後味の悪い話 その117at OCCULT
後味の悪い話 その117 - 暇つぶし2ch505:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/28 00:19:22 /pMiR83o0
池波正太郎の『剣客商売』のある1話で、「雨避け小兵衛」。

郊外で隠居暮らしの老剣士・小兵衛は、外出の帰りに驟雨に見舞われ、道端の百姓小屋に入る。
そこでしばらく雨が上がるのを待っていると、外から騒々しい声が近づいて来た。かと思うや、
気絶した少女を抱えた浪人者が小屋に逃げ込み、外で十人ばかりの人々が子供を返してくれと叫んでいた。
小兵衛は入れ違いでとっさに押入れの中へ隠れ、様子を窺う。浪人者は「ならば五十両よこせ」と外の人達に要求した。
浪人者は料亭に入ろうとして準備中だとあしらわれ、後から来た裕福な商家の母子がすんなり通されるのを見て
逆上し、娘を拐かして暴れながら、店の者達に追われてここまで逃げて来たのだ。
小兵衛はその浪人者に見覚えがあった。すっかり老けて身なりも荒んでいるが、30年ほど前
当時30歳くらいだった小兵衛と立会いをしたことがある剣士だった。
その男は、小兵衛に勝ったら高給で良家への仕官が叶うことになっていた。
男は見事な腕前で、小兵衛も危うく太刀を幾度か受けそうになるが、苦戦の末とうとう小兵衛が勝利した。
男は仕官の道を逃し、面汚しとして道場からも破門されて、いずこへか去って行った。
今は世情にも通じて気の利いた立ち回りを心得ている小兵衛だが、若い頃は四角四面で融通が利かなかった。
「あれほどの腕を持つ男が…惜しいことよ。あと五年後の自分ならわざと負けてやっていたところなのに…。」
剣の道に生き、女房を貰い、息子も生まれて、それなりに自由に使える金もあって楽隠居をしている自分に比べ、
自分のせいで人生を狂わされた男が食い詰め浪人に落ちぶれている姿を見て、同情と自責の念に駆られた小兵衛は
もし五十両を受け取って素直に少女を返して立ち去るなら、このまま見逃してやろうと思った。


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