「水差し」「器」……そういった系統のものに見えたそうです。材質も色もそれらとは違った印象はあったそうですが……。

827:4/4 便乗者 ◆iWdAqLU3ds
10/11/25 18:34:20 VRYjfjyZ0
ただその時、男はその物体を見ながら無性に悲しくなり、気付かぬ間に涙がボロボロと零れていました。そして同時に背後から、いや部屋全体から、
男か女か覚えてないが、とにかく声が聞こえたそう。
「すぐにわかったね。それがお前の娘だよ。お前の娘の、成仏魂だよ。泣かないで、良い方向に考えなさい。
娘は成仏したんだ、するはずなかったのにしたんだよ。この好機を逃し、もし別の形で死んでいれば、成仏していなかった。
そういった意味では、お前の娘はこの上ない絶好の機会に恵まれたと言える、おめでとうと言ってあげなさい」
「……おめでとう」
その瞬間、今度はわらべ歌か童謡のような唄が部屋に響き渡ったそうです。
大勢の小さな子どもたちの声で、聞いたことが無い、知らない童謡。ただ歌詞の中に、娘の名前が数回出て来たのを覚えているらしいです。
そしてその唄が終わり、ふと気付くと、さっきまでおもちゃに囲まれてそこにあった物体がいつの間にか無くなっていました。
職員のおばさんが戻って来て、慌てふためきながら何かを言ってましたが、男は「もういいんです」と言って、おばさんの言葉を遮りました。
その瞬間、男はふと気付きます。
「連れの者がいたはずですが知りませんか?」
おばさんは気味悪そうに男の顔を見ながら、そんな人は知らないと言います。
ここまで案内してくれた人。娘が何処にいるかわかった、と、ここまで男を連れて来てくれた知り合い。
ふと男は、その人に関する記憶が曖昧なことに気付きます。その知り合いが誰だったかを思い出せないことに気付くのです。
あの人が誰だったか名前がわからないのではなく、誰が案内してくれたのかが記憶の中で定まらない。顔も、髪型も、背丈も服装も、思い出せないのです。
あれは誰だ? どうして知り合いだと思った? もしかして初めから誰もいなかったのではないか。
来たこともないこの場所へと男が来ることが出来たというなら、案内があったことは確かだと言うのに……。


以上で私がお婆さんから聞いた話は終わりです。
ただ私がお婆さんからこの話を聞いたのは偶然で、昔お婆さんが男からこの話を聞いたのもきっと偶然で、
私が後に引っ越すことになるのも、その引っ越し先も偶然でしょう。
これは男の地元……私が今暮らしている『この街』であった出来事です。

828:本当にあった怖い名無し
10/11/25 20:31:01 4l6zCU3dO
どっかで読んだことのある話だな

829:本当にあった怖い名無し
10/11/25 22:39:39 /910kBVA0
便乗者さん、おひさ&おつです!
途中どうなることかと思ったけど、
残酷なバッドエンディングでなくてよかった

830:本当にあった怖い名無し
10/11/26 19:51:48 INQ2vij40
メリーが来た次の日、俺は学校を休んだ。
サボったわけじゃない。体力的に無理だったからだ。
昨日の夜はメリーが家に来て、近くのコンビニで夕飯買ってあげたりしたら十二時を回っていたり、
そのあと寝ようとしてメリー用に布団を出してあげたら俺に抱きついて「一緒の布団がいい…」って言ってきて、
そのあと一緒に寝るのはいいとして執拗に俺に抱きついてきて結局ものすごい勢いで俺の心臓が脈を打って、
結局一睡もできなかった。しかもかなり寿命が縮まった気がする。


831:本当にあった怖い名無し
10/11/27 03:20:26 AyzsHdnY0
便乗者さん乙~
日本には昔から悪い物は水に流すっていう風習があるけど、
大水害並みに大きな水流だったからこそ、その子の厄も全部持ってってくれたのかもね。
バッドエンドではないけど切ない話だなぁ。

832:本当にあった怖い名無し
10/11/27 11:26:10 HUbjyJfGO
便乗者さん乙!
久々にスレ覗いて良かった!

833:本当にあった怖い名無し
10/11/27 21:40:15 zQkweVge0
「陸久、大丈夫?」
昨日すやすや眠っていたメリーが俺の顔を見て言った。
「ごめん…今日は休む…」
「うん…昨日はごめんね?」
「大丈夫…気にしてないから」
そういうなり俺はベッドに突っ伏した。
ああ、布団が気持ちいい…。
五分も経たずに俺は眠った。



834:本当にあった怖い名無し
10/11/27 21:42:55 zQkweVge0
「ふぁぁぁあ…ゲッ!?」
起きたらもう五時を回っていた。
(早く夕飯の支度とかしなきゃ…)
ガバっと起き上がってベッドに両手を置く。
……やわらかい感触があった。


835:本当にあった怖い名無し
10/11/27 21:57:49 zQkweVge0
(…まさか…)
恐る恐る手を置いたところを見る。
そこにはやはりメリーが寝ていた。ネグリジェで。
しかも俺の手はメリーの胸の上に、ちょうどわしづかみしているような形で置いてあった。
「ん~…あ、陸久起きたんだ。おはよ~」
などとのんきに言うメリー。俺の額からは汗がダラダラ流れてくる。


836:本当にあった怖い名無し
10/11/27 23:54:52 zQkweVge0
「うわあ!?」
バッとメリーの胸から手を取る。
俺の顔がまた熱い。
「ん?どうしたの?陸久、顔赤いよ?」
「どうしたって…胸、触られたんだよ?」
「うん。それがどうしたの~?」
「その…恥ずかしいとか、ないの?」


837:本当にあった怖い名無し
10/11/28 00:29:01 N4OnGP5T0
「ないよ~?」
どうやら気にしてないらしい。元人形だったからか?
「いや、気にしてないならいいんだ。それよりお腹すいてない?」
「うん。朝から食べてないからすごいお腹すいた」
やっぱり。


838:本当にあった怖い名無し
10/11/28 00:35:17 N4OnGP5T0
「なんか食べたいもの、ある?」
メリーは「んー」と言いながら少し考えた後、
「陸久の手料理が食べたい」
と言った。
「……は?」
「だから陸久が作ったものなら何でもいいよ?」


839:本当にあった怖い名無し
10/11/28 00:48:48 N4OnGP5T0
(俺何も作れないんだけど…)
などとは言わない。言ってはいけない。言ったら男が廃る。
「簡単なものでいいの?」
「うん、いいよ」


840:本当にあった怖い名無し
10/11/28 00:52:19 N4OnGP5T0
早速俺はカセットコンロを取り出して料理を始めた。
材料はさっきコンビニで買ってきたベーコンと卵とバター(総額およそ千円)。
「メリー、たくさん食べたい?」
「ん~、少なめでいいよ」
(じゃメリーは卵三つで俺四つかな…)


841:本当にあった怖い名無し
10/11/28 00:58:45 N4OnGP5T0
取り出したボウルに卵を三つ割って溶く。
卵を溶き終わった後はベーコンを四列ほど切ってフライパンに放り込む。
ジュゥゥといい音を立てながらベーコンが焼けていく。
その中にバターを放り込んで一気に揚げる。

842:本当にあった怖い名無し
10/11/28 00:59:03 N4OnGP5T0
ベーコンがカリカリに焼けたところでさっき解いた卵を一気にフライパンに流し込む。
卵の焼けるいい香りが部屋を満たす。
俺のそばからメリーがひょこっと顔を出してフライパンを覗く。



843:本当にあった怖い名無し
10/11/28 19:32:46 +sQ056CJP
ついこないだ同じの書いたとこじゃん
もうちょっと考えてよ

844:本当にあった怖い名無し
10/11/28 23:25:51 NbHK5E9dO
卵食い過ぎw
メリーはピザだったんだ

845:本当にあった怖い名無し
10/11/28 23:53:51 uNgilDMQ0
また洒落怖本スレにここの糞厨房ラノベシリーズを投下しようとしてるカスがいるようだが止めろよ
お前らはこの隔離スレから出てくんじゃねえ
猿は油断するとすぐにルールを破るから困る
黙ってここで俺キャラ無双と腐女子ホモホモ妄想SS垂れ流してろ


846:本当にあった怖い名無し
10/11/29 00:00:31 I15o6/Pd0
ほもほも(^^ω)

847:本当にあった怖い名無し
10/11/29 01:23:52 nIDziysbO
ここもシリーズものとは名ばかりのコピペ改変スレに成り下がったか

848:本当にあった怖い名無し
10/11/29 02:03:06 aKsGmuVw0
洒落怖スレも粘着しか残ってないし

849:本当にあった怖い名無し
10/11/29 20:41:35 08+abRSTO
俺君待ち(´エ`)


850:本当にあった怖い名無し
10/11/29 22:17:44 qa29I1vv0
いっそスレタイに「創作」って入れた方がスッキリするんじゃない?
最初から誰も本当の話としてなんて読んでないし
創作SSとして認識してるでしょ
なら最初からそう断りを入れた方が敷居が下がろうってもんだ
別に洒落怖のテンプレを引き継ぐ義理なんてないし
区別化にもなる
あ、「敷居が下がる」なんて書くと条件反射で反対する子がいるかな?
「投稿しやすくなる」と言い換えよう
作品のレベルなんて最初から最底辺縁の下の力持ちだから「質の低下」なんて心配する必要も無い


851:本当にあった怖い名無し
10/11/29 22:19:13 nIDziysbO
つまり次からはメリーさんスレだということか

852:本当にあった怖い名無し
10/11/29 22:53:50 H1LBYOug0
それだと完全に板違いでしょ。
実話とも創作ともとれる、あいまいな立ち位置だからこそ作られるものを期待してるのではないか。だからオカルト板。
少なくとも俺はスッキリしたいんじゃなくて、そのあいまいさを楽しんでるのよ。
まあ、明確な区別化も悪くはないし、どうしても書きたいなら「創作」の隣に「実話」とも入れたら良いんじゃない?

853:本当にあった怖い名無し
10/11/30 02:39:58 5m1IV11l0
実際過去には実話だったり、実話を脚色したり整理してる人もいたかもしれないし、
少なくとも正面切って創作だと言ってる人の方が少なくないか?
そもそもが怪談には曖昧さがつきものだし、
そう言うところが好きでもあるので創作って謳うのは何か違う気がする。
まあ創作怪談のスレがあってもいいとは思うけど、
ここをそれに充てるのは乱暴かな。
実話ベースやあくまで実話の体で書きたい人が困るだろうし。

てか、創作って銘打ったら却って敷居上がってるよね。
実話でもないのに散々練ってこれかいとでも言わせたいのかな。
玉石混淆殆ど石のスレで。
自分は好きだけどね、こういうの。


854:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/11/30 13:50:34 Rt0BHmV10
[計画の進行(後)]

1/11
―誰かに呼ばれたような気がして、私は目を覚ます。

えっと、ここは…宿直室?
…あぁ、そうだ。私はここに来て、誰かに―

首の後ろが、少し痛い。
人間て、あんな風に気を失うものなのね…
私はそんな事を思いながら、すぐには起き上がらず、横になった状態で辺りを確認する。
…と、すぐ横に真奈美ちゃんが倒れているのに気付く。

私「真奈美ちゃん…」
ゆっくりと上体を起こし、彼女の様子を見る。

…息はしている。それも規則正しく。
顔色が悪いことも無く、外傷も無さそう。これは―

声「寝ているだけだぜ」

部屋の入口の方から、聞き覚えのある声が聞こえる。
…最低。

私「どういうつもり?…藤木」
私は首の後ろを押さえながらゆっくりと立ち上がり、声がした方を見る。
そこには、ニヤけた顔の藤木が立っていた。


855:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/11/30 13:52:28 Rt0BHmV10
2/11
私「真奈美ちゃんに何をしたの?汐崎さんはどこ?」

私はできるだけの虚勢を張り、藤木を問い詰める。
ここで気後れしてはいけない。
どうやらこれは…最悪の状況のようだ。

藤木「お嬢さんには、グッスリと寝てもらっているだけさ。きっと、引っ叩いても明日の朝までは起きないだろうなぁ…」
私「…」

明日の朝、と言われて時間が気になった私は、部屋の時計を見る。
…19時過ぎ。気を失っていたのは30分くらいか。

私「…汐崎さんは?」
なぜ真奈美ちゃんにそんな事をしたのか。なぜ彼女がここに居るのか。
それはきっと…嫌だけど、想像が付く。
それより分からないのは、汐崎さんの行方だ。

藤木「さぁねぇ、どこに行ったのかねぇ~?」
首を左右に振りながら、おどける様に藤木が答える。
その様子には、何か…不快さを通り越した、異常を感じる。


856:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/11/30 13:55:26 Rt0BHmV10
3/11
私「…知らないのね。なら、良いわ」

…もちろん、良くない。
でも今ここでコイツ相手に、僅かでも弱いところは見せたくない。

私「それで、あなたはここで何をしているの?」
情けないことに、少しだけ足が震えてしまう。
なぜなら、この男からいつも以上に危険なものを感じるからだ。
私はそれを隠すように声を張り、藤木に質問をする。

藤木「何って…何だと思います?」
そう言いながら、土足のまま藤木が部屋に上がってくる。
…その手には、霧吹きのようなものが握られている。

私「聞いているのは私よ。…答えなさい」
近寄ってくる藤木に対して、逃げ出したい気持ちを抑えながら、私は言う。
私のすぐ足元には、真奈美ちゃんが倒れている。
彼女を見捨てて、一人だけ逃げるわけにはいかない…。

藤木「本当は、これですぐに眠らせても良かったんですけどねぇ…」
私の目の前まで来た藤木は、そう言いながら手に持っている霧吹きを軽く振る。
言い分からして、中身はどうやら…睡眠剤のようだ。
もしそうなら、今ここで使わせちゃいけない。絶対に…。


857:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/11/30 13:58:12 Rt0BHmV10
4/11
藤木「ちょっと伝言がありましてね。副会長からの」

副会長…ね。
何を言われるのか、何となく想像は付く。どうせ―

藤木「もっと素直な女に生まれ変われ、ってさ」

…そんなことだろうと思った。
本当の私を知っている訳でもないくせに…。

藤木「というわけでぇ、これでお休みになって―」
私「…藤木、それで良いの?」
霧吹きをこちらに向けた藤木に対し、私はその目をジッと見つめながら言う。
こんなこと、コイツにはしたくないけど…。

私「あなたは良いの?私を…殺してしまいたいの?」
藤木「ん…?」
私「私が嫌い?」
藤木「…」

藤木は私の目を見つめながら、その手を下ろす。

こんなことは、イヤ。
汐崎さん以外に、こんなことしたくない。
…でも、今は真奈美ちゃんが居る。
自分だけならまだしも、私は彼女を守らないといけない―


858:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/11/30 14:00:08 Rt0BHmV10
5/11
私「好意を持ってくれているって、思っていたのに」
藤木「…」
私「こんなこと、するなんて…」
藤木「ま…」

私は誘惑するように、藤木の目をジッと見つめる。
彼を上手く取り込んで、この場を逃れる。今は、それしかない。

―しかし、そこに誤算があった。

藤木「ま…魔女…」
私「…?」
藤木「魔女…だ…!」

不意に藤木の目から光が失われ、そこに闇が生まれる。
その目をジッと見ていた私は、逆に取り込まれそうになり、慌てて視線を逸らす―
―が、そのせいで、彼が再び手を上げ、私に霧吹きを吹きかけたことに気付くのが遅れてしまった。

甘く痺れるような香りが鼻と口から体内に広がり、意識が混濁する。
私は立っていられなくなり、その場によろよろと崩れ落ちる。


859:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/11/30 14:06:46 Rt0BHmV10
6/11
藤木「魔女!魔女だ!誘惑された!取って喰われるぞ!」

倒れた私のすぐ傍で、藤木が叫んでいる。

何てこと―

藤木「火炙りだ!魔女は…火炙りだ!」

…壊れている。
藤木は既に、壊されている…!

藤木「眠らせて火炙りです!生きたままぁ、火炙りですよぉ!」
意識を失いつつある私の鼻と口に、今度は布が押し付けられる。
先ほどより強烈な…甘さなど欠片も無い、吸い込めば身体が痺れるだけの、危険な香りを感じる。

吸い込んじゃいけない―

徐々に消えゆく意識の中、ただそれだけを思い…私は息を止める。
どのくらいの間そうしていられるか分からないけど、それが私にできる、精一杯の抵抗だった。

…しかし意識は薄れ…やがて私は、そのまま意識を失った…。


860:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/11/30 14:08:42 Rt0BHmV10
7/11

神尾美加を乗せた車は、山道を登っていった。

ここからは一本道で、この先には、夏目川の別荘がある。
俺は奴の車が十分離れた後、道の脇に車を止め、そこで降りる。

ここからは、徒歩だ。
この辺りの道は、既に調べてある。
ここを歩いて登って―

―突然、道の前後から車が現れ、こちらに迫ってくる。
そして、車を降りたばかりの俺の目の前で急ブレーキ。俺は前後を挟まれる。
こちらも咄嗟に山道に逃げ込もうとするが、そこから数人のスーツを着た人間が現れ…
更に振り返った先、俺の車の逆側からも、数人が現れる。

ほんの僅かな間の出来事だった。

俺は、完全に行動を読まれていた。
車を止める場所すら読まれ、こちらが車を降りるタイミングを狙われた。

こんな簡単に、か…。
ただの老人を相手にしているつもりはなかったが、俺が甘かったか?

畜生…!


861:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/11/30 14:10:24 Rt0BHmV10
8/11
「―分かった。よくやった」

別荘に着き、車を降りたところで部下から連絡が入り、桐谷隆二を捕らえたことを知る。

私「では引き続き…分かっているな?」
私は命令を確認し、携帯を切る。

簡単なものだ…。
もはや、何の障害も無い。

共に車を降り、辺りの様子を窺っている神尾美加を見ながら、そんな事を思う。

私「すみません、仕事のことで…。さぁ、ここです。行きましょう」
神尾「あ、はい」
私は神尾を伴い、別荘に入る。

…終わったな。

この別荘は、よくあるログハウス的なものではなく、純和風の一軒家に近い造りになっている。
私がここで隠居生活を送るために、建てたものだ。

その何よりの特徴として…この中では、携帯の電波を遮断している。
後々は不便になるので解除するつもりだが、今はそうしている。


862:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/11/30 14:13:46 Rt0BHmV10
9/11
神尾美加をここに連れてくるにあたって、私が最も気にしていたことは、例の”耳”の事だった。

しかし、ここ数日神尾をマークしていたが、それらしい人物との接触は見られなかった。
霊感持ちの子―鮎川古乃羽という名前だった―とは、よく一緒に居たようだが、報告では彼女は耳の人物ではない、とのことだった。

こちらを探っていたのだから、当然接触はあるだろうと思っていたが…結局、そんな素振りは無いまま、今日を迎えた。
勿論、知らない間に会っていた可能性はある。普通に考えて、電話で連絡を取っていた可能性は、十分にあるだろう。

…しかし、それなら良いのだ。
電話という媒体を通してのみ、という話なら、何の問題も無い。
中に入ってしまえば、神尾は完全に孤立する。

しかも、部下にはここに来る道を見張らせている。
往来会の人間であろうと、誰一人、決して通さないようにと言って…。



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