10/10/29 19:03:14 xzIYkIO30
たまたま連れがクリスタルチューナーを持っていたので、それを部屋の壁4面、床、天井に行う。
高い澄んだクリスタルの音に、ようやくホッと息をつく3人。
その子がモゴモゴ唱えながら何やら手を合わせて、部屋に結界を張ってくれた。
「とんでもないところを選んだねー」と連れが私を見る。
そう、この宿泊施設を選んだのは他ならぬ私だ。でも嫌な感じは来るまで全く感じなかった。
どうして守護霊さまセンサーが働かなかったのか?
私は霊の類いは視えないが、やばそうな人とか、本気で近づかない方が良い場所というのは「何となく」わかることが多い。
誰にでもあるような感覚だと思うが、そういう時は直感を信じるようになってきた(当然若気の至りの失敗談もある)。
ともあれ、その後はとくに神経を過敏にする必要もなく、小部屋から持ち帰った書道セットで写経をしたり、
恋バナに花を咲かせたりしながら、のんびりと過ごして就寝した。
ちなみに、小部屋へ一度書道セットを取りに行ったときが、また恐怖だった。
あの感覚をどう表現したら良いのだろう。
誰もが特に何かを「視た」という訳ではないのだが、闇が質量を持ったようなネットリとした感じ、チリチリと
うなじの毛が逆立つような、神経の感覚がゆったりと狂ってゆくような、悪酔いをしてしまうような、そんな感覚。
1人では絶対に居られない、と2人は口を揃えて言い捨て、早々にその階を後にした。
翌朝は、お寺の本堂で読経に参加できるということで、早めに起きて本堂へ向かった。
怖いという感覚も、直接何を視たという訳でもなく、朝もや煙る朝日の下では夢のようで、私は元気を取り戻していた。
朝が早いせいか、朝日が雲にさえぎられるためか、はたまた本堂の中の電気が弱いせいか、本堂は不思議なくらい薄暗い。
私たち以外にも何人かが訪れ、パイプ椅子に腰掛ける。やがて、この寺の住職という方が現れておもむろに読経が始まった。
お経を上げ始めてややも経つと、おかしな感じがしてきたので目をあげた。何だか先ほどよりも本堂の中が暗い。
暗いモヤのようなものが充満し、煙のようにゆっくりとたゆたうように移動している。
それはやがて私たちの後ろにまでやってきた。