10/09/24 21:07:29 W8ZVdibv0
「もしもし、私メリーさん。今日で真マジンガー衝撃Z編が終わってしまうの」
「いやそれこのスレと全く関係ないよね」
「保守代わりなの。あとあなたと私で二代目あしゅら男爵にならない?」
「そんな衝撃のプロポーズ初めてだよ!!」
「衝撃じゃないプロポーズは受けたことあるの?」
「ないけど……。それに俺は君を抱きしめられない運命なんて要らないよ」
「も、もう、やだ恥ずかしいのっ!」
701:本当にあった怖い名無し
10/09/24 21:12:53 W8ZVdibv0
「もしもし……私なの、メリーさんなの……」
「ああ……まあその何だ、気をしっかり持って」
「今川監督の話は噂には聞いていたけどまさかあんなオチなんて……」
「虚無ったり投げっぱなしに定評のあるダイナミック作品に、
続編投げっぱなしに定評のある今川監督……答えは推してしるべし、か」
「でも俺達の戦いはこれからだ!エンドなのはどうでもいいの」
「え?」
「私のあしゅら男爵がああああ!」
「……メリーさん、さては版権キャラと熱愛するスレの
あしゅらとのイチャイチャの作者だね?」
「うん……ぐすっあしゅらたん……」
702:本当にあった怖い名無し
10/09/24 21:13:32 DD5zQR1/0
あぼーんされるだけだって分かってる?
703:本当にあった怖い名無し
10/09/24 21:15:11 W8ZVdibv0
_,,/;;;;;;ヾヾ 、,;;;;;;;;''ヽ_
ノ;_;,-―--''''゙゙ ̄ フ::::;;:'-、
// l、::::::: l、
(ヾ:::l |::::::、::、::::.ヽ,
、ノ:::::.| _,,、 ,、、__ |:::::::::::ゝ::::::>
ゝ:::::::|''=・-`l ト'=・=ー` ヽ:::::::::::ゞ:::ゝ
ヽ.| ` ー ,ヽ::,-;:::;;::/
| 、_,、,` l/6l::::ノ
| ! , , l_ ノ:/
__| -'ー-ヽ / /`)
ヽ | ,  ̄ __l_/,,-'=i______
__,,\`、_ ー-―' _//='''_-;;;;;;(( oo(( ))
;;;;;;;;;;○>\ ̄ ̄//○'.;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|l |l |l |l |l ||
私ペリーさん。今、浦賀にいるの。
704:本当にあった怖い名無し
10/09/24 21:22:28 W8ZVdibv0
シャカシャカ シャカシャカ
「~♪」
「・・・」
シャカシャカシャカシャカ シャカシャカシャカシャカ
「~~♪」
「・・・・・・」
「そろそろいいかな」
トゥルルルル
「はい、もしもし」
「あら、そんなに早く出なくてもいいのに♪
私メリーさん。今あなたの後ろに居るの♪」
「5分前から居ましたよね」
「えぇっ!?」
「イヤホン使った方がいいのと、あまり大音量で聞いてると耳によくないよ」
「~♪」
「聞けよ」
705:本当にあった怖い名無し
10/09/24 21:27:42 W8ZVdibv0
「もしもし、私メリーさん。落し物を拾ったの」
「うわっ! な、生首!? メリーさんまさか……」
「違うの! 私は殺してないなの! それに、これは生首の幽霊なの」
「生首の幽霊ー? でも触れるよ」
「でもでも、人間のものじゃないの! その証拠にホラ……」
「(パチクリ)」
「うわっ! 本当だこんな状況なのにまばたきした!」
「とりあえず警察に届けるの」
「警察って……こんなの持ってたら大変なことになるよ」
「大丈夫なの。プロの知り合いがいるの」
~3分後~
706:本当にあった怖い名無し
10/09/24 21:30:23 W8ZVdibv0
「というわけで、これが落し物なの」
「あー……」
「(誰だよこのオッサン)」
「これ、うちの若いモンのだわ。なあ、そうだろ、首成?」
「(パチクリ)」
「やっぱ体も無いと話せないのか。ま、すぐに連絡するから。
助かったぜ、メリーさん」
「困った時はお互い様なの。それじゃあね、イゾーちゃん」
「ちゃん付けはやめてくれよ。……ああもしもし、サキか?
私メリー。今、あなたの後ろにいるの」
「き、消えた!? メリーさん今のオッサン誰!」
「……目理伊三ちゃん。昔馴染みの刑事さんで……『メリーさん』なの」
707:本当にあった怖い名無し
10/09/24 21:36:03 z4PKqVTs0
病気だからな
708:本当にあった怖い名無し
10/09/24 22:26:25 Cpw66Txp0
嫌なだけならスルー出来るが実害があるってのがなぁ…
709:本当にあった怖い名無し
10/09/24 23:08:21 W8ZVdibv0
「もしもし」
「もしもし。私メリーさん。今あなたの後に娘が居るの」
「はぁ!?」
「あっ!待って!振り向かないで!」
「何なんだよ」
「えと、その、初めてだから心配で。出来たら車の通らない道を通って欲しいの」
「めんどくせぇな。つか今バイパス渡ってる」
「!! わかりました…お願い、あの子を守ってあげて」
「振り向かずにか?」
「ええ」
ズデッ
「いだっ!」
「!」
「!」
「今、いだっ!って聞こえたけど」
「…っ…」
「おーい。…泣いてんのか?」
「あぁあやっぱりまだ早すぎたのよ私が子どもの頃とは違うものねああぁ」
「落ち着けよ」
「あぁあぁあ…」
「俺がちゃんと家まで連れて帰るから」
「え…?」
「だから、ちゃんと帰った時いっぱい褒めてやれ。
あと、あの子の大好きなハンバーグもな」
「あなた…!」
710:本当にあった怖い名無し
10/09/24 23:09:54 W8ZVdibv0
2日後…
昨日は特に何も起こらなかった…
間戸さんの顔が少し窶れている気がした
本人は元気そうなアピールをしていたが…
気のせいだろうか……
ぼんやりしながら仕事作業をしていた
今日は全く頭が回らない感じ…疲れているのだろうか
別に考え事をしている訳でもなかった……
何度も大あくびをかいて
「コラァ!!」
と上の人から怒られてしまう
余りやる気も出ないまま仕事は終わった
711:本当にあった怖い名無し
10/09/24 23:11:08 W8ZVdibv0
住んでる所へと帰宅し、ご飯食べ→銭湯行って→残っていたビールを飲み→寝ようとした時、
…何処からか
???「……め………ん。」
何か微かに声を聴いた…
???「…め……ち…ん」
ハッキリとは聴こえない
赤マント「(め…ちん?…何を言ってるんだ?)」
???「め……ちゃん」
赤マント「(…めちゃん?……寝言だな…うん。寝言だ!)」
面倒臭いので聴くのは止めた
実際にはさっき飲んだビールの酔いが来たのか…眠気で頭が更に回らなくなってきたからだ
赤マント「駄目だー!…おやひゅみ~♪」
目を瞑り、周りは暗闇に染まる…
712:本当にあった怖い名無し
10/09/25 01:47:58 y2+QZ29Y0
>>676
おい召喚するのやめろ
713:本当にあった怖い名無し
10/09/25 05:20:53 D0TCe2og0
もう2~3行で見分けられるようになってしまった
714:本当にあった怖い名無し
10/09/25 12:16:24 /CjH/O290
ひよこ鑑定士みたいだな
715:本当にあった怖い名無し
10/09/25 15:11:48 OWAqQsE90
>>703にはちょっと不覚を取った
716:本当にあった怖い名無し
10/09/25 17:09:57 5bugHsA40
週末だ
ウニさん来てくれるかな
717:本当にあった怖い名無し
10/09/25 18:40:31 RE2dLmRHO
専用スレにな
祈れば、ゴミはゴミ箱へ、ってな
こちらは赤緑とメリー、他新人で手一杯だから
パクリ野郎は荒れるからくるなよ
718:本当にあった怖い名無し
10/09/25 19:02:09 gfirwV2C0
>>717
とりあえず、お前をあぼーんにすればいいわけだな
719:本当にあった怖い名無し
10/09/25 19:13:29 Qq21vkdhO
うむ。
720:本当にあった怖い名無し
10/09/25 19:14:09 W1YJUkRk0
樹海に行ったとき目の前を一面壁で覆われたことある。上に登ることも左右どちらにいってもひたすら壁が続いていた。
結局そこで寝てしまった。起きたらその壁はなく無事に遊歩道まで戻れた。
あの壁はなんだったんだろうか・・・
それ以来樹海には怖くていってない・
721:本当にあった怖い名無し
10/09/25 20:47:28 Am3roEF10
ウニさん待ち
722:本当にあった怖い名無し
10/09/25 21:14:12 y2+QZ29Y0
幻覚だ
723:本当にあった怖い名無し
10/09/25 22:11:05 p0ZW+0n3P
>>720
面白い話だが、そもそも樹海って怖いだろ
何しに行ったんだよ
724:本当にあった怖い名無し
10/09/26 00:36:28 SOC6uqtzO
>>720 ぬり壁
ウニさん来ないのか
725:本当にあった怖い名無し
10/09/26 04:54:06 6S9AegXJO
ウニの書き込みがこの板内のあるスレと何気に呼応している件。
師匠スレは問題外。
726:本当にあった怖い名無し
10/09/26 06:49:45 6S9AegXJO
ウニは古巣に戻るとさ
727:本当にあった怖い名無し
10/09/26 06:56:05 szdLa9bC0
ってかそろそろ自分の国に帰ってくだちゃいな。
728:本当にあった怖い名無し
10/09/26 11:18:58 9v++jU4L0
>>720
おいおいスレタイ読めないのか?
ここはシリーズ物専用スレだ。単発ものはスレ違い
>>722-723もなぜそれを指摘しないで普通に感想述べてるんだ?
そういう事するからメリーさん野郎が居直ってるのが分からないのか
ダブルスタンダードはいかんぜよ
729:本当にあった怖い名無し
10/09/26 12:00:13 Lweww6A4O
誤爆だろ。
樹海スレあるし。
730:本当にあった怖い名無し
10/09/26 18:08:09 p1tn0aUWO
メリーさんは病気なので放置汁
731:本当にあった怖い名無し
10/09/26 21:10:16 0zPYLM1rO
>>730
うむ。
732:土の下 ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:20:36 Lt8tjlVs0
師匠から聞いた話だ。
大学一回生の春。僕は思いもよらないアウトドアな日々を送っていた。それは僕を連れ回した人が、家でじっとしてられないたちだったからに他ならない。
中でも特に山にはよく入った。うんざりするほど入った。
僕がオカルトに関して師匠と慕ったその人は、なにが楽しいのか行き当たりばったりに山に分け入っては、獣道に埋もれた古い墓を見つけ、手を合わせる、ということをライフワークにしていた。
「千仏供養」と本人は称していたが、初めて聞いた時には言葉の響きからなんだかそわそわしてしまったことを覚えている。
実際は色気もなにもなく、営林所の人のような作業着を着て首に巻いたタオルで汗を拭きながら、彼女は淡々と朽ち果てた墓を探索していった。
僕は線香や落雁、しきびなどをリュックサックに背負い、ていの良い荷物持ちとしてお供をした。
師匠は最低限の地図しか持たず、本当に直感だけで道を選んでいくので何度も遭難しかけたものだった。
三度目の千仏供養ツアーだったと思う。少し遠出をして、聞きなれない名前の山に入った時のことだ。
山肌に打ち捨てられた集落の跡を見つけて。師匠は俄然張り切り始めた。「墓があるはずだ」と言って。
その集落のかつての住民たちの生活範囲を身振り手振りを交えながら想像し、地形を慎重に確認しながら「こっちが匂う」などと呟きつつ山道に分け入り、ある沢のそばにとうとう二基の墓石を発見した。
縁も縁もない人の眠る墓に水を掛け、線香に火をつけ、持参したプラスティックの筒にしきびを挿して、米と落雁を供える。
「天保三年か。江戸時代の後期だな」
手を合わせた後で、師匠は墓石に彫られた文字を観察する。苔が全面を覆っていて、文字が読めるようになるまでに緑色のそれを相当削り取らなくてはならなかった。
「見ろ。端のとこ。欠けてるだろ」
確かに墓石のてっぺんの四隅がそれぞれ砕かれたように欠けている。
733:土の下 ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:22:29 Lt8tjlVs0
「地位や金銭に富んだ人の墓石の欠片をぶっかいて持っていると、賭けごとにご利益があるらしいぞ」
師匠はポシェットから小ぶりなハンマーを取り出してコツコツと、欠けている端をさらに叩きはじめた。
「ここは土台もしっかりしてるし、石も良い物みたいだ。きっと土地の有力者だったんだろう」
「でも、いいんですか」
見ず知らずの人の墓を勝手に叩くなんて。
「有名税みたいなもんだ。あの世には六文しか持って行けないんだから、現世のものは現世に、カエサルのものはカエサルに、だ」
適当なことを言いながら師匠は大胆にもハンマーを振りかぶり、砕けて落剥したものの内、ひときわ大きな欠片を「ほら」と僕にくれた。
気持ちの悪さより好奇心の方が勝って、僕はそれを財布の中に収める。やがて夏を迎える頃にはそんな石で財布がパンパンになろうとは、まだ思ってもいなかった。
「もっと古いのもあるかも」
師匠はその二基の墓を観察した結果、少なくともその先代も負けず劣らずの有力者であり、その墓が近くに残っている可能性があると推測し、再び探索に入った。
しかしこれが頓挫する。
日が暮れかけたころ、沢に向けてかつて地滑りがあったと思われる痕跡を見つけただけで終わった。そこに墓があったかどうかは定かではない。
師匠は悔しそうな顔をして地滑りの跡をじっと見つめていた。
その時だ。僕と師匠の立っている位置のちょうど中間の地面の落ち葉が鈍い音と共にパッと宙に舞った。驚いてそちらを見ると、続けざまに自分の足元にも同じ現象が起きた。
「痛」
師匠が右のこめかみのあたりを手で押さえる。
石だ。石がどこかから飛んできている。気づいてすぐに周囲を見渡すと、果たして犯人はいた。
沢の向こう岸の斜面に猿が一匹座っている。こちらの視線に気づいて、歯茎を剥き出して唸っている。怒っているというより、せせら笑っているような様子だった。
そして地面から手ごろな石や木片を掴むと力任せにこちらに投げつけてくる。遊んでいるというには強烈な威力だ。小さなニホンザルと言っても木から木へ両手だけで移動できる腕力だ。
734:本当にあった怖い名無し
10/09/26 21:23:18 WRM4dDuf0
わーお!
735:本当にあった怖い名無し
10/09/26 21:23:51 NiUdrvV70
ウニさんキター!!
いきなり終わりとかびっくりしたけど支援w
736:土の下 ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:27:04 Lt8tjlVs0
僕は身の危険を感じて逃げ出そうとした。
しかし師匠は一言「痛いんだけど」と口にすると、次の瞬間、沢へ向かって駆け出した。
「なんだお前はこらぁ」と叫びながら斜面を滑り降り、ズボンが濡れるのも構わずバシャバシャと水をはねながら沢を渡り始める。
止める暇などなかった。
猿のイタズラにブチ切れた師匠が相手を襲撃するという凄い絵面だ。
猿も沢の向こう側の安全地帯から一方的に人間を攻撃しているつもりが一転、身の危険を感じたのか、掴んでいた石を投げ捨てて威嚇するような奇声を発した後、斜面を登って木立の中へ逃げ込んだ。
師匠も負けじと奇声を発しながら沢を渡り切り、斜面を駆け上って木立の中へ飛び込んでいった。
僕は思わずその斜面の上を見上げるが、鬱蒼と茂った木々が小高くどこまでも続いている。猿を追いかけて獣道もない山の奥へ分け入るなんて、正気の沙汰じゃない。
止めるべきだったと思ったがもう遅い。師匠の名前を呼びながら、戻って来るのをただ待っているしかなかった。
猿なんだぜ。猿。
そんなことを呆然と再確認する。素手の人間が山で猿を追いかけるなんてありえないと思った。
それにあんな深い山の道なき道を走るなんて、崖から落ちたり尖った竹を踏み抜いたり、考えるだに恐ろしい危険が満載のはずだった。
自分も沢を渡り、居ても立ってもいられない気持ちでうろうろと周囲を歩き回り続け、小一時間経った頃、ようやくガサガサと斜面の向こうの茂みが動き、師匠が姿を現した。
全身に小枝や葉っぱが絡みついている。
バランスを取りながら斜面を滑り降りる様子を見た瞬間に、僕は「大丈夫ですか」と言いながら近づいていった。
師匠は「逃げられた」と言って顔をしかめている。
何度か転んだのか服は汚れ、顔にも擦り傷の痕があった。しかし右腕を見た時には、思わず「だから言ったのに!」と言ってもいないことを非難しながら駆け寄った。
師匠は暑いからと上着の袖を捲り上げていたのだが、その剥き出しの右腕の肘から下にかけてかなりの血が滴っているのだ。
新しいタオルをリュックサックから取り出してすぐに血を拭き取る。師匠はその血に気づいてもいないような様子で、いきなり手を取った僕を邪険に振り払った。
737:本当にあった怖い名無し
10/09/26 21:30:31 77Ks0NPB0
初ウニさんです。
支援です。
738:土の下 ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:30:33 Lt8tjlVs0
「なんだおい。大丈夫だよ」
「大丈夫なわけないでしょう」
とにかく傷の様子を確かめようと、もう一度無理やり腕を掴む。
あれ?
傷が……
ない。
顔にもあるような擦り傷くらいしか。
呆然とする。
だったらこの血は?
拭ったタオルにはべっとりと血がついている。見間違いではない。
「大丈夫だって言ってるだろ」
師匠は乱暴に腕を振り払うと捲り上げていた袖を元に戻し、沢を渡り始めた。
僕はしばらくタオルの血と師匠の背中を見比べていたが、やがて「見なかったことにしよう」と結論付けて手の中のタオルを投げ捨てた。考えるだに恐ろしいからだ。
そして「待ってください」とその背中を追いかける。
師匠はまだまだやる気満々で、それから日が完全に暮れるまでにさらに二箇所で墓を発見した。
山歩きに慣れた人の後ろをついて行くだけで僕は息が上がり、「もう帰りましょう」と何度も訴えたが、そんな言葉など無視して「こっちだ」と道なき道を迷わず進まれると、溜め息をつきながら追いすがらざるを得ないのだった。
山道の傍で見つけた最後の墓は墓名もなく、小さめの石を二つ重ねただけのもので、そうと言われなければ気づかなかったに違いない。
師匠は手を合わせたまま呟いた。
「こんな小さなみすぼらしい墓を見るとさ、なんか嬉しくなるな」
「なぜです」
意外な気がした。
「金が無かったのか、縁が無かったのか…… もしかしたら名前も付けられないまま死んだ子どもだったのかも知れない」
「きちんとした墓を建ててもらえなかった人のことが、なぜ嬉しくなるんです」
師匠は静かに顔を上げる。
739:土の下 ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:34:41 Lt8tjlVs0
「それでも、その人がいたという証に、こんな小さな墓が残っている」
苔むした石の台座に線香が二本。煙がゆったりと立ち上っている。師匠は腕を伸ばし、線香に水を掛けた。
「こうして手を合わせる人だって、気まぐれにやってくる」
さあ、帰ろうかと言って立ち上がった。僕も慌ててリュックサックから出したものを片付ける。
帰り道は真っ暗で、持参していた懐中電灯をそれぞれ掲げた。来た時とは違う道だ。師匠は近道のはずだと言う。
足元にも気を付けつつ、師匠の背中を見失わないように見通しの悪い下り坂を慎重に歩いたが、心はさっきの小さな墓に繋ぎ止められていた。
(その人がいたという証か……)
死は死を死なしむ、という言葉がふいに浮かんだ。誰かの詠んだ歌だったか。
人が死ぬということは、その人の心の中に残っているかつて死んだ近しい人々の記憶がもう一度、そして永遠に揮発してしまうということだ、という意味だったと思う。
さっきの墓の主も、きっともうなんの記録にも、そして誰の記憶にも残っていないだろう。
それでも石は残る。
その意味を考えていた。
ぼうっとしていると、師匠の声が遠くから聞こえた。
「おい」
我に返ると、師匠が道の途中で立ち止まり、藪の切れた脇道の方に懐中電灯を向けていた。
「どうしたんです」
横顔が心なしか緊張しているように見える。
「自殺だ」
「えっ」
驚いて駆け寄る。
草が生い茂り、一見しただけは道だと思わないような場所に、誰かが通ったような痕跡が確かにある。
踏まれて倒れた草の向こうに懐中電灯を向ける。師匠と僕の二つの光が交差し、照らし出される先には宙に浮かぶ人影があった。
首吊りだ。
思わず生唾を飲み込む。
窪地の木の下に人がぶらさがっている。
740:土の下 ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:38:32 Lt8tjlVs0
ガサリと音がして、横にいた師匠がそちらに向い動き出す。止める間もなかった。
僕は一瞬怯んだ。ひと気のない夜の山中に、人の形をしたものが人工の明かりに照らされて空中にある、ということがこれほど怖いものだとは。
まだしもぼんやりとした霊体を見てしまったという方がましな気がした。
それでも師匠の背中を追って足を踏み出す。軽い下り坂になっている。青っぽいポロシャツにジーンズという服装がほぼ正面に現れる。その姿が後ろ向きであることに少しホッとした。
さらに坂を下り近づいて行くと、かなり高い位置に足があることに気づく。背伸びをしても靴に手が届かない。
死体のベルトの位置に、張り出した枝が一本。きっとあそこまで木登りをして枝に足をかけた状態から落下したのだろう。
恐れていた匂いはない。春とはいえこの気温の高さだから、二、三日も経っていれば腐敗が進んでいるはずだ。首を吊ってからそれほど時間が経っていないのかも知れない。
だがシャツから出ている手は嫌に白っぽく、血の通った色をしていなかった。
師匠は前に回り込んで、首吊り死体の顔のあたりに懐中電灯を向けている。そして「おお」という短い声を発して気持ち悪そうに後ずさった。
僕は同じことをする気にはなれず、その様子を見ているだけだった。
やがて一頻り死体を観察して満足したのか、師匠は変に弾んだ足取りでその周囲をうろうろと歩き回り始めた。
「下ろしてあげた方がいいでしょうか」
僕はそう言いながらも、あの高さから下ろすのはかなり難しそうだと考えていた。高枝切バサミかなにかでロープを切るしかなさそうだ。
「まあ待てよ」
師匠はなにか良からぬことを企んでいるような口調で、腰に巻いたポシェットの中を探り始めた。
さっきまで見ず知らずの人の小さな墓に手を合わせていた人間と同一人物とは思えない態度だ。この二面性が、らしいといえばらしいのだが。
「お、偉い、自分。持ってきてた」
おもちゃの様な小さなスコップが出てきた。師匠はそれを手に首吊り死体の真下のあたりにしゃがみ込む。
そして右手にスコップを振りかざした状態でくるりと首だけをこちらに向ける。
「面白いことを教えてやろう」
741:本当にあった怖い名無し
10/09/26 21:42:23 jW00KyhK0
支援!
リアルタイーム!
742:土の下 ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:45:27 Lt8tjlVs0
その言葉にぞくりとする。腹の表面を撫でられたような感覚。
ズクッ、と土の上にスコップが振り下ろされる。落ち葉ごと地面が抉られ、立て続けにその先端が土を掘り返していく。
「こんぱくの意味は知っているな」
手を動かしながら師匠が問い掛けてくる。
魂魄? たましいのことか。
確か『魂(こん)』の方が心というか、精神のたましいのことで、『魄(はく)』の方は肉体に宿るたましいのことだったはずだ。
そんなことを言うと、師匠は「まあそんな感じだ」と頷く。
「中国の道教の思想では、魂魄の『魂』は陰陽のうちの陽の気で、天から授かったものだ。そして『魄』の方は陰の気で、地から授かったもの。どちらも人が死んだ後は肉体から離れていく。だけどその向かう先に違いがある」
口を動かしながらも黙々と土を掘り進めている。僕はその姿を、少し離れた場所から懐中電灯で照らしてじっと見ている。師匠の頭上には山あいの深い闇があり、その闇の底から人の足が悪い冗談のようにぶらさがって伸びている。
寒気のする光景だ。
「天から授かった『魂』は、天に帰る。そして地から授かった『魄』は地に帰るとされている。現代の日本人はみんな、人が死んだあとに、たましいが抜け出て天へ召されていくというテンプレートなイメージを持っているな。貧困だ。実に」
なにが言いたいんだろう。ドキドキしてきた。
「別に『人間の死後はこうなる』ってハナシをしたいんじゃないんだ。ただ、経験でな。何度かこういう首吊り死体に出くわしたことがあるんだ。そんな時、いつもある現象が起こるんだよ。それがなんなんだろうと思ってな」
スコップを振る腕が力強くなってきた。
「同じ首吊りでも室内とか、アスファルトやらコンクリの上だと駄目なんだよな。だけどこういう……土の上だと、たいてい出てくるんだ。死体の真下から」
ひゅっ、と息が漏れる。
自分の口から出たのだとしばらくしてから気づく。さっきまで汗にまみれていたのが嘘のように、今は得体の知れない寒気がする。
「お。出たぞ。来てみろ」
師匠がスコップを放り投げ、地面に顔を近づける。
743:土の下 ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:49:21 Lt8tjlVs0
なんだ。なにが土の下にあるというのだ。
動けないでいる僕に、師匠は土の下から掬い上げたなにかを右の手のひらに乗せ、こちらに振り向くや、真っ直ぐに鼻先へつきつけてきた。
茶色っぽい。なにかとろとろとしたもの。指の隙間からそれが糸を引くようにこぼれて落ちていく。
「なんだか分かるか」
口も利けず、小刻みに首を左右に振ることしかできない。
「私にも分からない。でも、首吊り死体の下の地面にはたいていこれがある。これが場所や民族、人種を超えて普遍的に起こる現象ならば、観察されたこれにはなにか意味があるものとして理由付けがされただろうな。……例えば、『魄』は地に帰る、とでも」
とろとろとそれが指の間からしたたり落ちていく。まるで意思を持って手のひらから逃れるように。
「日本でもこいつの話はあるよ。『安斎随筆』だったか、『甲子夜話』だったか…… 首吊り死体の下を掘ったらこういうなんだかよく分からないものが出てくるんだ」
師匠は左目の下をもう片方の手の指で掻く。
嬉しそうだ。尋常な目付きではない。
僕は自分でも奇妙な体験は何度もしたし、怪談話の類はこれでも結構収集したつもりだった。なのにまったく聞いたこともない。想像だにしたことがなかった。首吊り死体の下の地面を掘るなんて。
なぜこの人は、こんなことを知っているんだ。
底知れない思いがして、恐れと畏敬が入り混じったような感情が渦巻く。
「ああ、もう消える」
手のひらに残っていた茶色いものは、すべて逃げるように流れ落ちてしまった。手の下の地面を見ても、落ちたはずのその痕跡は残っていない。どこに消えてしまったのか。
「地面から掘り出すと、あっと言う間に消えるんだ。もう土の下のも全部消えたみたいだ」
師匠はもう一度スコップを手にして土にできた穴の同じ場所に二、三度突き入れたが、やがて首を振った。
「な、面白いだろ」
そう言って師匠が顔を上げた瞬間だ。
強い風が吹いて窪地の周囲の木々を一斉にざわざわと掻き揺らした。思わず首をすくめて天を仰ぐ。
744:本当にあった怖い名無し
10/09/26 21:52:47 NiUdrvV70
もいっちょ支援
745:土の下 ラスト ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:55:09 Lt8tjlVs0
ハッとした。
心臓に楔を打ち込まれたみたいな感覚。
地面に向けている懐中電灯の明かりにぼんやりと照らされて、宙に浮かぶ首吊り死体の足先が見える。
朽ちたようなジーンズと、その下の履き古したスニーカーが先端をこちらに向けている。さっきまで、死体は背中を向けていたはずなのに。
懐中電灯をじわじわと上にあげていくと、死体の不自然に曲がった首と、俯くように垂れた頭がこちらを向いている。
髪がボサボサに伸びていて、真下から覗き込まないと顔は見えない。
風か。風で裏返ったのか。
背筋に冷たいものが走る。
首を吊ったままの身体は、その手足が異様に突っ張った状態で、頭部以外のすべてが真っ直ぐに硬直している。
風でロープが捩れたのなら、また同じように今度は逆方向へ捩れていくはずだ。
そう思いながら息を飲んで見ているが、首吊り死体は垂直に強張ったまま動く気配はなかった。
その動く気配がないことが、なにより恐ろしかった。
僕の感じている恐怖に気づいているのかいないのか、師匠はこちらを向いたまま嬉々とした声を上げる。
「どっちだろうな」
そう言ってニコリと笑う。
どっちって、なんのことだ。天を仰いでいた顔をゆっくりと師匠の方へ向けていく。首の骨の間の油が切れたようにギシギシと軋む。
「誰かが首を吊って死んだから、さっきのへんなものが土の下に現れるのか。それとも……」
師匠はそう言いながら自分の真上を振り仰いだ。そして頭上にある死体の顔のあたりを真っ直ぐに見る。視線を合わせようとするように。
「あれが土の下にあるから、人がここで首を吊るのか」
なあ、どっちだ。
そう言って死体に問い掛ける。
肩が手の届く位置にあれば、親しげに抱いて語り掛けるような声で。
746:本当にあった怖い名無し
10/09/26 21:57:09 bOl51QWRO
しえんっ
747:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:00:05 jW00KyhK0
ウニさん乙です
支援しながら読んでたけど今回も面白い!
師匠w
748:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:02:28 3uw+P/aU0
ウニ、乙。
やはり独特の良さがあるな。
749:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:05:00 ADf5RvUi0
乙っした
750:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:05:46 fDnXQZ2IO
ウニさん乙です
毎回楽しみにしてますー
751:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:10:28 ZuGNYOSU0
死縁
752:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:23:39 Buaj8nD60
ウニさん乙でした!
753:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:25:26 dR/cctDvO
ウニさん乙でした!
加奈子さんの話好きだから嬉しい。
この息の詰まるような緊迫感が良いわー。
754:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:26:11 k939ERWF0
ウニさん~~~~~~~~~~~!!
嬉しい~!
いつもありがとうございます。
755:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:33:54 72+wqeef0
ウニさん、お疲れさまです。
楽しく読まさせてもらいました。
756:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:39:31 Voac/rD+O
ウニちゃん~~!
うるうる(喜)
757:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:43:40 PTabL23x0
ウニさん、初めまして。
感じるがゆえの哀しみ、、、加奈子さん視点は特に読み応えがあります。
秋の夜長にぴったりのお話をありがとうございました。
お疲れさまです。
758:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:56:05 byKOzIO00
最初から今夜は終わり噴いたwwwwww
そんな感じの短編もぜひお願いしたい。
759:本当にあった怖い名無し
10/09/26 23:20:15 TEOfiIax0
やっぱ読ませるなぁ。
乙です。
760:本当にあった怖い名無し
10/09/26 23:22:57 GZSXyPRV0
思った物が描けていないって不安?
そう言う時もあるよ。
761:本当にあった怖い名無し
10/09/26 23:39:48 Hr3GLPg40
ウニ乙!
魄の茶色い液体に、匂いはないのかのう?
魂に近いはずのエーテルにも、匂いはないのかのう?
762:本当にあった怖い名無し
10/09/27 00:06:08 lZIePQjU0
一レス目のメル欄見てびっくりしたわwwww
ウニ乙
763:本当にあった怖い名無し
10/09/27 00:10:19 quj5dHZS0
パンツぬいだ
764:本当にあった怖い名無し
10/09/27 00:13:54 OfjfUaaO0
ウニ乙!!!!
あ~これで1週間頑張れるわ
765:本当にあった怖い名無し
10/09/27 02:00:34 /Rtjn7dB0
ウニさん
師匠シリーズ大好きです。
毎週お願いします!!!!!
766:ベニヤ板
10/09/27 10:56:08 QuC7uZ1Y0
「え~と、元気でしたか。……多田さん」
なんだか面映い。ここ数日、砕けた仲間同士の掛け合いしかしてなかったので、口が滑らかに動かない。
元気だとその人は言った。
以前より少しふっくらしたようだ。髪の毛も伸ばしている。なにより、あの真摯で鋭かった眼差しが柔らかくなっている気がする。
(『なぞなぞ』より引用)
登場する人たちと取り巻く空間を勝手に頭のなかで作り上げて僕(達)は既に読んでいる。物語ということだ。
そこには決定的には入り込めるわけがない。自分なら…という形で恋愛感情の兆しを見出したとしても。書かれたものなのだから。
師匠にとっての師匠。「僕」にとっての京介。そして、こんな想像をしている月並みな自分をすこし笑ってみる。
で、皆さん、この多田というひと、かつて髪が短くて、眼差しがいまよりも鋭かった女の人。僕らが既知の誰かなのだろうか…。
こうして、馬鹿な僕はウニ氏の紡ぎだす物語にもうすこし余計な入り込み方をちょっとしはじめている。
767:本当にあった怖い名無し
10/09/27 10:58:13 XQsmolCRO
たぶんお前以外はみんな大体わかってるよ<多田さん
768:本当にあった怖い名無し
10/09/27 11:56:35 zIweDeWg0
ウニ氏乙ー!!
ここんとこちょくちょく来てくれて嬉しい!!
あー幸せ
しかし上から死体に覗き込まれるイメージしながら読んでたせいで頭からそのイメージが離れない・・・
769:本当にあった怖い名無し
10/09/27 12:25:46 S3cVPj3w0
『もしもし…私メリーさん…今貴方の家のm(ワンワンワン!!!)ひぁっ!?な、何!?っあっやっ嫌ぁぁぁあ!やめっ!?くるなぁ~~ッッ!(ワン!!ワンワン!!!)』
ウチの番犬は頼りになるなぁ、と感心しつつ俺は玄関に向かうのであった
770:本当にあった怖い名無し
10/09/27 12:26:59 S3cVPj3w0
差出人不明の方から封筒が届いた
メリーさん「これ、誰からなの?」
疑問に思いながらも封筒を開けてみると折り畳んでいる一通の手紙が入っていた
メリーさんは気になり折り畳んでいる手紙を開いてみた…
その手紙には矢印の先端に黒い点が1つあり「今日、此処へ来て下さい」と描かれた地図だけが描かれていた
メリーさん「誰かの悪戯かしら?」
始めは疑っていたが、とりあえず地図に描かれた所へ行ってみる事にした…
目的地に着いたのだが、地図に描かれた場所は、電信柱の下で周りは家しかないただの細い道
電信柱に付いた蛍光灯が切れ掛かっており、周りは薄暗くなったり明るくなったりとチカチカ光って不気味な所だった
771:本当にあった怖い名無し
10/09/27 12:35:40 S3cVPj3w0
メリーさん「あ!」
メリーさんは電信柱に貼ってある始めに届いた同じ封筒に気付いた
封筒を電信柱から剥がし、中身を見るとまた一通の折り畳んだ手紙が一枚
メリーさんはその手紙を読んで見ると…
また地図と矢印が描かれただけ……
ではなく、地図の絵の下には、
「中身を見ずに、足もとに置いてあるブシを揺らさづ持つて矢しるしの所え」
と、明らかに始めに届いた手紙とはまた、別の人物が書いたのであろう汚い字で書いてあった
メリーさん「…随分…酷い字ね…」
誤字と汚い字に呆れる顔をしたメリーさんの足元にはそれらしき黒いブツが置いてある
ブツといっても黒い箱で横が30cm位はある少々重たい箱
メリーさん「きっとコレのなのね」
メリーさんは、書かれていた通りにブツを拾い上げ、嫌々ながら揺らさない様に両手で矢印の所へと運んで行った…
772:本当にあった怖い名無し
10/09/27 12:44:45 S3cVPj3w0
運んでいる時…メリーさんは、ふと思い出す
メリーさん「(あれ?そう言えば……今日…、私誕生日だったんだっけ?)」
今日は自分の誕生日だった事を思い出し、何だか嬉しくなってきた
ふわっ
メリーさん「冷たっ!」
メリーさんの鼻の上に冷たい何かがふわりと降ってきて…
空を見上げると
メリーさん「…雪だ」
まるで、雪がメリーさんの誕生日をお祝いしに来てくれた様に見えた
773:本当にあった怖い名無し
10/09/27 12:52:16 S3cVPj3w0
メリーさんは「ハッ!」、と黒い箱(ブツ)を見て気が付いた
メリーさん「(もしかして…この箱って…私のバースデーケーキかプレゼントが入ってるんじゃあ…)」
メリーさん「(今日、私の誕生日だし、黒い箱を揺らしちゃいけないのは壊れやすい物が入っているからで、封筒(手紙)の宛先人は私の誕生日を祝ってくれる人…でしょうね。フフフ…わざとビックリしとこっ♪)」
推理してしまい、メリーさんの顔が嬉し笑いで笑みを見せた
しかし、そのまま着いて知っていた顔をしていたら祝ってくれる人に申し訳ないし、雰囲気がぶち壊しになる
メリーさんは、分からなくて、着いてからビックリする事にした
メリーさん「~♪」
ルンルン気分で軽やかに歩くメリーさん
歩くスピードが早くなっていた
774:本当にあった怖い名無し
10/09/27 13:11:09 S3cVPj3w0
漸く地図に描かれていた目的地に着くと目の前には、ごく普通の一軒家が建っている
一応地図を確かめ、間違いない事が分かると、メリーさんはその家のインターホンを鳴らす
メリーさん「(知らなかった振り…知らなかった振り…)」
自分に言い聞かせている間に
???「はーい。どうぞー」
と家の主でだろうか、入って良さそうな返事が来た
メリーさん「…お邪魔しまーす」
メリーさんはゆっくりと玄関を開けて中へ入って行った
家の中は暖かく、雪が降り冷えてきていた体を、暖かさがメリーさんを包み、体を暖めてくれる
775:本当にあった怖い名無し
10/09/27 13:17:25 S3cVPj3w0
………誰かが現れてもいい筈だが…
……誰も来ない
奥では複数の人の笑い声と騒ぎ声が聴こえる
メリーさん「(皆で私を驚かせようとしてるのね…)」
そう思い、そのまま声の元へドアを開いて入って行くと…
パンパンパーン♪
一同「メリークリスマース♪」
皆がメリーさんに向かってクラッカーを鳴らす
メリーさん「え!?!?」
……予想と違かった
誕生日を祝ってくれるのだと思っていた
メリーさんは自ら皆に
メリーさん「今日…私の…誕生日で……呼んだんじゃないの?」
一同「……………え?………」
数秒間…時間が止まったかの様に静まり返り硬直してしまった
776:本当にあった怖い名無し
10/09/27 13:20:44 S3cVPj3w0
一同の中の1人、クリスマスパーティーを誘った張本人『エンジェル様』がメリーさんに
エンジェル様「え、えっとー?……誕生日…だったの?」
メリーさんは頭をコクコクと立てに振った
メリーさん、エンジェル様「「…………。」」
暫くまた無言の空気になった時、メリーさんの口が開いた
メリーさん「…私の(プルプル)…私の誕生日で呼んだんじゃ(プチッ←堪忍袋の尾が切れた)無いんかァァァァァァァ!!!!」
その後
メリーさんは、やけ酒ならぬやけケーキを食べまくり…
メリーさん「ギャー!!……た、体重が…」
…○キロ太ってしまい(現在○4キロ)
それ以来、メリーさんはクリスマスが嫌いになってしまったとさ
遅れましたが、改めまして「創作板、メリーさんスレ」一周年(越え含み)おめでとうございます
あと、早いけど
『メリークリスマス』
777:本当にあった怖い名無し
10/09/27 13:28:25 S3cVPj3w0
時は12月25日。所謂クリスマスというやつである。
町は華やかに彩られ、賑やかになっているが万年一人身の私にはなんら関係ない。
むしろ言わせて貰おう。
憎悪だ。どこもかしこもカップルカップルカップル。幸せそうな面をしてどこへ行く。
メリークリスマスメリークリスマスメリークリスマスうるさいんだよ。ここはどこだ、日本だ。キリストを祭りたいならローマにでも行ってくれ。
例え冬至で柚子湯に入ることはあってもクリスマスにケーキなぞ絶対に食わないぞ。今日は平日ナリ。
町を歩けばサンタ服に着替えた女性の方々。寒くないッスカ、恥ずかしくないッスカ、年考えろよプギャー。
など毒づきながら歩いているとぶるぶるとポケットに入れた携帯が震え始めた。非通知表示された画面を少し見つめたあと通話ボタンを押す。
「私、メリーさん。い」「間に合ってます」
糞、個人攻撃までするのかサンタクロース。そんなに私を殺したいか。精神的に。かつてどこかの英雄が戦った日本引きこもり協会という組織が
あったらしいが俺は世界サンタクロース協会と戦わなきゃいけないのか。なんて運命だ。
再び携帯が鳴る。同じく非通知。通話ボタンを押す。
「私、メリーさん。一人しかいないからね」
「へぇ、今どこにいるの?」
「えっとね……秋田!」
「なまはげぇ」
778:本当にあった怖い名無し
10/09/27 13:35:43 S3cVPj3w0
通話を切る。というかここは東京だ。一体どこから向かっているんだ。
いつも通りコンビニに入り、弁当とビールを一本レジに持っていく。
「いらっさいませ」
なんともやる気に溢れない言葉だ。ふと店員と目が合う。そして悟る。ああ、そうか。
すっと右手を差し出す。店員は迷うことなく左手を出して、強く握手を交わす。
「アリガトーゴザイマシター!」
覇気に満ちた言葉を聞きながら、店を後にする。再び携帯がぷるぷる。
「わt」「我輩はメリーである。名前はまだない」
「メリーって名乗ったじゃん! あ、今埼玉だからもう少しまtt」「ださいたまぁ」
通話を切った後、電源を落とそうか悩んだが仕事の電話が来ると困るのでつけとくことにした。
それにしても人が多い。お前ら、早く家に帰って楽しい食卓でも囲めよ。
普段はちょっと寂れてる商店街も人がごったがえし、芋を洗うがごとくといった呈を成している。
荒波人波を押しのけ、普段の三倍の時間をかけて商店街を抜ける。
もちろんその間、子どもの泣き声叫び声笑い声をフルコーラスでお送りさせてもらってます。うるさい。
子どもは昔から嫌いだ。行動に意味はなく、言葉に道理はなく、結果は常に自己のため。
成人になるまで所詮動物だ。むしろ首に縄でもつけてペットにすればいい。というか子ども産むな。害悪だ。
脳みそを悪意で満たそうとしていると再び携帯が震えた。
「警察にいいますね」
779:本当にあった怖い名無し
10/09/27 13:37:53 S3cVPj3w0
「待ってタンマタンマ! なんでそんなに私の話を聞いてくれないの!」
「生憎メリーと名のつくものには殺意しか沸かなくてね」
商店街前の横断歩道。青が点滅している。押しのけそこのけ急いだものの寸前で赤になってしまう。
隣には姉妹だろうか。おそろいの服を着た子どもがやんややんやとはしゃいでいる。
手にはプレゼントで貰ったのだろう。包装紙に包まれた四角い箱を持っている。
母親らしい人も両手に荷物でおとなしくしなさいと口でしか言えないようだ。
「ひどいなぁ。もう。ひどいなぁ」
「で、何用かな。もうこれ以上いたずら電話されると困るんだけど」
「いたずらじゃないよ。ほら、前を見て」
言われて前を見る。道路上にはさきほど子どもが持っていた箱がぽてんとタイミングよく落ちた。
「あー!」
子どもが飛び出す。おや、タイミングよくトラックが。親は手を離せない。
なけなしの金で買ったコンビニ弁当とビールが宙を舞う。携帯も自分の前を飛んでいる。
子どもの服を右手で掴み、後ろに引っ張る。さらに一歩踏み出し、その足を軸に地面に落ちた箱を回転しながら左手で取り
子どものほうへと投げる。ここまで来れば誰でもわかる。私はそこで体制を崩した。
トラックは止まらない。地に尻を着きかけた体は再び宙を舞う。
780:本当にあった怖い名無し
10/09/27 14:17:59 S3cVPj3w0
しばし空中遊泳をしたあと地面に叩きつけられる。追撃に携帯が胸に落ちてくる。
だから子どもは嫌いだ。危険を顧みず、平気で自殺行為をしてくれる。
「もしもーし、聞こえる?」
耳元まで跳ねてきた携帯から聞こえる声。残念ながら返事はできない。
「私、メリーさん。今、あなたを迎えにきたの」
ぼんやりとした視界に赤色が入ってくる。ただその赤色だけ妙にくっきりとしている。
クリスマスは嫌いだ。まともなサンタクロースが来やしない。自分を見て、赤色が笑っている気がする。
「君も赤くてサンタみたい」
781:本当にあった怖い名無し
10/09/27 15:05:00 S3cVPj3w0
『私メリーさん。今新スレにいるの』
そのわけのわからない電話がかかってきたのは、僕が布団に入って
ようやく眠りに落ちた頃で、当然ながら僕はその電話によって叩き起される
事になり、寝ぼけた頭で必死にその電話の意味を理解しようとしていた。
メリーさん。それは、都市伝説として有名な存在だ。トイレの花子さんや、
百キロババアなんかと同じ、本当に存在するかどうかは疑わしいのに、
誰もがその存在をまことしやかに他人に伝える、そういう存在。
その存在からの電話が、今まさに僕にかかってきているのだ。
そこまでは、なんとか理解できた。
……でも、いわゆるメリーさんのセオリーとは、その電話は違った。
新スレとは、一体なんだ?
『パソコン、持ってないの?』
メリーさんの声が、電話越しにではあるが、わずかに沈んだように
感じられた僕は、慌てて本の山の中にうもれていたノートパソコンを
掘り出し、そのスイッチを入れた。
元々機械に弱い僕は、大学に進学する際に買った、当時としては
最新の機能を持ったそれをずっと眠らせるままにしていたのだけれど、
幸いと言うべきか否か、久しく電源をつないでいなかったそれも、
内蔵電池に残っていた電力で何とか起動した。
『ありがとう、なの』
782:本当にあった怖い名無し
10/09/27 15:10:46 S3cVPj3w0
なぜお礼を言われたのかはわからなかったけれど、僕はどういたしまして、
と答え、次の言葉を待った。程なくして、メリーさんは次なる指示を僕に
与えてきた。
『2ちゃんねるにアクセスして欲しいの。創作発表板という板があるの』
2ちゃんねる? ……聞いたことはあった。悪名高い、誹謗中傷と荒らし
の巣窟だと言われる、それでも日本で一番の大きさを誇る、掲示板群……。
僕は検索によって、何とかその目的の場所へとたどり着いた。
創作発表板。そこはそういう名前の掲示板のようだった。創作し、それを発表
する為の掲示板。そこで僕は、メリーさんに言われるよりも速く、あるキーワード
を使って検索をかけていた。
そのキーワードとは―メリーさん。
そうして出てきたのは、まだレスポンスが一つもついていないトピックスだった。
私メリーさん2。それがそのトピックス―2ちゃんねる風に言うならば、
スレッドの―名前のようだった。
絵でもSSでも何でも、メリーさんに関する物ならば何でも書き込んでいい、
そういうスレッドのようだった。
『私は、そこにいるの。そこにいるけど、見えないの。だから……』
メリーさんは言う。
783:本当にあった怖い名無し
10/09/27 15:13:56 S3cVPj3w0
『貴方に……貴方にも、私を見えるようにして欲しいの』
……趣味で小説を書いていたのは、高校二年の頃までだ。大学受験に
備えてその趣味をやめて、もう何年にもなる。もう、ずいぶんと小説なんて
書いていない。
でも……。
僕にできるのは、そのくらいだと、そう思った。それしかできないと。いや、
それをしなければいけないんじゃないか、と。
『お願い、なの』
何故かはわからない。都市伝説からの電話。それ自体が夢でも見てるんじゃ
無いかと、そう言われれば頷いてしまうような状況で、それでも僕は全く電話
の向こうから聞こえる声を疑おうと言う気にもならず、そしてこの"私メリーさん2"
スレッドにまでたどり着いた。たどり着けた。
ここに……この中に、彼女はいる。
僕がここに書けば、彼女は見えるようになるのだ。彼女の存在は、他の人にも
認識できるようになるのだ。
何故かはわからない。
でも、僕は、確かに思った。
書こう、と。頼まれたからではなく、自分が彼女の為にそうしたいから、だから
書こうと、そう思った。
少し、時間がかかるけど……それでもいいかな?
『ありがとう、なの』
電話の向こうの声が、心なしか弾んだような気がした。
784:本当にあった怖い名無し
10/09/27 15:18:49 S3cVPj3w0
目を覚ませば、数年の間埃をかぶりっぱなしだったノートパソコンに電源が
入っていて、電池残量が少ない事を知らせるランプの点滅が目についた。
一体、僕はいつこのパソコンの電源を入れたんだっけ?
そう思ってモニターを覗き込むと、そこには一つのサイトが表示されていた。
2ちゃんねるの、創作発表板。
……ああ、そうだ。僕は確か昨日、誰かから電話を貰って―
「私、メリーさん」
その声が聞こえたのは、僕がそんな事を考え始めた、その瞬間だった。
耳の真横で、まるで背後から抱きしめられ、囁かれるように聞こえたその
声は、確かにこう言った。嬉しげな、弾んだ、可愛らしい声で。
「今―貴方の後ろにいるの」
785:本当にあった怖い名無し
10/09/27 15:23:47 S3cVPj3w0
都市伝説。民話。神話。怪談。そんな風に称される物語に登場する存在は、
総じて一つの特徴を持っている。
それは、人の認識によってその存在を維持する力を得る、という事。
人がその存在を信じれば、人がその存在を現実のものと認識すればする程、
彼らはこの世界に確たる存在として在るのである。
これは、そんなお話―――
終わり
786:本当にあった怖い名無し
10/09/27 15:39:52 S3cVPj3w0
「へえ、メリーさん次スレ立ったんだ」
いつもの様に部屋に篭って、2ちゃんねるを巡回する。そこへお約束のごとく、非通知で電話が掛かってきた。
「わ、わたし、めりーさんっ!いま、あなたのうしろにいるのー」
幼い子どもの声だった。しかし、確かメリーさんは15、6の少女だったと記憶している。
ただの子どものいたずらか。だがまあ、少しくらいは相手をしてやってもバチは当たらないだろう。
「メリーさんってさ、段々近づいて来るもんじゃなかったっけ?いきなり後ろに来てもいいのかい?」
少しいじわるな質問。
「う……じゃ、じゃあね、いま“ちり”にいるのー。そこからだんだん近づいていくのー!」
一気に地球の反対側までワープしちまったよ、この子。やはりメリーさんには瞬間移動能力があるのだろうか。
「そうかそうか、じゃあ来るの待ってるよ」
俺はそう言ってから電話を切った。
787:本当にあった怖い名無し
10/09/27 16:00:19 S3cVPj3w0
程なく電話が掛かってくる。非通知だ。
「いまあなたのうしろにいるのー」
「もしもし、どちらさまですか?」
わざととぼけてやる。
「あ、ごめんなさい、わたしめりーさんなのー、うしろにいるのー」
メリーさんが謝っちゃったよ。なんか段々面白くなってきたな(からかうのが)。
「だからすぐに近づいてきちゃダメなんだって。徐々に徐々に近づいてこないと。」
「わ、わかったのー。いま“ゆーらしあ”にいるのー」
範囲が広すぎて分かんねえよ。
「ユーラシア大陸のどのあたり?」
「えっと、えっと、かんばんがあるけど、なんてかいてあるのかわからないの……」
外国の人形だが、日本の都市伝説だからなあ。
「うん、じゃあ場所が分かったらまた電話して」
「え、え?ちょ、ちょっとまっt」
ぷつん。つーつー。
途中で電話を切ってやった。メリーさんが必死になって、自分が今、どこにいるのかを探し回っている姿が目に浮かぶ。
788:本当にあった怖い名無し
10/09/27 16:04:12 S3cVPj3w0
2時間ほどして、また電話が掛かってきた。
「もしもし、めりーさんなのー。いま“ぷさん”にいるらしいのー」
らしい、とは。ちゃんと調べたのか。えらいぞ、メリーさん。
「それで、次はどこに来るの?」
「……そろそろうしろにいっちゃだめ?」
「まだだめ」
「うー、わかったのー。」
承諾すんなよ。
「じゃあ次の場所についたらまた電話してくれよな」
「うん、りょうかいなのー」
ガチャン。
789:本当にあった怖い名無し
10/09/27 16:14:52 S3cVPj3w0
電話の前で全裸待機。いや、別に悪い意味はないぞ。風呂に入ってただけだからな。
お、掛かってきた。
「もしもし、めりーさんなのー」
俺の指摘のお陰か、初めに自分の名前を名乗るようになった。
「今はどこにいるんだ?」
「えーっと、おしろから北に70 西に40のばしょなのー」
なんでドラクエやってるんすか、メリーさん。
「いいか、そこには地雷が埋まってるから、絶対に足元を調べるんじゃないぞ」
「え?こ、こわいのー。わかったの、ここはしらべないようにするのー。ろとのしるがみつかったら、またでんわするのー」
ガチャン。
……いや、はやく近づいてきてください。全裸待機は正直寒いんです。
790:本当にあった怖い名無し
10/09/27 16:22:39 S3cVPj3w0
そのまま待機すること30分。ようやく電話が掛かってきた。
「もしもし、めりーさんなのー。いまあなたのおうちのまえにいるのー」
おお、ようやくメリーさんらしくなってきたぞ。ここでそのまま電話を切るってのが、定石だよな?
ガチャン
プルルルル
「もしもし、めりーさんなのー。いきなりきるなんてひどいのー。じょうしきがなってないのー」
メリーさんに説教されてしまった。
「ごめんごめん。それで、今はどこ?」
「いまはあなたのへやのまえまでいくところなのー」
耳を済ませると確かに、コツン、コツン、と足音が聞こえる。
「うわー、こわい(棒読み)。」
ガチャン
791:本当にあった怖い名無し
10/09/27 16:28:42 S3cVPj3w0
プルルルルル
間髪入れずに掛かってくる。これぞメリーさんだ。そろそろ後ろに来る頃か?
「もしもし、めりーさんだけど、そろそろうしろにいってもいい?」
「いや、聞くなよ」
「だ、だって……」
やばい、涙声になってる。
「も、もう後ろ来ていいよ。よく頑張ったな、メリーさん」
「え、えへへ。じゃ、じゃあ、いうの、
いま、あなたのうしろにいるのっ」
792:本当にあった怖い名無し
10/09/27 16:34:23 S3cVPj3w0
バッ
言われた瞬間に振り向いた。
だが後ろには誰も立っていなかった。当然といえば当然か。まあでも、楽しませて貰ったよ。ありがとう、めr
「ここなの、ここにいるのー」
目線を下に。確かにそこには金髪蒼眼の女の子がいた。声相応のサイズだったため、気付かなかったのだ。
「ごめんごめん、ちびっちいから気づかなかったよ」
「ぷー、まったくもってしつれいなのー」
ぷくーと頬を膨らまさて抗議する。
793:本当にあった怖い名無し
10/09/27 16:48:57 S3cVPj3w0
メリーさんを観察してみる。
真っ赤なドレスに赤い靴が人形みたいでかわいい。いや、人形か。
よく見ると、きちんと鎌も持っていた。(サイズの)サイズは雑草を刈り取るやつによく使う、小さな物だったが、使い方次第では十分凶器になりうる。
「こらこら、女の子がこんな危ない物を持ってちゃいけません。これはぼっしゅーします」
ひょい、と取り上げる。
「あ、かえしてなのー。それがないとめりーさんじゃなくなるのー」
メリーさんの言葉はスルー。少し背伸びしてタンスの上に乗っている荷物の上に鎌を置く。メリーさんはぴょんぴょん飛び跳ねているが、届くはずもなかった。
794:本当にあった怖い名無し
10/09/27 18:23:34 WXarilmoO
>>766
???なぞなぞの子持ち女が、本気で誰だかわからないと言ってるの・・?
わざと?つーかその引用文モロだし。
795:ベニヤ板
10/09/28 00:07:37 8Yuft6Ih0
あのお、物語に対する思い通りにはままならない自分なかの軋みを言ってみたかっただけなの。
あるいは、こんな簡単に訳もなくいつものメンバーが顔を揃える都合の好さを腐してみたかっただけ。
現実は散らばってまとまらなくって「賽の河原」みたいなもんでしょ。離れてしまったら二度と会えない。
でしょ。もう諦めてしまってるでしょ。現実には。
赤子を抱くこの人が、あの京介で、この先その関係性のなかでなにも起こらず、そのまんま。なんて我慢できますか。
勝手に想いをその架空の登場人物に抱いてる。それを支えに読んでいる。だってえのに、それが「空振り」、なんて口惜しいですよ。
796:ベニヤ板
10/09/28 00:11:16 8Yuft6Ih0
泊めてもらったときに、生理の鉄臭い匂いに言及するの、覚えてますか?
鮮やかな女性の描写でした。ありありと想像できました。一人の女性を。
797:ベニヤ板
10/09/28 00:25:20 8Yuft6Ih0
それに感応する「僕」がいないのには、首を傾げてしまう。
山のむこうの小学校の淡い存在としての教員と思念が交流するように、
それなりの人には抑えきれない思いが普通は寄せられるように、
此処にもそんな普通の葛藤があってしかるべきだろう、と思いはじめてる。
おばけ話の火遊びのような際物の面白さをとっくに越えてるんだもの。ウニさんの語る世界は。
798:本当にあった怖い名無し
10/09/28 00:58:55 yfpcz/wLO
無職童貞友達いません
まで読んだ
799:本当にあった怖い名無し
10/09/28 01:17:41 uPHaG8NO0
まじでオカルト
800:本当にあった怖い名無し
10/09/28 03:10:46 CVqAcf4D0
まあ、オカルト板だからねぇ・・・w
801:本当にあった怖い名無し
10/09/28 07:42:06 1oS1gUcYO
ウニさんは女性かな?
802:本当にあった怖い名無し
10/09/28 10:10:44 PhW1gq5MO
ウニさん、本当にありがとう。
辛い時や苦しい時に、たくさん師匠シリーズに救われた。
跳ぶ とか、もうプリントアウトして持ち歩いている。
おおげさかもしれないけれど、人生の支えです。
803:本当にあった怖い名無し
10/09/28 12:11:07 Xy8JxKc+0
>>802
>おおげさかもしれないけれど、人生の支えです。
こういうヘドが出るような馴れ合いはすんなよ。まじでキモイ
何が苦しい時に助けられた、だよ
そんなタイプの小説じゃねーだろ。どんだけ浅い人生なんだお前
804:本当にあった怖い名無し
10/09/28 12:47:47 vD5lDHwNO
誰が何を支えにしたって人の勝手。そっとしておけば?
805:本当にあった怖い名無し
10/09/28 14:46:18 SB9vT+M7P
他人にいちゃもん付けるのが>>803の支えなんだろ
806: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/09/28 15:57:42 oE8Cbhqd0
ウニさんの後はきついけど、あえて俺は投稿するぜ。
自己責任で読んで下さい。警告したので始めます。
"友達 前"
そいつは、ずっと目覚めないはずだった。
俺は17の時に、そいつの魂を"アレ"に喰わせてしまった。
もちろん、そうするつもりはなかった。
たまたま、発動したところにそいつが居ただけだ。
そいつとは、幼稚園からずっと同じで
友達の少ない俺にとっては、唯一の親友、と言っても差し支えないくらいだった。
スポーツ少年で社交的なそいつとは、性格や背格好こそ違うが
話せば、お互いの考えていることが殆ど分かるほどに通じ合っていた。
あの日も、
不良やタチの悪い教師にやたら絡まれまくる俺を
そいつが、いつもみたいに庇おうとしただけだった。
人気の無いところで囲まれてボコボコにされている所に
彼が駆けつけたとき、
すでに精神的に限界に近いほど磨耗していた俺は
いつもみたく"アレ"を制御することが出来なかった。
気が付いたら、
そこにいた全員が地面に崩れ落ちていて、
その中にはそいつも居た。
俺は、何が起きたか理解すると共に、沸きだしてきた
強烈な自責の念や恐怖に混乱し、叫びながら駆け出して、
二度とその場に戻る事は無かった。
807: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/09/28 15:58:52 oE8Cbhqd0
グシャグシャの制服で、茫然自失と街角をさまよっていた時
何度か、街頭テレビから短く、
俺が起こしたことの「結果」についてのニュースが流れていたが、
俺が"殺した"彼らは、生物学的には何の問題なく生きていて
外傷も痕跡も、目撃者すらまったく出ないままに
謎の事件として処理されつつある。ということをどこの局も伝えていて
俺のせいに"すら"してもらえない様子だった。
学校側は、俺が何度も被害者たちと小競り合いを起こしていたことも
事件の直後に失踪したことも知っていたはずだが
お決まりのパターンで口を閉ざした。
それから、忙しく月日は経ち
おばさんや当時クソガキだったAにも出会い
"アレ"に関わる様々な揉め事も、少し落ち着いていた大学2年の夏、
散々悩んだ挙句、意を決し
俺は、初めてそいつの病室を訪ねた。
代表して…と言うとおかしく聞こえるかもしれないが
元々他の犠牲者とは親交が無く、あまり良い思いでもないので
少なくともそいつに謝ることで
全てに何らかのケジメを付けたかったのかもしれない。
808: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/09/28 16:01:34 oE8Cbhqd0
ベッドの側でリンゴを剥いていたそいつの母親は
3年ぶりに会う俺を
自分の子供に再開したように驚き、喜んで迎えてくれた。
予想外の歓待に、しばらく途惑って声も出なかったが、
そんなこちらの様子などお構いなしで
涙ぐみながら、当時の状況を語りだす彼女の様子を見ていると
次第に落ち着いてきてもいた。
どうやらそいつの母親すらも
俺が関わったとは微塵も思っていないようなのだ。
「この調子なら、この世に居る誰も、
俺の罪など気付いてはいないのだろう。
これはもう、過ちを許されたことと同じではないのか」
というバカな考えすら頭を過ぎった。
彼が昏睡状態になってからのここ数年の状況を
一通り話し尽くし、涙で崩れた化粧を直しに母親が出て行くと
気分の良くなった俺は、寝ているそいつに話しかけた。
「許してくれたのか…ありがとうな」
この世の全てに話しかけたつもりで、そう述べて
綺麗に、八つに切り分けられたリンゴを取ろうと屈むと
ふと、目の前に人影が出来ていることに気付く。
頭を上げると、
そいつが、ベットから上半身を起こし
憎しみのこもった表情でこちらを睨んでいた。
「そんなわけねぇだろ」
そんな、まさか…驚いて何も返せずにいると
畳み掛けられる
「死ぬまで苦しみ続けろ」
809: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/09/28 16:08:31 oE8Cbhqd0
許してくれ…と言おうとするのだが
口が渇ききっていて、声が出ない。
苦しんでいる俺をそいつは、
侮蔑を含んだニヤニヤとした表情で眺め回し、
おもむろにこちらに手を伸ばすと、
リンゴに添えてあったはずの果物ナイフを差し出してきた。
「みんなバレてんだよ下衆が…。お前の大罪は世界中の既知だ」
「それが嫌なら、これで死ね。今すぐ死ね」
目の前が歪んでいく、上下がゆっくりと入れ替わりがら、風景の色を巻き込んで左右に回転していく
その狂った視界の中、そいつの顔とギラギラと光るナイフの刃だけが
はっきりとした輪郭を保っている。
「そういえばお前は"アレ"に憑かれてるから、死ねないんだったよな」
いつの間にかベットから立ち上がっていたそいつが、俺の右肩辺りに手を伸ばす
「それは嘘だ。ただの都合のいい言い訳だな」
「お前は」
一呼吸置いてから、怒鳴るように喋りだす
「お前は!!俺に真の意味で謝ろうとは思っていない!!!
"アレ"の主は"まだ"お前だ!!!お前が主導権持ってんだよ!!
本当にその気があんのなら、お前の命の2、3個なんて簡単だろ!!!」
「きいてんのか?あ!!どうなんだ!?」
810: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/09/28 16:10:33 oE8Cbhqd0
そいつは俺の右肩からゆっくり手を下に這わせて、右手までたどりつかせると
その手に果物ナイフを握らせ、丁寧に一本ずつ指を閉じていく。
打って変わって、媚びたような猫なで声で静かに囁きだす。
「そうだな…俺を食った"アレ"に、お前自身も喰わせるのも何だ。一つ提案がある」
「簡単なことだ。お前はそのナイフで、軽く、自分の喉元を突けばいい。
あとは俺が、その柄を両手でおもいっきり押してやるよ」
「絶対に突き抜けさせてやろう。"アレ"が守ろうと関係ない」
「さぁ、早くやれよ。手伝ってやろう…」
震えが止まらない、今にも足元が崩れそうだ
俺は…俺は…
……
気がつくと、全ては元通りになっていた。
そいつもベッドで寝たままだった。
…白昼夢を見ていたのか、
生前のそいつは、"アレ"のことを知らないはずだ。
"アレ"の中に混ざったそいつの魂が、元の身体に戻りたくて荒ぶっていたのか…
それとも…
811: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/09/28 16:12:29 oE8Cbhqd0
俺の湿った右手には、果物ナイフがしっかりと握り締められていた。
その刃には、さっき取ろうとしたリンゴの欠片が突き刺さっていた。
果肉からよく磨かれた刃に汁が滴って、それがポツリ、ポツリと床に落ちている。
暫くその様を呆然と眺めていたが、ふと我に返り
慌てて、リンゴをデニムのポケットに突っ込み
ナイフを皿に戻すと、計ったようなタイミングで母親が帰ってくる。
俺は、リンゴを一欠けら頂いたことと、
話せて良かったことの、2つの謝意を手早く伝えてから
足早に病院を立ち去った。
それからまた忙しく月日は経ち、俺は大学を無事に卒業して、
Aのおばさんの家業を手伝って稼ぎながら、なんとか閑古鳥鳴く古物屋を営んでいた。
…あの後も俺は、Aやおばさんには知らさないまま
そいつの病室へと、何度も見舞いに行っている。
何年も通い続けるといつの間にかそれは、
俺なりの夏冬の恒例行事のようになっていた。
また彼から同じように責められるかもしれないのは怖い…怖いが、
白昼夢で彼が俺に突きつけた問いに、まだ答えが出ていない。
どうしても行かざるえないのだ。
812: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/09/28 16:17:11 oE8Cbhqd0
病室に入り、
そいつの母親が居れば、窓際に飾る季節の花を手渡したあとに、
近況などについて短く言葉を交わす、
居なければ彼女が用意してくれている、空の花瓶に水を入れ、花を挿す。
そうしてから少し、そいつとも話をする。
時々あのナイフが、果物皿の上に置かれていることもある。
窓から差し込む光に反射して、見せ付けるように刃をギラギラと輝かせ、
俺を監視するそれを、横目に
「命の恩人んとこの糞ガキに、彼女が出来てウザイ」とか
「素人経営の古物屋の景気がどうだ」とか
必死に話すことはいつも、どうでもいいようなその時の
個人的な時事ネタが殆どだった。
最後はいつも
「生きていてすまん。また、逃げずに来るからな」
と、ベッドに横たわるそいつに、一礼してから帰る。
あの時、白昼夢でそいつは俺に「死ね」と言った。
それが真に彼の望んだことなのか、そして、現実だったのかただの幻だったのかも分からない。
ただ17のあの時から、他でもない"俺が"どこか心の隅でそれを望んでいるのも事実だ。
あんなに、怖い思いをさせられた病室に定期的に通い
そいつに話しかけ続けるのは「本当にそうすべきなのか」という問いの、
持続的な確認作業のつもり、でもあった。
そして、何のリアクションも返ってこない今のところ、
運の良いことにそれは、
否定され続けているように思えていた。
そいつは、ずっと目覚めないはずだった。
了。
813:本当にあった怖い名無し
10/09/28 17:43:37 sKXF+fR1O
需要ないです
814:本当にあった怖い名無し
10/09/28 17:44:28 /m0sUw+V0
新手のスタンド使いか!
815:本当にあった怖い名無し
10/09/28 19:30:53 vD5lDHwNO
"アレ"って言われてもな・・・。
まぁ何から何まで伝わるものがない。 精進だね。
816:本当にあった怖い名無し
10/09/28 20:17:45 VK1cxI69O
おまえモナー
ナニ言いたいの~
817:本当にあった怖い名無し
10/09/28 20:32:13 uPHaG8NO0
内容は置いといて、読みづらいな
アレとかそいつとか彼とかもそうだし、改行の仕方もなんか変
818:本当にあった怖い名無し
10/09/28 20:34:31 fX8KlWSj0
7QPLwJZR/Ypf 乙。 後編はいつ頃ですか?
819:本当にあった怖い名無し
10/09/28 21:07:53 VK1cxI69O
完璧なもの読みたいなら本屋いけよ
820:本当にあった怖い名無し
10/09/28 21:45:05 CVqAcf4D0
まあ、判んないなら“メリーさん”と同じ扱いにしておけばいいわけで・・・
821:本当にあった怖い名無し
10/09/28 21:48:03 bm2MlUce0
後編で伏線回収でそ。
822:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:11:08 Xy8JxKc+0
「それで?俺に何のようだ?」
「え?え、と……」
訳を聞こうとしたら、メリーさんはバツが悪そうに俯いた。
「ん、どうした?」
「あ、あの、
めりーさんって、どんなことをすればいいの?」
なんという衝撃発言。
「それ知らないでここに来たの?」
「うん…ごめんなさいなの……」
ますますシュンとするメリーさん。さて、どうしたものか。
素直に役目を話すという選択肢は当然除外だ。俺が殺されるからな。
ふむ、せっかく2ちゃんねるを見ていることだし、ここは一つ、安価に頼ってみるか。
というわけで、どうする?>>
俺を殺すとか、物騒な回答はなしな。
823:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:12:37 Xy8JxKc+0
「メリーさんはな。世界中の人々に愛を教えるためにいるんだ」
優しく諭すように言う。この子には血に塗れた生き方をして欲しくなかった。
「あ、い?あいってなんなのー?」
だがこう返されてしまうと、毎日2ちゃんに入り浸り、何もしていない俺は、何も言えなくなる。
「ごめん、俺にも、詳しくはわからないんだ」
「おにいさんにもわからないの?じゃあめりーさんはどうすればいいの?」
やばい、墓穴を掘ったかもしれない。また安価を……いや、ダメだ。ここは自分で何とかしないと……
「まあでも、全然分からないってわけでもないから、分かる範囲で教えてくよ」
せいぜい虚勢を張ることにした。メリーさんの顔がとたんに明るくなる。
「わかったのー。よろしくおねがいしますなのー」
その笑顔が眩しすぎて、俺には直視出来なかった。
824:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:13:59 Xy8JxKc+0
「えー、こほん、愛って言うのはだなあ」
「うんうん」
「えーと、」
「あいってなんなの?」
「あい、って、いうのは……」
ごめん、愛って何ですか?このいたいけな少女に、俺はなんて教えればいいんだ?>>30
「おにいさん、さっきからぱそこんでなにしてるのー?」
825:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:15:12 Xy8JxKc+0
「愛っていうのはな、誰かに優しくすること。誰かを助けることだ」
「……よくわからないけど、とりあえずひとだすけをすればいいの?」
「うん、そうだ」
安価に間違いはない。
「わかったの。じゃあまずはおにいさんをたすけるの!」
「お、おう、」
とはいったものの、俺今のニート生活で特に不満はないしなあ。
あ、また安価するか。>>次の有効レス
あー、だめだわ、安価って、癖になるな。
826:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:16:13 Xy8JxKc+0
「振り向かないことさ」
歯をキランと輝かせて答える。
「???」
メリーさんは非常に困惑している。
「どういう、ことなの?」
「つまりな、どれだけ女が追いすがってきても、決して振り向かない。それが男の美学にして、愛なのさ」
メリーさんに背を向けて語る。
「めりーさんは、おんなのこなの。」
メリーさんの冷めた視線が痛い。少し冷静になってみると俺も相当イタイ。
「うん、そうだな。ちょっと調子乗った。えっと、愛って言うのはな。」
「…………」
メリーさんが真剣な眼差しでこちらを見つめる。俺も真剣に考えなくてはいけない。
愛、愛とは何か。
827:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:19:57 CVqAcf4D0
ほらきたwww
828:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:27:11 Xy8JxKc+0
「……あ」
浮かんできたのは、母親の顔だった。そして理解した。
「分かった。愛ってのはな、気遣いのことだ。その人と、自分を思いやる心のことだよ」
「……よくわからないの」
メリーさんは不満そうで不安そうな顔をしていた。
「そりゃそうさ。一言で言い表せないのが愛ってもんだからな」
829:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:28:24 Xy8JxKc+0
ってダメだダメだ。このままだとどんどん堕落していく一方じゃないか。
「俺はいいからさ、他の困ってる人を助けに行こう」
「うーん、わかったの。じゃあたすけにいくのっ」
外へ飛び出そうとするメリーさんを引き止める。
「マテマテ、今日はもう遅いから明日探しに行こう」
メリーさんはコクリと頷いた。
さて、そうなると、メリーさんを家に泊めるってことになるのか。
べ、べつにこれが狙いだったわけじゃないからな。
メリーさんを俺の布団に寝かせ、自分はソファに寝転ぶ。疲れていたのか、すぐに眠気は襲ってきた。
830:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:31:31 Xy8JxKc+0
「……ゃ、…て…ぃ、」
メリーさんの声で目が覚めた。時計を見ると夜中の2時だった。
「おい、」
声をかける。メリーさんは、泣いていた。
「……ぁ、おにい、さん」
「大丈夫か?」
首を大きく横に振るメリーさん。キラキラと雫が零れる。
「いやなの、おいてかないで、ひとりに、しないで……」
ああ。
そうだったんだ。
この子も、メリーさんだ。メリーさんがメリーさんになる大元は、持ち主に捨てられたという過去の恨みからだ。このメリーさんもきっと、愛し愛された者に、捨てられたのだ。
もちろん、持ち主の側にも事情はあったのだろう。だが、人形にとっては、“捨てられた”という事実だけが残る。
「大丈夫。大丈夫だ。俺が付いてる」
メリーさんをしっかりと抱きしめる。メリーさんに体温はなかったが、暖かかった。
831:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:35:07 Xy8JxKc+0
しばらくメリーさんを抱きしめたまま眠ると、彼女は穏やかに寝息を立て始めた。
微笑む彼女の、涙の後を拭ってやり、俺も眠りに落ちた。
832:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:36:41 Xy8JxKc+0
「おはよう、メリー」
今日どこへ行くかを考えながら、メリーさんに声を掛ける。
「……?」
メリーさんが、いない。
「メリー?メリー!」
名前を叫ぶ。うるさいと、壁を蹴られて、自粛した。
「どこいったんだ……?」
部屋の中を、探した。隅から隅まで、必死になって探した。
「どこに、行ったんだよ……」
メリーさんは、どこにもいなかった。
ふと、机に目をやる。紙切れが一枚、置いてあった。
めくってみると、幼い子ともが書くような字で、
『あいが わかった』
と、書いてあった。
833:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:38:59 Xy8JxKc+0
「わたしめりーさん。いま、あなたをぎゅーってしてるの!」
こうですね。わかります。
前半の萌えが凄まじすぎて、それと比してって事もあるんだろうけど、
後半ちょいとgdgdだったのは確かに感じちゃうな。
でも、それを補ってあまりある萌えを頂戴したので、
俺は大満足だよw
834:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:44:41 Xy8JxKc+0
「もしもし、わたしメリーさん。今、あなたの家の前にいるの」
『……』
「……?」
『……こんばんは、この電話の持ち主の彼女です』
「あ、はい」
『急に家まで来るなんて、随分仲が良さそうですね』
「あ、いえ」
『知ってます?―狼は……羊を食べるんですよ』
「すみません間違えました」
835:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:46:06 Xy8JxKc+0
「私メリーさん。あなたの後ろは私に任せるの」
836:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:46:39 Xy8JxKc+0
どすっ
837:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:49:40 Xy8JxKc+0
「ごめんなさいなの、次はきおつけるの;;」
838:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:50:26 Xy8JxKc+0
まったくしょうがないなあ
次からは殺さないように気をつけろよ?
839:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:52:17 Xy8JxKc+0
「分かったの。殺さない程度に気をつけるの」
840:本当にあった怖い名無し
10/09/28 23:54:22 Xy8JxKc+0
う、後ろは初めてだから優しくしてね?
841:本当にあった怖い名無し
10/09/29 00:00:48 Xy8JxKc+0
どすっ
842:本当にあった怖い名無し
10/09/29 00:02:04 Xy8JxKc+0
「大丈夫なの。ゆっくり、埋めていくから、心配いらないの」
843:本当にあった怖い名無し
10/09/29 00:03:48 MskkNNZJ0
「ほら、どんどん入ってくの。
ほんとうは一思いにやったほうが痛くないけど、殺さないように、やさしく、だと、加減がむつかしいの」
844:本当にあった怖い名無し
10/09/29 01:42:19 5gbDHC6A0
うにゅーなのー
845:本当にあった怖い名無し
10/09/29 07:11:40 i34WwnTt0
>>806 乙 ま、いろいろ言われても気にすんなよ 後編の投下待ってるぞ
846:本当にあった怖い名無し
10/09/29 09:10:09 Pfx0MoXv0
さすがにこれだと前半だけでは訳分からんなw
後編で溜飲が下がるのを期待してるぞ!
847:本当にあった怖い名無し
10/09/29 13:14:45 KsLPM12Q0
>ウニさんの後はきついけど、あえて俺は投稿するぜ。
ウニ以外は全員保守要員だろ。
ウニが毎週の様に書いてる時に、しかも投下して大して立たないうちに無駄打ちするなよ。
ネタがあるならウニが来れない時に投下出来る様に温存するのが利口。
848:本当にあった怖い名無し
10/09/29 18:53:24 MskkNNZJ0
>>847
よくもそんなことが言えるな
保守要員?せっかく投下してくれた作家陣に謝れや
849:本当にあった怖い名無し
10/09/29 19:23:07 SEYrrKFg0
ウニファンには何を言ってもダメ。
こういうのが居るから、ウニには専用スレに言って欲しいんだよな。
ウニがここに投下してくれるのは、それ自体は嬉しいのだけど、
それに付いて来るファンが最悪。
自分が書いた訳じゃないのに、他人と比較して悦に入ってるなんてなぁ…。
850:本当にあった怖い名無し
10/09/29 19:37:24 wVnCXL19O
確かにそうだよな
ウニさんが頼んだ訳でもないのに過剰に持ち上げたり、他の作品と比較して貶めるのは間違いだ
純粋に作品を投稿する人やそれを楽しみにしてる人に失礼
851:本当にあった怖い名無し
10/09/29 19:48:39 KYYG3s+MO
中国並みの自演乙!
852:本当にあった怖い名無し
10/09/29 20:27:56 9NO9MWkN0
>>847
何コイツ何様?
楽しみにしてる人も居るんだよゴミ野郎
853:本当にあった怖い名無し
10/09/29 20:32:50 GWx04nYR0
中学生なんだろほっとけ
854:本当にあった怖い名無し
10/09/29 21:08:27 6Ltxd7K/0
田舎の続きが読みたいよ・・・ウニさん。。。
855:本当にあった怖い名無し
10/09/29 23:17:20 MskkNNZJ0
また自演自演うるさいバカが湧いてきた
856:本当にあった怖い名無し
10/09/29 23:36:42 dA0CYYWGO
しかし実際ウニと赤緑以外コテトリと話の内容が結びつかないわ、自分…
みんなちゃんと分かってるの?
857:本当にあった怖い名無し
10/09/29 23:41:48 ecjiUGg40
ぶっちゃけ 分 か っ て ま せ ん w
トリップだけだとどうもな、話みて「ああ、あの人か」って感じ
いや、トリップなんて覚えられないって
トリップだけの人はコテつけてくれるとありがたいかな~なんて
858:本当にあった怖い名無し
10/09/30 00:28:06 nrdQo/lP0
大体最初の一行くらいで「○○の人です」って書いてくれてるから何となく、ああこの人かと思う。
それがないときは数行読んでやっと思いだすって感じかな。
どういう人だか分かりやすいコテ付けてくれると確かに助かるかも。
859:本当にあった怖い名無し
10/09/30 00:57:39 FGr2RuD/O
"ウニさんの後にあえて投下するぜ" ってw
もしもスレが落ちたって、後からでも師匠のまとめサイトに
行って読めばいいからまぁいいけど。。
この人ドMにゃにょかにゃあ・・
上の幾つかのレス何か自演臭ぽい感じがするし・・・
何か初めてヤダって思ったよ><イメージダウン
860:本当にあった怖い名無し
10/09/30 01:38:56 GKFO/UjbO
カッパやつくも神よりは読めそう、とは思った。
それでも面白いといえるかは疑問符が付くが。
861:本当にあった怖い名無し
10/09/30 08:55:13 CH1qjdMm0
掴みはオッケー、といえるのかな?
862:本当にあった怖い名無し
10/09/30 10:10:53 4PaeGe0K0
カッパや付喪神と違って割と真面目な話だからな
そういうのが好みって奴には割と評価良いのか?
俺はカッパとか付喪神の奴も面白かったけどな
863:本当にあった怖い名無し
10/09/30 20:37:17 QjwfxrT40
ふぁ~あ(あくび)
864:本当にあった怖い名無し
10/09/30 20:52:21 UM7BsIqK0
まあシリーズ物だと正しく引っ張れるからなw
作者には焦らす楽しみもあるだろう
865:本当にあった怖い名無し
10/09/30 23:56:54 1xfyjnrU0
自演ってめんどくさいことじゃないのか?それをわざわざやるの?
だんだんメリーが文を刻んでくるようになったから見分けにくくなったw
866:本当にあった怖い名無し
10/10/01 14:05:03 m3vkDzM/O
掴みおkじゃないし・・ウザイ。
てかだんだん厚かましい。
あ、便所スリッパ 何たらのシリーズ人ね。
867:本当にあった怖い名無し
10/10/01 14:10:11 TJsPt6mw0
ふぁ~あ(あくび)
868:本当にあった怖い名無し
10/10/01 15:36:28 Smiad+JxO
危機一髪
1/1
手足の短い俺は陸上で身動きがとれない!
はやく水中に戻らなければ!
えら呼吸の俺は、声を出すことすら出来ず必死でもがいた。
手足は短すぎて地面を蹴ることが出来ない。
水の際までほんの数センチ。
俺の頭一個分。
その距離は一向に縮まらず時間だけがすぎていく
動悸がますます早くなる。
誰か助けて。
体をくねらせ、石の上を少しでも移動しようとするが思い通りの方向へ進まない。
しっぼと体を使い、全力でもがくうちに俺は裏表ひっくり返った。
絶望。
もはやこれまで
酸素を急激に消耗した俺の体に異変が起こっていく
短すぎる手足は痺れ、唯一地面に触れた長い尻尾はもはや意思とは関係なく小刻みに震える
首の周りにあるウーパーが痙攣しはじめた。
さよなら師匠。
そう心の中で呟いた瞬間
地面の石とウーパーの間から摩擦力が消えた。
高速で痙攣するウーパーが、石との間に空間を作りリニアウーパールーパー状態になった
結果俺は助かった。
しかし、それいらい二度と陸地に上がろうとすることはなかった。
あともがいてるとき幽霊出た。
869:本当にあった怖い名無し
10/10/01 15:39:03 Smiad+JxO
※書き忘れましたが背面式です
870:本当にあった怖い名無し
10/10/02 00:17:08 NLrqjihvO
メリーは品切れか?
871:本当にあった怖い名無し
10/10/02 00:42:19 Ds4zhOMx0
URLリンク(sasorizi.blog104.fc2.com)
有名、陰陽師蠍時氏の霊視期無料です。
872:本当にあった怖い名無し
10/10/02 10:55:31 5U+5wH6O0
初日
夜、2ちゃんを見てると電話がかかってきた。
『私メリーさん。…どこにいて欲しい?』
「…は?」
いたずら電話か?
突然の事に俺が思わずマヌケな声を返すと、メリーと名乗った女の声は、
ちょっとだけ怯んだ様子で聞き返してきた。
『だ、だから、どこにいて欲しいの?』
「いや、意味わかんないです」
正直、意味分からん。
どこにいて欲しいってどういうことだ?
873:本当にあった怖い名無し
10/10/02 11:26:10 5U+5wH6O0
確か都市伝説とかでよくあるメリーさんの話は…
『……い、家の前でもいいなら、そう言ってくれれば行くけど…?』
そうそう、家の前に来てそれから徐々に近づいてくるとかそんな話だったな。
でも俺は興味がなかったので、そっけなく返事を返してやった。
「いや、どこにもいて欲しくありません」
『そ、そういうワケにいかないの…どこにいて欲しいか言って』
「帰ってください。っていうかあなたの家にずっといてください」
『…いじわる』 ガチャン
874:本当にあった怖い名無し
10/10/02 11:29:01 5U+5wH6O0
2日目
俺が日課の2ちゃん巡回をしていると、電話がかかってきた。
『私メリーさん。…あなたの家の前に行ってもいい?』
「またアンタですか…」
またこのいたずら電話だ。
今日は昨日よりも質問が具体的になっているな…
でも、こんな時間に来られても迷惑だしな。
『ねぇ、聞いてるの…家の前に行ってもいい?』
875:本当にあった怖い名無し
10/10/02 11:30:38 5U+5wH6O0
「いやです。帰ってください」
『そんないじわる言わないで…ね、ちょっといるだけだから』
「ちょっと家の前にいて、次は家の中に入ってくるんだろ?」
意地悪そうなトーンでそう言ってやる。
事実だから否定できまい。
『う…分かりました…帰ります』
「もう電話しないでね」
『…』 ガチャン
876:本当にあった怖い名無し
10/10/02 11:35:49 5U+5wH6O0
3日目
俺が例によって2ちゃんを見ていると、また電話が鳴った。
『私メリーさん。…今からあなたの家の前に行こうと思ってるんだけど…』
おぉ、随分進歩したなぁ。
ちょっと感心した俺は、つい油断してこう言ってしまった。
「しつこいな、警察呼ぶぞ」
メリーさんは警察の単語に反応し、ビビリまくった声で返してきた。
『けいさ…いや、そそそそれはちょっとやめて欲しいかな~って…』
「じゃあ帰れ」
『はい…クスン』 ガチャン
877:本当にあった怖い名無し
10/10/02 12:22:10 5U+5wH6O0
それ以後、メリーさんからの電話はかかってこず、ちょっと寂しく思う俺であった。
「もうちょっとからかって遊べばよかったな…」
878:本当にあった怖い名無し
10/10/02 12:24:31 5U+5wH6O0
日も暮れてしばらく。俺は電話をかける。既にかけなれた番号。短縮ボタン一発だ。
「はぁい、もしもし、私めりぃさぁん」
電話の向こうから、甘ったくるとろけるような声が聞こえてくる。
「……はいはい、私もメリーさん。今あなたの後ろにいるの」
いつも通りの受け答え。そして俺は、その女の後ろに立った。
879:本当にあった怖い名無し
10/10/02 12:26:21 5U+5wH6O0
「えへへ、お帰りなさぁい」
しなだれかかってくる部下、咲の、ハチミツ色の頭を軽く叩く。
いや、今は部下であって部下ではない、という方が正しいか。
「えへへー、メリーちゃあん、パパ帰ってきまちたよー」
何故なら、彼女は産休中だからだ。
880:本当にあった怖い名無し
10/10/02 12:28:27 5U+5wH6O0
「男だったらどうするんだ……」
俺はため息一つこぼして、ネクタイを緩めた。
俺の名は目理 伊三。警視庁第零課に所属する刑事である。
そして……もうすぐ、パパになる。
881:本当にあった怖い名無し
10/10/02 12:40:59 5U+5wH6O0
「あ、目理さん、じゃなかった、あなた、えへへ」
咲は自分が俺と結婚できたことが相当嬉しいらしい。ちょっとは落ち着け。
「あーはいはい、何だ何だ」
「カシマさんから出産祝いが届いてます」
カシマ、それは殺人鬼殺しである指名手配犯である。
882:本当にあった怖い名無し
10/10/02 13:26:32 5U+5wH6O0
何度も出会っては取り逃がしている、俺の積年のライバルとでも言うべき存在のジジイだ。
「送り返せ!!」
「えー、可愛いのにー、このリカちゃんのドールハウスー」
「余計気味が悪いわ!!」
なお、彼の娘があの噂に名高い『三本足のリカちゃん』である。
883:本当にあった怖い名無し
10/10/02 13:35:10 81A5kL070
まだ書いてるんだね
あぼーんしてるのに
884:本当にあった怖い名無し
10/10/02 14:17:39 8S1w17fqO
おまえもな
885:本当にあった怖い名無し
10/10/02 14:46:59 v56p1QUI0
お前もな…?
886:本当にあった怖い名無し
10/10/02 15:49:43 eeWwnU4V0
お前もな…!
887:本当にあった怖い名無し
10/10/02 18:01:38 8S1w17fqO
ネタどろぼー
888:本当にあった怖い名無し
10/10/03 00:44:28 AGevpqnI0
今夏休みだっけ?
>>729
彼女は足を止めようともせず、そしてこちらを一瞥もせずに、ただ短く口を開いた。
「後ろに並べ」
889:本当にあった怖い名無し
10/10/03 00:45:11 AGevpqnI0
ウニスレと誤爆orz
890:本当にあった怖い名無し
10/10/03 11:23:49 30ENaGzv0
ふぁ~あ
891:本当にあった怖い名無し
10/10/04 19:29:59 0vz0VEfQ0
ふぁ~あ
892:本当にあった怖い名無し
10/10/04 21:59:03 A1CXqm080
ふぁ~あ
893:本当にあった怖い名無し
10/10/05 13:10:09 wlZl9x060
ふぁ~ふぁ
894:本当にあった怖い名無し
10/10/05 13:47:42 Hm4TB0r70
ふぁ~ふぁん
895:本当にあった怖い名無し
10/10/05 17:44:08 dZsvZeFR0
ふぁいふぁん
896:本当にあった怖い名無し
10/10/05 19:37:58 G1WOZa5J0
ふぁんふぁ~あああ
897:本当にあった怖い名無し
10/10/05 20:30:51 zWHFXuIY0
あくび厨うざい
898:本当にあった怖い名無し
10/10/06 22:05:52 yAKccKLw0
ふう~ん
899:本当にあった怖い名無し
10/10/06 22:51:31 b3fDIe9jO
あふ~ん
ウニを始め、作品が読みたいよー
900:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/07 15:50:06 PAF0CZ6K0
[求める理由]
1/13
「―では、あちらでお待ちください」
往来会本部。
再びここを訪れた私は、待合いのスペースに行き、名前を呼ばれるのを待つ。
以前は北上と一緒だったけど、今日は1人。
汐崎さんと会ってから、どうしようかとしばらく悩んでいたけど…やっぱり、来てしまった。
「霊感が身に付く」
普通の人に言われたのなら怪しくて信じる気にもならなかったけど、汐崎さんの話なら信じられる。
舞さんの忠告を無視することになっちゃうけど、私には舞さんの知らない事情がある訳で…。
ただ…気掛かりなのは、古乃羽の事。
きっと、怒るだろうな。本気で怒られそう。
古乃羽は私の事情を知っているけど、それでも許してくれないかもしれない。
それが、今日まで悩んでいた理由。
古乃羽に心配を掛けるような事は、したくないとは思っている。
でも私は、自分の力で先に進みたい―
901:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/07 15:51:22 PAF0CZ6K0
2/13
受付「神尾様」
私「はい」
大学での午前の講義が終わってから来たので、時刻は13時過ぎ。
以前と違い、今日は他に待っている人は1人も居なかったので、私はすぐに名前を呼ばれる。
…まぁ、前回もすぐに呼ばれたけどね。
受付に行くと、そこにはスーツ姿の男の人が来ていた。
それを見て、あれ…?と思う。
汐崎さんじゃない。
一応、汐崎さんの名刺を出して、お話を伺いに来ました、って言ったのだけど…会えないのかな?
男「それでは、こちらに…」
私のそんな思いとは関係なしに、その男は名乗りもしないで、私を建物の奥へと案内してくれる。
まったく、無愛想な人。なんか…どこかで見たような暗い目をしているし、ちょっと不気味な感じ…。
男「どうぞ」
やがて男は応接室―前回と同じ部屋だ―の前で立ち止まり、そう言って扉を開けてくれる。
私「あ、どうも…」
何となく恐縮しながら中に入ると、そこには1人の初老の男性が待っていた。
902:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/07 15:53:57 PAF0CZ6K0
3/13
「夏目川と申します」
部屋で待っていたその人は、そう名乗った。
初老…と言ったけど、近くで見ると結構な年にも思える。
きっと、60代後半くらいかな…?
勧めてくれた椅子に座り、名刺を貰う。
これで往来会の人の名刺、3枚目だなぁ…なんて思いながら、それを見ると…
「往来会 副会長 夏目川吉次」
私「副会長…さん?」
夏目川「えぇ…まぁ、やらせて貰っています」
うわわ…?
なんかいきなり、お偉いさんが出てきた?
私「えっと、あの…」
夏目川「神尾さんには、以前にも来て頂いたそうで」
私「あ…はい。神尾美加です…はじめまして」
そう言いながら、私は座ったまま背筋を伸ばし、ペコリと頭を下げる。
夏目川「ハハハ…まぁ、そう固くならずに」
私「はぁ…」
903:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/07 15:55:12 PAF0CZ6K0
4/13
夏目川「あいにく、汐崎は外に出ていまして」
私「あ、そうなんですか…」
むー…やっぱり。
ここに来る前、携帯に電話をしたけど繋がらなかったのよね…。
夏目川「本会についてのお話を、ということでしたので…それなら私の方で、と」
私「…」
それでいきなり、副会長さん?
お偉いさんがこんなとこで出てくるなんて、他に誰か居ないの?
何か、変な気が…
…んー、でも、これはこれで良いかも?
往来会の話を詳しく聞くなら、こういった人も良い気が…
夏目川「…誰か、他の者を探して参りましょうか?」
私「え?…あぁ、いえ。お話を…お願いします」
せっかく来てもらったのに、お偉いさんじゃ嫌だから他の人で、ってのは失礼よね。
私はそう思い、副会長さんと話をすることにした。
904:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/07 15:56:50 PAF0CZ6K0
5/13
私「あの、以前お聞きしたのですけど、こちらには霊感の無い方もいらっしゃるとか」
唐突ながら、私はさっそく、聞きたかった霊感についての話を始める。
夏目川「何人か居ますね。特に、事務の方に」
私「それは―」
コンコン
…おっと。扉がノックされ、お茶を持った女性が入ってくる。
女性「失礼します」
入ってきたのは、この前とは別の人だ。
牧村さんの話では、確かその人が”目”を置いていったとか言っていたけど、今日はそういった事はしない、って事なのかな?
女性「失礼しました」
その人はお茶を置き、そそくさと出て行く。
夏目川「…で、何でしょう?」
私「あ、えっと…そういった人って、霊感を持つことを望まなかった人なのですか?」
夏目川「…と、仰いますと?」
お茶を一口飲み、にこやかに聞き返してくる副会長さん。
その仕草や喋り方は若々しく、見掛けとはかなりのギャップがある。
905:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/07 15:57:19 DDgQkJjA0
リアルタイムでみれるとわ
906:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/07 15:57:24 k4zy9EEQO
つ④
楽しみ
907:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/07 15:58:17 PAF0CZ6K0
6/13
私「こちらに入会してから霊感が身に付いた、という方も居るとお聞きしたので…」
夏目川「もちろん、居ますね」
私「でも、全員が持っていないということは、何か理由とか…条件とかあるのかな、って」
夏目川「…あぁ、なるほど」
もし何か、「こんな人は絶対に無理」って条件があるのなら、先に知りたい。
望んだ人全てに身に付くなら一番良いけど、そんなに簡単なものとは思っていないもの。
夏目川「条件は…当然、ありますね。誰でもという訳にはいきません」
私「…」
やっぱり…。
うーん、これはダメなパターン…?
夏目川「でもご安心を」
私「?」
夏目川「神尾さんは大丈夫。素質は十分にありますよ」
908:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/07 15:59:56 PAF0CZ6K0
7/13
私「あ…本当ですか?」
おっと、意外。
こういうのは、からっきしダメだと思っていたのに。
夏目川「えぇ、問題ありません」
人の良さそうな笑顔で、そう言ってくる副会長さん。
その表情に何となく引っ掛かるものを感じたけど…考えすぎね。
夏目川「実は、結構多いのですよ。霊感を求めて…という方」
そうだろうなぁ、と思う。
そういうものに憧れる人って、きっと沢山居るわよね。
私の場合、憧れとはちょっと違うけど、そういった気持ちはよく分かる。
夏目川「軽い気持ちで…と言っては失礼かもしれませんが、単なる憧れだけで来られる方は、まず無理です」
私「…」
なんだか、心を読まれたように言われる。
夏目川「ですが、今の神尾さんのように、しっかりとした目的を持って来られた方なら、問題ありません」
私のように。
私の…
…私がどんな目的を持っているか、知っている?
909:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/07 16:01:05 PAF0CZ6K0
8/13
私「あの…」
夏目川「はい」
私「私の…その、目的を?」
私は思った疑問をぶつけてみる。
夏目川「…私も長年、こうした仕事をしていますからね。大体、分かるものなのですよ」
私「へぇ…」
伊達に副会長はやっていない、ってことかな?
それくらいの事…私みたいに単純な人間の考えなら、簡単に分かってしまうのかもしれない。
夏目川「ご自分の切実な願いを叶えるために、霊感を求め、多くの方がこちらに来られます」
淡々と話し出す副会長さん。
夏目川「そういった方々の中で、最も多い願いというのが…神尾さんと同じ願いでして、それは―」
切実な願い。
最も多いという、切実な願い。
…そうかも知れない。だって、他にどうしようもないもの…。
夏目川「死んでしまった人に会いたい、話がしたい、というものなのです」
…私には、会いたい人がいる。
それは、優理ちゃんや佳澄だけじゃない。
私が一番会いたい人。それは、私の―
910:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/07 16:02:26 PAF0CZ6K0
9/13
―
中学1年のとき、2つ年上の、3年生の先輩に恋をした。
先輩は、カッコイイわけでも、勉強ができるわけでもなかった、普通の人。
私の周りの友達は、みんな「何で?」って言っていたけど、古乃羽だけが分かってくれた。
その人は今思ってみても、15歳とは思えない、落ち着いた雰囲気を持った”大人”の人だった。
告白は、私の方から。
彼は凄く驚いていたけど、すぐにOKの返事をくれた。
初恋って訳じゃなかったけど、誰かと付き合うのは初めてで、それは相手も同じだった。
告白も上手くいって、これから恋人同士の幸せな時間が…と思いきや、彼は3年生。
…つまり、受験生。
勉強ができる方でもなかったから、親の意向もあって”良い高校”を目指していた彼は、毎日のように塾通い。
平日に会える時間は限られ、まともに会えるのは土日だけ。
しかしその土日も、模試だのなんだので徐々に…という有様。
会うのは毎日、メールも電話も毎日、って恋愛を望んでいた私にとって、これはちょっと辛かった。
何しろ、私の周りの子たちは、みんなそういった恋愛をしていたから。
911:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/07 16:04:09 PAF0CZ6K0
10/13
そんなだったから、古乃羽にはいつも愚痴をこぼしていた。
雨月君と付き合うまで、恋愛には興味が無さそうな古乃羽だったけど、彼女には随分と励まされた。
彼の方も、空いた時間は私のために使ってくれて、受験が終わるまで、とお互いに言い聞かせながら、なんとかその時期を乗り切ることができた。
…でも。
今思うと、当たり前のこと。
受験が終わり、彼が高校に入ると、会える時間は更に減ることになった。
“良い高校”で勉強についていくには、遊んでいる暇がない…という、そんな理由だった。
きっとこんなことはよくある話で、本人たち以外には、つまらない話。
でも本人たちには、辛い話。
周りの子から、彼氏とどこに行っただの、何をしただのという話を聞くと、私は羨ましくて仕方がなかった。
「別れた方がいい」「もっと他に良い人がいる」「何組の何とか君が、美加のこと…」なんて、色々と言ってくれる子も居た。
でも、別れるのはイヤだった。
私は彼が好きで、彼も私が好き。…なのに別れる?
そんなのはドラマの中だけの話で、私に起きることじゃない。
自分がそんな風になるなんて、恋愛経験の乏しい14の私には、受け入れ難いことだった。
912:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/07 16:07:46 PAF0CZ6K0
11/13
そんな風に過ごしていた、ある日。
融通を利かせてくれない彼―と思っていた。最低…―と、ついに大喧嘩をしてしまった。
大喧嘩と言っても、勿論、私からの一方的な攻撃。
恥ずかしくて、その内容なんて言えない。
とにかく私は、その日、久しぶりに会えた彼に対して不満を爆発させた。
散々勝手な文句を言って、最後に大嫌いと言い放ち、私は家に帰った。
もし今の私がその場に居たら、胸ぐらつかんで引っ叩いてやりたいところだ。
それから2日間、意地を張った私は、彼への連絡をしないでいた。
そして、何だか不安な気持ちになってきた3日目になって、彼にメール。
…彼からの返信は無し。
代わりに、彼のご両親からの返信。
そこで私は、彼が事故死していたことを知った。
事故があったのは、私が八つ当たりをした、翌日のことだった。
913:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/07 16:09:11 PAF0CZ6K0
12/13
きっとこれはよくある悲しい話で、私は知らない間に、悲劇のヒロインになっていた。
それから数日間、どうやって過ごしていたのか、よく覚えていない。
家から出る気にならず、学校は休んでいた。
でも、一日中何をして過ごしていたのか、記憶に無い。
覚えているのは、辛い気持ちだけ。
ただずっと辛くて、もう生きていける気もしなくて、死んでしまいたかった。
今までで、あの時が一番、死に近い場所に居たと思う。
でもそうしなかったのは、私にそんな勇気がなかったのと、古乃羽が居てくれたからだった。
…と言っても、私と同い年で子供だった古乃羽が、私を上手く諭すような事を言ってくれた訳じゃない。
ずっと学校を休んでいたある日、古乃羽が私のお見舞いに来てくれた。
それまでに何回か、友達みんなで来てくれていたけど、その日は古乃羽1人だった。
私はそのときに、彼女に全てを話した。
彼が亡くなる前の日、私が彼に言ったことを、初めて人に話した。
今までに、その話をしたのは古乃羽にだけだ。
914:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/07 16:09:20 k4zy9EEQO
支援
915:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/10/07 16:10:41 PAF0CZ6K0
13/13
話を聞いた古乃羽は…大声で泣き出した。
文字通りの号泣で、見ていた私も、自分の境遇を改めて思い出し、一緒になって泣いた。
私の部屋で、2人で抱き合って泣いて…そのまま泣き疲れて、寝てしまった。
それで目が覚めたら、気分スッキリ―
…なんてことは、もちろん無い。
泣きすぎてか、ちょっと頭が痛かったくらいだ。
ただ―、私の横で、私の手を握ったまま寝ている古乃羽を見たとき、もし私が死んじゃったら、古乃羽はどうなっちゃうんだろう、と思った。
それだけで、私は救われた。
きっと、他の人にはあまり分かってもらえる気持ちではないと思う。
でも、命って何だろう、生きるってどういうことだろう、なんて事を考えるようになっていた私には、それだけで十分だった。
…オカルトに興味を持つようになったのも、その頃から。
古乃羽の趣味だったオカルトの世界に、私が入っていった理由の1つは…やっぱり、彼のこと。
もしかしたら、もう一度会えるかも…なんて、そんな考えがあった。
いつかその方法に巡り合えた時、私は迷わずに手を伸ばすつもりでいた。
そしてやっと…今、そのチャンスが来た。
916:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/07 20:04:54 kjn7imVg0
ふぁ~あ
917:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/07 20:31:58 k75feXzE0
赤緑乙。
918:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/08 11:46:57 h/mTizuZ0
赤緑2
919:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/08 12:47:48 Xm8279C20
348 本当にあった怖い名無し sage 2010/09/08(水) 11:18:08 ID:fbCQiesjO
赤緑さんへ
blogのほうにコメントしたのは消されたようなので、こちらに書き込みします。
赤緑さんがご自身の作品だとblogに載せている『嘘つき』は私が投下した話です。
blogから下げて下さい。
349 本当にあった怖い名無し 2010/09/08(水) 11:32:42 ID:HoWPG2dRO
証拠がなくてはね
そんなんウニや師匠だってわからんね
350 本当にあった怖い名無し sage 2010/09/08(水) 11:50:31 ID:k2YNC/lB0
ハハ、ワロス
自分が誰で、『嘘つき』を何時書いて、何処に投下したのか、
それを言わなきゃ始まらんだろw
赤緑憎しの怪文書にしか見えませんよwww
920:赤緑弁明しろよ
10/10/08 12:48:30 Xm8279C20
378 本当にあった怖い名無し sage 2010/09/08(水) 22:31:03 ID:DQWdbCnD0
>>349-350
その赤緑も洒落怖の話のいくつかを自分が投稿したものだって主張してるんだが
そのへんはお前らどう思ってるんだよ
ブーメラン戻ってきてますよ
388 本当にあった怖い名無し sage 2010/09/09(木) 19:30:47 ID:ldRCT/620
>>349-350
え?赤緑も洒落怖に投下したってタイトル込で告白してたがあれは良いのか?
もちろん証明なんてしてないはずだが・・
921:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/08 13:35:35 h/mTizuZ0
そろそろ、暇なメリーが来るころか
922:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/08 13:40:02 dk3mpoHd0
メリーは作家投下後に荒らすのがセオリー
923:本当にあった怖い名無し
10/10/08 20:09:19 p/bwELJFO
てか上のコピペがそうだろ
924:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/09 04:47:29 EKkWy6Ro0
本格的に患ってるなあ
925:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/09 09:04:20 Lvp7qVRwO
1000を勝ち取れば、もしくは
ひょっとして人生が思い通りに行くのではないか
と、うつつを抜かす今日この頃。
926:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/09 09:08:57 Lvp7qVRwO
なんだよ!メリー!
こおゆう時に限ってあと74レスあるじゃんか!
早く埋めれよ。
役立たず!!!
927:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/09 10:58:51 HnqjEPCh0
メリー 迷惑をかけるだけで、本当に役に立たないな
可哀そうな奴だ
928:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/10 15:06:53 fjIjMSbkO
数日こない間に名前欄が変わっておるwwメリー野郎、そこまでひどかったのか…
929:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/10 15:09:14 SgZCxbAs0
ここで論議中
オカルト超常現象板 自治スレッド 25
スレリンク(occult板)
930:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/10 22:22:09 dr6UuZrb0
初めて投下するからいろいろお見苦しい所あると思うけど、暇つぶしにでもなれば嬉しい。
高校当時の先輩とのお話。
先に言っておくと、師匠シリーズに多大な影響を受けているけど、基本的には実体験を下敷きにしています。
先輩がいた。
いや、学生なら誰だって上級生はいるし、広義には人生の先輩だってたくさんいるだろう。
とにかく、先を行く人がいた。
もちろん単に学年が上なだけでなく、人生の先輩ではあったけどまたそれだけではない。
彼は、俺のオカルト道の先を行く男だったのだ。
ご存知だろうあのシリーズに影響を受けていた俺は、勝手に師弟のように思っていたが、その関係は、先輩の失踪をもって終わる。
その頃は、全盛期とも言えるオカルト関係の最充実期間だった。
その最初の話をしようと思う。
出会いは、高校に入学してすぐだった。
だが当時の俺は、オカルトの類を全く信じていなかった。
中学の頃は行き過ぎなくらいハマっていたが、それは誰もが一度は罹患するというあの病気のせいであり、完治した俺は再発を恐れるあまり逆を行こう逆を行こうとしていたからだ。
そう、冷静になって考えてみればオカルティックでマイナーな知識を持っていたところで別に格好良くないのだ。
知識は未だ脳内のどこか隅っこに鎮座していたが、もうそれをひけらかすことは無いだろうと思っていた。
中学の頃のことは無かった事として、今度は上手くやろうと心に決めて高校に入学したわけだ。
一月も経たない頃だったと思う。
桜の花が全部散って、そろそろ葉桜になってきた頃だから、恐らく四月の終わりくらいだったはずだ。
その日、俺はいつもより早く家を出た。
別に理由があったわけではない。ただ早く目が覚めただけで、たまには人のいない時間に登校してみるのも面白いかと思っただけで。
案の定誰ともすれ違わなかったし、校門坂を登った先には、朝練の連中すらいない無人のグラウンドがあった。
少し気分良く玄関に入り、靴箱から靴を取り、自分の教室である一年三組を目指して廊下を歩こうとした時、非常口の外、非常階段の下に光る何かが見えた。
金属光沢を放つ円錐状の物体、注視すれば時折見える釣り糸のような物。
それはどこか上の方からぶら下がっていた。
931:自治スレでローカルルール他を議論中
10/10/10 22:27:56 dr6UuZrb0
「フーチだ」
押しやったはずの超自然系知識が瞬時に引き出される。
要するに振り子なのだが、これはいわゆるダウジングアイテムで、気とかオーラとか、そういうものを探る時に使う物だ。
俺の作った物は手に持って使うタイプの短い物だったが、それはもっと長く、地面すれすれまであった。
朝の白い日光を浴びて、円錐の先が地面を指している。
よく考えれば、それをフーチと決めつけるには早すぎたような気がするが、不思議と妙な確信があった。
教室を通り越して、廊下の端にある非常口に向う。
心臓が少しだけ早まった。気がする。
非常口まであと数メートルというところで、フーチが揺れた。
俺が作った物は、どんな曰く付きの場所でもピクリともしなかったのに。
揺れの正体を確認すべく非常口から外に出る。
風は、無い。
釣り糸の先は非常階段の踊り場だった。
一階上がった所からぶら下がっている。
心臓の音が元に戻った。
漠然と、その先がどこか人のいないスペースへ続いていて、見えない何かがそれを揺らすことをイメージしていたから、あまりにも普通なその現実に少し落胆した。
「おい、上がってこいよ」
踊り場から声がかけられた。男の声。
言われなくてもそうするつもりだった。
赤く塗られた塗装が、所々剥げた階段をカンカンと踏み鳴らし上がって行く。
二階には一人の男がいて、階段から下を眺めていた。とても退屈そうに。
「お前、あれが何かわかったんだろ」
あれ、とはフーチのことだろう。
用途まで知っているが、なんだか恥ずかしくて「少しは」と答えた。
「じゃあ、あれは見えたか。さっきの」
今度のあれ、は良くわからなかった。
さっき?俺がこっちに向ってくる途中になにかしたのだろうか。
黙っているとその男はようやくこちらに顔を向けた。
「見えなかったのか。揺れただろ、フーチが」
932:下げ忘れた・・・ごめん
10/10/10 22:30:55 dr6UuZrb0
俺は少しイラついた。
そんなもの、この男が上から揺らしたに決まっている。
フーチの先は踊り場の床にセロハンテープで貼り付けてある。糸を触るなりなんなりすればいくらでも揺らせるはずだ。
頭がおかしいか、かつての自分のように何かに酔っているに違いない。
「あなたが揺らしたんじゃないんですか。それとも本当に」
幽霊でも見えるんですか。それを言う前に男に遮られる。
「おい、見てみろ。下だ。ほら」
男と並んで下を見る。
フーチがぐるぐると円を描いている。
「え」
俺はもちろん男も糸には触れていない。しかもフーチは時折ピタっと止まるのだ。斜めにピンと糸を張って。
「やっぱり、見えないか。見えるんじゃないのか」
何も見えない。不可解な動きをする金属片があるだけだ。
もっとよく見ろ、と男が指を指す。
「見えません。何も」
ちっ、と舌打ちをした後、男は思いついたように
「目を瞑ってみろ」
と指示を出した。
素直に従う。
さっきまで見ていた光景が一瞬まぶたに映る。