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永瀬隼介 『黒龍江省から来た女』
そしてセックスだ。《夜の彼(茂)は恐ろしい》。ホラーめいた一文から始まる性生活の描写は、異様
な迫力に満ちている。米などの保管場所を改造した自宅ニ階の寝室は修羅の場だ。擦り切れてアダルト
ビデオが流れる中、暴力的なセックスが延々と続く。
《乱暴な揺れがいつまでも続き、わたしがやめるようにお願いしても無駄だ。終わったかと思うと、また
鷹が兎を捕えるように襲いかかってっ来る。わたしのやめるようにという願いはかえって彼の性欲を刺激
する》
執拗な責めに、性器は腫れあがり、出血することもあった。
《わたしが感じないま、彼は四時間にもわたってセックスをし続けるのだ。ある夜、体調が悪いことを理
由に、セックスを断ったら、彼はわたしの身体に乗り、拳を振るって殴りはじめた。鼻血が出て頭にこぶ
ができ、やむをえず、彼の要求に応じるまで殴り続けた》
薄暗い寝室に血と汗の臭いが垂れ籠め、女のか細い懇願と男の怒号が続く。それは肉を弾く殴打の音と、
圧し殺した詩織の悲鳴が聞こえてきそうな、凄惨きわまる内容だった。
《生理中でもセックスを迫られる。血なまぐさい匂いで吐いたこともあった。生理用品を買う金もくれず、
ティッシュでがまんしろと言う》
新潮社
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