10/10/16 22:16:59 lZM9Igr50
ヨーコさんは首を振った。
「おいおい。一見すればわかるだろう。ほら、ベッドの下に人が入れる隙間なんて見えるか」
先輩に言われてベッドの下を覗いて見る。
確かに、10cmにも満たないような隙間しかない。
「そんな所に入っていけるようなヤツは、警察になんとか出来る相手じゃない」
ヨーコさんが溜め息をついた。
「だから、この人に相談したわけ」
先輩がくすぐったそうに体を揺する。
頼られて嬉しいのだろう。
そしてやっぱりヨーコさんは頼りたく無かったのだろう。
寝室に入れるのも嫌だったのかもしれない。
「さて問題はこれからだ。ヤツはいつ出るかもわからないし、どんな物かもわからない。だからとりあえず、昨日の状況を再現してみようか」
要するに?
「つまり、ヨーコさんに寝てもらうって事ですか」
ヨーコさんの頬がひくりと動いたのを俺は見逃さなかった。
楽しそうな先輩を見ながら、俺はヨーコさんに耳打ちする。
「……あの、一応俺もいますし。先輩、多分ヨーコさんよりお化けに興味あると思うんで」
安心してください。心配はわかりますが。
ヨーコさんは頷いてくれた。
「着替えるから、一回出て」
俺は名残惜しそうな先輩を連れて寝室を出た。
「先輩、実際の所どうなんですか。見当付いてたりしないんですか」
先輩は少し難しい顔をしていた。
「実際の所、皆目だ。何も見えないし感じない。かなり変わり種なのか、それとも、相当上等なヤツかどっちかだろうな」
驚いた。
先輩の感覚に引っかからない相手なんて、この時が初めてだった。
嫌な想像が膨らんでいく。
しかし俺の妄想は、ヨーコさんの声でかき消された。
「着替え終わったよ」
部屋と同じ、淡いピンクのシンプルなパジャマだった。
うん、可愛らしい。
先輩がまた少し興奮したのがわかった。
101:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/16 22:18:51 lZM9Igr50
「じゃ、寝ます。見ててね」
仰向けにベッドに入ったが、暫くして壁に顔を向けて横向きになった。
まあ、視線が気になるのだろう。
さらに暫くして、小さく規則正しい呼吸音をたてはじめた。
どうやら眠ったらしい。
寝付きはいいようだ。
「……お前、いつここに来た」
寝付いたのを確認して、先輩が小声で言う。
「あの、以前、たまたま近くで会って……お茶でもどうだって言うので、その」
気まずい。
嘘はついてないし、何か特別なイベントがあったわけではないが。
「一回か」
「……いえ、それからも何度か」
「お前、なんで」
不意に、破裂音がした。
大きな音が一つ、続けて小さな音が二つ。
かなりの音量だったにも関わらず、ヨーコさんは眠り続けている。
「先輩、今のは」
先輩は既に立ち上がり、拳を握り締めている。
「起こせ」
「は?」
「ヨーコ起こせ!早くしろ!」
突然大声を出され、反射的に立ち上がる。
「う、あ、ヨーコさん!起きてください!」
肩を掴んで激しく揺さぶる。
反応は無い。
「起きません!」
先輩はさっきまでの真剣な表情から一変、黒い笑いを浮かべていた。
「ならいい。かつぐなりなんなり、とにかくこの部屋から連れ出しておけ。俺は片付けておくから」
102:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/16 22:20:04 lZM9Igr50
ヨーコさんの膝の下と腋に手を差し込んで抱えあげる。
俺は笑う先輩と、ベッドの下の隙間から見える手を残して寝室を出た。
そのまま玄関を出て、ヨーコさんを廊下に座らせる。
さっき、ベッドの下に見えたのはなんだったのか。
泥のような色をした手。
細い隙間から見えた片方の目。
先輩はアレの正体がわかったのだろうか。
「ヨーコさん、起きてください。ヨーコさん」
抱えて走った時もかなり揺れたはずだが、ヨーコさんは全く反応をしない。
顔色は青白く、まるで死んでいるようだ。
辛うじて呼吸音が生存を教えてくれた。
俺はヨーコさんの正面に座って待った。
ただ待った。
先輩か、ヨーコさんのどちらかがアレに勝ってくれる事を。
そのまま十分ほど経った時。
玄関のドアががしゃんと鳴った。
急いで立ち上がり、玄関を開ける。
内側に拠りかかっていた先輩が倒れこんできた。
「ちょ、先輩!どうしたんですか」
両腕を垂らして俺に体重を預けている。
「追っ払った・・・・・・けど、もう限界だ。病院近くにあったっけ」
よく見ると両腕に痣がたくさんある。
右手の中指・小指がおかしな方向に捩れていた。
「だ、大丈夫なんですか。どうしよう、救急車とか呼んだ方がいいですか」
先輩が思った以上に重症に見えて、焦りが噴出してくる。
俺がおたおたしている間、先輩はヨーコさんを眺めていた。
「・・・・・・起きなかったのか。そういうこともあるか。あ、痛、た。まあ、痛いのは腕だけだから、歩いて病院行くよ。今・・・・・・10時か。閉まってるだろうなあ・・・・・・」
ふらふらしながら歩いていく。
追いかけようとしたら、先輩に止められた。
「お前までいなくなったら、ヨーコが驚くだろ。起きるまで付き添うか、もう大丈夫だからベッドにでも戻してやれ」
去っていく先輩は、いつになく男らしく正統派のかっこよさだった。
103:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/16 22:22:15 lZM9Igr50
翌日、病院の待合で先輩と会った。
先輩は両腕に包帯をぐるぐる巻いていた。
「なんか、右手の人差し指と中指、あと小指が折れてるって。人差し指は綺麗にイってたけど、中指と小指は細かくちくちく折れてて治るのもちょっとかかるかもってさ」
笑って右手を振る。
「あの、先輩。昨夜、何があったんですか。アレは結局なんなんですか」
先輩がにやりと笑う。
「解説しようか。まず、アレの正体だが・・・・・・簡単に言うと、ヨーコだ」
比較的無事な左腕でズボンのポケットを探る。
と、中から紙に包まれた丸い物を取り出した。
直径1cmくらいの玉だ。
「まあ、ビー玉なんだけど。これがあの化け物になった。おい、そうバカ面するな。本当だ。例えば、だが」
先輩は包み紙をぺりぺりと剥がす。
中身は水色の透明なビー玉。
包み紙には、どこかでみた模様が入っていた。
「これがベッドの下に転がっていくだろ。ふとした瞬間に、それがきらりと光っているのを目撃するんだ。脳みそは連想する。光る玉、眼、顔、人」
手のひらの上でビー玉を弄びながら続ける。
「そして、その想像にはっきりした形が出来る。それはベッドの下に人間ということから連想された都市伝説だ。その想像をした人間が、少し変わった奴だったら」
「そう、人より少しだけ、そういうモノに近い奴だったら。その想像は、何かにキャッチされ、実現される。そういうもんだ」
頭の中で整理する。
つまり、ビー玉を見たヨーコさんが、ベッドの下の男を想像し、それが現実になった?
「あるんですか。そんなこと。大体、それならどうやって追い払ったんです」
先輩は口の端をさらに歪める。
「実現したってことは、俺と同じ土俵にいるってことだ。想像相手じゃ勝ち目もないが、そこにいるならどうとでもなる。言っただろ、これは眼だ。あいつの。引っこ抜いてやった」
この怪我は、抵抗されたからだ。と。
ベッドの下に手を突っ込んで、得体の知れない物に指を捩じ折られながら、それでも相手の眼を抉って引っこ抜いた。
・・・・・・やっぱり、この人は尋常じゃない。
「最初はな。ヨーコの世界の中にしかいないのかと思った。あいつは、なんていうか、上位の世界を持ってる。だから、その中にいれば勝てなかった」
何のことだかよくわからないが、なんにせよ、この二人は段違いだと思った。
104:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/16 22:25:15 lZM9Igr50
ここまでなら、やっぱり先輩達はすごい、で終わるのだが。
その後、非常にイメージの悪い話がある。
「あのな、頼みたい事があるんだ」
一通り解説を終えた先輩は、神妙な面持ちで言った。
「え、まあ出来ることなら」
今回は人の為に働いたし、まあ怪我しているから困ることもあるのだろう。
「あのな。先に言うぞ。別にいやらしい気持ちがあったわけじゃない。ただ、ちょっと、その、見えちゃったから、つい、だな」
先輩はまたポケットを探る。
まさか。
冗談だろう。
「これ、返してきてくれないか。間違って持って帰っちゃったとか言ってさ。お前ならそんなに怒られることもないだろ」
先輩が出したのは、あの部屋と同じ薄ピンクのシンプルな、それでいてかわいらしさのある・・・・・・。
女性下着(下)だった。
俺は悩んで悩んだ挙句、ここまでの怪我をして稼いだ好感度を、出来心で全部失くしてしまうのはあんまりだなあと思ってしまい、しかめっ面をしながらそれを受け取った。
返しに行った俺と受け取ったヨーコさんはお互い赤面し、それからしばらく気まずい日々を送った。
先輩と下男 終・・・じゃない。
先輩が病院に行き、ヨーコさんをベッドに戻した時の話。
105:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/16 22:28:13 lZM9Igr50
「・・・・・・行った?」
背後から急に声を掛けられて驚いた。
ヨーコさんがぼんやりした顔で俺を見ていた。
「あ、起きてたんですか。なんか、もう大丈夫みたいなんで部屋戻ってください。俺、先輩を」
「連れてってください。力が入らなくて」
ヨーコさんはひどくぐったりしている。
俺は再びヨーコさんを抱え上げる。
「あの、嫌だったら言ってくださいね」
ヨーコさんはゆるゆると首を振る。
「本当はあの人にこうやって頼ってあげたいんだけど、あの人に近づくと、見えちゃうから。いろいろ、嫌な物が」
あ、もしかして。
「今考えてたこと、見えたりしました?」
俺は『先輩にこそこういう役得があるべきなのに』と考えていた。
今回一番頑張ったのは彼だ。
「別に。なんとなくそんなこと考えてそうだなって。実は、そんなに嫌じゃないです。ああいう風にストレートに当たられるの」
良かった。先輩は嫌われているわけではなかったのだ。
いつもそれが気にかかっていた。
そう、俺がどう思っていても、最初に好きになったのは先輩だ。
「じゃあ、嫌な物が見えなければ、先輩と付き合ってもいい・・・・・・とか」
なんとなく口にし辛かった。
それは、多分俺の中の感情に原因があるんだろう。
「まあ、前まではそうだったんですけど。今は、他に好きな人がいるんで」
ずくり、と。
心臓に突き刺さる言葉だった。
鼓動の乱れを悟られないように気をつけなければならない。
これは先輩に対する憐憫だ。
そう思い込むことにした。
106:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/16 22:31:38 lZM9Igr50
「そうですか。まあ、そういうこともありますよね。よ、と。じゃあ俺はこれで。先輩の所に行ってきます」
ヨーコさんをベッドに下ろしても、心臓がバクバクと鳴る。
俺はヨーコさんに対して特別な感情を持っていない。
彼女は先輩の思い人で、ずっと思ってきた人で、ヨーコさんも先輩が嫌いじゃなくて。
でも、他に誰か好きな人がいて。
「勘違いしてる気がします。私が好きなのは・・・・・・」
誰だろうと聞いてはいけない。
俺は慌てて寝室の扉を閉めた。
が、扉の閉まる音と同時に聞こえてしまった。
わたしがすきなのは、あなたです。
先輩と下男と俺とヨーコさん 終
107:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/16 22:46:11 /mlcA7Fj0
いなおとこ乙
108:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/16 22:47:54 BAI0qhMf0
先輩wと思ったら先輩…ってなってしまった
109:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/16 22:54:43 kiEiGs760
おーひ、レベルが落ちるのが早過ぎるぞ。
先輩に愛されながらヨーコを愛する3P乙。
110:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/16 23:08:13 wDqwl0uA0
いねおで良いのね 稲男乙
なるほどなぁ この三角関係が後々響いて来るんだろうな
ウニっぽいとは言いつつも、ウニ程伏線を放置するタイプでも無いよね
111:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 02:53:58 94SXlE7nO
勧められたのでこっちに移動。やっと仮眠時間だ
定時制の高校というのはいろんな人が通う。
夫と子供の面倒を見ながら、薬剤師免許を取るため学歴を得ようと頑張る人の良いおばさんもいれば、
傷害でパクられたことを武勇伝のように話すDQNもいるし、
授業が終わる度に「今何々の授業が終わったよ。もう帰りたいよママ」と母親に電話する大の男もいる。
まあ、とにかく濃い面子が揃ってたなあと思う。
俺自身働きながら学校に通う二十歳過ぎの高校生なんてものをやっていたわけだが。
高一の春だった。
新入生の初々しさとは全くもって無縁な俺は、参っていた。
俺は自分が憑かれていたり、近くに居ると解る性質の人間で、そう言った人間の大半がそうであるように
そういうものに対する自衛手段を持っていた。
しかしその時は状況が少々特殊で、俺は心底から参っていた。
左耳はかりかりという音を聞き続け、頭の中では説明しがたい音響が鳴りっぱなしだ。
体は常に鳥肌が立ち掛け、視界は不意に靄がかかったり何かが過ったりする。
こういった症状は近くに居るか、もしくは自分が憑かれている時に出る。
実際に憑かれてるという実感が有った俺は、当然のように原因を探し、身構える。
どこだ。いつ来る。どこから来る。初めは雑多なもの寄せ集めだったはずなのに。
起きている間は常にびくびくと周りを警戒し、また、眠りに落ちてからも悪夢を見る。
見つけさえすれば何とかできるのに。俺の精神状態はどん底だった。
112:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 02:55:59 94SXlE7nO
それでも俺は学校と仕事は休まなかった。
学校では担任から心配され、職場では何かヤバいことに首を突っ込んだのではないかと疑われた。
(それでも心配してくれる人は居たが)
結果として、それが功を奏したのだろう。
良い加減お祓いでも受けなければ気が狂うと思い始めた頃、俺は教室でうとうとしていた。
授業が終わった夕暮れの教室。仕事に出るまでのちょっとした空き時間。
バン、と音がした。驚いた俺は眼を醒まして音の発生源にありったけの気迫を込めて眼を剥いた。
ついに来た。
上等だ。やってやる。取り殺せるならやってみろ。
しかし、そこに居たのは人間だった。
他人の視線なんか知らないとでも言うような(と言うか後に言う)ガチガチのパンクファッションに
身を包んだ、隣のクラスで浮きまくりの女。
俺と同じく二十歳前後だという話を聞いていたので覚えていたが、パンクやらゴスロリやらが苦手な俺は
二十歳にもなってそんな格好して、と余計に苦手意識を持っていた。
しかも、やたらと目付きが悪いことで有名で、クラスの何人か(人の良いおばさんですらも)が、
「なんだか怖いよね」
と言っていた女。
その女が大股で近付いて来る。
なにがなんだか訳が解らなくなった俺を尻目に、女は俺の机の前までやって来て、
ぎ、と俺を睨んだ。
人を殺した事があるような眼だ。混乱してたことも有ってか、俺は本当に殺されると感じた。
そうしてヤバいと瞬間、ふわりと体が浮いたように感じた。
頭から体を吊るしていた糸がぷっつりと切れたような感覚。妙な心地良さを感じて俺の意識は遠退く。
けれど、一秒も経たずに俺は眼を醒ました。あの目付きの悪い女が、俺の肩を揺さぶったからだ。
「おい、大丈夫か」
とそいつは言った。
中途半端に覚醒した頭では何もかも訳が解らず、俺はただ、は? は? と繰り返したのを覚えている。
これがAとの出会いだった。
113:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 02:58:13 94SXlE7nO
後に聞いた所によると、俺は自分霊とでも言うようなものに憑かれていたらしい。
呪いが自分にかけられたと知って自己暗示に掛かるのと似たようなもので、
謂わば自分の生き霊が自分に憑いているような状態らしい。
Aは俺がそんな状態に陥っていたのに気付いて、しょうがなく助けてくれたそうだ。
因みにあれから数年経つが、Aは多少マシになったものの未だにパンクファッションを続けている。
勿論Aはそんな格好で、主な客層が中年から初老のおじさんおばさんな俺行き付けの大衆食堂に行くわけだ。
今ではもう、すっかりと馴染んでしまっている。
114:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 05:37:01 H9rZCj4J0
ちょwwwAって女だったのかよ
わざと男友達と思わせるような描き方をしてただろw
115:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 05:39:03 H9rZCj4J0
あぁ後コテ付けたほうがよくね
洒落怖から読ませてもらってるんで楽しみにしてるよん
116:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 08:03:14 mtxDRcORO
新しい人か
乙です
次も楽しみにしてます
117:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 08:39:42 LuMUpgjg0
移動してたのか
洒落怖に書き込んでた分は、こっちに貼らなくてえーの?
118:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 10:08:42 94SXlE7nO
仕事終わった。読んでくれた人ありがとう
>>114
バレたか
コテはその内つける
>>117
めんどいからいいよ
119:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 10:11:21 Fg/65n9FO
こっちの分は読んでないけどまた「実は女だった設定」なの?
はっぽうさいくさくて一気に読む気失せた
キモすぎー…
120:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 10:48:43 GqyoHBDM0
糞!間違って洒落怖にレスしちまったじゃねえか
糞住人が
また洒落怖から書き手を奪ったな。普段あんなに洒落怖馬鹿にしておきながら勧誘するための監視は怠らないとか、悪質すぎ
>>118
おい,お前。お前はもうどこにも投下するな。投下したらその度に叩きまくってやるからそのつもりでいろよ
121:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 10:49:20 GqyoHBDM0
542 自治スレでローカルルール他を議論中 sage New! 2010/10/16(土) 04:42:02 ID:E/FI+Z5n0
>>539
このスレ、バカが住みついててうっとおしいから
シリーズ物スレに移動したらどうだろう。
あっちも変なヤツいるけど、ここほどは
酷くない。
122:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 10:50:22 GqyoHBDM0
545 自治スレでローカルルール他を議論中 sage New! 2010/10/16(土) 05:51:12 ID:To6kVFkG0
>>542
俺もそう思う。
ガイキチが湧いてるから、あっちの方が気持ちよく投稿できるかもね。
気持よく投稿できると思うなよ、あ?
123:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 10:53:21 GqyoHBDM0
糞どもが徒党組んで必死に誘導しやがって
洒落怖なんだからまとめ掲示板に誘導するのが筋だろ
少なくても選択肢のひとつに挙げるべき
シリーズ物(笑)一択はありえん
てめえらはもう洒落怖覗くなや。誘導レス見るたび吐き気するわ
124:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 10:55:17 GqyoHBDM0
糞!また間違って洒落怖にレスしちまったじゃねーか
バカ晒しあげ
558 自治スレでローカルルール他を議論中 sage New! 2010/10/16(土) 13:39:09 ID:3ht8rFwd0
>>557
つーかさ、あんた、自分で検索ぐらい出来ないのかよ・・・
ゆとり?
【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ15【友人・知人】
スレリンク(occult板)
じゃないかと思うんだが、まだ書き込まれていない
125:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 10:55:36 GqyoHBDM0
559 自治スレでローカルルール他を議論中 sage New! 2010/10/16(土) 13:50:52 ID:qOMJIAXM0
>>554
まだまだ読みたいから、よろしくー
126:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 10:56:11 GqyoHBDM0
570 自治スレでローカルルール他を議論中 sage New! 2010/10/16(土) 17:38:23 ID:+005aHie0
シリーズスレ見てきたけど…、フロントマンが
淡々と書き込んでくれればいいが…
127:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 10:58:15 GqyoHBDM0
こんなクソスレ、メリーに潰されてしまえ
128:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 11:09:37 94SXlE7nO
俺の話大して怖くないから確かにスレチだよなあと思って移動したんだが俺
まあ、寝る
129:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 11:15:56 GqyoHBDM0
そもそもシリーズ物でもない、ただの長文なのにここに誘導するのはおかしいだろ
自分らがルール無視して誘導とかはするのにメリーとかはスレ違い扱いするんだな
自分に甘くて他人に厳しいって一番最低な人間だぞ
130:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 11:19:42 GqyoHBDM0
>>128
だったら洒落怖まとめに行けよ
あっちだったらまとめにも乗るし叩きもされないし一石二鳥だろ
こんな普段誰も投下しない隔離スレに投下してもほんの一部の狂信者に崇められるだけだぞ
ウニ以外の投下者には「乙」しか言えない馬鹿共だ
つーかもう二度と来るな。うっとおしい
131:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 11:21:49 T23lYbYOO
もともと洒落怖の隔離スレだからな。
誘導するのは当然としても洒落怖住人が怒る事じゃないだろ。
ここに投下してる書き手が洒落怖に戻ったら、困るのは洒落怖住人だろうに。
132:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 12:12:28 NiABwQfkO
乙!>>113
待ってたよ
なんか投下される度に文章力が上がって行くな
今回はAがオニャノコだったというドッキリ付きだな
133:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/17 12:50:59 mtxDRcORO
『来い。早く来い。面白いから来い』
三年の春。
先輩から電話があった。
「なんなんですか。来いってどこに」
『工場。潰れた方の。すぐ来いよ』
それだけ言って切れた。
その頃、俺と先輩の距離は少し開いていた。
別に仲が悪くなったわけではないが、その頃先輩は、俺の理解の遥か外側にいたし、前年度の終わり頃、ヨーコさんとの一悶着があり、俺からすればなんとなく気まずかったのだ。
まあ、呼び出しを断る程でも無かったし、先輩の様子がおかしかったのもあって、俺は港近くの廃工場まで自転車を飛ばした。
夕暮れが街を染め、影が長く伸びる時間だった。
工場に着くと、奥から先輩の声がする。
「来たか。こっちだ。奥の資材積んである所」
建物に反響した声は、別人のモノのようにも思える。
埃の舞う工場の奥、資材置き場だった所に先輩はいた。
ピラミッドのように積まれた鉄材のてっぺんに腰かけている。
抜けた天井から夕日が差し込み、逆光になっている。
先輩の顔は良く見えない。
「先輩。面白いって何がですか」
油の匂いと海の匂い。
それから埃の匂いの中に俺達はいる。
134:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/17 12:53:04 mtxDRcORO
「見えないか。あるだろ、そこに」
すぐそば、床に何か黒い塊がある。
じっと見ていると、塊の表面が動いた。
どこかで聞いた音がする。
ぶ、ぶぶ。
ぶぶぶぶ。
びびっ。ぶわぁん。
塊の表面をびっしり覆っていたのは、黒い羽虫だった。
蝿だ。
飛び立った数匹に釣られるように、そのまわりから次々と飛び出し始める。
嫌な予感がした。
「死体だ」
黒い塊はもう黒くない。
わーんわーんと蝿の羽音が耳につく。
目のあるべき場所は窪んだ穴があるだけ。
恐らく生前は薄く桃色だったろう皮膚は、白く、所々に青や緑の斑点が。
腐りかけた体のラインから、辛うじて、女性とわかった。
「見えただろ。どうだ」
俺は吐き気を堪えるのに精一杯だ。
「どう思う。どう見る。お前は」
吐き気を飲み込んで、先輩を睨む。
「これは冗談じゃ済みませんよ。警察に……連絡しなきゃ」
先輩は笑う。声をあげて。
「警察。警察ねぇ。これを。お前、悪戯だと思われるぜ」
悪戯?
何を言うんだ。
現にここに死体があるじゃないか。
俺はもう一度死体に目をやる。
さっきと変わらず、窪んだ穴がこちらを見ていた。
135:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/17 12:55:07 mtxDRcORO
「警察が動くのは人間の事件だ。死んでいるのは、猫じゃないか」
はっとして先輩を見る。
相変わらず逆光でシルエットしか見えない。
再び、視線を下におろすと、そこに転がっているのは女の死体……ではなく、黒い猫の死体だった。
「お前にはどう見えた。男か、女か、大人か、子供か、綺麗な死体か、腐りかけた死体か」
また、吐き気がした。
「ここは別に霊場じゃない。だが、正気の境界線だ。お前にはどう見える。まだ人か。それとも猫か」
不思議な感覚だった。
猫を見ていると同時に、女の死体も見ている。
二つの存在が重なって、そこにあるような。
「一度でも人に見えただけで、お前は有望だ。さて、どう見えるのが正気で、どう見えるのが狂っているのか」
わからない。
目眩がする。
シルエットの先輩が高笑いをする。
「面白いだろう。お前は知らず知らずそこに立っている。選ぶなら今のうちだ。どちらに倒れるか」
先輩の声を背後に聞きながら走る。
工場を出て、自転車に跨がり、全力で走る。
先輩の狂ったような笑い声は、工場に反響して、まるで別人のモノに聞こえた。
夕暮れ、影は長く伸びて、夜がくれば闇に溶ける。
先輩に、夜が訪れ始めていた。
先輩と死体 終
最初の、下げ忘
136:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/17 12:56:40 mtxDRcORO
また変な所で切れた…申し訳ない。
最初のレス、sage忘れてました。失礼しました。
137:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 13:28:13 W+q6KscB0
俺「いなお」かと思ってたわ
しかしキチガイ多いなあ……。書き手が一人他所で書く事に何をそこまで必死になる要素があるんだ
138:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 13:33:32 QzASic/l0
いなおとこ乙
139:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 13:34:20 GqyoHBDM0
>>131
派生スレだとしてもシリーズ物に限るだろ
ただ一回透過されたものを即ここに誘導するのはおかしいだろハゲ
140:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 13:35:43 GqyoHBDM0
>ここに投下してる書き手が洒落怖に戻ったら、困るのは洒落怖住人だろうに。
困る?何が困ることあるんだ。貴重な書き手だろ
困るのは賑わうのを嫌がるアンチだろ。俺のようなw あ、お前がそうか
141:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 13:38:45 GqyoHBDM0
>>137
必死なのは大嫌いな洒落怖を常時監視していてスキあらばここに引きこもうと考えてるここの信者だろ
単発ものでも構わず勧誘するんだからな
板違い?スレ違いなんてどうでもいいだろ。ルール無視のならず者がホザくな
そういう輩が他人には厳しくルールを押し付けて排除しようとするんだよな
142:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 13:54:37 mtxDRcORO
好きな所で好きなように書かせてあげればいいじゃないと思うんですが違うんでしょうかね。
143:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 14:03:31 cCApXZN10
とうなん乙
144:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 14:29:23 dA/WRT3j0
ID:GqyoHBDM0
最近居ないと思ったらまだ居たのか。
こいつ、何スレも前から張り付いてる病気の人だから触らない方がいいよ。
ひょっとするとメリーと同一人物かもね。
145:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 15:43:45 GqyoHBDM0
ま~~~たいつもの同一人物認定厨が出てきたよ
都合の悪い展開になるといっつも同じ事言ってはぐらかすよなw
146:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 15:47:34 GqyoHBDM0
>>142
はあああ?
洒落怖に投下してたのを強引に勧誘しておいてよくそんなセリフ吐けるよなあ
そのセリフは勧誘してきた馬鹿に言えよ
言えねえだろ?身内に甘いもんなあ。自分を崇めてる信者にそんな事言えないわなあ
やっぱりウニの劣化パクリ作家様は違うねえ
普段からてめえの頭で考えるってことをしてないんだろう。頭悪すぎる
いちいちコテ外して名無しのふりしてるのが笑えるww
147:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 15:49:49 GqyoHBDM0
スレ違いを弾圧しておいてスレ違いを誘導、自演認定、おまえが言うなよ発言
信者も作家も底辺すぎ
148:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 15:51:33 GqyoHBDM0
>>142
なあ、偽ウニさんよ。弁明してみろよ
誘導された作家に「好きなところで書けば良い」ってどういう事だよ?ああ?
149:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 15:58:41 dA/WRT3j0
837 名前:本当にあった怖い名無し:2009/09/08(火) 22:35:24 ID:/ejiCi330
また新規作家のように振る舞ってる馬鹿がいるのか
洒落コワに投下→すぐ誘導厨発生→あっさり移る
行動が同じw
その作家も語り口調も同じ作風だけは一生懸命変えようと努力してるのが笑える
「猛者」とやら、ここで投下し続けると叩きまくる人がたくさんいるから気をつけろよ
洒落コワにいた方がまだましだよ。
文体・特徴まるで同じ。
一年以上、いやそれ以上か?前から張り付き、新たに投下する人を貶しまくって迫害するマジキチ。
お手を触れないように。
150:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 16:01:38 naxIQ4ovO
前スレにあった、枯野だっけ、
あの人の投下した話ってどこかでまとめられてる?
探したけどなくて
あと稲男乙
151:本当にあった怖い名無し
10/10/17 16:05:36 UQMmeZ4wO
>>148
メリーよ残念ながらばればれだ
いい加減反省しろ
152:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 16:30:57 tGGCxS2QO
>>150
全部あるか分からんがまとめで読める。
URLリンク(us.eek.jp)
153:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 16:52:04 GqyoHBDM0
>>149
ああ、それ俺だがそれが何か?
いつそのレスが俺のじゃない、と言ったんだ?
そんな事言うために必死にそのレス探してたのか?お前がマジキチだろww
154:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 16:53:03 GqyoHBDM0
>お手を触れないように。
お前が言われるセリフだろばーかww
ほんとお前ら楽しませてくれるわw
155:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 16:54:50 GqyoHBDM0
>>151
もういいよお前。いつまでもそうやって粘着してろw
156:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 16:58:12 GqyoHBDM0
それより早く>>142、とっとと出てきて>>148に答えろよ
お前らは何度こういう事繰り返すつもりなんだ?
調子乗って相手をねじ伏せたつもりの発言して、それに反論されたら途端にだんまりしたり話をすり替えたり、いつも同じ逃げパターンじゃねーか
さんざん相手しておきながら最後は
>お手を触れないように。
こういう台詞はいて逃亡ww
学習能力ゼロか
157:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 17:00:09 GqyoHBDM0
142 自治スレでローカルルール他を議論中 sage 2010/10/17(日) 13:54:37 ID:mtxDRcORO
好きな所で好きなように書かせてあげればいいじゃないと思うんですが違うんでしょうかね。
違わないね。最初から洒落怖に投下してるんだからそっとしておくべきだったねえ
だから、誘導してたお前の信者に同じ台詞吐いてね
158:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 17:02:11 GqyoHBDM0
>一年以上、いやそれ以上か?前から張り付き、新たに投下する人を貶しまくって迫害するマジキチ。
お手を触れないように。
これも何回も繰り返してるな
ほんと学習能力ないんだなあ・・・・テンプレにもあるんだろ?
159:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 17:04:09 tGGCxS2QO
>>157
煽りとかじゃなく素朴な疑問なんだけどさ
相当このスレを嫌ってるように見受けられるけど、何のためにここに居続けてるの?
自分に合わないと感じたら、無理して見なきゃ良いのにと思うよ。
160:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 17:08:17 GqyoHBDM0
これまでの流れ読んで理解出来ないなら、俺が1から10まで事細かく説明しても理解出来ないだろうから黙ってろ
とことんバカしかいないんだなこのスレ
161:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 17:33:42 xJI/x7Xf0
NG処理したらすっきり( ´∀`)
162:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 19:37:24 T23lYbYOO
勧誘してるように見えるのはこのスレ住人じゃなくて洒落怖の自治厨だっつうの。
洒落怖が過疎ったのも自治厨の過度な追い出しだろうが。ほんのり行け、シリーズ行けって何回見た事か。
つか正直糞みたいな書き手を全員ノシつけて返品したいぜ。今書いてるウニ擬きみたいなの全部な。
そんなの戻されても伝統ある(笑)洒落怖さんも要らないだろ?
そういう返品もきかないゴミを隔離するスレがココなんだよ。
163:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 19:46:22 sL/OkN/L0
洒落怖住人だけど、この人基準でレベルをはからんでもらいたいな
164:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 20:16:16 naxIQ4ovO
>>152
おお、ありがとう
そういえばそのサイトだけ探し忘れてたかも
わざわざすまんね。ありがとう
後で読んでみる
165:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 20:46:44 NiABwQfkO
>>163
禿同
独りで騒いでる糞基地外は
洒落怖スレでも相当ふじこってるが
誰にも相手にされとらん
連れて帰りたいが無理そうなので
そのへんの山にでも捨てといてくれ
後、誘導された投下者は責めないでやってな
自治厨に振り回されちゃった被害者なんだよ
166:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 21:16:18 LYc842xf0
こんなに荒れてるんじゃ、投稿しにくいよね
きっと
167:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 21:27:22 Q4yt4uWZ0
2ちゃんはレスしてる誰のものでもないのにね
気に入る気に入らないの感情だけもんね
168:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/17 21:57:02 mtxDRcORO
俺の住む県は雨が降らない。
日本一、とかではないが、地方の天気を見ても、周り全部雨なのにここだけ降っていないという事が多々ある。
それは隣県の晴れの国パワーが流れて来ているからか、山脈に雲が塞き止められるからか、はたまたなにやら専門的な要素が働いているのかはわからない。
降ってもほんの少しだったりするから、毎年水不足に悩むのも仕方ないのである。
そんな滅多に降らない雨の日、俺は初めてそれを見た。
先輩と出会った年の秋、肌寒くなってきた頃。
珍しく大雨で、俺はカッパを着て自転車をこいでいた。
雨でも風でも学校はある。
どこかの大王のように、雨が降ったらお休みにすべきでは無いのか、などと、たわけた事を半ば本気で考えていた所、雨に煙る道の先に人影が見えた。
視界は悪く、人影は文字通り影に見える。
少し遅刻気味の今の時間、もしかするとお仲間かもしれないと思った俺は、自転車を加速させた。
知り合いかどうか見てやろうと思ったのだが、雨が酷く未だに影のままだ。
169:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/17 21:59:43 mtxDRcORO
さらに近付いて、ようやく違和感に気付いた。
この人影はまさしく影であり、ただ漠然と黒いままに存在していたのだ。
驚いてぽかんとしている間にも自転車は進み、影の横をすれ違う。
厚みのある影、という表現が一番しっくりくる。
確かな厚みと存在感はあるが、間違いなく影なのだ。
すれ違いざま、その影が弾けた。
ばしゃんと音を立て、降り注ぐ雨に溶けて流れてしまった。
「それは、人の形をしてたのか」
先輩はコンビニのおにぎりをかじりながら聞いた。
「はい、それは間違い無いです」
昼休み、俺は先輩の教室を訪ねた。
登校中に見た物が気になったからだ。
「雨の日の、黒い人影、ね」
海苔をバリバリ噛みながら、先輩は窓の外を見た。
見るまでもなく、雨はまだ降り続けている。
「雨に限らないんだが」
先輩の語りが始まる。
先輩の話し方は、不思議と心惹かれるというか、掴むのが上手いというか。
俺は、先輩が語り始めるとわくわくするのだ。
170:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/17 22:01:34 mtxDRcORO
「水っていうのは、何かを溶かす物だ。砂糖とか、塩とか。電気も溶け出すと言える。そして、溶けた物は水の中に残るんだ。消費されるまで」
おにぎりをかじりながら淡々と語る。
「そう、何でも溶かす。死体も溶けて崩れるし、雨に流れる幽霊も見たことがある。極めつけは、意思だ。人の思いも、水は溶かす」
想像してみろ、と先輩は窓の外を指差す。
「あの雨の一粒一粒に、お前の意思が溶け込んでいる。何かを食べたい、何かが欲しい、誰が好き、誰が嫌い」
俺の脳みそから、液体のように意思が漏れだし、雨に混ざるイメージが浮かんだ。
「だけど、水の量は世界中で一定だ。水分は蒸発して雲に、雲は凝結して雨に、雨は蒸発してまた雲に。つまり、有限なんだ。水は」
それはわかる。
が、だからどうなのだろう。
「水が無限なら、問題ない。しかし、水が有限なら、溶けることの出来る量も有限だ」
171:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/17 22:03:47 mtxDRcORO
昔、飽和、というのを習った。
水の量に対して、一定の量の物質が溶けると飽和して、それ以上は物質が溶ける事が出来なくなる。
なるほど、水の量が有限なら、節操無く溶かし込んでいけばいつかは飽和するわけか。
「で、本題である、お前が見た物についてだ。恐らく、俺も同じ物を見る。俺には不定形に見えるが、黒くて、不可思議な存在感をしたモノ」
今朝見た物が思い出される。
確かにあるように見えるのに、どこか希薄な、平面のような存在感。
影という他喩えようもないモノ。
「あれは、上手く近付いて触ればわかる。水に溶けて、飽和した後。溢れた分の意思だ。雨は、そういう物も地上に運んでくる」
雨の音が聞こえる。
喋り終えて黙った先輩は、俺の弁当の唐揚げを物欲しそうに眺めている。
箸でつまんで鼻先に持っていくと、一口に頬張られてしまった。
「その、意思っていうのは、どんな物なんですか」
先輩は唐揚げを咀嚼しながらにやりと笑った。
172:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 22:03:59 tPblFww10
支援!!
173:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 22:04:31 dA/WRT3j0
④
174:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/17 22:07:05 mtxDRcORO
「ん、うん。簡単なことだ。溶け残るってことは、つまりそれだけ濃く、多くを締める意思なわけだ。そんなもんはいつだって誰だって決まってる」
少し、間があいた。
「憎しみ、嫌悪、憎悪。決して幸せや愛なんかじゃない。あの黒い物は、人の汚濁だ」
先輩は今度はウインナーを見ている。
俺はあーんと言って先輩に口を開けさせて、その中に放り込んでやった。
満足そうな先輩から視線を外し、窓の外、校庭を眺める。
その真ん中に、真っ黒な人影が立っていた。
その黒い顔は、こっちを見ているような気がした。
先輩と雨 終
175:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 22:34:23 wLwv+PVn0
乙
ウニ臭を漂わせながらここまで読ませるのもすごい才能だな。
176:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 23:51:44 1KznBTfT0
先輩と雨 面白いなぁと感じるだけに師匠シリーズにたぶるのが悔やまれる。
ほんとうに
177:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/17 23:59:20 GDgAB6srP
往生際の悪い二次創作
178:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/18 01:26:35 y9dKIzSm0
二次だろうが実話だろうがおもしろければそれでいい
179:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/18 02:02:52 pRlIHu5OO
いなおとこ乙
180:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/18 03:20:30 sSaupG2OO
仮眠時間だ。稲男氏の話おもしろいなあ
稲男氏見習って今回からタイトルつける
睥睨
霊感を持つ人間なら、祓ったりとまではいかなくても何らかの対抗手段を持っていることが多いと思う。
宗教やら信仰に由来するものや、呪術・魔術的な儀式めいたもの、または自分の経験によるもの。
お経や祝詞を読む、お守りを持ち歩く、人形代に吸わせる、その他。人によって様々だ。
勿論、俺にもある。自分でも少々変わり種だと思う対抗手段が。
だが、Aの対抗手段は俺のを鼻で笑えるくらい(事実鼻で笑われた)もっと変わり種だ。
181:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/18 03:22:32 sSaupG2OO
高二の夏休み、二十歳になったということで、Aが酒と煙草を始めた頃の話だ。
あいつはずぐに酒にも煙草にも慣れ、メンソってシャキーンてなるんだなあとか言ってた気がする。
当時付き合っていた彼女が煙草嫌いだったため、喫煙者でありながら自分の家の中では煙草を吸わない事にしていた俺は、
何の気兼ねもなく煙草が吸えるAの家に入り浸り、買い貯めた煙草のストックもA宅に置いているような有り様だった。
その日も煙たいAの家でだらだらとしていて、どんな流れだったかは忘れたが、とにかくAの対抗手段の話になった。
洒落怖から見てくれてる人はもう分かってるかもしれないが、そういう存在に対するAの対抗手段は、相手を睨むことだ。
「昔さ、パラノイアだったんだよ。中学校に上がった辺りからなんかキモいのが見え始めた。
妄想ってか幻覚ってか、まあ、そんな感じのが。それで不登校になったわけ」
中学校時代のAの話を聞いていた俺は、頷きながら煙草の封を開けた。
定時制の高校に通うやつには、当然普通の高校に行かない理由がある。
なんでこの高校に入ったのか? という定時制高校ではよくある身の上話として聞いていた。
「人っぽいのとか、なんか悪魔っぽいのとかゾンビとか。今思うと霊も見てたんだろうなあ、区別つかなかったけどさ。
あ、妖精も見たぞ。ティンカーベルとか。つまり昔の私は妖精と戯れる無垢な少女だったわけだな」
「今は煙草食らって酒を飲む汚れ女だけどな」
「うるせえよ」
182:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/18 03:24:12 sSaupG2OO
「で、どうしてそれがあの睨みになるんだ?」
「あー、先ずは聞いとけ。とりあえず、そいつらは夢の中にも出てくるんだよ。まあ、悪夢だな。
妄想、幻覚の化け物が昼夜問わずで襲って来るんだ。あの時は頭が狂いそうだった」
あ、つうか頭がおかしくなったからあんなのが見えたのか? なんて言いながら、Aはビールを飲む。
この後彼女と会う予定が有った俺は羨ましく思いながらそれを眺め、煙草に火を点けた。
「それで、ある時夢の中でこう思った。夢なら何でも出来る訳だから、こいつらを消すこともできんじゃないかって。
明晰夢ってやつだな。で、夢の中で必死こいて念じるんだ。死ね死ね死ねって。でも死んでくれない」
俺は夢の中で生々しい化け物に囲まれるAを想像する。夢の中も現実も、中学生時代のAからすると大差なかったのだろう。
そう考えて俺はゾッとした。たまに見る悪夢が現実で、こうしてだらだらしてるのが夢だと思うと、堪らない。
「毎日毎日死ね死ねって念じて呟いてる内に、イメージもそれにくっつくようになった訳よ。
包丁刺されて死ぬとか、車に轢かれて死ぬとか思うと、その化け物が包丁で刺されて死ぬイメージが勝手に浮かぶんだ。
何回もそんなことをしてる内にそのイメージが固まってきた。化け物は私の妄想だろ。それを妄想の中で殺すんだ。
そうなると本当に死に始めたんだよ、化け物が。本当って言っても実際は私の妄想だか幻覚に過ぎないんだけどな。
その内夢だけじゃなく現実でもを殺せるようになってさ。まあ、妄想は妄想から逃げられないんだろうなあ」
染々とAは語った。
俺たち現実で生きている人間は、夢の中で死んでも実際には生きている。現実では死んでないのだから。
だが、昔のAが見ていたという化け物は妄想の存在だ。妄想の中で殺されれば、生きてはいけないんだろう。
183:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/18 03:25:09 sSaupG2OO
「その内、いつの間にか手当たり次第片っ端から化け物を殺すようになってさ。そしたら、だんだんと数が少なくなってきた」
「それって」
「うん。最終的には皆殺しにしたのかもしんないなあ。妄想を。でもさ、まだ変なのが見えるわけ。
いかにも化け物、ってのは居なくなったけど、まだ変なのがいるわけだ。まあ……お前にも見えるやつだな」
妄想を皆殺しにしたら、残ったのは霊だったとAは言う。
「霊だって気付いたのはそっからすぐ。いつの間にかそっちも見えるようになってたんだな。
で、やっぱりそいつらは殺せないんだ」
「それはそうだろ。霊は妄想じゃないんだから、妄想の中で生きてるのを妄想の中で殺すのとは訳が違う」
「うん。私もそう思った。だからオカルトに傾倒したわけよ。なんとかする手段は無いかってな。
熱中したね、あの時は。一通り勉強したあと、私がこれだと思ったのは、魔術だった」
「魔術って、悪魔呼び出したりとか?」
「いや、そういう儀式的なのじゃない。まあそんなんも出来るけど。成功したこと無いが。
まあ、魔術って言っても初歩の技術的なやつだ。私がやったのは幻視法と呼吸法」
やっと話があの睨みに近くなってきた。そう感じた俺は煙を吐いて煙草を揉み消した。
184:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/18 03:27:27 sSaupG2OO
ぼう、っとした焦点の合わない瞳でAは話を続ける。
「幻視はイメージを視角化するってやつでな、それを使うんだよ。で、イメージを視角化するってことはつまりさ、」
話の途中でAはビールの冠を傾ける。中身を全部飲みきったAは、っあー、なんて声を出した。
「まあ、あれだよ。私が睨む時はさ、相手を見ながら頭ん中で相手を殺すんだ。死ね、死ね、死ねって本気で思いながら。
居なくなれ。消えろ。お前が存在してる意味はない。お前は無価値だ。死ね、死ね、死ね、死ね、死ねってさ」
一人言のように言ったAは、いつものように焦点が合わないどこかぼうっとした目で俺を見た。
淡々と語るAに怖気を覚え、俺は煙草に火を点けるふりをしてAから視線を外す。
どこを見ているか解らないような目は、けれど、確実にこちら向いていた。
……Aのそれは、きっと呪いみたいなものなんだろう。
相手を睨み付け、死ね、死ねと本気で思いながら相手が死ぬ姿を丁寧に丁寧に想像して行く。
丑の刻参りと同じように、相手に思念を飛ばして殺すという、呪い。
「ゆっくり、ゆっくりイメージするんだ。相手を見ながら。ゆっくりゆっくり、注意して、丁寧に、丁寧に」
淡々と話を再開したAは、まだこちらを見ていた。俺はAを見ることができない。
「……なあ、ちょっと待ってくれ」
見ることができないまま、俺はAに質問しようと口を挟む。
「あの時のお前の自分霊のことか? 大丈夫だよ。軽く睨んだだけだから」
俺が質問の内容を言う前にAはそう言って笑う。
けれど、俺が知りたいのはそういうことじゃなかった。
お前は俺を呪ったのか? お前は俺の死を願ったのか?
お前の頭の中で、俺はお前に殺されたのか?
俺は、何も言えなかった。
185:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/18 03:28:30 sSaupG2OO
生まれた会話の空白に気づかないふりをして、Aは声を挙げた。
「よし! お前帰れ!」
ふざけるように笑ったAに胸を撫で下ろし、俺は意識して普段通りの顔と声を作る。
「何でだよ」
「うるせえなあ。彼女に会うんだろ? 風呂入って服洗って、煙草の匂い落とさなきゃなんないだろ?
おら、帰れ帰れ」
俺は意識して苦笑しながら舌打ちをする。
「しょうがねえなあ。んじゃ、またな」
そうして、その場はお開きとなった。
……恐らくAは気付いていたんだと思う。
俺が煙草に火を点けるふりをしてAから目を逸らしたことも、俺が本当に聞きたかったことも、俺がAに怯えていたことも。
Aの睨みに関する話は、あれから数年経った今でも、話題に登ることは殆ど無い。
186:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/18 08:13:30 DEJSCcaNO
乙
定時制って本当に色んな人いますよね
確実に教師より歳上なオッサンとかザラ
187:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/18 17:56:41 32JtGWr/0
乙
>>185
過去投稿分もコピペして良いかね?
まとめて読みたいわ。
188:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/18 19:25:52 DW2cGsUtO
>>187
洒落怖スレ常駐者です
特にネタ第1は素晴らしい
是非ともお願いする
投下するにつれネタ臭くなってるが
文章力は光ってる
自分は好きなので応援している
189:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/18 20:14:22 NqCrBzBm0
あれはいつのことだったか。
俺は先輩に聞いた事がある。
「先輩って怖い物とかあるんですか」
俺が真っ先に思いつくのは幽霊だとか、お化けの類だ。
あれこそ万人に怖がられている物ではないだろうか。
しかし、この人はきっと違う。
何故ならその類の物でも、ぶん殴ることが出来るからだ。
倒せるのなら、怖くは無いんじゃないか。
そう思って、聞いてみたのだった。
「あるよ」
先輩と俺は歩きながら話した。
「俺は、そうだな。ヨーコが怖い」
まじめな顔をして答えてくれたので、まじめな答えが聞けると思ったら、そんなもんだった。
「いやいや、そういうのいいです。もっと、こう、真剣に」
えー、とぶー垂れて、先輩は顎に手をやって少し考える。
「・・・・・・向日葵が怖い」
返ってきた答えは意外な物だった。
「え、向日葵って、あの、花ですか。夏の」
頷く先輩。
「どっちかというと、怖いとかじゃなくて、元気な感じしますけどね。綺麗っていうか、可愛いっていうか」
先輩がにやりと笑う。
いつもの笑顔だ。
「あの花、漢字で何て書くか知ってるか」
俺は考える。
いや、考えるまでも無く知っているのだが、一応。
「向うに、太陽の日に、葵ですよね。どうかしたんですか」
「由来は知ってるか」
今度も考える。
わざわざ聞くってことは、一般的な意味じゃないのかもしれない。
俺は恐る恐る答えてみた。
190:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/18 20:17:37 NqCrBzBm0
「え、と。向日葵は、太陽の方に花を向けるんじゃなかったですか。太陽を追いかけて、こう、ぐぐっと」
少し間があったので、どきどきしていたのだが。
「そう、その通りだ」
拍子抜けだった。
「・・・・・・で、それが、どうかしたんですか」
「そうだな、向日葵は太陽を追う。光を追う。光を追うのは、何だ」
今度はちょっとわからない。
俺はイメージしてみる。
大きな光に、集まってくるものといえば・・・・・・。
「あ、虫、とかでしょうか。夜、電灯とか自販機とかに群がってますよね」
先輩はまた頷く。
「うん、それはそうだ。他は?」
他、他・・・・・・。
あまりイメージ出来ない。
「光を追う、と言ったからわからないのかも。言い方を変えよう。光を求める物は何だ」
あ、これならわかる。
先輩が俺に何を言わせたいのか。
「人間、ですか」
「そうだ」
人間は、その大小に関わらず光を求める。
それは物理的な光に限らず、精神的な、所謂希望という物でもある。
「向日葵の花は、その性質を持っている。何故だ」
また、イメージする。
人間と向日葵の共通点。
光を追うこと、光に向うこと。
「あの花には、一本残らず幽霊が憑いているんだ。一度向日葵畑に行ってみろ。お前の感覚が尖っていたら、見えるかも知れん」
191:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/18 20:20:07 NqCrBzBm0
背筋に寒気が走った。
背の高い向日葵の下で、うつむいてしゃがみこむ幽霊。
それが一本じゃなく、一面を覆う程たくさんある。
向日葵と、それと同じ数の、老若男女様々な幽霊が。
「太陽は最大級の光だ。そして向日葵は、太陽に似ている。あいつらのぼけた目には、同じに見えるんだ。近付いていって、ようやくわかる。この太陽が偽者だと」
救いを求めた先が紛い物だった時の落胆。
「そして、あいつらは今度こそ本物を見つけるんだ。そっちに顔を向けると、憑いている向日葵もそっちを向く。だから、日に向う葵なんだ」
考えた事も無かった。
生命体として、そういう仕組みだと思っていた。
そこにそんな秘密があったなんて。
「まあ、実際どちらが先かわからないんだけどな。向日葵が太陽を追っていたから憑いたのかもしれない。ただ、今はそうなってるんだ」
俺は納得した。
そんな花だったなんて。
怖い花だ。
その下に、救いを求める青い霊魂を座らせて、まるで太陽に近付こうとするように、高く伸びる。
綺麗で活気に溢れているように思えた向日葵畑が、薄暗く妄執の溜まる鬼門のように思えた。
「先輩は、それで向日葵が怖いんですね」
192:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/18 20:22:32 NqCrBzBm0
先輩はなんだか照れているようだった。
「いや、違うんだ。実は」
「昔見た、トリフィドの日・・・・・・人類SOSって映画がトラウマでな。見る度なんとなく思い出して怖いんだ。大きいからかな。わからんのだけど」
先輩は決まり悪そうに言った。
俺は笑った。
先輩にも可愛い所があるじゃないか。
「なんだよ、気分悪いな。俺だって怖いもんくらいあるさ」
「す、すいません。でも、なんか意外で」
ちぇ、と一つ舌打ちをして、先輩は足元の小石を蹴飛ばした。
「まあ、本当に怖いのはそんなもんじゃない。本当に怖いのは」
俺の中の、怪物だ。
俺は、もう笑えなかった。
先輩と向日葵 終
193:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/18 21:17:14 pRlIHu5OO
いなおとこ乙
194:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/18 21:46:37 A4nRRonB0
いなさく乙
195:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/18 22:14:34 9bKoiCT40
>>180
Aが中島美嘉で再生されてしまった
石原さとみでもいい
196:AとBの話コピペ
10/10/19 02:06:30 JqwxdyoK0
315 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 22:06:06 ID:OT0QzzvRO [1/9]
昔あった事を簡単に話してみる。
前置きが長いがちょっと聞いてくれると嬉しい。
始めに言っておくが俺は正気だし、脳の病気を抱えてたりはしない。
丁度今頃の時期。
何か連絡しなきゃいけない事が有って、出先から電話をかけようとしたら、携帯が無かったんだ
仕方無いから電話ボックス探して、十円玉を入れ、電話。
電話が終わって電話ボックスから出ようとしたら、黒いパーカー着て、フード被った人が出入口の前に立ってた。
電話待ちかと思って
「あ、すいません」
って小さく言って電話ボックスから出て、さっさと行こうとしたら、掴まれた。
腕を掴まれた。
え? って感じで振り返ると、俺(179.9cm。惜しいw)の胸くらいの身長の人がいた。
黒いパーカーを着てて、小柄というかげっそりと痩せてる感じの人。
顔は俯いてて良く解らない。時間はもう夜中だし、当たりは暗い。
危ない人かと思ってちょっと怖くなった。
「なんですか?」
って言っても、その人はただ俯いてるだけで何も言わない。
フードの下、何とか見える顔の下半分。
口許が引き吊っている。
気味が悪くなった俺は、手を払ってその場から逃げ出した。
197:AとBの話コピペ
10/10/19 02:06:46 JqwxdyoK0
316 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 22:07:17 ID:OT0QzzvRO [2/9]
それで、ここからが本番。
それから暫くしてから、仕事が休みだって事で友達と二人で飯を食いに行った。
予想出来ると思うけれど、その友達が霊感が強い人。
とりあえず行き着けの食堂でラーメンとカツ丼セット食べて、
店を出てさあ何処に行く、って話をしながら車に戻ろうとしたら
別の友達とばったり会った。
(次から霊感強い友達をA、こいつをBと書く)
「おお、久しぶり」
って感じで、Aを放ってBと話して、話に花を咲かせた。
暫く話して、AをBに、BをAに紹介しようとAの方を見た。
Aが、Bを睨んでる。
放置してキレたか? 悪いとは思うが睨むことはないだろう。
むっとした俺はその事を言おうと口を開こうとして、出鼻を挫かれた。
Aの方が先に口を開いた。Bを睨んだまま。
「誰だよコイツ」
今から紹介しようとしてんじゃねえか!
そう思って、
「こいつは、」
言葉が出ない。
始めにあれ、って思った。次に誰だっけ、って考えた。そして、鳥肌が立った。
誰だこいつ。
198:AとBの話コピペ
10/10/19 02:06:56 JqwxdyoK0
317 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 22:08:36 ID:OT0QzzvRO [3/9]
怖くなった俺は反射的にBを振り返った。
さっきまで笑顔で話してたBは、俯いた。俯いた顔の口許が引き吊る。
愕然とした。
「行くぞ」
Aが俺の腕を引く。はっとした俺は運転席に急いで入って、食堂の駐車場を出た。
「お前、アレはよくねーよ」
暫く走って、落ち着いて来た頃に煙草をくわえたAが言った。
「アレはよくねー。変なもんに気に入られたな」
なんとかしてくれよ、と言うと
「無理。取り憑かれてるわけじゃないし」
取り憑かれてればなんとか出来るのか? と聞くと、
「なんとかするために取り憑かれてみるか?」
と返された。
それ以降、俺は度々Bに遭遇し、場合によってはAの家に逃げ込む羽目になった。
つい昨日、会社帰りに遭遇したので書き込みたくなった。
読んでくれた人、ありがとう。
見てる分には怖くないかもしれないが、本人からするとほんとに怖いんだよ
199:AとBの話コピペ
10/10/19 02:09:56 JqwxdyoK0
319 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 22:13:39 ID:5T9h62f20 [1/3]
Bに会った時って何話すの?
321 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 22:19:25 ID:OT0QzzvRO [4/9]
>>319
話した内容は解らない。あの後すぐにAに聞いたんだが
「睨み付けてて聞いてない」
とのこと。怪しいが。
それに話したのはあれっきりだw
320 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 22:18:44 ID:1ZpErngaO [4/7]
乙!>>315-317
やべぇ…トリハダたった
電話BOXで魅入られたのか
322 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 22:21:22 ID:5T9h62f20 [2/3]
A以外には見えてないの?
何回か会ってるみたいだけど、
見かけたら逃げてるの?
323 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 22:22:08 ID:1ZpErngaO [5/7]
>>319
そうだった!
これが大前提だよな
何故Bを友達だと思ったのか
そして何の話をしたのか
200:AとBの話コピペ
10/10/19 02:10:02 JqwxdyoK0
325 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[] 投稿日:2010/10/12(火) 22:30:33 ID:OT0QzzvRO [5/9]
>>320
ありがとう。
多分そうだとは思うんだけど、よく解らないんだよ
何か怪談がある電話ボックスってわけじゃないしさ。
人気のないとこにあるだけで、後はふつーの電話ボックスだし
>>322
すまん、わかんない
遭遇したことがあるのは俺の知る限り俺とAだけだ
もしかしたら俺と同じ目に逢ったやつもいるかもしれないし、
下手したらそれでも気付いてないかもしれないし。
わからん。
見掛けたら逃げてるよ。昨日は道端だったから家に帰れたが
家の玄関ドアの前に張られたりすると最悪だよ
>>323
それが気になる。でも俺は覚えてないし、
Aも教えてくれない。Aは聞いてると思うんだが
201:AとBの話コピペ
10/10/19 02:10:54 JqwxdyoK0
327 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 22:39:56 ID:5T9h62f20 [3/3]
>>325
何だか凄い気になるなー
家の前に張られてる事が有るなら家族に見てもらえるよな?
話し掛けてみたらどうだろうか
328 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 22:44:28 ID:OT0QzzvRO [6/9]
>>327
生憎一人暮しの独男だよ
ていうか話し掛けてみろとか無理w
構うと録な目に逢わないってのは今までの経験から学習してるw
202:AとBの話コピペ
10/10/19 02:10:58 JqwxdyoK0
329 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 22:55:21 ID:PfZbjQ8G0 [1/2]
>家の前に張られてる事が有るなら家族に見てもらえるよな?
>話し掛けてみたらどうだろうか
315さんの書いた話の流れだと、Bというヒト?は、おそらく家族には見えない?存在なのかも
ただし友人のA氏には、そいつを認識できて、追い払うこともできる。
Bはおそらくヒトではなさそう。
A氏ならBの正体について予想はついてるのだろうが、何らかの事情で言えないとか?
とりあえず文面からは、そういう印象を受けた。
331 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 23:09:13 ID:OT0QzzvRO [7/9]
>>329
人だったら警察に電話するw
初めの二回は気付かなかったが、Aに言われてからは人じゃないな、
っていう感覚が有るんだよ。
Aから聞いた話を総合すると
・取り憑かれてるなら何とかできるけど、俺は取り憑かれたわけじゃない
(ただ俺を追ってくるだけとのこと。
憑かれた状態とどう違うのか解らないが、俺自身も憑かれてる感覚はない)
・なんなのかは解らないが、遭遇しても追い払えるタイプじゃない
(つまり逃げるしか出来ない)
203:AとBの話コピペ
10/10/19 02:11:30 JqwxdyoK0
332 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 23:18:37 ID:1ZpErngaO [6/7]
>>325
成程な‥Aが鍵握ってるぽいな
もし、他にAと関わった話があったら
又投下してくれよな!
楽しみにしてるよ
333 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 23:19:35 ID:PfZbjQ8G0 [2/2]
>>331
>・取り憑かれてるなら何とかできるけど、俺は取り憑かれたわけじゃない
でも一度、Bという存在を、自分の友人のように誤認識してしまってるでしょ?
これは、怖いよ。
Bに魅入られてるのだかわからないけど、
Bが人の精神や思考に影響を与えている?、それもまともな方法じゃない。
こういう現象が起こるのは、心霊とかではなく、もっと厄介なモノなんじゃないかと。
335 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 23:29:58 ID:OT0QzzvRO [8/9]
>>332
ありがとう。
じゃ、その内また投下するよ。
聞いたネタも含めれば結構ストック有るし
>>333
まず初めに言った通り、俺は正気だし脳の病気でもないよ
怖いことは確かに怖いし、見た瞬間は正直吐きそうになるが、
めちゃくちゃ厄介! って程じゃないと思う。
実害は誤認以外に無いしね
204:AとBの話コピペ
10/10/19 02:11:54 JqwxdyoK0
338 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 23:51:35 ID:a4BY/vQ80
>>335
腕をつかまれたんだよね・・・
実体があるってことでは
まじ、こわい
ニュータイプの宇宙人?
339 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 23:55:59 ID:OT0QzzvRO [9/9]
>>338
掴まれたと思う。
けど、実際掴まれたかは解らないんだ
Bを友達だと勘違いしたのと同じように、勘違いかもしれないし
宇宙人だったら……もっと怖いなあ
205:AとBの話コピペ
10/10/19 02:13:40 JqwxdyoK0
340 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/13(水) 00:06:55 ID:P/wGwq460
>>339
Bと話したのはAといたときの一回だけ?
もしそうなら二度目はやばいかもね
霊か生霊か呪いか知らんが
認識狂わせるってどんだけよ
あぁ久々にここ見に来てよかったわ
面白い話をありがとう
342 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/13(水) 00:22:29 ID:GmHE6Y0k0 [1/4]
>>339
仲間だと思ったのかな
電話ボックスと言えば、マトリックス、スーパマンの
転送、着替えが思い浮かぶ
もし可能なら、見かけたとき遠くから写メを
あ、写んないかな
Aを放置して話し込む、睨むA
ドラマ化してほしい。スマソ
ひさしぶりと話に花を咲かせたのは
記憶を植え付けたか、催眠術か、ホントに知り合いか
ひさしぶりと言いつつ、500年ぶりぐらいだったりして
続きもここに書くの?
206:AとBの話コピペ
10/10/19 02:13:44 JqwxdyoK0
343 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/13(水) 00:23:11 ID:+DwZyniQO [1/16]
>>340
だと思う。自信無いが。
もしかしたらAに言われるまでBを友達と思ったまま話したことが有ったかもしれないし
345 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/13(水) 00:33:32 ID:+DwZyniQO [2/16]
>>342
いや、わかんない。前世とかで何かあったら困るなあ……
B関係の話で続きって程の続きは無いよ。
あれ以降はBを見て逃げ、家の前とかならA宅に逃げ込むって感じだし
話せるようなのも有るには有るけど、微妙
207:AとBの話コピペ
10/10/19 02:14:30 JqwxdyoK0
400 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/13(水) 17:01:37 ID:+DwZyniQO [11/16]
仕事行く前に投下。
これはBと遭遇する前の話だ。
俺の知ってる話としては珍しく後味が良いと言うか、綺麗に収まっている話なので、書いてみる。
初めに言ってしまうが、俺はホテルで働いている。
人手が足りない時なんかは15時間労働したりするが、楽しくて仕方がない。
Aとはよく行き着けの食堂で飯を食う。何が有った。最近どうだ。良く会う割には話題は多い。
俺はカツ丼ラーメンを頼み、Aは餃子にビールを頼み、だらだらと様々な事を話す。
なかでも怖い話というか、そういう話は毎回出る。
Aは霊感が凄いヤツで、色々助けて貰ったり、巻き込まれたりもした。
その時の話や、今現在やってることなんかも良く話す。
ただ、その時は珍しく俺が話のネタを提供したんだ
208:AとBの話コピペ
10/10/19 02:14:40 JqwxdyoK0
401 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/13(水) 17:02:30 ID:+DwZyniQO [12/16]
うちの支配人が若い頃、実際に体験したという話だ。
当時、支配人はフロントとして外資系のホテルでバリバリ働いていた。
そんなある日、支配人はナイト業務と言って、専門のナイト担当者が居ないホテルでの謂わば宿直として
夜十一時から朝八時まで働くことになった。
深夜二時、ベルが鳴ったそうだ。ナイトは初めてではない。慣れている。
フロントバックで休んでいた支配人は何時ものように返事をしてフロントに向かった。
フロントに出てみると、いかにも暗そうな女性が立っている。
(危なそうだ)
そう思ったが、その時は閑散期。お客様は一人でも欲しい。
少し迷ったそうだが、結局料金を先に貰って、私製領収書を切って鍵を渡したそうだ。
そのお客様を見送った後、支配人はフロントに引っ込み、仮眠を取る。
四時過ぎに電話がなった。仮眠から起きた支配人はそれを取る。内線だ。
ナンバーディスプレイに表示された内線番号は、さっきの女性の入った部屋だ。
「はい、フロントでございます」
無言。
「もしもし、いかがされましたか?」
耳をすますと、妙な音が聞こえる。
まさか、何か有ったんじゃないか。
そう思った瞬間、女性の息遣いが聞こえた。
「ああ、すいません。何でもないです」
支配人は胸を撫で下ろした。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます。どうぞ、ごゆっくりお休み下さい」
そんなやり取りをして、受話器を置いた。
209:AとBの話コピペ
10/10/19 02:14:50 JqwxdyoK0
402 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/13(水) 17:05:38 ID:+DwZyniQO [13/16]
チェックアウトというのはラッシュが来ると中々終わらない。
ビジネスマンが多い平日は朝早くに集中し、早番と応対するか、最悪ナイト担当が一人で応対する。
休日は逆だ。チェックアウトのラッシュは遅く来る。
上手く行けばナイト担当が帰った後にラッシュが来るが、そうじゃないとナイト担当がそろそろ帰るか?
という時間にラッシュが始まる。そうなると中々帰れない。
その時は後者だったと支配人は言う。
「ラッシュが八時頃から始まって、閑散期なのにリミットまで続いた」
リミットというのは過ぎるとチェックアウト延長料を頂く時間だ。
「十時までな。それで、ラッシュが切れた頃にふとキーボックスを見たんだよ」
あの客は、チェックアウトしていない。
不安になった支配人は電話を掛けた。勿論その部屋に。
出ない。
不安を煽られた支配人はその時の上司に頼んで、一緒に客室に向かった。
マスターキーで部屋を開ける。女性は鼾をかいて眠っていた。
白いドレス姿で。
「きっと、婚約者にフられたんだろうな」
支配人はそう呟いた。
さて、当時の支配人と、その上司の目は、自然とベッドの横に行った。
そのスタンド付きの小さな机には沢山の錠剤の殻が散乱していた。睡眠薬を使った自殺だとすぐに判る。
そして、電話側のメモ帳にはぐにゃぐにゃと曲がった文字が書いてあった。
「あの文章が忘れられないんだよ」
支配人は言った。
210:AとBの話コピペ
10/10/19 02:15:05 JqwxdyoK0
4時××分
さようなら。
403 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/13(水) 17:07:38 ID:+DwZyniQO [14/16]
支配人が電話を受けて、すぐの事だったらしい。
支配人と当時の支配人の上司は救急車を呼んだ。鼾をかきつづける女性が入れられた救急車を見送った後、
支配人の上司は、
「あれはもう、ダメだな」
そう言ったそうだ。
ここまで言い終えて支配人は溜め息をついた。
「あの息遣いは、薬を飲み下した後の息だったんだな」
話はまだ続く。
それから数ヶ月して、支配人がまたナイトを担当した時に、暗い顔をした中年夫婦が来た。
「○○○号室は開いてますか」
夫婦のその言葉を聞いて、支配人は理解してしまった。
あの女性は結局、死んだのだと。
「けどさあ、おかしいよな」
話し終えた支配人は続けて言った。
「なんで、ルームナンバー知ってんだよ」
211:AとBの話コピペ
10/10/19 02:15:23 JqwxdyoK0
404 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/13(水) 17:12:20 ID:+DwZyniQO [15/16]
「そりゃあ、聞いたんだろうよ」
支配人の話を俺の口から聞き終えたAは何杯目だったかのビールを飲み干して言った。
「誰に」
「わかってんだろ」
嫌な笑顔で言い返された。そんな気はしてた。
救急隊員から聞いたのかもと思ったが、支配人が疑問に感じるという時点で、
その推理は間違ってるという事になる。
「でもよ、泣ける話だよな」
は? 俺は間抜けな言葉を返した。こいつの頭の中では両親の枕元に立つのが親孝行なのか?
そんな事を一瞬考えた俺に、Aは嫌な笑いを見せた。
「そのさようなら、ってのは、誰に向けた言葉だ?」
「誰って」
家族とか、その彼氏とかだろう。ウェディングドレスを着て結婚式を挙げる予定だった。
その事を告げるとAは
「彼氏は含めない。家族だけだ。だってドレスを着てるんだ。
自分を捨てた相手に、ウェディングドレスを着てさようなら、なんて言わないだろ」
そう言われるとそんな気がしてきた。けど、彼氏は含めない理由が解らない。
それに、自分を捨てた彼氏に対する当て付けとも考えられる。
「ああ、前提が違うんだよ、お前は」
俺の反論を聞いてAは笑みを深くした。
「彼氏は死んでるんだ。だから、彼氏は含めない。だから、メモは残した家族に向けたさようならだ。
だから、ウェディングドレスを着た。これから彼氏に会うんだ。さようならなんて言わない」
だから、を連呼してAは締めくくった。
「な、感動できる話だろ?」
どっちが本当のことかは分からない。
個人的には、きっとAは間違っていて、正しいというか正解に近いのは俺の方だと思う。
けれど、あの時、自分には判るとでも言うように断言したAを見ていると、どちらなのか、解らなくなってくる。
以上。見てくれた人、ありがとう
212:AとBの話コピペ
10/10/19 02:18:24 JqwxdyoK0
428 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/14(木) 02:29:08 ID:EIADgkMtO [4/11]
三時までの暇潰しに投下。
AもBも関係が無い、けれど俺に深く関わる話だ。
俺はホテルで働いている。
元々は普通のフロントとして働いていたのだが、ナイトフロントをやっていたバイト君が辞めたために
俺がナイトフロントをやるようになった。
フロント経験がある社員をナイトフロント専門にするという決定に現場から文句が出たが、
昼の業務を理解している社員がナイトを専門にやることで、以前よりもスムーズに仕事が回る。
いつの間にか文句は無くなり、仮決定は本決定になり、俺は本格的にナイトを専門にやることになった。
213:AとBの話コピペ
10/10/19 02:18:50 JqwxdyoK0
429 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/14(木) 02:42:34 ID:EIADgkMtO [5/11]
仮眠の時間になる。フロントバックで休む。女の声がする。呼ばれてるみたいだ。
フロントに出る。
……誰も居ない。
そんな事が昔から有った。仮眠をしていると女の声が聞こえ、デリヘルか? お客様か? と起き上がる。
フロントに出ると誰も居ない。女の声も消えている。
ナイト専門になってからもそれは続いたが、『そういうもの』の気配を探ろうとしてもよく解らない。
Aならば何か見えるかもしれないが、俺には見えない。確信も無い。
その内、俺は声を無視するようになった。
この間の話だ。
フロントバック、マネージャーが遅くまで残って仕事をしていた。
眠れないと言って支配人が客室から降りてくる。
(支配人は空室で寝泊まりしていた)
「絶対あの部屋なんか居るよ」
と俺に渡してきたのはバリアフリー和洋。所謂身障者用の部屋だ。
「支配人、おいくつですか?」
「うるせえよ」
オバケが怖い、というのは笑い話だ。マネージャーが支配人をからかう。
俺も思わず笑いかけたが、フロントにお客様が来た。そういえば未着のお客様が居たと俺は椅子から立ち上がり、
「「はい」」
声が重なった。マネージャーだ。
マネージャーはジェスチャーで
「俺が行くよ」
と俺に伝える。
マネージャーは一秒も経たずに戻ってきた。
「なあ、お前も聞いたよな」
214:AとBの話コピペ
10/10/19 02:19:04 JqwxdyoK0
ああ、と思った。
俺の勘違いじゃなかったのか、と。
430 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/14(木) 02:44:50 ID:EIADgkMtO [6/11]
その後、何だ何だと半ギレしながら騒ぐ支配人を俺が宥め、寝れないから一緒に寝てくれという言葉を
マネージャーが全力で拒否り、なら俺はお前の家に泊まると支配人はマネージャーと出て行った。
結論を言うと、うちのフロントロビーには何かが居る。
俺が聞いた。マネージャーが聞いた。二人が同時に聞いた。
俺はそういうものが居れば解る性質だ。
だが、その声の主の姿は見えない。気配も無い。
けど、居る。
声だけの存在というのは、一体どんなものなんだろうかと時折考える。
今日はまだ、女の声は聞こえない。
聞こえて来たのは男の声。
泥酔したお客様だった。
431 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/14(木) 02:47:24 ID:EIADgkMtO [7/11]
以上。見てくれた人が居たら、ありがとう
215:AとBの話コピペ
10/10/19 02:19:40 JqwxdyoK0
475 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/14(木) 20:19:41 ID:EIADgkMtO [9/11]
今日は休みだ。
なのでBについて語ろうと思う。
予め言っておくけど、俺は正気だ。
一年と少し前にある人が死んだ。その人の一周忌法要は俺の働くホテルで行った。
法要の打ち合わせ伝票を書いたのは俺だった。
その人の親族からはクレームを承った。
さっさと料理を出して欲しかったとのこと。
なるほど、一周忌では話は弾まない。懐石風に、料理が少しずつ出てくる形式にしたのが駄目だったか。
その席にはAも居た。
今は居ないその人の事を仮にCさんとする。
AはCさんの事を心底から尊敬していた。俺もそうだった。
だからこそ安堵し、死んで良かったと思う。
Cさんはやっと、Cさんの本来の場所に戻れたんだ。
Cさんが死んだ時、俺はそう思って泣いた。Aも泣いた。
いつもの食堂で、本当に良かったと二人で泣いたんだ。
普段は飲まない日本酒を頼んで、良かった良かったと泣き続けた。
216:AとBの話コピペ
10/10/19 02:19:52 JqwxdyoK0
477 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/14(木) 20:21:24 ID:EIADgkMtO [10/11]
さて、Bの話だ。
俺はBに対してあまり危機感を持っていない。何故なら前例があるからだ。
Cさんは、
「今のBと全く同一のものかは解らないけどね」
と前置きして、
「昔は私について来てたんだよ」
と言った。
Cさんはそれを代替わりと言った。
話を纏めるとこうなる。
・以前CさんはBに似たものに付きまとわれたことがある。
・ただし、全く同一のものであるかはわからない。
(同じ種類の別の霊か、Cさんに付きまとったBが変化したもののどちらか、という事)
・何とかする事は基本的に無理。お払いやらなんやらが通じる相手ではない。
・ただし、Aなら何とかできるかもしれない。その時一緒に話を聞いていたAもこれに頷いた。
・Cさんにつきまとう前には、Cさんの知人につきまとっていた。
(ただし、Cさんにつきまとっていたものと完全に同一のものかは解らない)
そして最後に
・時間が経てば自然と姿を現さなくなる
ということ。
結局今のBを知るのは俺とAだけだ。
けれど、Bというものの根本に触れた気がして、俺とAはその時凄く興奮していたのを覚えている。
そして、同時に安堵した。
待てば消える。耐え続ければいつかはあの恐怖から逃れられる。
217:AとBの話コピペ
10/10/19 02:20:02 JqwxdyoK0
479 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/14(木) 20:29:37 ID:EIADgkMtO [11/11]
そして今、俺はある事を考えている。
Bを消す。
CさんはAなら何とか出来るかもと言ったが、条件が揃えば俺でも何とか出来ると思う。
問題は、日時が合わない事だ。
今ならやれる、今なら出来るという日にBが現れたことはない。
Bが現れる日と、その日が重なるのを俺は待っている。
それまで俺はBを刺激せず、ひたすら逃げ続ける。
重ねて言うけれど、俺は正気だ。
218:AとBの話コピペ
10/10/19 02:20:38 JqwxdyoK0
531 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 03:36:25 ID:8Rm6kYGVO [1/8]
>>530
俺も怖い
俺は呪いをかけられた事がある。
忌々しいBに遭遇するかなり前の事だ。
呪いと言っても不発に終わった(というか失敗した)のだが、Aも出てくる話なので、書いてみる。
諸々の事情により、働きながら学校に通う二十歳過ぎの高校生なんてものをやっていた頃の話。
学校が夏休みになり、俺は職場、自宅、Aの家、心霊スポット、行き着けの食堂を巡る生活をしていた。
俺には霊感の強い知り合いが何人かおり、Aというのはその内の一人で、今でもよく遊ぶ友人だ。
その日仕事を終えた俺は、Aの家に向かった。
Aの家は元は下宿寮だったとかいう古いアパートで、妙な怪談も有る曰く付きの物件だった。
(実際には何も存在しないが)
Aはベースで何かの曲を弾いていた。確かプリティ・ウーマンだったと思う。
「お前、呪われてるぞ」
その言葉は確りと覚えている。唐突にベースを弾くのを止めていきなり言われたんだ。
ニヤニヤ笑いのAに、俺はむっとして言った。
「呪われてねえよ」
俺は憑かれたりすると自分でわかる性質で、その特は特にそんな感じがしなかった。
「いいや呪われている」
Aがからかっていると思って、俺尚更ムカついてきた。
「見えんのかよ」
「いや、」
Aは携帯を開く。待ち受けを開いて、俺に言った。
「証拠が有る」
俺の名前が書いてあった。人の形に切り抜かれた紙に。その真ん中には、釘。
「な、呪われてるだろ」
ぐうの音も出ない。
219:AとBの話コピペ
10/10/19 02:20:51 JqwxdyoK0
532 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 03:37:15 ID:8Rm6kYGVO [2/8]
経緯はこうだ。
日課にしている散歩(というかなんというか)をしていたAは、明け方近くに近所の神社に立ち寄った。
そこは本当に神社なのかと疑問に思うような小さなところで、御神体だか何だかを収めた小さな社と、
腕に抱えられるくらいの小さな賽銭箱と、古い鳥居しかないようなところだった。
もしかしたら、神社じゃないのかもしれない。
その日は特に何も無かったため、Aは何か無いかと普段は行かないそこに向かったらしい。
松の木に囲まれたそこに入ったAは落胆した。何も無い。
もう帰ろうかとも思ったが、近くのコンビニから買ったビールを飲むことにしたそうだ。
家で飲むよりはマシかと思って飲んでる内にに夜が明けてきた。ビールも無くなり、さあ帰ろうかという所で
「見付けた」
とのこと。
その粗末な紙人形を写メに収め、映りが良いものを待ち受けにしてAは上機嫌で帰宅。
そして俺がやってきた朝に至る。
Aが写した紙人形は、正直に言って不出来だった。
人の形に切り抜かれた人形にはうっすらと青の罫線が引いてあり、
大学ノートから切り抜いた物であることが分かる。
その罫線に添って、つまりノートに書くのと同じような感覚で俺の名前が書いてある。
シャーペンで書かれた弱々しい字。ふざけた子供が呪いの人形を作ろうとして失敗したような出来だ。
「こんなので丑の刻参りが成功すると思うか」
「しないだろうな」
人形はあまりにも簡単に作られている。呪われたという実感は無い。憑かれたという感覚は無い。
儀式は失敗している。
「で、どうする」
「付き合えよ」
だが、自分が誰かから呪われるというのは気分が悪い。俺たちは丑の刻参りの犯人を見つけることにした。
220:AとBの話コピペ
10/10/19 02:21:01 JqwxdyoK0
534 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 03:38:34 ID:8Rm6kYGVO [3/8]
次の日の深夜、仕事を休みにして貰った俺はAと一緒にその小さな神社に向かった。
自分の目で人形を確認する。釘は中途半端に打たれ、俺の名前が書かれたそれはぴらぴらと風に揺れる。
犯人はこんなので儀式が成功すると思ったのだろうか。
Aはその人形と自分が撮った写メを見比べ、
「よし、まだ来てない」
と判断し、俺達は人形がある方向とは逆側の松林に身を潜めた。
Aが持って来ていたらしいビールを開ける。何口か飲んだ後飲むか? と聞いてきたのでありがたく頂く。
俺達は一本のビールをちびちびと回し飲みしながら、犯人が来るのを待った。
その内三時になって、来た。
「あれ、ママ電話じゃないか」
現れたそいつを見てAはそう言った。
ママ電話というのはあだ名で、俺達と同じく定時制の高校に通うクラスメイトだ。
ママ電話というのは、授業が終わる度に携帯で自分の母親に電話し、
「ママ、今○○の授業が終わった。もう帰りたいよ」
なんて言うことから付いたあだ名だ。
歳は大体当時の俺達と同じくらい(二十歳前後)。
「いや、なんでママ電話が」
A程目が良いわけじゃない俺には判別がつかない。
ママ電話らしき人影は、辺りをくるくると見回しながら俺達の隠れている松林とは反対側の松林に消えた。
「あれは絶対ママ電話だって」
「まさか」
俺達は確かめることにした。
松林から出て、小さい社の裏を回って反対側の松林に入る。
物音を立てないように息を殺して行くと、音がしてきた。
こんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこん。
規則正しい小さな音がして来る。気持ち悪く思いながら、俺達は進む。
そして見付けた。ママ電話だ。
危うく、うわ、と声を挙げるところだった。
221:AとBの話コピペ
10/10/19 02:21:12 JqwxdyoK0
535 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 03:40:11 ID:8Rm6kYGVO [4/8]
子供みたいなパジャマ姿のママ電話は、松の木にべったりと張り付いて小刻みに釘の頭を叩いていた。
俺がイメージしていた丑の刻参りとは違う。
ママ電話はがん、がん、がんと怨念を込めて釘を打つのではなく、こんこんこんこん、こここここ……と、
力を込めずにちょっとずつ釘を打ち、ぶつぶつぶつぶつと小声で何かを喋っている。
その声が、異様だ。怨念やら怒りがこもるような声音ではない。
何かをおねだりするような、甘ったるい声音。
成人した男であるママ電話がそんな声音で
「ね? だよね? そうだよね?」
などと呟き続けている。
怖さより、気持ち悪さを感じた。
頭がイってると思った。
222:AとBの話コピペ
10/10/19 02:21:24 JqwxdyoK0
536 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 03:41:08 ID:8Rm6kYGVO [5/8]
「何やってんだてめえ!」
その気色悪さに堪えかねたAが飛び出してママ電話に掴み掛かったが、
あああ! と声を挙げて暴れたママ電話に振り払われて転んだ。
ヤバいと感じて俺も飛び出した。ママ電話は金槌を持っている。殴られたら洒落にならない。
しかしママ電話は金槌を捨てて逃げ出した。襲い掛かってくるものだと身構えていた俺は呆気に取られた。
「待てコラ、ボケエ!」
叫んで走り出したAにつられて俺も走り出す。
貧弱な割に足が早いAと、運動神経は悪いが体力に自信があった俺は、簡単にママ電話に追い付いた。
ママ電話は暴れたが、やがて観念したのか大人しくなった。
「何でこんなことしたんだ」
俺としてはそこが知りたかった。恨まれるような覚えはない。
陰口を叩いた事が全く無かったとは言わないが、いじめなんかはした事が無い。
「……」
ママ電話は言動があれだったが、知的障害の気は無い。おどおどとするが受け答え自体は確りしていた。
だが、そのママ電話は何も答えない。苛ついたAが彼の胸ぐらを掴む。
「おい、何とか言えよ」
それでも何も言わない。じ、と黙り込むその姿には、学校でのおどおどとした様子は欠片も見当たらない。
俯いたまま上目遣いで俺を睨む彼に、Aは舌を鳴らす。
俺の口からバカ、やめろ、という言葉が出る前にAはママ電話を睨み付けたが、すぐに彼のパジャマから手を離した。
「もういいや、行こう」
俺としては何でこんなことをしたのか聞きたかった。なぜ俺が呪われなければいけないんだ、と。
それにパジャマ姿でこんこんと釘を打っていたママ電話は明らかにおかしいというか、変質者丸出しだったし、
このまま放置するのは色々と躊躇われた。
けれどAは、
「良いから」
と言って俺の腕を引っ張る。釈然としない俺はその手を振り払ったが、強くAに言われ、渋々その場を離れた。
その間ママ電話は、ずっと上目遣いに俺を睨んでいた。
Aと一緒に松林を抜ける際に、後ろを振り返る。
ママ電話の姿はもう見えなかったが、俺の脳裏には俺を睨み続けるママ電話の姿が浮かんだ。
223:AとBの話コピペ
10/10/19 02:21:34 JqwxdyoK0
539 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/16(土) 03:43:58 ID:8Rm6kYGVO [6/8]
帰ってすぐに眠いと言って寝始めたAから、ママ電話を放置することに決めた理由を聞いたのはいつもの食堂だった。
話の内容に対して余りに軽い口調だった事を良く覚えてる。
「返しの風に掛かってたからな」
食事中以外は全く解らないが、あいつの口はちょっとびっくりする位に大きい。
Aは餃子をひょいひょいと口に放り込み、まとめてもぐもぐしながら俺に言った。
「呪いが失敗した時に自分に反ってくるってやつだっけ」
そうそう、と軽い口調で言ったAは餃子を飲み込み、ジョッキを空けてげふっとゲップをした。
毎度の事なので特に何も言わない。
「大丈夫なのか」
「死んだり大怪我するほどじゃない。自業自得だろ」
しかし俺としては釈然としない。呪われた理由を知りたかったし、俺を睨みつける表情も異様だった。
「丑の刻参りなんてしたこと無いから解らないが、多分自分の念が返って来たんだろ。
お前に対しても何か起こるってことは無いだろうし。現に、何とも無いだろう」
その一言の後、食事を終えたAはゴルゴを開いた。釈然としないまま俺も食事を終え、鬼平を開いた。
夏休みが終わった後、ママ電話が自主退学した事を担任に聞いた。何が有ったかは解らない。
不発に終わったママ電話の呪いは虫刺されという形に変わり、ついつい掻いてしまう質の俺は、皮膚科を受診する羽目になった。
224:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 02:27:35 E5SGirxrO
A宅から。休みなのに最悪の気分だ
>>223乙
225:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 02:30:43 G21yGc4RO
乙>>223
自分のレスが結構あって
チト恥ずかしい
>>224
煙草吸いすぎ注意だぞ
226:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 03:28:36 9vxw5wh+O
>>189
これは色々と酷い
投下ペースを落としてアイデアを絞るべき
向日葵の件は丸々不要だろう
227:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 11:43:36 t5DjGlEj0
たしかにムチャクチャな文章だけど小説投稿スレじゃないから中学生にはいいんじゃない?
228:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 14:35:55 niZFV6vb0
ABの人にはコテつけて欲しいな
そのうち偽物荒らしとか出てくるぞ
229:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 16:02:35 cPyU5fyDP
なんだよ。洒落怖から迷惑を押し付けられたのか
230:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/19 18:00:25 jDCroxPj0
中学の頃からの同級生に、ハナヤマというヤツがいる。
あれは先輩と会ってすぐのことだ。
高校に入っても同じクラスになったハナヤマが、ある日急に話しかけてきた。
「なあ、お前最近三年に仲いい先輩いるよな。アレ、なんだよ」
その頃俺はその先輩の魅力に、いや魔力に惹かれていて、ことあるごとにくっついて動いていたのだが、それをこいつに見られていたらしい。
「ああ、あの人ね。オカルトにすげえ強い人。俺の師匠みたいなもん」
ハナヤマは中学の時の俺を知っている。
というか、ハナヤマも当時の俺と同じくオカルトマニアだった。
競うように知識を掻き集め、二人でいろんなところに行った。
ハナヤマはへぇーと驚いた顔をして言った。
「お前よりオカルト詳しい人とかいるんだな。ちょっと話してみたいんだけどいいかな」
「と、いうようなことが昼間ありまして」
先輩はどこから持ってきたのか錆びた釘を眺めていた。
「何の話だろうな」
先輩は休み時間や放課後を図書室で過ごす。
俺はそれを知っていたから、ハナヤマに放課後図書室に来いと言っておいた。
何やら用事があるらしいハナヤマはしばらくしてから来るということだった。
「その、ハナヤマは何部なんだ。部活じゃないのか」
「帰宅部です。俺と同じ」
へぇ、と言ってまた釘を眺める。
図書室の利用者は少ない。
俺と先輩、二年の人が一人、それから図書委員が一人。
図書室で騒ぐことになるとまずいのだが、先輩がここを動こうとしないので場所の移動は不可能だった。
黙って釘を見つめたまま何も喋らない先輩。
曰く付きの品なのかな、と思って目を閉じてみる。
以前知った方法で、普通に見ても見えない物を見るときは瞼に残る残像を見ればいいのだ。
この方法なら、感覚の鈍い俺でもある程度は見えるのだった。
瞼の裏にぼんやりと先輩の指と釘のシルエットが映ったが、特におかしな物は見えなかった。
また、無言。
微妙に気まずい時間が流れていく。
231:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/19 18:02:54 jDCroxPj0
不意に、扉が開いた音がして、背後を振り返ると入り口にハナヤマがいた。
「あ・・・・・・」
と言って先輩を見たハナヤマの、目と口が大きく開かれる。
俺より遅れて気付いた師匠がハナヤマに目線をやった時、そのリアクションを見て動いた。
ガタッと音をさせながら立ち上がり、ハナヤマを見つめている。
その目は、初めて会った時俺に向けたのと同じ、喜びに溢れた目をしていた。
「おい、あいつか。あれがハナヤマか」
先輩がうずうずした様子で聞いてくる。
ハナヤマは未だ固まっている。
俺は状況に戸惑いながら、はい。とだけ言った。
「場所を移そう。ハナヤマを案内してくれ。俺のアパートだ」
そういって、固まったままのハナヤマの横を通って図書室を出て行った。
俺がぽかんとしていると、金縛りから解放されたハナヤマが俺の所に歩いてきた。
「なんだあの人。お前あんなのと会っててなんともないのか」
第一声が『なんだあの人』だった。
あの人がどういう人なのか、実際は俺にもわかっていない。
「まあ、とにかく話がしたいらしいから、ちょっと先輩のアパート行こう。一人暮らししてんだあの人」
あ、おう。と頷いたのを確認して連れ立って図書室を出る。
自転車置き場に向かい、自転車に乗り、先輩のアパートに着くまで、ハナヤマはずっと無言だった。
232:稲男 ◆W8nV3n4fZ.
10/10/19 18:05:17 jDCroxPj0
これから先の事はわからない。
というのも、俺はアパートに着くなり待ち構えてた先輩に
「お前、もういいから。帰れ。二人で話がしたい」
と追い返されたのだ。
初対面の男と二人にするのも不安だったし、なにより話が聞きたかったから食い下がったのだが、ハナヤマにまで帰れと言われたので半分ふてくされてそのまま家に帰ってしまったわけだ。
「あの後何の話したんですか」
翌日、登校するなり三年の教室に行って、先輩に詰め寄った。
先輩はにやけながら
「別に。あの釘に憑いてた物が見えるのかどうか確認しただけ。あいつすごいぞ。多分お前より才能がある」
などと言った。
全く理解できずにいる俺に追い討ちをかけるように先輩は言う。
「うちにあった物の大半も理解できたみたいだった。彼女、いつかぶっ壊れるかもな。出来すぎだ。見ててやれよ」
先輩の部屋には、俺なんかには理解の及ばないアイテムが多数ある。
どれも曰く付き、呪物とも言うべきモノなのだが、俺程度の霊感では何も感じることが出来ないほど高等な物なのだ。
「え、じゃあ、え?」
戸惑う俺を見て、先輩は笑った。
「お前が知識とハッタリを詰め込んでた頃、あいつは本物を見てたんだよ」
なんてこった。
中学の頃からの同級生、高校でも同じクラスになったハナヤマ。
言葉遣いも、オカルトマニアなのも、妙なことがかっこいいと思えて仕方ない病気の一部だと思っていたのに。
少なくともオカルトに関して、ハナヤマは、本物だった。
「マジかよ・・・・・・」
俺の呟きに、先輩はまた笑った。
「まあ、面白さはお前が上だ。あいつは俺に似てるから」
俺はなんだか、すごく悔しかった。
先輩とハナヤマ 終
233:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 18:50:40 t9BVKduC0
私メリーさん。今戦場にいるの。
「メリーさんだ! メリーさんが出やがった! ちくしょう、ちくしょう!!」
「殺してやる! 殺してやる!! こ……うわああああ!?」
234:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 18:53:25 t9BVKduC0
罵声が耳に心地よい。
悲鳴が耳に心地よい。
ここでは鋼鉄の玉が戦場を飛び交う。
臓腑を震わすような轟音が上がる度に、誰かが金切り声で叫ぶ。
土と血煙を巻き上げ、死の臭いが空を焦がす。
235:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 18:57:59 s+WRDDMG0
情報を小出しにすれば、ウニに近づけると思ってるようじゃなぁ。
一個一個のレベルが高いから許されるやり方だよ。
二番煎じがやって受け入れられると思うなら、甘すぎる。
236:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 18:58:46 Ay1wHNj10
メリーさん・・・w
237:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 19:09:02 eGnSc+fm0
稲男乙
もう少し投下ペース落とした方がいいかも
238:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 19:47:50 t9BVKduC0
鉛色の空には慈悲の欠片も見えない。
もだえ苦しむ肉の塊を、私は容赦なく踏み砕き蹂躙する。
私は戦場の死神。
今日も泥の中を一人歩く。
私メリーさん。今─戦場にいるの。
239:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 19:50:31 t9BVKduC0
メリーさん「私メリーさんッ!! ずっとずっと貴方の後ろに居たッ」
男「これが俺のスタンド……『メリーさん』かッ!!」
メリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリぃぃいぃいい
240:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 19:50:59 zI2kfZkNO
なんつーか、本当にスカスカだよな……
ウニに近づこうとしてるから書き方も人物の見せ方も全てがとってつけたよう
もっとオリジナリティを押し出せば良いのに
後、どや顔臭が漂い過ぎててうざい
向日葵の話とか特に
241:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 19:52:43 t9BVKduC0
この惑星の住人は、都市伝説と言う俄かには信じがたい噂を実しやかに囁いている。
メリーさん「私メリーさん。今あなたのうしろにいるの」
「!?」
「………………」
ただ―――
メリーさん「私メリーさん。最近は全然驚かれないから自信がないの……」
この惑星の都市伝説にも……色々ある
242:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 19:55:44 t9BVKduC0
「もしもしぃですぅ、私メリーさんですよぉ、
あぁ、あのう、まきますか? まきませんか?
今ならとぉってもかわいい妹が後ろについてくるかもしれませんですよぉ?
あっ・・・切られたでーすぅ・・・。」
243:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 19:57:23 t9BVKduC0
はぁぁぁ、やっぱり、なかなかマスターなんて見つけられっこねぇですぅ。
「オーッホッホッホ! お久しぶりかしらぁ、翠メリー!!」
「あっ、何しにきやがったですか!! ・・・って神奈川!?」
「か! な! め! り! かしらっ!!」
「その金メリがなにしてやがるです!?」
244:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 19:58:53 t9BVKduC0
「ン~フッフー! マスターも見つけられないあなたのメリーミステカ(mrmstk)をいただきにきたのかしらっ!」
「はぁん? お前みたいなおバカにやられる翠メリーじゃないですぅ! おとといきやがれですぅ!!」
「いったわねぇ~、これを食らうのかしらぁ!! 第一楽章・・・攻撃のワルツっ!!」
ぎょろろろろろぉん!!
245:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 20:21:08 t9BVKduC0
「攻撃の♪ わるつっ! わるつ! わるつ! わるつ!! 攻撃の わるつ! わるつ! Orz!!」
「きゃあああああああっ! やめるですぅ!!」
「まだまだよぉ♪ つづいてぇ~、追撃のカノンっ!!」
「お・の・れ・金メリィッ!!もう怒ったですっ!!下でにでてりゃあつけあがりやがってぇ!! 焼き鳥にしてやるです!!」
246:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 20:22:54 t9BVKduC0
・・・ンッフッフッフッフ・・・ イァーアッハッハハッハッハッハッハッハッハーっ!!
「もう許さんです・・・
スィ・・・! スィ・・・! スィ・・・・ド! ッリィィィィィィムゥゥッ!!!!!!!」
「かーじゅーきーぃぃぃぃっ!!」
247:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 20:26:18 t9BVKduC0
・・・核融合に匹敵するエネルギーを持つ、
翠メリーのスィスィスィドリームの直撃を受けておじじは死亡した・・・。
248:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 20:49:04 t9BVKduC0
最近、巷ではメリーさんの怪談が流行ってるらしい。
もちろん、オレもメリーさんくらいは知っている。都市伝説級の口裂け女にゃちと及ばないものの、かなり有名な怪談だ。
説明するまでもないと思うが、大ざっぱに言うとメリーさんは以下の特徴を持つ。
知らない番号、あるいは非通知で携帯に電話がかかってくる。出ると幼い少女の声で、
『私メリーさん。今○○にいるの』
という言葉が聞こえるそうだ。その○○は最初、近所のどこかから始まるらしい。例えば学校であったり公園であったり。
249:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 20:51:34 t9BVKduC0
そう、そこからが恐怖の幕開けである。電話は毎日鳴るようになり、出ると少女のいる場所はどんどん家に近くなっていく。
家の前、玄関、二階、部屋の前……。
とうとう逃げ場のなくなったターゲットは恐怖に怯えながら部屋の中にこもる。そして着信が鳴り…最後の電話に出るのだ。
『私メリーさん。今─あなたの後ろにいるの』
ぎゃー!
……というのがオレの知ってる感じのメリーさんである。
250:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 20:52:45 t9BVKduC0
まあそもそも嫌なら着信拒否するか出なきゃいいんだし、わざわざ律儀に出て襲われるってとこが作り話くさいんだけどな。
しかし……メリーさんが流行ったのは携帯もなかったような一昔前のことだ。
それが何故今になって再び流行っているのかは分からない。が、オレの学校やネット掲示板等では今ホットなブームらしい。
もしかすると、最初のうちは引っかかっていた犠牲者たちも段々賢くなり、一時期は獲物がいなくなってしまったが、
昨今のオレオレ詐欺とかのグループみたいに、メリーさん業界も知恵を振り絞って新たな手口を開発したのかもしれない。
なーんて、あるわけないか!
251:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 21:01:43 t9BVKduC0
オレは携帯に打ち込んだバカバカしい長文を消して、連れとのメリーさん話から話題を変えるべく、Y談的な文章を打っていく。
とそのとき、丁度今メールを返そうと思ってた連れの番号が画面に表示され、お気に入りの着うたが流れ始めた。
「おう、びっくりした……。ったくなんだよ、電話すんならハナからメール送るなっつうの」
メリーさんのことを考えていたのもあって、急な着信に驚いたオレは文句を言いながらも通話ボタンを押して電話に出た。
「もっす。んだよ、電話してくんなら『私メリーさん』んなよ」
…………。
252:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 21:05:03 t9BVKduC0
ひやりと背筋が寒くなった気がした。オレの言葉にかぶせて少女の声が聞こえたからだ。もちろん連れは間違えようのない男声。
沈黙。向こうは何も言わない。それが余計に不安を煽り、動悸を激しくさせる。
必死に頭を回転させ、そしてオレは一つの答えにたどり着いた。そうだ。連れが女友達か妹を使ってイタズラをしたに違いない。
丁度メリーさんの話をしてたとこだったし、野郎、オレを一杯食わせようとしてるらしい。そうと分かりゃ怖くなんてない。
オレは逆にうまいことからかってやろうとニヤリと笑い、お得意のドエロトークのスペシャルエヂションをかましてやるため口を開く。
「そっ『今あなたの後ろにいるのぉおおぉおおおぉぉぉ』」
息がかかった。耳に。
253:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 21:06:52 t9BVKduC0
よくテレビでやってるような機会音声のようなスロー再生した男声のようなモノが、電話の向こうと耳元のステレオで聞こえてきた。
そうか。やっぱメリーさん業界も不況で新たな手口を考えついたらしい。でも振り向かなきゃいいんだよな?
なんて思っていると(恐怖で体が硬直しているだけだが)突如として頭がグワシとつかまれ、そのままオレの首は凄い力で振り向かさ
254:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/19 22:06:14 tu3cKi94O
メリーがいるって事は、何か投稿があったな
255:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/20 00:16:48 5NAbm7Hq0
>254 確かに。メリー → 投稿有り 目印だね
ウニの語り調で読めるのは、1、2話くらい
師匠シリーズのパラレルにしたって、人マネじゃ限界来るぞ
256:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/20 01:42:29 B8wtwh9+0
プロじゃないんだし模倣から始めるのは悪いことじゃない
書いてるうちに自分のスタイルが出来てくるだろうから今はウニのマネでも良いから
気にせずどんどん書けばいいよ
257:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/20 02:27:52 4uSvSxxz0
でもさすがにこのペースで書かれると読むのがめんどゲフンゲフン
258:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/20 03:17:31 L8pZFa84O
やたらパクリを擁護してるやついるがウニファンとしては、例えそれがリスペクトだろうがオマージュだろうが気分良くないんだよ
今まで『ウニ』が積み重ねて来た『師匠シリーズ』を簡単にマネされるのは嫌なんだよ
だからもう止めてくれよ
259:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/20 03:44:51 FvIqLguQO
今日も眠れない仮眠時間。
マンション
雨が降り頻る深夜に俺はAから呼び出された。メールには面白い物が見れると書いてあった。
安いビニール傘を開いて、部屋から外に出る。ざあざあと降り頻る雨に濡れたアスファルトを歩く。
暫く歩いて、目的地についた。入居者が殆ど居ない古いマンション。度々霊の目撃証言が出る、幽霊マンションだ。
深夜だからということもあるのだろう。部屋の明かりは皆一様に落とされていた。
誰も暮らしていないように思える団地の駐車場には、車は一台も停まっていない。そんな寂れた駐車場に、人影を見つける。
「よう」
Aが居た。
家着である黒いスウェットの上に、鋲をアホみたいに打ち込んだ革ジャンという、彼女なりの『深夜にコンビニへ行く時の格好』で。
260:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/20 03:46:15 FvIqLguQO
「あのアホみたいにフリルが付いた黒い傘はどうしたよ」
「ありゃ日傘だ」
俺と同じく透明なビニールの傘を差したAは、こっちだと言って歩き出した。
Aを追いながら、俺はAが言う面白い物をあれこれと考える。
ここは確かに心霊スポットではあるのだが、滅多に恐怖体験目当ての人間が入ることは無い。
なにせ、数は少なくても確りと人が暮らしている場所で、怖い思いをしたいなら、もっと有名な場所がある。
このマンションは、心霊スポットとしてはかなりマイナーだった。
「ここだ」
Aが足を止めたのは、錆の浮いた外灯の下。外から各部屋の玄関が見える位置。
「ここの怪談を知ってるか」
「階段を降りてくる子供の足音だろ。まさかそれじゃないよな。それだったら前にも見た、というか聞いたぞ」
俺がまだ足も無い中学生だった頃、友人達とここに来た事がある。そこで俺は、異様な勢いで階段を駆け降りる音を聞いている。
……子供の足音かどうかは、解らなかったが。
「それを聞いて安心した。面白いぞ」
Aはどこを見ているかはっきりしない目で俺を見て、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる。
「雨の日限定。おら、そろそろだ」
そう言ってAは、傘越しにどこかを指差した。
261:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/20 03:47:44 FvIqLguQO
指差したのはマンションの六階。
Aが指差した先を俺は凝視する。かり、と左耳から音がした。
見たから鳥肌が立ったのか、それとも鳥肌が立ってからそれを見たのかは解らない。
居る。
……女だ。
Aが指差していた場所、六階の部屋の玄関前に女が立っている。
女はぼうっと立ち続けていたが、やがてふらりと身を乗り出す。
あ、と思った。
女は六階から転落した。
ぞ、と背筋が凍える。自殺だ。それも、幽霊の自殺。
落ちた女は動かない。
「それで、」
Aが呟く。俺はAの横顔を見る。Aは何も言わず、また指を差した。
促されるように視線を引き戻すと、音がする。たんたんたんたんたんという、大急ぎで階段を駆け降りる音が。
たんたん、たんたんたん、……たん。
音が止んだ。
いつの間にか、落ちた女は消えていた。
262:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/20 03:48:59 FvIqLguQO
「な、面白かっただろ? あの女、毎回毎回ああやって落ちるんだ」
帰り道、今まで何度かあれを見た事が有るらしいA言った。
「……まあ、自殺する幽霊なんて見たのは初めてだ。けど、いまいち訳が解らない」
雨は止みそうになかった。俺達は透明なビニール傘を差し、歩き続ける。
「まんまだよ。子供の足音。落ちた母親に驚き、階段を駆け降りる子供」
「……何となく想像はついてた。でもよ、何で姿が見えないんだ」
そこが解らなかった。俺に見えないならまだしも、Aにも子供の姿が見えないらしい。
Aは暫くの間黙っていた。ざあざあと降り頻る雨の音が続き、ようやくAは口を開く。
「あれは多分、あの母親が聞いた音だ。落ちてから意識が切れ、死ぬまでの間に聞いた最後の音。
我が子が自分を案じて階段を駆け降りる音。……あの女は、それが聞きたくて何度も自殺してるのかもな」
「……成程」
やけにしんみりとしたAの口調に、俺は妙に納得してしまった。
そんなことがあるのかという疑問は、そんなこともあるのだろうという諦めに似た納得に変わる。
「或いは」
唐突に立ち止まったAが言う。そのまま数歩進んでしまった俺は、Aを振り返った。
「あの女の願いなのかもな。死ぬ瞬間くらいは、我が子に自分の身を案じて欲しい。自分の子に、側に来て欲しい。
実際には来なかった自分の子を、実際には孤独だった自分の死を、ああやって補完しているのかもしれない」
どっちだろうなあ。
Aは呟き、それきり、別れるまで口を開かなくなった。
マンション、了