10/10/12 12:51:32 y+szn5a80
『昨日公園』の作者の他の話って出てたっけ。
『アイスマン』
主人公は、受験ノイローゼに罹って田舎で療養中の男子高校生。
ある夏祭りの夜、境内で出会った前歯の欠けた幼女に誘われ、見世物小屋を見物に行く。
小屋といっても実体は廃バスを利用した粗末なもの。
入り口には、肉が積み重なったかのように異常に肥満した大男が座っている。
おそるおそる中に入ってみると、見世物は一つだけだった。氷漬けされた河童の死体だ。
だが主人公は、その手に水かきが無いこと等から、これは人の子供の死体では、と疑いを抱く。
しかし大男の異様な風体に怖気づいていた彼は、何も言わずにその場を立ち去った。
翌日も祭りだった。することもない主人公はなんとはなしに足を向け、再び幼女と出会う。
林檎飴を並んで食べたりするうちに仲良くなった二人は、再びバスへと向かう。
主人公も、あれが本当に人の子供の死体だったか改めて確かめたかったのだ。
だが現地へたどり着くと、大男が地元民らしき二人の男に怒鳴りつけられていた。
どうやら大男は、祭りの運営者の許可を得ずに小屋を開いていたようだった。
幼女はそれに、稼ぎの何割かを持っていかれるからそうしているの、と補足する。
だからバスで移動しながら隠れるように店開きをし、毎日場所も変えている、とも。
大男は男達の声を無視するように、無言で椅子に座っていた。
しかしその様子に激昂した男達が彼を突き飛ばそうとすると、とうとう立ち上がる。
そしてあろうことか、その巨大な体躯を用いて男達を撲殺してしまう。
「人間どもめ。全く鬱陶しい奴らだ」
唖然とする主人公だが、大男のその呟きに彼が人外のものであることを何となく悟る。
平然と殺人を犯した大男は、「面倒だがこの地を去る」と宣言した。
そしておもむろにバスから氷漬けの死体を運び出してから、幼女にその始末を命じる。
山奥に向かって運び、その間に溶けるだろうから、死体を焼いてしまえというのだ。
そして主人公に金を握らせ、その作業を手伝うよう指示した。
大男に逆らえない様子の幼女を慮り、主人公は仕方なしにそれに同意する。
「お前は変わっているな。きっとまた会うことになるだろう」大男は不気味に笑った。