10/07/19 16:05:47 RbXT4HgN0
おれは殺し屋である。といっても、殺す対象は限られている。犯罪者だ。
そもそもおれがこうなったのも、五歳のときに両親が盗賊に殺されたのがきっかけ。
そのときからおれは、犯罪という行為を果てしなく憎悪するようになった。
今やおれの夢は叶っている。そして犯罪がはびこり警察や法の力が衰微しているこの時代、
悪党に制裁を与えられるものは世界におれぐらいしかいないのではなかろうか。
ある日、一人の女性が訪れた。大変美しく、どことなく高雅さがうかがわれる女性だ。
彼女はデスクに身を乗り出して言った。
「息子が誘拐されました!助けてください!」
彼女の話によると、彼女は三億円を身代金として要求されているらしい。
三億円なんて誰もが持っているような安い額じゃない。
しかし話を進めていくと、彼女は三億円を所有していることがわかった。
犯人はそれを知っていたのか。彼女に心当たりはないのか。
「犯人は私の身近な人だと思うんです。私が大金を所有しているのを知っていたのだと思います」
確かに。おれもそう思う。頼りないかもしれないが、彼女にボディガードをつけておこうか。
「いいえ。ボディガードはもういます。もっとも、たくましいとは言えないかもしれませんが。それでも信頼しています。
私には財産があるということもあり、たくさんの方が仕えてくださっています。頼りなさそうな方も、なにかいいものを持っているものです。
だから私はみんな信頼しています」
すこし話が談笑っぽくなってきたが、最終的に作戦が決まった。おれは五百万円で彼女の依頼を受けた。