10/08/21 21:25:30 mCY/AGQh0
日本の貴族院・衆議院は明治(近代)の制度ですが、福澤先生の言う庶民とはその時代のものだと思います。
福澤先生は文明を起こすのは大臣でもない労働者でもないワット、スティブンソン、アダム・スミスといった
「知識によって」社会を先導したミドルクラスの民間人であると述べています。
そこで、江戸時代から学問をする力を培ってきたミドルクラスである士族を近代日本を形成していく先導者
として選んだ。さらには、士族が不遇な状況に置かれていった時代で武士の規範が崩壊し、新たに平民から
独立する気概を身に付ける必要もあった。それまで刀を振り回していた士族にペンで立ち向かう精神を教え
込もうとしたのではないでしょうか。
しかし、「慶應義塾入社生徒年表」を見ると『学問のすすめ』が出版された明治五年以降、士族の入社数は
増えたり減ったりを繰り返していますが、平民の入社数は年々増加しています。『学問のすすめ』の読者層
が必ずしもミドルクラスに限定されていなかったことが分かります。
華族制度が廃止された現在、皇族以外は庶民以外の何ものでもないでしょう。大差の無い庶民の中に無理
やり差異を見出そうとする選民意識こそ慶應義塾の精神に逆らうものであると言えます。