【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ15【友人・知人】at OCCULT
【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ15【友人・知人】 - 暇つぶし2ch323:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/22 16:51:47 t5dcqYvs0
6/10
藤木「桐谷と汐崎はそうするとして…あの子はどうします?父親がそうやって死んだとなると…」

そうなれば当然、汐崎真奈美が問題になり、放っておけば厄介な事になるだろう。
…それは、「父親が監禁され、その後に不審な死を遂げた」という事についてではない。
厄介になる理由―それは、彼女が壷のことを知っているからだ。
高城と共に、桐谷から話を聞いてしまったからだ。

私は高城からの報告の後、すぐに桐谷を見つけ、マークしていた。
故に、桐谷が高城を訪ねたこと、その後、汐崎真奈美も加えて話をしていたことを知っている。
所詮奴らは、私の掌の上にあった訳だ。
全て見通されているとも知らずに、馬鹿な奴らだ…。

私「汐崎真奈美も排除する」
藤木「…やりますか」
私「勿論だ。明日の夕方、彼女を本部に連れてくる」
藤木「どうやって…って、簡単ですね。汐崎に会わせると言えば、来るでしょうねぇ」
私「あぁ」
その際、彼女が連絡を―高城沙織に確認の連絡をしないように、手を回しておく必要はある。

私「連れてきて、あの宿直室に放り込んでおく」
藤木「…便利ですねぇ、あの部屋。俺も今度使おうかなぁ」
私「…」
藤木「あ、すみません…」
軽口を叩くな、と睨むと、小さくなる藤木。

…残念だ。
コイツが、もう少し頭を使える奴なら、な。


324:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/22 16:58:12 t5dcqYvs0
7/10
私「汐崎の娘を連れてきた後、高城もその部屋に連れて行く」
藤木「…やっぱり、本部長も?」
私「当然だろう」
藤木「惜しいなぁ…」
高城に執着していた藤木にとって、彼女が始末されるのは、やはり惜しいようだ。

藤木「なんか、こう…できないですかねぇ?」
私「…何?」
藤木「こっちで面倒見ますから、本部長は任せてくれませんか…?」
私「…」
やはり、呆れる愚か者だな。

私「…高城は、お前が扱える相手か?」
藤木「いや、まぁ…」
私「お前の頭で、何とかなる女か?結果は目に見えている」
藤木「そうかも知れませんが…力で捻じ伏せて、とか…」
ごねる藤木。

…残念だ。
コイツは、聞き分けも悪い…。


325:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/22 17:02:32 t5dcqYvs0
8/10
私「藤木…」

私は椅子から身を乗り出し、藤木を見つめながら言う。

藤木「…はい?」
私「高城の正体を教えてやる」
藤木「へ?」
私「…高城だけじゃない、汐崎真奈美の正体も」
藤木「…」
何のことか?という顔をしながら、身を乗り出してくる藤木。
その藤木に、私は言う。

私「あの2人は、魔女だ」
藤木「…」
何を言い出すのか…と思っているだろうが、私は低い声で続ける。
これは、必要なことだから。

私「分かるか?奴らは、魔性の女だ。人間を―男を、取って喰う」
藤木「副会長…?」
只ならぬ雰囲気に、やや怯えた声を出す藤木。

軽いな。
コイツは簡単に、心に隙を見せる…。


326:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/22 17:05:48 t5dcqYvs0
9/10
私「魔女はどうするべきだ?」
藤木をジッと見つめたまま、私は言う。

藤木「いや、何を仰って…」
私「魔女は、火炙りだ。…違うか?」
藤木「その…」
私「違うのか?」
藤木「…」
私「違うのか?藤木」
私は彼の目を―その奥までを見つめ、力を込めて聞く。

藤木「その…通りです…」
力なく答える藤木。
私「ならば、やるべきことは分かったな?」
藤木「…はい」
私「では、行け」
藤木「…はい!」
そう言って椅子から立ち上がる藤木。

藤木「失礼します!」
そして、意気揚々と部屋を出て行った。


327:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/22 17:08:47 t5dcqYvs0
10/10
私「フン…」

藤木が出て行った後、私もゆっくりと部屋を出て、外へと向かう。

残念だが、藤木は優秀な部下にはなれない。
…が、優秀な兵隊にはなれる。
今夜、ジックリと仕上げてやろう。
奴には、大仕事をして貰わなければならない。

本部から外に出たところで、私は一度振り返る。

随分と大きくなったものだ…。
建物を眺め、そんな事を考える。

路上で易者をしていた頃には、想像も出来なかったものを、私は手に入れた。
約20年の歳月をかけて、ここまで成長させたもの。
誰が何と言おうと、私のもの…。

それをどうしようと、全て私の勝手だ。
これは私だけのものであるべきだ。

―捨てることができて、初めて自分のものと言える。

私は、そう考えている…。




328:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/22 17:13:27 Thq8k/id0
いつもありがとうございます。

329:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/22 19:08:11 XhPjhEc+0
口裂け女「私、綺麗?…いや、そんな事は置いといて。ちょっとメリーさん私見ちゃったのよ~」

メリーさん「あら、何を?」

口裂け女「貴女の旦那がさぁ…。ほらIN(ピー)Xで働いててうちの隣に住んでるおかっぱ頭の~」

メリーさん「ああ、花子ちゃんね。あの子と私の旦那がどうかしたの?」

口裂け女「実はね。二人がホテル入るとこ見ちゃったのよ…。」



330:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/22 19:09:07 XhPjhEc+0
メリーさん「………そう……教えてくれてありがと」
メリーさんは携帯を取り出し旦那へ電話をかけた

メリーさん「私、メリーさん。今、神奈川県横浜市中区××町×××にいるの」
電話を切り
旦那の所へと走り去って行った




口裂け女「今日は修羅場ね…」



331:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/22 19:28:30 XhPjhEc+0
花子さん「ほら、早く卍解(ばんかい)した方がいいんじゃないの?死んじゃうわよ」

メリーさん「そう・・・。そんなに見たいのなら見せてあげるけど、後悔しないことね」

メリーさん「 卍  解 (ばんかい) ! ! ! 」

メリーさんが卍解(ばんかい)した時には花子さんの視界にはもういなかった

花子さん「・・・な・・・・何処に・・・消えた?!」

メリーさん「私、メリーさん。今貴女の後ろにいるの」



332:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/22 20:04:51 XhPjhEc+0
花子さん「・・・なん・・・・・・・だと・・・?いつのまn」

ズバン!!
花子さんを圧倒的な力と移動スピードでブッた斬り決着がついた

メリーさん「私が卍解(ばんかい)した時点で貴女の負けは決まってたのよ」

  


メリーさん「っていう漫画面白そうじゃない?」
 
三本足のリカちゃん「いや、もうあるから」



333:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/22 20:29:19 XhPjhEc+0
「お願い、娘と、娘と話をさせて!」
私は、その男に向かって電話越しに叫んだ。
私の可愛い娘は、誘拐されており、電話の相手は犯人なのだ。
「ああ……そうだな。その代わり、金はしっかりと出してもらうぜ」
下卑た笑いが止むと、聞こえてきたのは娘の声だ。
「ママ、怖い、助けて!」
娘を落ち着かせると、私は秘策を教える。
「ママの言う通りにするのよ?」



334:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/22 20:36:16 Hz89C4KgO
>>333
ウゼエ

335:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/22 20:40:45 XhPjhEc+0
娘が、犯人の後ろに立つ。
「もしもし、私、メリー」
電話を通じ、娘の視界が私にも見える。
娘と、声を重ねる。
電話。呪文。足りない力は私が補って、呪いは完成する。
「今、あなたの後ろにいるの」
そうして、娘は、【血】に目覚めた。


336:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/22 21:00:41 MLu9ea8r0
メリーさんwww

337:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/22 21:03:03 XhPjhEc+0
「アハハ、アハハハハハ!」
「ば、化け物ッ!」
恐怖に歪んだ男の目に最期に映ったのは、
髪をふり乱して血走った目をした娘の姿だった。



338:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/22 21:03:26 pe4ERHhK0
>>334
メリーをNG指定でスッキリ。

339:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/22 21:04:41 XhPjhEc+0
私は、私達は、【メリーさん】
人の心の闇から生まれ、成長し、人の中に潜むもの。
もしもあなたが綺麗な【メリー】という女性と結婚して
可愛い娘が生まれたら気を付けなさい。
その子もまた【メリー】と言うのなら、特に、ね。
彼女達は、私達の眷族なのだから。




340:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/22 22:14:47 mvxwPn920
一年の秋。
その頃俺は遅刻を罪と思っていなかった。
別に出席時数だけ取れていればいいので困ることは無かったが、一時期頻繁に遅刻をかましていた。
原因はネットにハマったことなのだが、俺はそれをちょっとかっこいいと思っていた。
あー全然寝てねーわー、だとか、ちょっと自慢げに言っていたような気がする。
我ながらとんでもなく馬鹿だと思うが、とにかく一ヶ月ほど殆ど毎日遅刻していたのだ。
大体一時間目をスルーして登校していたのだが、ある日ふと気付く。
同じ時間に登校している女の子がいたのだ。
いつも彼女は徒歩で、俺は自転車だったから、いつも追い抜いていた。
白くて、細くて、なんというか、病院の窓から葉が落ちるのを眺めていそうな、そんな女の子だった。
女の子というが、恐らく年上だった。
彼女は同級生にいなかったから、多分先輩なんだろう。
鮮明に覚えている。
押せば倒れそうな後ろ姿も、ポニーテールにしていた黒い髪も、すれ違う寸前見た白いうなじも。
追い抜いてから振り向いたことは無かったから、どんな顔をしていたのかはわからない。
ただ、なんとなく綺麗な顔をしているように思っていた。
ある日、俺はまた遅刻した。
いつものように自転車を走らせていると、あの人が逆側の歩道にいた。
いつもと違う。
俺は少しがっかりした。
今日は彼女の後姿を見ることが出来ない。
俺は気になって仕方なかった。
仕方なかったから、ついやってしまったのだ。
俺は彼女を通り過ぎて、すぐ振り向いた。
俺は彼女の顔が見たかった。
俺の想像の中にいる、綺麗な顔と一致しているか確かめたくて。
しかし、振り向いた先には、誰もいなかった。

341:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/22 22:17:07 mvxwPn920
「見たことありませんか。その人。一年じゃないみたいなんですけど」
放課後、俺は先輩に彼女の特徴を伝えた。
もしかしたら三年生かもしれないと思ったからだ。
「ああ、あるよ」
先輩は事も無げに答えた。
俺は多少拍子抜けした。
「あ、そうですか・・・・・・何年なんです?あの人」
先輩は驚いた顔をしている。
「え・・・・・・なにか」
「いや、お前も大概にっぶいなあと思ってな。わからなかったのか。そいつがいるのっていつもあそこじゃなかったか。立体交差の、次の交差点辺り」
その通りだった。
「知ってるんですか。じゃあ先輩も会ったことが?」
今度は呆れ顔だった。
「あのな。お前、いくら同じくらいの時間帯だって、毎日毎日全く同じ場所ですれ違うのはおかしいと思わんのか」
あ。
俺は馬鹿だ。
俺が彼女を見かけるポイントは、時間に関わらず同じ場所だった。
つまり、ということは、まさか、もしかして。
「・・・・・・えっと、そっち系ですか」
先輩はうんうんと頷いている。
全く考えてなかった。
俺にあんなにはっきり見える幽霊がいるなんて。
「いつだったかなあ、最初は。俺が一年の年にはもう居たと思う。それから、あれはずっとあそこにいるよ」
「でも、俺にそんなにはっきり見えるなんてことありますかね。先輩ならともかく」
先輩はにやりと笑う。
最近わかってきたのだが、この表情をした時、先輩は俺に想像もつかないような黒い事を言う。

342:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/22 22:20:09 mvxwPn920
「アメーバって知ってるだろ。それが物を侵食する・・・・・・食作用、って言うんだがな。まあ、連中の食事だ。その時、仮足と呼ばれる突起を出す。偽足とも言うが」
何の話だろうか。
俺は生物は好きじゃない。
理数系ではあるが、どちらかというと物理が得意なのだ。
「その突起で物を侵食するんだよ。飲み込むんだ。じわじわとな。あの女は、それだ」
「つまり、ルアーとか、そういう物だと考えていいんですか。あの人は」
「お、いい例えだ。先駆けだな。お前には見えないんだろうが、あいつの後ろにはわけのわからん物がいるぞ。黒くて、どろどろした、取り込まれた奴らの固まりがな」
彼女に興味を持ってしまうと、引き込まれるのだろうか。
より多くの人を引き込む為に、少しでも感覚の鋭い人には見えるようになっているのだろうか。
わからないことばかりだ。
「あいつらは仲間を探してるんだ。一人でも多く。あの交差点、結構事故多いだろ。つまり、そういうこと」
俺はなんだか嫌だった。
あの人がそんな事の為に存在していると思いたくない。
「でも、それなら俺に近い歩道で居た方がいいんじゃないですか。今日は逆側に移動してましたけど」
先輩は鼻で笑う。
「あいつらの考えてることなんてわからないよ。お前があれにどんな感情を持っているかは知らん。けど、俺は事実を言っただけだ。アドバイスは『関わるな』だよ」

343:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/22 22:23:10 mvxwPn920
帰り道、俺はあの交差点を通った。
彼女は見えない。
俺はもしかしたら、顔も知らない彼女に恋をしていたのかもしれない。
それは、人を取り込む為の能力が俺に影響していたのか、それとも俺自身の感情だったかはわからない。
横断歩道の向こう、今朝彼女が歩いていた歩道を眺める。
俺はその光景を目に焼き付けてそっと目を閉じる。
瞼の裏の残影には、こちらを向いて寂しそうに笑う彼女が映っていた。
「・・・・・・じゃあね」
俺は、横断歩道の向こうに手を振った。
瞼に残った彼女の顔は、やっぱり、とても綺麗だった。

向こう側の少女 終

344:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/22 22:26:05 3cbu50mb0
ウニ臭はするが良作。
GJ

345:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/22 23:06:06 5Lb1zqBcO
向日葵の時は否定的な意見を書いたけど、
今回のはイケるね。


346:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/22 23:12:54 b4GkTo1l0
乙 

相反する視点から現象を見せられると、「人の」裏表を見ているようで面白味がある。
だからウニの話は面白かったんだな。コピーのおかげでよく分かった。

347:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/22 23:52:32 3mjIQd+Z0
いねお乙

348:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/23 00:16:16 VAdP4cPp0
赤緑&稲男乙です!

349:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/23 01:27:55 rZanC2L7O
コテ酉つけた。Aの話投下してるフロントマンだ。
 
それと、洒落怖投下分に出てくる「B」に関する話のネタがめちゃくちゃ少ないんで、
今回から「B」を俺につきまとう変なモノの仮称から、関連する話が多いもうAとは別の霊感持ちの人の仮称に変更する。
旧Bに関する話はもうしないと思う。基本的に見たら逃げるだから話せるようなネタが無い。
紛らわしいと思うけど、洒落怖から見てくれてる人は覚えといて。
後、これから投下する話、なんかめちゃくちゃ長くなった

350:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/23 01:29:31 rZanC2L7O
定時制の学校に通う二十歳過ぎの高校生なんてものをやっていた時代、仕事が縁で仲良くなったのがBだった。
地元では有名な空手道場の娘で、当時大学生をしていた彼女は(BはAよりも年下だ)A程ではないが結構な霊感を持っており、
その体験談は中々興味深い。今回する話も、結構な変わり種だ。
 
 
 こっくりさん
 
 
働きながら学校に通っていた学生時代、部活に参加する時間が無かった俺は、週に二回程ジムに通って汗を流していた。
ジムと言っても会費を払って参加するような上等なものではなく、自治体の運営する一時間いくらのやつだ。
Bと仲良くなってからは彼女もジム通いを始めた。
一緒にジムに行き、終わったらスポーツドリンク片手に少々話すのが、いつのまにか俺と彼女の習慣になっていた。
(因みにAも誘ったが、ダルいと言って断られた)
この話を聞いたのも、ジム終わりの事だ。


351:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/23 01:31:10 rZanC2L7O
「中学生の頃、幼馴染みに誘われて何度かこっくりさんをしました」
Bの幼馴染みはいわゆる『自称霊感少女』で、
「あなたには悪い霊が憑いている」
などとクラスメイトに言ってオカルトの知識を披露したり、時にはタロット占いや交霊術を行っていた。
『本当に見える』Bは、幼馴染みの行動には何も言わず、たまに誘われる交霊術の集まりにも黙って参加した。
その幼馴染みはBに本当は霊感なんて持っていないことを告げていたが、Bは自分が霊感を持っていることを、彼女に黙っていた。
「とてもじゃないが言えませんよ。……私じゃなくて幼馴染みに霊感が有れば良かったのにと思った事も有りました」
本当は霊感なんて無いのに、自分には霊感が有ると周囲に吹聴していた幼馴染みにそのことを言うのは、やっぱり躊躇われたのだろう。
言われるがままに交霊会に参加し、何も現れないことを知りながら怖がるフリをしていたBは、次第に罪悪感を抱くようになった。
そんな時にこっくりさんに誘われ、同時にあることを頼まれる。
「私が10円玉を動かすから、Bもそれを手伝って。ね、Bにしか頼めないの。お願い」
今までも交霊会で自作自演をしていた幼馴染みは、ついにはこっくりさんでも仕込みをすることにしたらしい。
Bは断り切れず、ついには仕込みに協力することを承諾した。


352:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/23 01:33:26 rZanC2L7O
まずは間隔を開けて机を二つ並べ、どこからか持ってきた鏡を二つの机にかかる橋のように渡す。
そしてその上に五十音と『はい』、『いいえ』、赤い鳥居が書かれた半紙を乗せるという幼馴染みの考えたやり方で、そのこっくりさんは行われた。
人の居ない放課後の教室に集まった面子は、幼馴染みの霊感に一切の疑念を持たない幼馴染みの信者二人と幼馴染本人、そしてB。
「……こっくりさん、こっくりさん。おいでください」
鳥居の上に置いた十円玉の上に全員が指を乗せ、幼馴染みがこっくりさんに呼び掛ける。
「こっくりさん、こっくりさん……」
びく、と十円玉が動く。幼馴染みだ。Bは小さく驚いた声を上げ、信者の一人は凄い、と漏らす。
幼馴染みは集中して疲れたように小さく息を吐く。役者だ。
「こっくりさん、こっくりさん、いらっしゃいましたら返事をして下さい……」
十円玉が動き始めた。対面に向かい合った幼馴染みの動きに合わせ、Bも十円玉を操作する。
十円玉は打ち合わせ通り、『はい』の所へ。信者二人は息を飲んだ。Bも一緒に息を飲む。

353:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/23 01:35:46 rZanC2L7O
自作自演のこっくりさんは続く。Bの幼馴染みは信者の二人に、
「こっくりさんに聞きたいことを言って」
と促す。信者二人は一回ずつ質問し、幼馴染みが十円玉を動かすことでその質問に答える。
安全。手順を間違えなければこっくりさんは知りたいことに答えてくれる。
信者の二人はこっくりさんという十円玉を通して答えるBの幼馴染みの言葉に喜び、楽しそうに笑う。
信者二人の質問が終わり、次はBがこっくりさんに質問することになった。
「……この中で一番早く死ぬのは誰ですか」
Bが言った瞬間、こっくりさんへの質問の結果について笑いながら話していた信者二人の動きが止まり、幼馴染みがBを睨む。
勿論、打ち合わせ通りだ。Bはこの後こっくりさんに憑かれたふりをし、それをBの幼馴染みが祓うという流れだ。
かく、と力が抜けたようにBは顔を俯かせた。息を飲むような音。Bはこっくりさんに憑かれたフリをして、
 
十円玉が動いた。
 
Bは驚いた顔で俯かせた顎を上げ幼馴染みを見る。幼馴染みもこちら見ていた。
Bと同じく驚いた顔で。

354:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/23 01:36:39 rZanC2L7O
十円玉が動く。
 
『み』
『ん』
『な』
 
幼馴染みはBと十円玉に交互に視線を向ける。Bは左右に首を振る。
私じゃない、のジェスチャー。
十円玉は鏡の上に置かれた半紙の上を動き続ける。
 
『す』
『ぐ』
『し』
『ぬ』
 
悲鳴が上がり、椅子が倒れた。
Bは一人取り残される。
十円玉に、人差し指を置いたまま。

355:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/23 01:40:40 rZanC2L7O
――――
 
……そこまで聞いて、息を飲んでいた俺にBは軽く笑いかけた。
「仕込みですよ」
「ぁ?」
間抜けな声が出てしまった、と思ったのを覚えている。
「だから、仕込みなんです。その時十円玉を動かしてたのは私です」
ふふふ、と笑ってBはスポーツドリンクを飲み干した。
「……役者だなあ。語るのも上手い」
「女は皆そうですよ。じゃなきゃ、女なんてやってられません」
俺もBの幼馴染みもその信者も、彼女の演技に見事騙されたことになる。
「それで、なんでまた」
「いい加減、幼馴染みにそういうことをやめて欲しかったから、ですね。けれど直接言うなんてことはできない。
 だからあんな事をしたんですよ。懲りてくれたら、ってね」
成程なあ、と俺は頷いた。
「男ばっかりの環境で育ちましたから、女友達なんて幼馴染み以外には居なかったんですよ。
 空手もやってましたし、小学生の頃は男女とさんざからかわれて今でもトラウマですしね。
 だから、幼稚園の頃から一緒にいてくれた幼馴染みが、尚更大切だったんです」
俺からするとBは良い意味で男らしいさっぱりとした性格をしているが、まるで男みたいだ、なんて感じることは全くない。
外見だって背は高いがファッションにも気を使っているし、化粧も上手い。
黒い口紅と黒いマニキュアと黒いペディキュアを塗りたくり、アホみたいに鋲を打ち込んだ黒い革ジャンを愛用しているゴスパン女、
Aに見習わせたいくらいの美人だ。
でもそれは、男女とさんざんからかわれ続けた反動なのかもしれないなと考えた。
「それで、幼馴染みは懲りてくれた?」
「そうですね……話を続けますね」
Bは話を続ける。
俺は幾分リラックスして、その話に耳を傾けた。

――――

356:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/23 01:40:41 oEK7j9zj0
過供給でそろそろしんどくなって来た…
過疎よりいいことなんだよね

357:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/23 01:42:30 CMckk4V50
いい子にして続きを待つ・・・。
コーヒーが美味しい月夜ですなぅ。

358:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/23 01:42:35 rZanC2L7O
三人が飛び出し、一人きりになった教室でBは嘆息した。上手くいった。これで幼馴染みが懲りてくれると良いんだが。
そんなことを思いながら、もしかしたらこのことで幼馴染みの信者から怖がられるかもという考えが頭を過ぎる。
「はあ」
とBは深く嘆息したそうだ。これからの事を考えると憂鬱になる。視線は自然と下を向き、
 
見てしまった。
自分の指は、未だに十円玉から離れていない。
 
Bは愕然とした。
十円玉から指が離れていないことに気付かなかった。途端背筋が粟立つ。何か居る。誰かが居る。
指は動かない。いや、感覚がない。
それでも十円玉から指を離そうとした。やっぱり指は動かない。右肩から先が動かない。足も動いてはくれない。
感覚が無い。自分の体じゃない。十円玉も動かない。けれどBは十円玉から目が離せなかった。十円玉が、今にも動き出しそうで。
Bは思った。
まさか、本当に、
 
……こっくりさんに憑かれたのか?
 
「こっくりさん、」
言葉が漏れた。確認しないといけない。
「……こっくりさんですか?」
十円玉が動く。

359:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/23 01:46:12 rZanC2L7O
動き始めた十円玉は答えを示す。示された回答は、十円玉が止まった場所は、
 
『いいえ』。
 
Bは混乱した。こっくりさんじゃない。なら、誰が。
 
「あっ」
 
そう声を上げたのを今でも忘れられないとBは言う。
居る。この場にはもう一人居る。目の前に居るじゃないか。
 
Bは、鏡の中の自分と目が合った。
 
十円玉を動かしているのはこいつだ。十円玉を動かしているのは自分だ。
 
Bは鏡に映る自分を威圧するように気合いの声を上げた。体からすとんと何かが落ちたような気がする。しかし右手は十円玉から離れない。
もう一度気合いの声を上げた。Bは左腕を振り上げ、鏡に向けて拳を叩き付けた。

360:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/23 01:48:18 rZanC2L7O
――――
 
鏡が割れた音は聞こえなかったそうだ。砕け散った鏡から目を逸らし、椅子に座ったままのBは、気が抜けて暫く動けなかったという。
その内Bの気合いか教室から逃げ出した三人の叫び声か、どちらかを聞き付けた教師がやってきて、Bは酷く叱られたそうだ。
 
「凄いな」
Bの話を聞き終えた俺は始めにそう呟いた。
話の始めを聞いた時は、こっくりさんを呼ぶふりをしたらホントにこっくりさんが来てしまったんじゃないかと予想していたが、
こっくりさんに憑かれたふりをして信者を騙す予定だった幼馴染みを騙したら、いつのまにか自分が、
というのは予想外だったし、
自分が体験した、Aの言う所の『自己霊に憑かれる』というのにダブるような気がしたからだ。
「自分に憑かれるっていうのなら、俺も経験があるなあ。体が動かないって事は無かったけど」
「自分に憑かれる?」
「いや、分かんないけどな。自己霊だったか自分霊って言って、自分の生き霊が自分に憑くってことがあるみたいで。
 Bが今話したのも、それに近いのかと思たから」
「なるほど」
Bは自分に憑かれるという考えがなかったらしく、真剣な顔で頷いた。
「実はあの一件以来大きい鏡が苦手で。今でも大きい鏡を見る時は覚悟してましたが……自分の生き霊、ですか」
「覚悟?」
「鏡を割る覚悟ですよ、正拳突きで」
俺は正拳で鏡を割る胴着姿のBを想像し、ちょっと笑ってしまった。
Bもおどけるような笑みを浮かべ、綺麗な眉をくい、と上げてみせる。
「……それで、幼馴染みは懲りてくれた?」
「それは、」
 
――――

361:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/23 01:54:53 CMckk4V50
紫煙くゆらす秋の夜

362:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/23 01:56:58 VAdP4cPp0
詩人やね
満月か…


363:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/23 01:59:42 CMckk4V50
結膜炎が痒くて眠れず、ケツ捲って明日の朝の病院診察時間まで
耐久2チャンだよ~。 かぃぃのぉ~。

我が顔に
 愛犬びびる
  ドラキュラか!

364:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/23 02:11:58 rZanC2L7O
さるさん引っ掛かった


Bの幼馴染みは結局懲りたりはしなかったらしい。
Bは教師に何か言われても
「一人でやった」
と答えたそうだが、Bの幼馴染みは
「Bは実は霊感が強く、悪霊が憑いていて危険。あのこっくりさんもBが滅茶苦茶にした。Bには近付かない方が良い」
と吹聴して回ったそうだ。
「なかなか当たってるじゃないか」
とBはおかしくなったと言う。自分には確かに霊感があり、悪霊はついていないがあのこっくりさん滅茶苦茶にしたのも自分だ、と。
Bは何も言い返さずに幼馴染みと付き合うのを止めた。幼馴染みの信者から怖がられたり徹底的に無視されたりしたが、
「かえってそれが良かったかもしれないですね。他の人にまで無視されたりしないように、人当たり良くしようと頑張りましたから。
 それでもやっぱり、寂しいですが」
とのこと。さっぱりしてるなあと凄く感心すると同時、暴露してやりゃ良いのにと思った俺は、器が小さいのだろうか。

365:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/23 02:13:00 rZanC2L7O
――――
 
事の顛末を全て聞いた俺は、ふと一つ聞き忘れていることに気付いた。
「十円玉はどうした?」
「ああ、言ってませんでしたね」
Bは財布から十円玉を取り出した。所謂ギザ十のそれを俺に見せる。まさか。
「捨てなかったのか」
「ええ。こっくりさんでは使った十円玉はさっさと使うのがルールですが、あれはこっくりさんなんかじゃ有りませんし。
 逆に捨てたら祟られそうだと思って持ってましたが……さっきの話を聞いて手離さなくて良かったと思いましたよ」
俺は首を傾げる。
「すまん、さっきの話って」
「ほら、自己霊の話ですよ。この十円玉を手離すというのは、自分を手離すのに近い意味が有るのかなって今思ったんです」
そう言って彼女は財布にギザ十をしまった。その仕草はいかにも大事なものを扱うそれだった。
後日、彼女は地元で大きな神社からお守りを買ってきて、それに十円玉を入れた。
Bはきっと今も、あの時に使われた十円玉を大切に持っているのだろう。
仕事で十円玉をお客様に渡したりする時、俺はたまにそんな事を考える。

 
 こっくりさん、了。

 
我ながら長いなあ。読んだ人いたら乙

366:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/23 02:13:51 CMckk4V50
乙!

薄情な幼馴染だねえ。      カンと推察能力は高かったのかなw

367:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/23 02:15:09 CMckk4V50
<(_ _)> 先走ってしまうところだった。

368:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/23 02:36:01 VAdP4cPp0
俺乙です!

369:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/23 02:43:51 YLZe90fFO
俺くん乙!


370:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/23 04:40:20 ZZY01G9TO
霊能力者が達観傾向にあるのは、この手のシリーズ物の共通事項なのか?

371:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/23 06:04:44 Q9ZXrEQE0


所で少し前だけど、犬が生き埋めにされていたニュースがあったよね。
あれってウニが書いてた師匠シリーズ田舎に出てくる犬神とやらかな?

372:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/23 07:01:42 Jpi9sy5BO
コテ酉付けたんですね、乙です。

霊能者は人と違う分、達観か諦観してないと生きていけない……んじゃないかなあ。
富山の犬生き埋めは、微妙に犬神の手順と違うあたりどうでしょう。

373:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/23 09:38:17 pET59uRJ0
>>365
生身Bの話なの了解
Cでも良かった気がするけど意味があんだろうね
全部、実話ってのがいいんだよね

374:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/23 11:00:30 ZOAZ3awf0
Cは俺氏やAの師匠じゃなかったか?

375:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/23 21:58:27 xP5TslBB0
三年の冬の話。
一年の頃は、先輩に憧れてついて回った。
二年の頃は、先輩が俺を遠ざけ始め、俺も無理に追いかけなくなった。
そして、三年。
先輩はあまり俺に関わらなくなった。
俺も何だかんだ独り立ちし始め、何かの相談の時くらいしか先輩に頼らなくなった。
それは、先輩の思い人に対する感情を自問した時からだったか、それとも先輩の引き連れる狂気に恐れをなした時からだったか。
今となってはわからない。あるいは、両方だったのかもしれない。
いや、両方だった。たぶん。
とにかく当時、先輩は常識と正気から遠く離れていたし、俺は先輩にどこか気まずい思いを感じていた。
そんな、ある日。
先輩に対する気まずさの、その原因であるヨーコさんが俺の家を訪ねてきた。
一応住所は教えておいたのだが、まさか本当に来ることがあると思っていなかったので、俺はかなり焦った。
母さんと弟が「あいつが女の子を家に呼ぶなんて」みたいなことを言って騒いでいる。
ばたばたと玄関に向かい、ドアを開ける。
「こんにちは」
「あ、ども。え、っと、とりあえず、上がります?散らかってますけど」
ヨーコさんは首を振る。
「いい、違う。ちょっと話を聞いて」
どうやら急ぎのようだ。
よく見ると、いつもの私服と感じが違う。
とりあえず着てきたような、ちぐはぐな感じだ。
襟元が着崩れて鎖骨が見えている。
どうやら、相当慌てたらしい。
「なんですか、話って」
ヨーコさんはそっと目を閉じて、覚悟を決めたように言った。
「あの人がいなくなる。夢で見たんです」

376:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/23 22:00:35 xP5TslBB0
俺は自転車をこぐ。
荷台にはヨーコさんが乗っている。
二人乗りは初めてのようで、腰を必死に掴んできた。
「夢で、って、あれですか、例の」
俺は後ろに話しかける。
「うん、多分そう。たまにあるんだけど」
ヨーコさんは、見える人だ。
幽霊が、とかに留まらず、人の視界や、過去や、未来が。
それはコントロール出来る物でないから、本当に未来の事か、それともただの夢なのかはヨーコさんの感覚でしかわからない。
こぎながら、腋を通して後ろを見てみる。
「足、後輪の軸の所に乗せてください。ちょっとがに股になっちゃいますけど、バランスいいですから。で、どういう夢なんですか」
ぶらぶらさせていた足を軸に乗せるのを確認して前に向き直る。
ヨーコさんは少し声を大きくして答える。
「私が、あの人に会いに行く夢。歩いて、あの人の部屋の前に行くんだけど、部屋の中には誰もいないんです」
はっきりしない。
ただの夢のようにも思えるが、ヨーコさんはただならぬ物を感じたようだ。
俺は脚に力を込める。
「・・・・・・揺れるんで、しっかり掴まっててください」
目前の信号は赤に変わろうとしている。
体重をかけて加速して、俺はぎりぎりで走り抜ける。
先輩が、いなくなる。
あの人は、やっぱり良くわからないから、俺達に何も言わず去っていくこともリアルに感じられた。
自分の意思で、もしくは、何かから逃げるように。
ぎゅ、ぎゅとペダルを回す。
いなくなるのはもう逃れられないとしても。
せめて、最後に一言でも。
なんだか泣きそうになって、歯を食いしばった。
コンビニの前を通り過ぎる。
歩行者が前から来る。
ギリギリのところをすれ違う。
先輩、先輩。
図書館の前を通り過ぎる。

377:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/23 22:02:32 xP5TslBB0
・・・・・・俺は、全力でブレーキを握った。
背中に体重を感じる。
ヨーコさんが予期せぬ反動に耐え切れず、前につんのめったのだった。
「ど、うしたんで、すか」
背中に声が伝わる。
「・・・・・・あれ、先輩のです」
図書館の駐輪場には、古いロードレーサーが停めてあった。
クロモリのフレームに、斜めに走る擦り傷が目印。
でかでかとスペースをとって、壁に立てかけてある。
誰かから譲り受けたという、先輩の自転車だ。
俺が自転車を降りると、ヨーコさんもよたつきながら降りる。
「お尻、痛・・・・・・」
風に飛ばされてぼさぼさの髪を手で直しながら図書館の入り口へ向う。
俺もその後についていった。
『開館』という看板が出ている。
入り口に手をかけて、ヨーコさんの動きが止まる。
いた。
一週間分の新聞がストックしてある、入り口すぐの休憩スペース。
新聞を机にばっさと広げて座っている。
あの顔色の悪い男は、間違いなく先輩だ。
ヨーコさんはその場でしゃがみこんでしまった。
「良かった・・・・・・」
俺は両開きの扉を開けて中に入る。
先輩が俺に気付いて手を上げた。
「よお、なんだ、息荒いな。どうかしたのか」
驚くほどいつも通りだ。人の気も知らないで。
俺は一発殴ってやろうかと思った。
「いえね、ヨーコさんが、先輩がいなくなる夢を見たって言うんで。今いっそいで飛んで来たんですよ。無駄足だったみたいですけど」

378:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/23 22:05:38 xP5TslBB0
そう、多分ヨーコさんは知らなかったのだ。
先輩は、冬が苦手だ。
夏はどんなに暑くても平気な顔をしているが、冬、ちょっと寒くなると暖かい所へ逃げる。
先輩のアパートにはエアコンがないから、公共施設・・・・・・特にこの図書館、暖房の効いた空間をよく利用するのだ。
ヨーコさんの見た夢は、『アパートを訪ねたら先輩がいなかった』というものだったらしい。
つまり、俺のところに寄らず、先輩の部屋を訪ねていたら、やっぱり先輩はいなかったんだろう。
なにせ、図書館に行っているのだから。
「おお、予知か。いや、やっぱり素晴らしい、ヨーコは。詳しく聞きたいな」
俺はなんだかどうでもよくなって、先輩の向かいのソファーにぼすっと沈んだ。
「あー、いいですよー。それより、入り口の所にヨーコさんいるんですよ。なんかへたっちゃってて。行ったほうがいいんじゃないですか」
先輩は入り口に視線をやり、ガラス戸の向こうのヨーコさんを確認すると立ち上がった。
「おいおい、地べたに座っちゃって・・・・・・スカートなのに。全くどうしたんだ」
入り口に向って歩く先輩を見ながら、俺は苦笑する。
そうだ、先輩が例えいなくなるとしても、俺にはきっと一言あるだろう。
なにせこの三年間、俺程先輩の近くにいた人間はいないのだから。
心配しすぎた。
ヨーコさんの予知夢だって、コントロール出来ないのならば外れることもあるのだ。
先輩がヨーコさんになにやら言い訳をしている。
ヨーコさんはまだへたったままだ。
こうやって見ると、やっぱり先輩はヨーコさんの事が好きなんだなあと思う。
それに、先輩がいなくなると思い込んだヨーコさんの取り乱し方。
やっぱり、あの二人がお似合いだ。
・・・・・・俺なんかの、入る隙間もなく。
先輩がヨーコさんを立たせ、俺の所に帰ってくる。

379:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/23 22:07:15 xP5TslBB0
「おい、お前が送ってきたんだろ。帰りもちゃんと送ってやれよ。ママチャリで」
へいへいと立ち上がり、また新聞を読もうとしている先輩を置いて図書館を出る。
扉に手をかけた時、先輩が俺に言った。
「あいつの予知は、外れないぞ。だからこそ、素晴らしい」
俺は鼻で笑って手を振った。
帰り道、ヨーコさんはなんだか申し訳なさそうだった。
騒がせてしまったことが少し恥ずかしいらしい。
なんだかおかしくなって、俺はくすくす笑った。
ヨーコさんも、ちょっと拗ねたようにして、でもやっぱり笑った。
ヨーコさんのマンンションに着く。
自転車を降り、髪を直し、服を正してから。
「またね」
と言って、ヨーコさんは微笑んだ。

数日後、俺はヨーコさんから、先輩が失踪した事を聞いた。

先輩とヨーコさんと俺と失踪 終

380:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/23 23:12:01 KGYPgfkj0
>>374
そーだったっけ。既にCは登場してたんだ

381:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/23 23:15:18 1Q1HgmAmO
俺シリーズ良いね~
長さを感じさせない内容だった!

382:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 06:37:50 bUJ1oxcd0
稲男乙

383:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 11:20:56 4ycDA5qZ0
メリーさんAがあらわれた!
メリーさんBがあらわれた!
メリーさんCがあらわれた!
メリーさんDがあらわれた!
メリーさんEがあらわれた!

俺は逃げだした!

「私メリーさん。今あなたの後ろにいるの」

しかし回り込まれたしまった!



384:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 11:23:52 4ycDA5qZ0
 自宅への帰宅途中、俺の頭の中では奴に相談された話が混沌と渦巻いていた。
 帰り際にかっくらったビールは今まで生きてきた中で最もまずく、思わず吐き捨てたくなるほどだった。
 おまけにたった一口しか飲んでいないのに頭がくらくらして嫌な胸焼けまでする。
 頭を押さえて舌打ちをしながら緩慢な足取りで帰路を行く。



385:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 11:43:49 4ycDA5qZ0
『…………』
 思わず口を開き─けれど言葉は出なかった。
 言われたことの意味が分からなくて……いや、もちろんどっちの単語も理解はできる。だがあまりに現実味がなくて。
 冗談にしてもマジにしてもすこぶる性質の悪い話だと思った。
『……ごめんな。信じらんないよな……』
「あ、いや……』


386:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 11:49:31 4ycDA5qZ0
 特に失望したような様子もなく、きっと俺のリアクションが予想の範囲内だったのだろう、奴はすまなそうな顔をする。
 正直……まるで対応の仕方が分からなかった。
 現実的に考えて行方不明ならば事件か何かで完全に警察の仕事だ。



387:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 11:52:30 4ycDA5qZ0
 本当にメリーさんという幽霊(人形?)に殺されたり消されたりしたのなら……それもそれで警察か霊能者の仕事だろう。
 何故近頃まったく会っていなかった俺にわざわざ連絡を取ってまでそんな話をしたのか、少しも奴の思考が読めなかった。

388:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 12:27:55 4ycDA5qZ0
『え…っと……と、とりあえず話を簡単に整理してくれよ。悪い、俺も混乱しちまってさ……』
 奴は両手で持ったグラスに目を落としながら話し出す。
『妹…お前も知ってるだろ、あいつが一週間くらい前にいなくなった。部屋の状態から考えて、警察は事件の可能性が高いって言ってる』
『あ、一応警察には届けたんだな』


389:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 12:40:13 4ycDA5qZ0
 メリーさんとか言い出すから、てっきり警察にも届けずに騒いでいるのかと思ってた。
 というか警察が事件の可能性が高いっていうくらいだから、こいつが勝手に怪談話を信じ込んでいるだけなのかもしれない。
 奴は一度じとりとした目を俺に向ける。思わず怯むと、目を逸らして奴はまた話し始めた。


390:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 12:44:26 4ycDA5qZ0
『部屋には争った跡みたいなのがあったからな。メリーさんなんてオカルト話より、現実的な線で捜査を進めるのは当然だとは思う』
『……もしかして、警察にもメリーさんの話……したのか?』
『そりゃあな。あいつもいなくなる前には異常に怖がってたし、それに……』
 そこで一旦言葉を切ると、目を閉じてしばらく考えるような表情をした後、奴はまた口を開いた。


391:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 13:26:54 PnpKkKfOO
赤緑は登場人物が延々と状況説明をしてるだけ。
漫画の説明キャラしか出て来ない。
「お前は転校して来たばっかりで知らないだろうが、この学校は…」
みたいな、それだけで成り立ってるそんな感じ。

392:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 13:42:33 XnxSdlcyO
>>379
やり過ぎじゃないの?
二次創作よりたちが悪い

393:1:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 15:27:51 W0BiH2uiO
懲りずに自演か

394:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 16:29:20 4ycDA5qZ0
『何が手がかりになるか分かんないから話さないわけにはいかないだろ』
『まあ……そういうもんか』
『私はな……ストーカーか何かなんじゃないかと思ってるんだ』



395:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 19:58:38 6bMnPPQ70
メリーさん・・・w

396:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 21:36:29 qas1knto0
>>379
最初の方のしか読んでないけど、流石にこれはないわ

397:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 22:00:46 XKtFUXmi0
>>379
ひでえパクりwwww
さすがに恥を知れと言わざるを得ないww

398:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 22:42:35 bDfqTz8k0
>>396-397
俺は読みたいので、お前らは見なければいいからレス不要にしてくれ。
じゃなければ、あぼーんすりゃいいし。

399:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 22:50:47 qas1knto0
>レス不要にしてくれ。
お前は何を言っているんだ

というか、俺は別に作品自体は嫌いじゃないぞ
尊敬するのはいいし、雰囲気を似せるのもいいが、パクリは駄目だろう。

400:のりぴっぴ
10/10/24 22:53:07 2eBsF7wLO
>>398
パクり だめ ぜったい!

401:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 23:10:03 4ycDA5qZ0
ストーカー。オカルト話を信じ切っていると思っていた奴の口から漏れたその現実的で危険性の高い言葉に、俺は目を見開く。
『メリーさんってのが比喩か何かで、ストーカーのことを指してるんじゃないか……って、そう思って色々調べたんだよ』
『……だから俺が知ってるメリーさんのイメージみたいなのを聞いたのか』


402:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 23:13:50 4ycDA5qZ0
『メリーさんの特徴的な印象が犯人に繋がってるかもしれないから……悪いとは思ったけど、お前なら真剣に聞いてくれると思って』
 そう言うと奴は突然立ち上がり、先ほどとは打って変わって声のトーンを上げ、
『悪かったなっ、久しぶりに会ったのに辛気臭い話しちまってさ。今度また飲み直そうぜ。ここは多めに払っとくから、せめて腹膨らませて帰ってくれな』
『あ、おい!』
 止める間もなく、奴は万札を置いて風のように消えて行ってしまった。放心した後、俺はグラスのビールを一気に煽り立ち上がった。



403:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 23:52:07 /Y2YTpUYO
>マンンション
クソフイタwwwwww

……しかしなぁ「失踪」「予知」「夢」「図書館」はいくらなんでもアウト
最早パクリの域に達してるだろw
もしくは、師匠シリーズから言い回しと設定だけ借りたオナニー小説

404:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/24 23:54:07 G6P0Y6/1O
そんな今更…

405:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 00:43:21 M/Oy0IlO0
一話目はウニ臭いけどおもしろい!って感想だった
今はウニのモロパクりじゃねーか!って感じ
いや、おもしろいのは変わらないから俺は良いけど
人によっては反感買うだろう

406:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 02:11:34 R3VxSvNQ0
どっかで見たような絵柄だけどそこそこ面白いと思ってたマンガのトレパク騒動を見てしまった感じ

407:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 03:01:14 D6WaK1a0P
それでも確か「実話」ベースなんだよね…?

408:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 04:51:49 PfLRoEhY0
ナナシとか研究生の作者の話は面白かったな

409:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 06:51:20 EkadK0q80
>>406
フェアリーテイルのことかーーー

410:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/25 08:34:13 FQiYgIdoO
演出はかなり過剰にしていますが、話に登場する人物は全て実在の人物を基にしていますし、話の筋自体も実際にあった話を下に敷いています。
まあ実際のところは「頭のおかしい先輩とやたら勘のいい電波ちゃんと馬鹿な俺」って感じだったのですが。
今回の話もかなりの部分が盛られているのですが、先輩の失踪とそれを言い当てたという部分は実話ですから、パクリと言われようと筋を変えるわけにもなあと思い大筋の変更無しで投下しました。

411:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 08:42:36 R4oL3ubHO
ほら、わざわざ弁解しちゃう
実話だろうが創作だろうが面白けりゃ関係ないのによ
いちいち実話だってことを知らせなくてもいいのにね?w

そんなに自分語りしたくて堪らないのかな?パクリ野郎さんは?

412:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 09:32:24 3cnp1oea0
いねおとこくん。

煽りは気にすることは無いよ。

煽りが入ると言うことは、面白いということだw

413:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 09:46:41 z3TAS/vpO
最初は良かったのに相当レベルが落ちたよ

414:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 11:23:13 aPFFQqxx0
嫌いになったのなら黙ってNGにでもしろよ。
好きで読んでる人間もいるんだから、煽りとかでエタられることになったら困る

415:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 12:56:53 EkadK0q80
多分それ目的でやってんじゃないかな。
作者を追い出してスレを潰したい輩がいるようだしね。

416:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/25 13:06:07 nN00/r9EO
 写真Ⅰ
 
ジムの終わり、見てもらいたいものがあるんですと言ってBが取り出したのは写真だった。
Bは大学の友人グループで心霊スポットに行った時に起きた、ちょっとした霊障を解決して以来、
霊感持ちだということが噂になり、時折相談を持ち掛けられるようになったそうだ。
写真の鑑定もその一つで、判断に悩むとこうして俺に写真を見せてくることが度々あった。
「最近の写真だそうです」
そう言ってBが見せたのは、大学生らしい青年がサッカーをやっている写真だった。
写真から受けたイメージは、『べったりと張り付く』。
被写体となった青年は、今正にボールを蹴ろうとしているような姿勢をとっている。
恐らくは写真に写っていないゴールに向け、シュートを打とうとする瞬間なのだろう。
シュートは決まったのか? 外れたのか? と考えさせるような写真で、写真の良し悪しが分からない俺にも、
「よく撮れてんなあ」
と思わせるようなものだった。
「そうですね、けれど惜しむらくは、」
「うん」
その時、俺とBの視線は恐らく同じところを見ていた。
「欠けていること」
写真の中の青年には、左足が無かった。
左耳から、かり、という音がした気がする。

417:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/25 13:08:27 nN00/r9EO
Bの話を総合する。
写真はサッカー部だかサッカーサークルだかに入っている男、つまりは被写体になっている男から受け取ったものだ。
よく遊ぶグループではないが、以前からよく声を掛けられていたため、内心またかと思いつつも、つい鑑定を引き受けたらしい。
こういった体の一部が透明になった写真は、なんらかの予兆であることが多いのだが、
今回の写真はどうもそういったものでは無いような気がしたために、こうして俺に相談してきたとのこと。
加えて、Bが写真を見せられた時に聞いた話が面白い。
「この写真、最初は普通だったそうです」
今にもボールを蹴ろうとする後ろに振り上げた足と、そして軸足とが最初はしっかりと写っていたそうだ。
それが今は無い。
「どうしてか分かります?」
「いや、駄目だ。ただ、何かあることだけは分かる。本人に何か変わったことはない? 左足が何かおかしいとか」
「……左足に何かがついている気はしましたが」
Bは悩むように顔を俯けた。しかし、感じたものが頭の中で纏まらないのだろう。
その様子を見て俺は言った。
「会ってみるか」
好奇心が刺激されるのだ。怖いもの知らずとか、怖いもの見たさとかではない。単純に、知りたいと思ってしまう。
怖い目には出来るだけ逢いたくないとか、取り憑かれたくないとか、それとは別の次元で知りたい経験したいと思ってしまう。
「そうなると……明日は暇ですか?」
Bは携帯を取り出し、メールを打ちながら言った。
「夜までは暇だな」
こうして、被写体の彼に実際に会う事が決定した。

418:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 13:08:35 XNeFVBb90
自分でここまで読まれるほどの文才もないくせに
文句だけいう奴って最悪。
しかもあぼーんすら出来ないならくるなよ。



419:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/25 13:10:14 nN00/r9EO
翌日夕方、俺はBと一緒に被写体の彼の家に行くことになった。
被写体の彼は独り暮らしで、大学近くの小さなアパートの一室が彼の部屋だった。
呼び鈴を押すと、彼はすぐに出て来た。
「……こんちわっす。……この人が?」
軽く挨拶をして、彼はBに尋ねた。
何だか無愛想だなと思ったが、霊感があるという他人なんて胡散臭いものだよなあと考え、気にしないことにした。
Bの紹介なんだから、と思わなくも無かった。
「そう。入っても大丈夫?」
「じゃ、スイマセン。今日は宜しくお願いします」
小さく頭を下げられたので、いやいやと言って俺も軽く頭を下げた。
 
その時、今まで何回か見たことがあるものが彼の左足に見えた。
夜に働いている時に何度か見た事があるもの。
一瞬、困惑した。それは本来彼に憑くはずのものでは無かったから。
けれど、それが彼に憑いている事こそが、そのまま今回の核心を物語っていた。
ああ、そういうことか、と。
それを理解して、俺は胸が悪くなった。


420:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/25 13:13:53 nN00/r9EO
部屋に入り、とりあえず全員座ったところで、彼はおずおずとこちらを見た。
「それで、何か見えます?」
単刀直入に言うことに決めていた。部屋に入って五分も経たない内に、俺はもう帰りたくなっていた。
「死霊」
え、と被写体の彼が言うと同時に、Bもはっとして俺を見る
「形は」
「赤ん坊だな」
『それ』は今、座った彼の横に居た。俺はBに教えるようにそれを指差し、Bはそちらに目を向ける。
ややあってBの綺麗な眉が吊り上がる。
その反応から、彼女も俺と同じものを見て、同じことに思い至ったことが知れた。
「え、なんすか、なんすか!」
Bの反応を見て、被写体の彼も怖くなったのだろう。声を荒げる彼を見て、俺は白々しいと思った。
「何かって水子だよ。君さあ、子供堕ろさせただろ」
何度か見たことがある。仕事で水商売の人と接した時などにたまに見るそれが、彼の左足に憑いている。
被写体の彼は泡を食ったようにいや、と小さく呟く。
「病院でまっとうな方法で堕ろさせたのか、それともまともじゃない方法で堕ろさせたかは知らないけどさあ」
言いながら、十中八九後者だろうと俺は思っていた。
Bは後者には思い至らなかったようで、驚いたように俺を見た後、更に険を増した表情で被写体の彼を見る。
「母親はこの写真を撮った人だな?」
被写体の彼は怯えたように頷いた。
「その人、今どうしてる」
彼は言い訳じみた言葉をもごもごと言ったあと、小さく知りませんと答えた。
舌打ちをする。
「水子供養。それとその人に謝り倒せ。じゃないとヤバい」

421:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/25 13:17:17 nN00/r9EO
下手をしたら『その人』はもう死んでいるかもと考えたが、次の瞬間にはそれは無いと思い直した。
『その人』が死んでいたら、この程度で済む訳がない。
俺の言葉に被写体の彼はいや、でも……などと泣きそうな顔で言うだけだった。
「じゃあ知らねえよ」
吐き捨てて俺はBを促し立ち上がった。
もうこの場に居たく無い。彼の左足に憑いている崩れたそれを、視界に入れたく無い。
「無理です、勘弁して下さい」
被写体の彼が泣きそうな顔で言った。
「だから」
「無理ですよ! 何とかして下さいよ!」
俺が物を言う前にBがキレた。
殴りかかったと一瞬勘違いする程の剣幕で被写体の彼の胸ぐらを掴み上げ、無理矢理立ち上がらせる。
「ガキかお前は! 自分でやった事だろうが!」
耳が痛くなるくらいの大渇。Bは突き放すように被写体の彼の胸ぐらから手を外すと大股で部屋を出ていく。
被写体の彼は大声を挙げて泣き始める。俺は何かを言おうとしたが、
「なんで俺が」
という嗚咽混じりの言葉を聞いて、諦めた。彼に言う言葉は、何も無い。
もう立ち去ろうと踵を返した俺は、部屋を出る前にもう一度だけそれに目を遣る。
左耳から、かりかり、と二度音がした。

422:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/25 13:20:21 nN00/r9EO
数日後のジム上がりにBが小さな声であの事に触れた。触れたと言っても、一言だけだが。
それまでは俺達の間で、あの事に関する話は全く出なかった。
「すいませんでした」
あの話について、Bが言った言葉はこれが最後だった。
「気にすんな」
俺はそう言って、コーラを飲んだ。ビールが飲みたいな、と思った。
 
被写体の彼がどうなったかは、あれから数年経った今でも知らない。

423:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/25 13:41:26 nN00/r9EO
書き忘れてたw

 写真Ⅰ、了。

 
短くまとめるつもりが結局この長さに……なぜだ

424:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 13:43:39 oWLx7Vg/0
>>423
おつー
読ませるための描写その他が長さに直結?
まぁ短くまとめすぎるのも味気ないので個人的にはバランスよいかなと

425:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 13:47:05 3cLcoEBh0
乙、今回も面白かったよ

俺さんの話は大抵当事者のその後の結末は分からないままなんだね
考えて見れば呪われたり取り憑かれたりした人物のその後を追っかけるなんて
気が滅入る事したくないもんなぁ


426:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 16:48:27 PfLRoEhY0
>>423
おっつんです。
因果応報ってのもこういう形で表れると怖いね。

427:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 17:36:11 jCwDCOS4O
>>423
もったいぶった言い回しを多用するから長くなるんじゃないか?

428:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 21:07:06 TKAIK0Px0
>>423
>短くまとめるつもりが結局この長さに……なぜだ

ハードボイルド調で書いたらどうだ?
いわゆる、乾いた文体と言うやつ。

429:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 21:35:30 6mJcdFWW0
今考えるとあいつ、かなり切羽詰ってる感じだったな……。
 そこまで特別に妹との仲が良かったわけじゃないと記憶してるが、やはり肉親がストーカー被害とかでいなくなれば落ち込むものか。
 メリーさん……。


430:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 21:36:32 6mJcdFWW0
 都市伝説とあいつの妹の蒸発……一体どういう関係があるのだろうか。中途半端に聞かされただけだとどうにも歯がゆい。
 人形…電話…あなたの後ろに……
「!!」


431:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 21:37:51 6mJcdFWW0
 背筋が急に薄ら寒くなり、慌てて後ろを振り返る。
 ……もちろん何もいるわけはない。街灯で等間隔に照らされた暗い夜道が続くだけだ。
 やはり大人になっても作り話だと理解していても、何か得体の知れない存在がいるかもしれないと思ってしまうのは人間の性なのか。
 バカバカしい。明日も仕事だ。早く帰って寝、
 ─急に携帯の着信音が鳴り響く。


432:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 21:39:07 6mJcdFWW0
 タイミングがタイミングだけに心臓が口から飛び出しそうなほどに跳び上がり、激しい動悸に襲われながら犬のように息をする。
 震える手で携帯のディスプレイを見れば、なんてことはない、あいつからの電話だった。
 マジで死ぬかと思ったじゃねえか……。何か言い忘れたことでもあったのだろうか、とりあえず文句を言わなければと通話ボタンを押す。


433:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 21:56:05 IEqqSRNK0
>>423
推敲に推敲を重ねるんじゃああああああああああああああああああああ!!!!

434:1/4
10/10/25 22:06:27 FPmbdacs0
皆さんの投稿を見ていると私も何か色々と書いてみたくなったので便乗して……。
初投稿ですがヨロシクお願いします。

『かまいたち』


私が以前住んでいた地元に仲の良かったお婆さんがいました。
田舎だったので近所同士の付き合いが深く、そのお婆さんの家も近所だったので、
よく私も犬の散歩の途中や、出掛けた帰りに彼女の家に立ち寄らせてもらい、
二人暮らしだという娘さん(50歳前後?)に厚かましくもお茶菓子等を出してもらっては
それをいただきながら色んな話を聞かせてもらいました。

そのお婆さんというのが怖いもの好きというか好奇心旺盛で、
白髪で細身ですが背筋はいつもしゃんと伸ばして、凛とした佇まいが印象的でした。
また性格もしっかりしていますが優しく、若々しい赤フレームのメガネが似合うお洒落さんでもありました。
(今思うとサマーウォーズのお婆さんがそっくりです)

ただ、
どういう理由か聞けないままですが、彼女には両腕が無く、
ビシリと着こなした和服もその袖だけは、いつも彼女の両肩からだらりとぶら下がっていました。
生まれつきでは無い、らしい、とだけ私の母が何故か知っていましたが……。

ちなみにさっきから過去形で書いてますが、まだ御存命(のハズ)です。引っ越してから全然連絡とっていないんです。

435:2/4
10/10/25 22:07:14 FPmbdacs0
さて本題なのですが、
そのお婆さんとは別にもう一人、よく顔を知ったご老人が近所にいました。
たぶんお婆さんと同い年くらいのおじいちゃんで、いつも玄関先で椅子に座って、ラジオを聞きながら日向ぼっこをしていました。

そのおじいちゃんというのが、歩いている姿を見かけるのがかなりレアで、
たまに見かけても杖を突いてプルプルしながら歩くので、見ていて不安で仕方ありませんでした。
足が悪いのだろうかと思い、ある日お婆さんに、それとなくそのおじいちゃんのことを聞いた時、
実は結構仲が良いらしいお婆さんはそのおじいちゃんの足について教えてくれました。

「あぁ、○○のおじいさんねぇ……」
と言ってお婆さんは少し迷うような表情を見せたあと、
「『かまいたち』って、知ってる?」
と、逆に私に質問を返して来ました。
このスレにいるような皆さんだと知らない人は少ないでしょう。知らない人もググればすぐわかるかと思います。
(念のために説明すると、屋外にいる時に何も無いのに突然身体の一部に切り傷が出来る現象で、
それがそういう名前の妖怪の仕業とも、そういう名前の風の仕業とも言われているのです。
地方によっては違うこともあるかもしれませんが、おおかたこのような感じで合っていると思います)

で、その『かまいたち』ですが……。
恐らくその構造はとても単純なもので、道に飛び出した植物の枝葉等に気付かぬ間にかすって切れてしまい、
それがしばらく歩いた後、何も無い場所でひりひりと痛みはじめ、そこで初めて傷に気が付くため、そんな噂ができた……。
と、きっとそういうものでしょう。

私はお婆さんの質問に頷いた後、でもあれって、と言って同じようなことをお婆さんに話したと思います。
しかしお婆さんは私の話をしっかり聞き終えて、それから言うのです。
「う~ん。……いや、『かまいたち』は本当にいるのかも知れない」

436:3/4
10/10/25 22:08:09 FPmbdacs0
私は首をかしげましたが、お婆さんは続けました。
「あのおじいちゃんはねぇ、『かまいたちに』やられたんだよ」

曰く、昔そのおじいちゃんが道を歩いていた時、突然足に力が入らなくなったかと思うと、そのまま倒れてしまい、
見ると右足の膝下(すねの部分)の前半分が、まるで刃物に切られたように半月型に削り取られていたというのです。
おじいちゃんはその瞬間ようやく激痛に気付いたらしく、声にならない声で絶叫し、
自分の身体の下に広がる血だまりと、近くに転がる切り取られた半月のすねを見てただうろたえるしかなかったというのです。

私はその話を聞いて絶句しました。
今でもあのおじいちゃんの右すねの前半分は、まるで食べ終えたスイカの皮のように半月型に欠落しているというのです。
そういえば夏場でも長ズボンを履いてたような……、
そしてあの長ズボンの下の足を一度も見たことがないことも思い出します。

しかしそんなことが本当にあるのでしょうか。枝葉では説明が付かない『かまいたち』。
でもお婆さんは人を楽しませるのは好きですが、そのために嘘くような人ではなく、
まして他人に関することで嘘を交え、それを第三者に娯楽として提供するようなことはしない人です。
その時の私も、お婆さんが嘘を言っているようには思えませんでした。
そして同時に思ったのです。
「(はは~ん、もしやお婆さんがそのおじいちゃんにからかわれているのでは?w)」

437:4/4
10/10/25 22:09:03 FPmbdacs0
お婆さんの語り口調からして、
彼女は実際に、少なくともそのおじいちゃんの現在の傷跡は見たことがあるような口ぶりに感じました。
なので、おじいちゃんが別の理由で出来た大けがを、自虐的にお婆さんをからかう材料に利用したのではないか……
と思ってお婆さんに尋ねます。
「おじいちゃんが昔何の仕事をしてたか知りませんが、もしかして機械か何かで誤ってしてしまった大けがを
後になって『かまいたち』ってことにしてお婆さんをからかった……ってことはありませんか?」
するとお婆さんは「や~ね~w」と笑いながら、
「あのおじいちゃんは人をからかうような人じゃないわよw」
と言うのです。そしてすぐに今度は、
「それにね」
という言葉。
あ、まさか……とその接続詞の続きを思わず先読みします。
そして先読みの通りでした。
「それにね、それが起きた時、私一緒にいたの。他にもたくさん一緒にいたの……」
私の背筋にゾクゾクと嫌な感覚が走りました。見てたのか、そうか……。
「皆見てるの。覚えてるの。あの日おじいちゃんのすねが、何もないのに突然切り取られた瞬間を……」
足に力が入らなくなってとか、うろたえるしかなかったとか、そういうおじいちゃん視点の話は、
後からお婆さんがおじいちゃんに聞いた、当時の感想らしいのです。
先に聞いた話がおじいちゃん視点だったから、私はてっきり全部お婆さんがおじいちゃんから聞いた話かと思っていたのです。

私は、今ではのんびりと暮らしているおじいちゃんの能天気な顔を思い出し、何とも言えない気持ちになりました。
そしてお婆さんはそんな私の様子を伺った後、
伏し目がちに畳の何処かを眺めながら、ゆっくり呟いたのでした。
「……『かまいたち』は本当にいるのかも知れない」

438:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 22:15:33 6mJcdFWW0
「もしもし。どうし」
「私メリーさん」
 時間が一瞬止まった気がした。声が出ない。


439:1/5
10/10/25 22:35:58 FPmbdacs0
シリーズであることを主張するためにもう一話

『列車事故の夢』


これも同じお婆さんから聞いた話です。

ある日、お婆さんの家にお邪魔した時、何となくいつもよりご機嫌な感じがしました。
二人暮らしだという50歳前後の娘さんがお茶を入れてくれた時も、
お婆さんはお茶を入れている娘さんの方に歩いて言っては、娘さんと「いいからいいから」とか何とか話していたかと思うと。
いったいどうやって持っているのか、お茶を乗せたお盆を器用に持って、ニコニコしながら私のもとまで運んでくれたのです。
思わず手助けしようと立ち上がりかけましたが、その時も「いいからいいから」と言っていました。

その晴れやかな様子にいつのまにか私も気分が優れ、何となく柔らかい感じでお婆さんに言いました。
「お婆ちゃん、今日はなんだかご機嫌ですね! 何かいいことあったんですか?」
するとお婆さんは「ん~?w」とまたニコニコしながら一度返事をし、それから言うのです。
「昨日の夜はねぇ、嫌な夢を見なかったのっ」
嫌な夢を見なかっただけでこんなご機嫌なんて、いつもどんな夢見てるんだ!? と思っていると、
お婆さんの方から、まだ話したこと無かったわねぇ、と言いながら、いつも見る奇妙な夢の話を教えてくれました。

440:2/5
10/10/25 22:37:18 FPmbdacs0
お婆さんは昔から、それはもう何十年も前から、ほぼ毎晩『列車事故の夢』を見るのだそう。
それも決まって死亡事故であり、夢の中で事故に遭う人が実在する知り合いの時もあれば、知らない人の時もあるというのです。
また何となく、いつも夢の中の自分は自分(そのお婆さん自身)ではないような気がするとも……。
そして夢の中の「私」(=お婆さん)はいつもその瞬間をハッキリと目撃するのです。

ある時は「私」が列車の先頭車両から前方を眺めていると、知り合いが線路上に立っていてそのまま轢かれてしまう夢。
またある時は「私」は列車の外におり、目の前で知らない誰かが木端微塵になる夢。

そのどれもがあまりにリアルであり、赤い血潮やぐちゃぐちゃの人体も、夢だと言うのにモロに描写されているというのです。
そしてそれを何十年もの間、ほぼ毎日見ている……。
……だからこういう、そんな夢を見なかった次の日は、いつも機嫌がいいの。
そんなの中々無いことだから。
お婆さんはそんな話を、とても穏やかに微笑みながら私に話すのです。
「せっかくご機嫌良かったのに、変な話を聞き出そうとしてスミマセン……」
畏まると、お婆さんは「むしろ聞いてくれる?」と言って私を見つめます。
私はまぁ何だかんだ言って話の内容自体には非常に興味を持ったので、お婆さん問いに了承し、続きを聞きました。

441:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 22:38:20 6mJcdFWW0
「今、北江公園の前にいるの」
「……お……お、おお、おいおいおい……ははっ、げ、げ、幻滅だぞ。このタイミングでそんな冗談……」
「今、あなたの方に向かって全速力で走ってるの」
「言……い……、…………」


442:3/5
10/10/25 22:38:29 FPmbdacs0
それでね、と付け加えられた続き。

「私」は夢の中で何人もの事故死した人々を見てきました。
時には複数人が一度に轢かれて亡くなることもあったし、列車自体が脱線やらで、乗客のほうが犠牲になることもあったそうです。
そして「私」は必ず、それらを助けることが出来ないのです。
ホームに落ちた人に、現実の「私」には無い手を差し伸べたことも何度もあったそうですが、それでも列車の到達には間に合わず、
そういった人々も皆あっと言う間に、「私」の目前で肉塊に変わって行った……。
あまりに近くで見た時は、夢のはずがニオイまで感じることもあるというのです。

お婆さんの話を聞きながら、私は適当なタイミングでお茶に手を伸ばしては、
「いつもそんな夢を」とか「大変ですねぇ」とか、そんなような相槌を打っていたように思います。
しかしお婆さんの話がまた一区切りついた時の「つらいですよねぇ」という私の相槌に、
彼女は首を横に振ったのでした。
「列車事故で誰かが轢かれて亡くなっても、所詮は夢の中の出来事なのよ。私が本当につらいのは」

お婆さんの言うそれは『列車事故の夢』を見ない日と同じくらいに、あまり多く見ない、稀な夢。
だけどそれは、『列車事故の夢』の一種で、『列車事故の夢』の別パターン……。
お婆さんはその夢こそ本当につらく、本当に怖いのだそうです。

443:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 22:38:58 6mJcdFWW0
もう、本当に言葉が出ない。さぁーっと体温が下がっていくのが分かる。手が汗でヌルヌルする。背中が冷や汗で気持ち悪い。
 そういえば……北江公園って……この近く。そう─さっき数分前に前を通ったばかりの……。
 待て、待て待て待て待て。さっきこいつなんて言った!?

 今、あなたの方に向かって全速力で走ってるの─。



444:4/5
10/10/25 22:39:21 FPmbdacs0
それはね、と付け加えられた続き。

それは、夢の中で「私」の目の前で列車事故が起き、そして誰かが轢かれそうになった時に、
轢かれそうになったその誰かが、間一髪で、助かってしまう夢……。

そんな夢を見た日には、お婆さんは気が気ではなくなってしまうのです。
何せ、夢の中で助かってしまうと、ほぼ例外なく、近く現実で列車による死亡事故が報道されるから……。

それが夢の中で助かった人と同一人物ということは無いし、事故の大小も夢と現実で対応しているわけでもない。
ただ夢の中で人が助かってしまうと、早ければ翌日にも現実で死亡事故が起きるというのです。
本当に「まさか」と自分でも思う程の確率で……。
そしてそれは日本国内における事故のみに当てはまり、また、人が死なない事故の前には助かる夢は見ない。あくまで死亡事故のみ。
私でも知っているような有名な列車事故を思い浮かべ、「じゃああの事故の前も?」「あの事故の前も?」と尋ねていくと、
ことごとくお婆さんはぐっと口を結んだまま真剣に頷くのです。

お婆さんはその日初めて見せた暗い表情で言いました。
「私の見ている『列車事故の夢』はきっと、現実で誰かが列車事故で亡くなってしまう身代わりなのかもしれないねぇ」
いつもは夢の中で誰かが代わりに死んでくれるから、現実では人が死なずに済む……とでもいうのでしょうか。
そしてそれは一種の予知夢と呼ばれるものとは、少し違う印象に私には受け止められました。
お婆さんが自分で言うように、もし『列車事故の夢』が現実の事故の代わりに起きているとしたら、
それは彼女が現実での犠牲者(になるはずだった人たち)を助けていることになるのでしょうが、私は「逆だ」と思ったのです。

お婆さんの夢の中で誰かが助かってしまったから、身代わりに現実で誰かが連れて行かれてしまう……、の、では? と。
自分のその考えに、寒気を感じて何となく身体を縮めます。

445:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 22:39:35 6mJcdFWW0
ふと携帯を見ると着信が一見有った
確認をしてみると実に妙な事が書いてある。
『件名 私メリーさん』
『内容 このメールを見て振り向いたときアナタは――』

『死ぬ』



446:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 22:40:09 6mJcdFWW0
振り向いたら、死ぬ。実に奇妙な話だ。
私は横目で周囲の様子を確認した。
(……紫鏡には何も写ってはいない)
人面犬も変わった様子はない。鼻には特に異常を感じてはないようだ。


447:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 22:40:38 6mJcdFWW0
(やはり、イタズラか……)
そう自嘲すると、私は連れのカシマさんに声をかけようと後ろを向いた。
振り向いた私の目に、とても奇妙な光景が見えた。
少女が笑っていた。それも、顔だけで。


448:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 22:41:26 6mJcdFWW0
金髪の、年端もいかない少女の顔が虚空に浮かび、こちらを見て笑っていた。
いや、顔だけではなかった。
首から、肩、手や胴体がうっすらと浮かび上がってくる。


449:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 22:42:21 6mJcdFWW0
(な、なんだコイツは? さっきは、確かに! 何もいなかった筈!)
私は反射的にカシマと人面犬を突き飛ばした。
「カシマ! 人面犬! あぶない!」



450:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 22:45:48 6mJcdFWW0
ガォン!!!

「な、なんだ!クチサケ! どうした!?」
「……クチサケは、粉みじんになって死んだ」



451:5/5 規制ウザッ
10/10/25 22:47:55 Nd1B9xf2O
投稿しすぎと言われた続き


妙な雰囲気になってしまい私が黙っていると、お婆さんはまたいつの間にかニコニコとした表情に戻っていて、
「聞いてくれてありがとね」と言って私に優しく微笑みかけ、またどうやって持ったのか器用にお盆を持ち、
私の呑み終えた空の湯飲みを台所へと運んでくれました。


お婆さんの見る『列車事故の夢』が、現実に影響している可能性についてですが、
今となってはもちろん、そんなこと丸々信じているわけではありません。馬鹿げているとまでは言わなくとも。

しかし彼女の性格や口ぶりから、実際に起きた事故をネタに話を「作った」ような不謹慎な印象は感じられなかったので、
彼女がいつもそういう夢を見ていることや、助かる夢の後にだけ現実で事故が起こる話に関しては、
私は今でも信じています。偶然では?……とは思いますが。


そして今これを書いている時に、何となく、ふと考えたこと……。
いまでも彼女は、はたしてそんな『列車事故の夢』を見続けているのでしょうか。
今夜も彼女は、そんな恐ろしい夢を見るのでしょうか。
そして今日の人は、夢の中で、
死ぬのか。
助かるのか。
さて。

452:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 22:54:54 6mJcdFWW0
カシマと人面犬の前に一人の少女が立っていた。
青白い顔をした、酷薄な笑みを浮かべた、ワンピースの少女。
その手には携帯電話が握られている。
そしてその足元には、足が転がっていた。


453:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 22:59:58 u1L0BLEq0
>>451
シリスレデビューおめ!2本ともいい感じでした
両腕がないお婆ちゃん(でいいのか)全然暗くないんだね
また書いてね

454:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 23:10:35 6mJcdFWW0
太ももから上が綺麗に無くなっている、綺麗な両脚。
カシマにはそれが誰の脚なのか理解したが、それを受け入れる事は瞬時には出来なかった。
「お、おいクチサケ! どこにいるんだ! クチサケ!」
カシマの空しい叫びが辺りに響く。


455:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 23:17:48 IEqqSRNK0
>>451
乙!
変なの対策とかできてるけど、このスレの調子は分かってるのかな?
今後ともよろしく

456:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 23:18:25 DQo4BaVlO
>>453 その気持ち悪い略初めて聞いた。何か他に略しようがないのかw

>>451 乙です

457:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 23:38:17 u1L0BLEq0
>>456
すまぬ
普段「シリスレ」って心ん中で言ってるもんだから
普通に「シリーズスレ」ですな

458:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 23:44:37 6mJcdFWW0
人面犬が情けない声で鳴いた。
少女は彼らに納得させるように、あるいは覚悟を決めさせるかのように、
ゆっくりと、地面に転がっている脚を掴んで、持ち上げた。
そして、口の端を歪めて微笑み、彼らに告げた。


459:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 23:45:58 6mJcdFWW0
「もう一度言うわ。クチサケは粉みじんになって死んだ」
「な、なに!?」
少女が脚を携帯電話の液晶に近づけると、次の瞬間、脚が画面へと吸い込まれていった。


460:便乗者 ◆iWdAqLU3ds
10/10/25 23:51:00 FPmbdacs0
てs

461:便乗者 ◆iWdAqLU3ds
10/10/25 23:52:42 FPmbdacs0
おぉー、これがトリとかいうものですか!
読んで下さったみなさんありがとうございます。

>>453 また数分後か、数年後か、投稿したいと思います。
>>455 実は最近少し覗く程度でしか来ていなかったので、実は現在ここがどのような状況か知りません……。
>>456 個人的にはちょっと良いなと思ったのですが>シリスレ

462:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 23:53:04 6mJcdFWW0
「私の携帯は、私自身も知らないけど亜空間に通じているの。クチサケはそこに放り込まれちゃった」
少女はそう言いながらもう片方の脚を掴むと、同じ様に液晶に押し付け、消し去る。
「思い上がりは消さなければいけない。私以上に知名度がある都市伝説の輩なんて――だから消した」


463:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/25 23:58:04 1wphH8Ov0
数年後・・・せめて数週間後とかでw

464:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/26 01:28:06 SREa8rIj0
>>461
面白かった。ありがとう。
変なのは無視でおけ。
またよろしく。



465:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/26 06:18:07 v0DOZqn80
>>418
ヒント:叩いてる奴はこぞって単発ID

466:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/26 07:04:21 PVzNj+liO
どーせ何回も書き込んだとしても「粘着乙」じゃないか!

と、まあ、冗談はどうでもいいとして…
どんどん職人さん増えて来てるね~
秋だけに大豊作でござる

467:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/26 07:12:42 v+vlz+wCO
このスレで1日に何回も書き込む方がアレじゃないか

468:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/26 12:08:32 +PjPVhmGO
>>461
乙!
凄く読みやすくて面白かった

469:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/26 18:47:43 6aUnUOb+O
出勤前に投稿……
 
 写真Ⅱ
 
 
Bの持って来た写真の被写体の家を30分も経たずに辞した俺は、どうにも腹が減っていた。
崩れた水子を見た後でまともに物が食べられるかは疑問だったが、しかし空腹には耐え難い。されど夜からは彼女と食事する予定がある。
はてさて食うや食わざるや。悩みながら歩いている内、いつもの行き着けの食堂の前まで来た。
「巡り合わせかねえ」
そう思った。被写体の彼宅からの帰り道にここがある。運命の女神が飯を食えと言っているのだろうか。
そんな風に俺が悩んでいると、後ろから声を掛けられた。
「お、今からメシ?」
振り向けば、黒い口紅に黒いネイルに黒い日傘に黒いゴスパン服という正気の沙汰とは思えない格好の女がいた。
日傘を持っていない方の手には珍しくバッグを持っていたが、目付き鋭いその顔は言わずもがな、友人Aに他ならない。
「奇遇だなあ。私も飯だよ」
「飯ってか餃子だろ」
「まな。んじゃとっとと入るか」
こうして俺はなし崩し的に食堂に入ることとなった。
俺はこれも巡り合わせなのだろうと考え、次いで今日はミニカツ丼と半ラーメンにすることに決めた。

470:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/26 18:50:40 6aUnUOb+O
ミニカツ丼と半ラーメンは腹の虫を宥める事に成功した。俺は満足の嘆息を吐くと共に、あんな物を見た後でも人は飯を食えるのだなと人の業について考えた。
一方のAは、開くとちょっとびっくりする位に大きい口にひょいひょいと餃子を放り込んでもぐもぐと食べ、数皿目のおかわりを注文する。
Aはその間にもビールを飲むが、俺は何となく手持ち無沙汰。
そこで俺はところでさあと前置きして、Bからもたらされた写真の話の顛末を話すことにした。
Aはふんふんと頷きなら餃子のおかわりを平らげ、最後にジョッキを開けて息を吐いた。
「大分わかるようになってきたな」
「お陰様でな」
Aのコメントはそれだけだった。それは即ち、俺の今回の働きと推測は概ね間違ってはいないということを意味していた。
オカルタ(Aの好んで使う単語。隠されたものの意であるらしい)への並々ならぬ見識を誇る彼女に認められたと思うと嬉しくはあるが、しかし何だか癪でもある。
敵わないとは知ってはいるが、しかし彼女は俺の年下でもある訳で、何とも微妙な気分である。
「しっかし、巡り合わせかねえ?」
Aは演技ったらしくふむと小さく唸り、相変わらずどこに焦点を置いているか分からない眼で俺を見た。
黒い口紅を塗った口許はニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべており、俺は憮然とすると同時に上等だいう気分になる。
「何がよ」
「いや、私もちょっと心霊写真を実家から持って来ててな。しかも、Bがお前に見せたのと同じ系統の。
 ああ、同じ系統っても桁は違う。怖いぞ? 見るか? 見たいよなあ?」
くふふ、などと笑い声を挙げながら、Bは黒いバッグの中に手を突っ込んでアルバムを取り出す。
俺はお前が見せたいんだろ? と言いたくなったがグッと堪え、Aの写真を待つことにした。
やがて彼女はこれだこれだと言って、しきりにニヤケた笑みを見せながら、俺に一枚の写真を手渡した。
「……ぁ?」
何だ、これは。


471:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/26 18:52:45 6aUnUOb+O
修学旅行か何かの集合写真だ。学生服を着た少年が楽しそうに笑ってこちらを見ている。
無邪気な笑みは本当に楽しげだ。集合写真なのだ、もしかしたら直前まで友達と何かの冗談でも飛ばしていたのかもしれない。
しかし、少年は一人だけだ。
集合写真特有のアングルとでも良いのだろうか。全員が横何列かに並んで、前を向くという状態。
俺にはこの写真の元々の状態が容易に想像できた。なぜなら、彼だけが切り取られたみたいに一人ぽつんと、本当にぽつんと立っていたから。
「なんだ、これ……」
「凄いだろ?」
凄まじい。映っているものよりも消えているものの方が多い心霊写真なんて、今まで見た事が無かった。
俺は写真を矯めつ眇めつする。一体彼らには何が起こったのだろうと考える。
集合写真に映っていない全ての人はその事故で死に、そして彼だけが事故から生き延びる。
もしくは、どこかは分からないがこの写真を撮った場所はいわゆる良くない場所で、写真に唯一映った彼だけが難を逃れたか。
そんな安易な想像を口にすると、
「違うんだなぁ」
案の定ニヤニヤ笑いで否定された。


472:俺 ◆cLBpi8LhvQ
10/10/26 18:53:41 6aUnUOb+O
「どちら側かが重要なんだ」
Aはそう言って両手の人差し指を交わし、×の字を作る。
「どちら側か。つまりは霊の側か人の側か。体が消えた写真という心霊写真としての一つの項目の中にも、二つの小項目がある訳だ。
 それが、霊か人か」
腹と腹を擦り合わせていたAの人差し指はぐにゃりと曲がり、フックのような形となって絡み合う。
「霊が映って見えなくなるのか、それとも人が消えて見えなくなるのか。どちらの視点になるかで変わる。
 お前、映ってない方に何かが起きたと考えたろ? ……違うんだなあ。何かが起きたのは映っているやつの方だ」
Aは俺の手からひらりと写真を奪い取った。
「これは霊がどうこうしたものじゃない。これは一人だけ写真に映った彼が示したヴィジョンだ。
 自分以外が存在しない。解釈は二通り。自分以外が自分の前から消えるか、それとも」
Aは黙って俺を見た。相変わらず焦点の合わない、ぼうっとしたような瞳。
「……どちらにしろ、意味するものは同じだ。一人になる。友達に会えなくなる」
それはつまり、写真に映った彼の死を意味している。Aは写真に視線を落とし、ややあってぽつりと言った。
「霊感が強かったんだろうな」
私たちみたいにさ。
俺は何も言えず、黙り込んだ。
 
 
 写真Ⅱ、了。

473:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/26 19:49:33 G4DDdAYg0
「私の携帯は、私自身も知らないけど亜空間に通じているの。クチサケはそこに放り込まれちゃった」
少女はそう言いながらもう片方の脚を掴むと、同じ様に液晶に押し付け、消し去る。
「思い上がりは消さなければいけない。私以上に知名度がある都市伝説の輩なんて――だから消した」


474:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/26 19:51:19 G4DDdAYg0
一歩、また一歩と、少女はカシマと人面犬の元へゆっくりと歩を進めていく。
「一人一人、確実に確実に、このメリーさんの携帯亜空間にばら撒いてやる」




475:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/26 19:53:38 G4DDdAYg0
「私メリーさん。いま貴方の後ろにいるの」
 しかし、男は振り向こうという素振りを見せない。
「ふっ、残像だ」
 男の背中が霧の様にかき消える。迂闊だった。まさか補足に失敗するなんて。
「けど、俺のバックを一瞬でもとるなんてやるじゃないか」


476:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/26 19:55:40 G4DDdAYg0
 今度は後ろから声がする。これではまるでさっきと立場が逆。ぎりと思わず唇を噛んだ。
「そう。でも……」
 私はメリーさん!! 例えこの男が私の死であっても最後まで諦めない。
「はっ」
「なかなかの速さだ。なかなかいいメリーさんだな」


477:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/26 19:57:54 iuBlTKPCP
登場人物の発言内容とか容姿、服装、行動、その他諸々に全くリアリティが感じられないってのは
オカルト読み物として致命的だとオモ

478:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/26 20:14:30 G4DDdAYg0
 男は軽口を叩きながらも私の動きを捉えていた様だった。
「性懲りもなくまたバックかい?」
「くっ」
 男の腕がぐいと伸びた様に感じる。私の腕と胸倉を掴み、ひょいと身体を反転させて投げ飛ばす。―背負い投げだ。
「げほげほ」


479:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/26 20:49:54 z3tQPik2O
>>477
素人の創作だもの、少し位は大目に見てあげて…

480:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/26 21:48:25 G4DDdAYg0
「失礼。まぁ、ストーカーもどきはやめろよ。次、悪さしたら―」
「祓う気……?」
 男はぽりぽりと頭をかきながらぼやく。
「俺だって好きでやってる訳じゃないさ。なんていうかその家柄ってゆーか」
「そう流石ね。寺生まれのT……」



481:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/26 22:09:01 G4DDdAYg0
 バイクにまたがり、去って行く大きな背中。私はその背中に手をあてそっと寄り添いたい―。
 なんて、そんな願望が私の中でいっぱいになってゆくのを感じた。



482:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/26 22:20:18 7Jrpp/wp0
>>472
難しくて意味が分からなかった・・・
何事もないといいけど

483:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/26 22:27:35 G4DDdAYg0
「…・・・を、つく……な」
「あらら、なに?」
可愛らしくメリーは微笑む。
その表情に反して、カシマは叫んだ。


484:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/26 22:33:21 G4DDdAYg0
「クチサケが死んだなどと……嘘をつくなーーーーーっ!!!!」
激昂してメリーに近づき、両脚をひきちぎろうと腕を伸ばす。
「無駄無駄無駄無駄」
メリーは携帯を開くと、そこに自分の指を近づける。


485:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/27 00:11:41 TPT2XmN40
液晶に指が触れるとそこから画面へと吸い込まれ、身体が消えていく
メリーの身体が消えると携帯が折りたたみ、たたまれた瞬間携帯も消えうせる。
カシマの双腕は虚空を掴んだだけだった。


486:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/27 00:12:31 TPT2XmN40
「ちっくしょーーーーっっっ!!!」
腹立ち紛れに地面へ一撃をあたえると、人面犬に目をむける。
「人面犬! アタシの背後に回れ!アタシは前方を見る!」



487:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/27 00:16:18 TPT2XmN40
(メリー!お前がどこにいるかは知らないが、これだけは言える!)
荒い息を吐きながら、カシマは全神経を周りに集中させる。
(次にお前がその姿を現したとき、アタシは……プッツンするだろうという事だぜ!)



488:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/27 01:25:24 C8B65gun0
>>472
乙。

>>482
修学旅行か何かで撮ったと思われる集合写真、であった筈のもの。
クラスメイト全員が写っているはずの写真にただ一人の少年だけが不自然にポツンと立っている。
俺さんはてっきり消えてしまったクラスメイトたちに何かが起きたと思った。
がAさんは、その少年が自分の未来(自分だけが先に死ぬ)を予見したヴィジョンなのだと言った。
という話、だと思う。
周りが死んで独りぼっちになる、自分が死んで一人ぼっちになる、
少年自身からすれば独りぼっちになると言うことに違いはないが、
見方を変えれば違う原因が見えてくる、ってことだろう。
つまり、結論から言うなら一人だけ写真に写ってた少年が死んでしまったってことだ。

489:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/27 03:10:02 X8oX3c6EO
>>472
中途半端な「俺は分かってるんだぞ」風の文体が直れば内容を伝えやすくなるのに

490:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/27 03:25:51 y16xzq+E0
テクニックとしてのウニをやろうとしてるからうざい。
似せない方がはるかに面白いのに。
似せないと書けないものかね。

491:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/27 04:37:51 BLkdMy6p0
書き手は俺らの為に書いてるんじゃなく
自分が書きたいものを書いてるだけだしなぁ。
要望なんぞ言ってもあまり意味ないと思う。

492:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/27 04:57:16 Vr3DMKDN0
>>488
なるほど
「霊がどうこうしたものじゃない」=心霊写真じゃなくて
「霊感が強かった」彼の為さしめた、未来予知の写真だったってことか
そんでもって結末はもう出てたのか。。

493:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/27 09:11:21 uKM4UM4XO
文句言われてまでネタ提供してくれるお人好し乙

494:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/27 14:48:00 2VTsTf540
延々文句言いつつこのスレから離れられない奇特な人乙

495:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/27 19:04:40 T5r84+xt0
いやあ、それほどでも(´-`)

496:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/27 23:47:47 TPT2XmN40
メリーが姿を消してから、三秒、五秒と、カシマにとって長い時間が過ぎてゆき
十秒に達した時、カシマの肩先に何かが触れた。
(……埃?)
見上げると、空中高くにメリーが出現していた。


497:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/27 23:50:21 TPT2XmN40
その姿を視界に入れたとき、カシマは「プッツン」した。
「メリーーーーーーー!!!」
カシマの叫びを受け流し、メリーは薄ら笑いを浮かべ携帯を開いた。
車体が写っている待ち受け画像。


498:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/28 00:05:27 TPT2XmN40
いや、待ち受け画像ではなかった。
携帯の画像から、車の一部分が外へと現われ始める。
「入る事が出来るのならば出す事も可能! それは私以外にも例外無し!」
カシマの頭上に、質量を持った巨大な物体が出現する。


499:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/28 00:23:51 bmZ2zpdG0
「ロードローラーだっ!」
「オラオラオラオラ!!!」
カシマは両腕を振り回し、機械の部品を引きちぎっては投げ捨てる。
「もう遅い!脱出不可能よ!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
MERYYYYYY! ブッ潰れよーーーーっっ!!!」


500:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/28 00:29:17 bmZ2zpdG0
ロードローラーがカシマの姿を覆い隠し、そして――地面に着地した。
埃が巻き上がった後、静寂が辺りを支配した。
その静寂を打ち消すかのようにメリーは哄笑した。
そしてロードローラーから地面へと降り、死体を確認しようとする。
「都市伝説の輩は妖怪だから……死んだ振りをしてるかもしれないわ」


501:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/28 00:29:37 bmZ2zpdG0
ロードローラーの真下へと顔をむけると、そこには確かに
血まみれのカシマの顔があった。
「アハハ、これで都市伝説ヒロインは私一人……以前、変わりなく!」




502:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/28 01:13:57 4MWsaoH4O
携帯で見てもアボーンできないの?
教えて!誰か!

503:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/28 05:58:15 9OzbixjQO
>>502
W2chとかの携帯専ブラ(?)入れるといいよ

504:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/28 07:19:13 aNjoeuINO
>>503
ドコモFOMA専用なのな

505:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/28 10:31:40 9OzbixjQO
>>504
他機種はよく知らなくての…
家電製品→携帯コンテンツ板で探せば色々あるかもねぇ

スレチなのでこれで失礼

506:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/28 11:26:08 aZPUFK8Z0
『依然』だな。

それなりにウケが取れそうなアホっぽさがあるのに、ここでやってるのが勿体無いな。
創作やら同人系の板やスレに行けば良いのに。

507:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/28 12:37:01 ArtjHNeT0
ここに落としたネタは二度と使えないと思った方がいいのにな。
本格的に創作やりたくなった時にきっと後悔するよ。
ネタと才能の浪費だよ。

508:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/28 15:56:17 DST7DzSR0
誘導

政治@2ch掲示板
URLリンク(namidame.2ch.net)

政治思想@2ch掲示板
URLリンク(toki.2ch.net)

議員・選挙@2ch掲示板
URLリンク(kamome.2ch.net)

実況せんかいゴルァ!@実況ch
URLリンク(hayabusa.2ch.net)

オカルト板では類似スレの乱立、板違いの政治スレのスレ立て、実況スレは禁止されています。
速やかに相応しい板に移動願います。

509:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/28 16:28:08 KQVv5/u50
ロードローラの前で笑うメリーの肩を誰かが叩いた。
「え?」
振り向くメリーの片足に、灼熱の痛みが走る。
「あぐぁっ!」
その痛みに、たまらずメリーは倒れた。


510:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 05:08:50 h6bf5s7z0
>>470
>ミニカツ丼と半ラーメンは腹の虫を宥める事に成功した

これ思い出した↓
URLリンク(mousouteki.blog53.fc2.com)

511:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 10:01:26 jFjNeuk80
俺シリーズのAの容姿ってどんなん?
黒い口紅が似合う格好ってゴスロリしか思い浮かばんw

512:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 10:31:05 v0oS9EbH0
NANAやった中島美嘉に脳内変換して読んでる。

513:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 10:35:39 VBpq/ej7O
口調とファッションで土屋アンナ

514:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 10:43:07 BthYT7Tr0
まちゃまちゃのイメージ持ってた

515:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 10:43:20 2jD54X8L0
金髪ミディアムのベアトリーチェだと思ってる

516:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 12:33:05 HXOd2mi00
>>512
同じく。Bは石原さとみ
旧Bはゲームのアサシンクリードのアサシン

517:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 14:29:05 eeC6pA3P0
不必要な状況描写が多すぎるんだよな

518:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 15:32:16 F5ga8r7I0
その痛みに、たまらずメリーは倒れた。
「あたしカシマさん。いま、あなたの後ろにいるの」
メリーの後ろには、カシマが立っていた。
そして、その手にはメリーの片足が握られている。


519:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 15:50:26 F5ga8r7I0
メリーが振り向いた瞬間に、カシマが脚を引きちぎったのだった。
「う、嘘だ!」
メリーはロードローラの方へと目をむける。
そこには確かに、下敷きになったカシマの顔があった。


520:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 16:07:21 F5ga8r7I0
「人面犬の顔をアタシに変えて身代わりにした……潰される寸前でな。
そしてやれやれ……間に合ったぜ」
興味なさそうに脚を投げ捨て、カシマはメリーを見下ろす。
「その携帯から今度はどうする気だ? また携帯を開いて逃げる気か?


521:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 16:19:55 F5ga8r7I0
……やってみな、アンタが携帯を開いた時が合図だ。どっちが早いか――
勝負といこうじゃないか」
悠然と両腕をのばし、カシマは構えた。
メリーはうずくまりながら舌打ちする。
(コ、コケにしやがって……ビッチ!)


522:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 16:27:59 F5ga8r7I0
メリーは怒りと痛みで顔を歪ませたが、やがてその顔は笑みへと変わった。
(だが、ここにきて……やはり貴女は甘ちゃんだわ。
『あと味のよくないものを残す』とか『人生に悔いを残さない』だとか…
便所ネズミのクソにも匹敵する、そのくだらない物の考え方が命とりよ!


523:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 16:31:46 F5ga8r7I0
このメリーにはそれはない…あるのはシンプルなたったひとつの思想だけ…
たったひとつ!『私メリーさん』!それだけよ…それだけが満足感よ!)
両手と片足でバランスを取り、メリーさんはフラフラと起き上がる。
(過程や……!方法なぞ………!)
呼吸を整え、カシマを見つめ返す。


524:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 16:39:20 F5ga8r7I0
「どうでもよいのだァーーーーーーっ!」
メリーが叫び、次の瞬間、引きちぎられた脚から血が迸った。
迸る血が、カシマの視界を遮る。


525:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 16:42:57 F5ga8r7I0
「どうだこの血の目潰しは! 勝った、死になさい!」
勝利を確信し。メリーは携帯を開こうとした。




526:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 16:49:01 F5ga8r7I0
だが開こうとした手を、カシマに掴まれる。
そしてそのまま携帯ごと手首から引き千切られる。
「おせろっとーーーっっっ!!!」
訳のわからない悲鳴を上げてメリーはのけ反った。


527:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 17:44:21 bH/bDMf/0
今週末こそウニさん降臨に期待

528:宿坊1/5
10/10/29 18:55:28 xzIYkIO30
初めまして。シリーズとしてまた書き込めるかわからないけど、
友人・知人の霊感持ちの話なのでこちらに書き込ませて頂きます。


「2日間宜しくお願いしまーす!」
元気な早朝の挨拶を受けて、始まった1泊2日の小旅行。
女性が3人も集まれば、騒がしいイメージがあるかもしれないけれど、このメンバーはちょっと変わっていた。
私以外の2人は霊感持ちで、中でも一番最年少の子は人のオーラやヒーリング、チャネリングなどを仕事にしているような子だった。
話は当然オカルト的な要素も含み、新幹線の中でぽつりぽつりと交わされる内容には、ちょっと不思議なものも含まれていた。
霊とは分野が違うけれど、その子曰く、「モノクロ印刷の文字が、文字によって色付きで見える人がいる」という話。
「あ」なら○色。「い」なら○色。といった具合。
そんなとりとめのない雑談をしながら、目的地へと向かった。
目的地は、国内某所。観光地のひとつとして知られている(場所の名前だけで特定されるようなところなので省略します)。
到着後、まずは昼食をとり、その後事前に予約していたお店で趣味の物を見て回ったり、体験教室を楽しんだ。
夕方になったので、本日宿泊する予定の宿坊(比較的安価な料金で宿泊できる、お寺などが運営している宿泊施設。
精進料理や座禅、読経などに参加できる所もある)へと向かった。

前置きしておくと私は幽霊やいわゆる物の怪の類いは全くといって良いほど視えない、何人かの霊能者さん曰く守護霊さまが
強いそうで、怪しいモノが近づけないらしいという話なのだが、その宿坊へ近くなるにつれて、周りの景色が暗くなっていく
印象を受けた(単に日が暮れたせいともいえない)。
何というか、質量を、重さのようなものを感じていた。
後になってわかったことだが、同行する2人もイヤな雰囲気を感じていたのだという。

529:宿坊2/5
10/10/29 18:58:55 xzIYkIO30
チェックインをして、部屋のキーを受け取り、3人でぎゅうぎゅうのエレベーターで宿泊予定の部屋に入った。
部屋の中は至って普通の和室。
でも。
そう、でも。
そういう感覚を感じたことがある人は分かると思うのだけれど、不思議なくらい落ち着かない。
他の2人も「視える」とはいわないが、妙な顔をしてキョロキョロしている。
この段階では「何となく」なので、みな気のせいと割り切って、予約してあるお店で夕食をとるため一旦部屋を後にした。
食事を終えて、部屋に戻った頃は20時を回っていただろうか。
部屋に戻る途中、宿坊にある写経をする小部屋を見学に行った時
(うっすらと般若心境を書いている写経紙を受付で販売してくれ、その用紙で心置きなく写経出来るようにとの配慮で
書道セットが置かれた小部屋があった)、小部屋の扉を開いた くだんのその子が「うっ」を小さく呻いた。
「ん~? どしたのー?」と能天気な声で応答した連れも、覗き込んで「うわー、、、」と絶句。
私には普通の小部屋に見えるので「???」
しつこく説明を求めると、連れの方が言いたくなさそうに「色んなモノが充満してる、こんな部屋には入りたくない」とのこと。
そして、「心が落ち着くどころじゃない」と言い放つ。
扉を閉めたその子も不味いものを食べたように口をゆがめている。
そこでようやく、感覚的に感じていたことが気のせいなんかじゃあないということを、全員一致で理解した。
とはいえ、今更宿を探す訳にもいかず、私たちには最早オバケ屋敷に近くなったその部屋へ、しぶしぶと引き上げることになった。
部屋に戻り、電気をつけて、開口一番その子が「お塩ないかな。」
聞くと四隅に盛り塩をしたいらしい。
「このままじゃ安心して眠れない」という。

530:宿坊3/5
10/10/29 19:03:14 xzIYkIO30
たまたま連れがクリスタルチューナーを持っていたので、それを部屋の壁4面、床、天井に行う。
高い澄んだクリスタルの音に、ようやくホッと息をつく3人。
その子がモゴモゴ唱えながら何やら手を合わせて、部屋に結界を張ってくれた。
「とんでもないところを選んだねー」と連れが私を見る。
そう、この宿泊施設を選んだのは他ならぬ私だ。でも嫌な感じは来るまで全く感じなかった。
どうして守護霊さまセンサーが働かなかったのか?
私は霊の類いは視えないが、やばそうな人とか、本気で近づかない方が良い場所というのは「何となく」わかることが多い。
誰にでもあるような感覚だと思うが、そういう時は直感を信じるようになってきた(当然若気の至りの失敗談もある)。
ともあれ、その後はとくに神経を過敏にする必要もなく、小部屋から持ち帰った書道セットで写経をしたり、
恋バナに花を咲かせたりしながら、のんびりと過ごして就寝した。
ちなみに、小部屋へ一度書道セットを取りに行ったときが、また恐怖だった。
あの感覚をどう表現したら良いのだろう。
誰もが特に何かを「視た」という訳ではないのだが、闇が質量を持ったようなネットリとした感じ、チリチリと
うなじの毛が逆立つような、神経の感覚がゆったりと狂ってゆくような、悪酔いをしてしまうような、そんな感覚。
1人では絶対に居られない、と2人は口を揃えて言い捨て、早々にその階を後にした。

翌朝は、お寺の本堂で読経に参加できるということで、早めに起きて本堂へ向かった。
怖いという感覚も、直接何を視たという訳でもなく、朝もや煙る朝日の下では夢のようで、私は元気を取り戻していた。
朝が早いせいか、朝日が雲にさえぎられるためか、はたまた本堂の中の電気が弱いせいか、本堂は不思議なくらい薄暗い。
私たち以外にも何人かが訪れ、パイプ椅子に腰掛ける。やがて、この寺の住職という方が現れておもむろに読経が始まった。
お経を上げ始めてややも経つと、おかしな感じがしてきたので目をあげた。何だか先ほどよりも本堂の中が暗い。
暗いモヤのようなものが充満し、煙のようにゆっくりとたゆたうように移動している。
それはやがて私たちの後ろにまでやってきた。

531:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/29 19:05:28 VFXCERMVO
>>528
メモ帳にまとめてから投下しろ。あとここ読んどけ
 
こわい話にありがちなこと
スレリンク(occult板)

532:宿坊4/5
10/10/29 19:13:20 xzIYkIO30
と、その時ふいに連れのお経を読む声のトーンが変わった。
微妙に住職の声のトーンを外れ、不協和音を奏で始めた。となりのその子は、蒼白な顔でつぶやくように唱えている。
呼吸が難しくなったような息苦しさを覚え、視界に霞がかかる。
苦しい。早くここを出たい。
頭にキーンと何かが突き抜けて行くような感覚。ネットリとした闇の感触は、昨日感じたモノと似ている。

ふいに理解が落ちてきた。
遅まきながら、ここはヤバイ。生きている人間がいるべき場所ではないと。
読経が終わり、住職が写経に書かれた氏名を読み上げお焚き上げをする旨を伝え終わるやいなや、
脱兎のごとく私たちは本堂を飛び出した。
「あー、とんでもないお寺だった!」と連れ。
「わざと住職と声のトーンを外したのよ。あれ以上集まられたらたまらない」なるほど、そういう理由で音を外してたのか。
音痴なのかと思いかけたことは頭の隅に追いやり、何となく納得していると、「早く戻ってお塩を借りよう」とその子。
宿に戻り、読経に参加していたはずの宿泊客が、葬式帰りのように入り口前で塩を所望する様子はどう映ったのか、表情に出ない女将さんから塩壺を受け取り、私達はそれぞれに頭から塩を振った。
すっかり身体が冷えた状態で宿の朝食を早めに済ませ、次の予定もあるからと逃げるようにその宿を後にした。
チェックアウトの時、女将さんに「また是非いらして下さいね」と柔らかく微笑まれて、こわばった笑顔の3人。
申し訳ないような気がしないでもなかったけれど、本当にもう二度とは行きたくない。
結局あれらは何だったのか。

533:宿坊5/5
10/10/29 19:18:57 xzIYkIO30
帰りの新幹線の中、尋ねた私に連れ曰く「とにかくすごい量の負のエネルギーの固まり。欲望とか、煩悩が凝り固まって怨霊化の一歩手前みたいな(このお寺は俗欲を満たすためにあるような、大きな朱塗りの鳥居のある神社のすぐ近くにあった)」。
と、それまで座席に身を埋め、目を閉じてイヤフォンで音楽を聴いていたその子が飛び跳ねるように身を起こし、
「今あのお寺の話をしなかった?」
私は驚きつつ、「うん、してた」と答えると、「もう止めて。考えないで」という。
不思議に思い、「どうして?」と聞くと、
その子はイヤフォンを耳に戻しながら、「話してたから来てるよ。あれが」

前置きに書かなかった事だけど、この旅行の前日から、私は声を奪われていた。
簡単にいうと、声枯れして、かすれた声を振り絞る感じだった。
警告だったのかなと今になって思う。生まれてこのかた声枯れしたのはこの前後だけだったから。

そして、この場所が選び呼び寄せたかった人間は誰だったのか、これも今となってはよくわかる。
だから、哀しい。
優れた霊感の持ち主は、どうして、現実世界との折り合いがこんなにも難しいのか。
その子と過ごした短い時間を思い、こんな肌寒い秋の夜長にはふと思う。

534:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/29 21:39:55 TIA3yJYi0
一年の頃。
葬列を見た。
誰かの棺を、何人もの喪服の人が運んでいる。
後ろでは親類らしきおばさんが涙を流している。
皆それぞれに沈痛な面持ちをしていた。
棺を積む霊柩車が止まっている。
俺はそっと親指を隠した。
列の中の一人、小さな男の子がこっちを見ていた。
五歳くらいの、見たことがある子だ。
お父さんが死んだのかな、と、なんとなく思った。
喪服は、日に照らされてとても暑そうに見えた。

「へぇ、どこで」
先輩はペン回しをしながら聞く。
興味があるのか無いのかわからない感じだ。
しかもペン回しは失敗している。
さっきから何度もペンを落としていた。
「あそこですよ。立体交差の所の、床屋の向かいです」
昨日、下校中に見た葬列のことを話してみた。
放課後の図書室は相変わらず利用者が少なく、いつもの眼鏡の図書委員が貸し出しカードの整理をしている。
「ふぅん」
ペン回しを続ける。
一度たりとも成功していない。
くるっ、がちゃん。
くるっ、がちゃん。
出来ないのならやらなければいいのに、と思っていると、先輩の動きが止まる。


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