10/08/28 21:01:13 O9p6HOoPP
契りきなかたみに袖をしぼりつつ 末の松山波越さじとは
私の大切な夫は言いました。
「大丈夫だ、このバリケードをゾンビが越えるなんてこと有りはしないよ」と。
そしてもう一つ、私に言いました。
「俺は必ず食糧を見つけてここに帰って来る。
だからおまえたちも、何があってもここを離れるんじゃないぞ」と。
あれは、本心だったのでしょうか?
あなたがここを出てからそれほど時間が経たないうちに、死体がここに押し寄せてきました。
すごい数でした。
あんなに分厚いバリケードが押し負けて、端から少し崩れてくるくらい…。
押されて押されて、バリケードの左右の壁がみしみし音を立て始めました。
私たち、急いでバリケードに駆け寄って、押し返そうとしました。
女も、子供も、老人も…だって今ここには、女子供と老人しかいないんです!
力の強い男たちはみな、食糧を探しに出て行きました。
そう、一人残らず…。
「早く、その机を取って!」
私より少し年上のおばさんが叫びます。
彼女は目を真っ赤に泣き腫らして、それでも必死に手を動かしていました。
彼女の手は血だらけで、そのうえ内出血も起こしてこぶだらけになっています。
それでも彼女は必死でハンマーを振るい、板でも机でも手当たり次第にのけ反り始めた壁に打ちつけていました。
何度誤って自分の手を打ち、そのたびに悲鳴を上げても、またすぐハンマーを振るうのです。
彼女の子供達も、懸命に小さな体でバリケードを押していました。
他にも、小さな子供がたくさんいるのです。
あなた…どうか早く帰って来て!