10/10/26 18:53:41 6aUnUOb+O
「どちら側かが重要なんだ」
Aはそう言って両手の人差し指を交わし、×の字を作る。
「どちら側か。つまりは霊の側か人の側か。体が消えた写真という心霊写真としての一つの項目の中にも、二つの小項目がある訳だ。
それが、霊か人か」
腹と腹を擦り合わせていたAの人差し指はぐにゃりと曲がり、フックのような形となって絡み合う。
「霊が映って見えなくなるのか、それとも人が消えて見えなくなるのか。どちらの視点になるかで変わる。
お前、映ってない方に何かが起きたと考えたろ? ……違うんだなあ。何かが起きたのは映っているやつの方だ」
Aは俺の手からひらりと写真を奪い取った。
「これは霊がどうこうしたものじゃない。これは一人だけ写真に映った彼が示したヴィジョンだ。
自分以外が存在しない。解釈は二通り。自分以外が自分の前から消えるか、それとも」
Aは黙って俺を見た。相変わらず焦点の合わない、ぼうっとしたような瞳。
「……どちらにしろ、意味するものは同じだ。一人になる。友達に会えなくなる」
それはつまり、写真に映った彼の死を意味している。Aは写真に視線を落とし、ややあってぽつりと言った。
「霊感が強かったんだろうな」
私たちみたいにさ。
俺は何も言えず、黙り込んだ。
写真Ⅱ、了。