【喪素裸】イケメンは地獄に堕ちろ!【喪芸裸】at MOTENAI
【喪素裸】イケメンは地獄に堕ちろ!【喪芸裸】 - 暇つぶし2ch854:('A`)
11/10/16 07:55:07.93 O
なんでフレディ・マーキュリーが入ってんだよw

855:('A`)
11/10/16 08:42:32.33 0
劉、おまえネタ切れだろ(笑)

856:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 13:25:32.06 0
 ―樋口の話が出たついでに、ちょっと書いておくか・・・。
 我々の業務内容は>>615-620辺りに詳しく書いたので、参照してもらうとして、
さて、我々のメインの仕事となるこのデータ入力についてもおおよそのランキングを作ってみた。
 ただし、これは速度のみの参考値で精度は考慮していない。
 基本的にマルクスの従業員は全員入力作業のみに従事。
 その他の会社の派遣は主にデータ入力以外の作業、ただし入力の適性がある者、
入力が追いつかない状況、各自の本来の仕事が手空きになった時は、
マルクス以外の派遣やうちの社員も入力に参加する。

857:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 13:26:30.17 0
速い  清水(M) 

↑    樋口(M) プッシー(社員)
↑    元ヤン西野(C) 古溝(極) 若槻(社員) 山内((H)
普通  中川(M) ローサ(M) 佐々木丸(H) 高田(社員) 俺(社員) 
↓    小林(H) 山根(H) 寺田(極)
↓    大崎(C) 神楽(M/退職者)
遅い  野口(H) 斉藤(社員)

(M)マルクス産業 (C)カーニヴァル (極)極楽ピエロ (H)ハーモニー

858:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 13:28:35.98 0
 これまで名前が出てきた者の中ではベッキー清水がぶっちぎりの横綱クラス。
 社員ではプッシーと若槻(入力指導員)が速く、まあこのクラスまでが入力業務の合格点。
 俺と高田は正直入力は苦手で速くはない。まあ普通だ。
 斉藤にいたってはまるでダメ、こいつは入力やってもアルファベットの「O」と
数字の「0」の区別がつけられないレベル、つか書類を見てもその違いがわからないらしい。
他にも小文字の「i」「l」と数字の「1」がごっちゃになってたり、酷すぎるから、
こいつが業務としての入力に参加することは先ずない。

859:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 13:31:06.87 0
 意外に思うかもしれないが、口八丁手八丁のはずの野口は、
いちいち手元を確認しながら打つような按配なので入力には適性がない。
 中川やローサはマルクスでは一番遅い方、ただしこの2人はミス・タッチがほとんどない。
 神楽(M/退職者)は入力が遅すぎてマルクス側が怒って勝手にクビにしてしまった珍しい例。
俺自身はこの女をえらく気に入っていて、この女をめぐっては感慨ひとしお、悲喜こもごもというか、
ほろ苦い思い出がある。機会があったら詳しく書きたい。
 山内というのはハーモニーで唯一の男子で、ハーモニーの(技能/現場)社員である。
 ハーモニーの現場のリーダーは野口ではなく、実はこいつであり、これから書こうと思う10月15日の
イベントのエピソードにも出てくるから、ここに挙げておいた。

860:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 13:35:08.92 0
 上の表を見るとあたかも清水(※)がうちの現場の筆頭のように見えるが、
精度も考え併せると、マルクスから来ている男子で2名ほどもっと上手の凄腕がいる。
こいつらの両手の動きときたら、まるで高速でキーボード上を移動するカニかクモみたいで、
まるで指一本一本が独立した別の生き物であるような気色悪さだ。
 俺は、というと、実はブラインド・タッチなんか程遠く、実質指一本奏法というか指一本打法でガチャガチャ
無駄に忙しなくキーボードを叩きまくり、その音で周りを威嚇しながら、
おまけにインチキや裏技を使いまくって、やっと平均点程度だ。
 まあ俺にできるブラインド・タッチといえば、せいぜい入力PCの前で目を瞑り、
「どうかこの哀れなメクラにご慈悲を・・・」などと訴えながら、隣の席の女の胸を
手探りで触りまくるくらいか・・・。いわゆるメクラ式同情誘引型合法痴漢法だ。

(※)その清水はここ一週間欠勤が目立ち、現場に来ても精彩がない。
これはアレだ、体まで開いたのに肝心の若槻からソデにされて余程こたえたと見える。

861:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 13:45:19.15 0
 ―ああ、また時間を無駄に費やしてしまった・・・、さて、フラッシュメモリに入れて(自宅に)持ち帰った仕事に
戻るとするか。
 つか洗濯もしなきゃな。オナニーで俺のエキスを存分に吸ったブリーフが1ダースくらい溜まってるしな。

 もっ、もう2時かよっ! こんなことしてる場合じゃねっ! お前らも時間無駄にすんなよっ! じゃあ。。。

862:('A`)
11/10/16 13:57:23.22 0
劉仕事駄目じゃんw
よく首にならないな

863:('A`)
11/10/16 15:29:36.40 0
>>851
おまい最低だなwww
喪も最後まで行くとこうなるのか
俺も気をつけよう

864:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 16:32:06.02 0
>>862
 
 だってよお、俺は元々入力のスペシャリストではなく、
オナニーやセクハラのスペシャリストとして現場に配属された管理者代行だからよお?
 悔しかったら、お前も早く一皮ズル剥けて俺のような一人前のアダルトな男になってみやがれだ、
出直してきな、このセンズリ坊やwww

865:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 16:34:40.40 0
>>854
■『劉、ガチホモ説』■

 喪男の中には、あまりもてないんで男に走るようなとち狂ったのが
たまにいるようだが、俺はまあそんな手合いではない。
 ただ先々週の食堂での清水と俺の罵りあい以降、
何となく俺を誹謗して面白がるような空気が派遣どもの間に伝染しているような気がして、
最近どうもよろしくない、というか俺的にはやり辛いところがある。
 もちろんあの時どれだけの者が俺と清水のやりとりに聞き耳を立てていて、
またそれが全体的にどのくらい拡がっているかまでは知る由もないが、
とにかく先週の午後のある休憩中に不埒な派遣の男どもが連れ立って俺の席まで話しに来た。

866:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 16:36:36.74 0
 こいつらがいきなり「あの、主任ってホモなんですか?」と、周囲にも聞こえるように大きな声で言う。
 この2人、河野(コウノ)と今野(コンノ)という二月ほど前からカーニヴァルを通じて来ている、
共に二十歳前後のチビでブサメン、仕事も頭の出来もいまいちのくせに、
その自覚がまるでないらしく自信過剰で糞生意気なコンビである。

867:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 16:38:01.82 0
「ん? 俺は主任じゃないぞ。誰がそんなこと言ってるんだ?」と、わざと不機嫌な声で俺。
「えっ主任じゃないの? それともホモじゃないってこと?」と今野。
「だってみんな言ってますよ」と河野。2人ほとんど同時に喋りやがる。
 さらに2人そろってニヤニヤしながら「で、本当はどうなんですか?」「ホモなんですかっ?」
「ん? 俺か、ホモじゃないぞ。強いて言うならガチホモだ」俺が腹立ち紛れに答えると、
今野は「ん? んんっ? ガチホモって何?」、河野は現場の方を振り返って大声で
「みんな聞いた? やっぱ主任ってホモらしいぞwww」

868:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 16:44:05.14 0
 その瞬間まったく予期せぬことが起きた。
 それまで離れた所で元ヤン西野と話し込んでいた大崎が血相をかえて飛び出してきたのだ。
 そして河野と今野に向かって「おまえ等、いい加減にしろっ!」と怒鳴ったのだ。「おまえ等、
誰に向かって言ってんだよ。くだらんこというのは止めろっ! さっさと戻れっ!」
 正に河野に掴みかからんばかりの剣幕だ。
 普段はおっとり、のほほんマイペースの大崎が職場で初めて見せた怒りだった。
 そして怒ると意外に恐い。
 現場は一瞬にして、し~んと静まり返り、河野と今野は大崎に向かって
「畜生、先輩ぶりやがって」みたいな悪態をつきながら引き上げていった。

869:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 16:47:54.72 0
 俺はその場に1人残った大崎に向かって言った。「お前、やるな。ありがとな」
「いえ、そんな・・・。ごめんなさい、うちの馬鹿どもがなんか不愉快なこと言ったりしたりしたら遠慮なく
俺に言ってください」
 俺は目を見張ったよ。ちょっと前まで地震の際に避難を拒んだり(>>452-)、
KYな言動(>>416)で俺を困らせていたあの大崎が、最近急に大人びてきやがったのだ。
 まあそれなりの理由はあって、出入りが激しいカーニヴァルの派遣従業員の中では、
まだ在籍1年半くらいの大崎が今月から一番の古株となってしまい、
派遣会社からの通達や連絡を現場のカーニヴァルの従業員達に伝えるリーダー格となっているのだ。
 俺のために怒ってくれるなんて、男として、なかなか見所がある。
 俺の中で大崎のポイントは大いに上がったが、しかし大崎はまだカーニヴァルの派遣たちの中で
完全に押さえがきくほどのポジションにはない。
 俺は俺でこの先、大崎と河野・今野コンビがぎくしゃくしないかと気を揉みはじめた次第・・・。
 苦労が絶えない。

870:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 17:36:28.39 0
 ・・・あっ、そうだ、社員の斉藤について、どうしてこんなダメな奴が社員なんだろうと
不思議に思われる方がいらっしゃるかもしれない。
 何を隠そう、俺自身もそんな1人である。
 しかし元々この斉藤(25歳)はうちの事業所と近隣二ヶ所の事業所、計三拠点兼任の
連絡要員(連絡ドライバー)として配属されてきた男である。
 趣味はマリンスポーツと競馬と車の運転、肉体労働には向いているだろうが、
元々緻密なデスクワークには適さない男なのである。
 そんな奴の本業はうちの会社の本社と各事業所間、あるいは取引先や関連会社との間を
書類を積んで行き来する運送係であるから、朝、会社の車で外に出たきり、
現場にいない時間もかなりある。
 当然うちの実質的な業務にはほとんどノー・タッチ、
まっ、こんな粗暴な低学歴DQNがずっと現場にいたりしたら目障りで仕方なく、
俺との口論や殴り合いが絶えないだろうから、これはこれでいいと思う次第なのである。
 会社の車で外に出ている間、斉藤が大半の時間をどこぞでサボっているとしても、だ。

871:('A`)
11/10/16 18:20:29.56 0
>>860
ここに書いてあることが実話だとすると
ベッキーは若槻を餌にして>>1を誘っているのだと思う
>>1にかまってもらいたくて仕方がないんだと思う
>>1よ ここは男らしく堂々と告白しろ
「ベッキーおまえ俺とつきあえよ」がらしくていいと思う
50、50で落ちると思う すぐやれると思う

872:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 21:03:04.71 0
 ―ちょっとややこしいが、話はまた12日水曜日の朝、始業前の時間帯に戻る。
 俺が若槻とプッシーの席の前にある共有コーナーで探し物をしていて、樋口の話題が出て、
「・・・そうですか。じゃあそういう風に・・・。根は真面目ないい子なんだけどな・・・」と若槻がほざいて、
樋口の話が一段落した直後だ。
 高田が俺のところに来て、「あの、ユウさんのパソコンお借りしていいですか? ちょっと急ぎで・・・」と言って、
指先で摘んだフラッシュ・メモリを振って見せる。
「ああ、別にいいですよ」と俺。
 高田と斉藤の席のPCは、やたらダブルフィード(紙が重なって入って紙詰まりする)を起こす古くてボロいプリンターにしか繋がっていないため、急ぎや大量の印刷処理が必要な時、高田はいつも最新のプリンターに接続された共有のPCか俺の席のPCを使う。
 その時は共有コーナーの椅子に俺が陣取っていたので、空いている俺の席のPCを使わせてくれと申し出てきたのだろう。

873:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 21:04:37.22 0
 始業時間にはまだ10分ほど時間があった。
 探し物が見つかった俺は手持ち無沙汰になって、なんとなく、
いつも持ち歩いている母親の形見の携帯を出して弄っていた。
 若槻とプッシーにはそれが亡くなった母親の携帯で未だに解約せずに
俺が常に持ち歩いていることも話してある。俺は社員の中でもこの2人の前でだけは
いくらか心を許して無防備になる。

874:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 21:07:29.59 0
 俺は時々母親の携帯から俺の携帯へ自分でメールを打つ。「ユウちゃん、今日は早く帰ってこれるの?
夕ご飯、肉豆腐とおでん、どっちがいい? 9時頃でいい?」
 そして涙ぐみながら自分でそれに返信する。いやしようとするが、あまりに悲しすぎてちゃんと返信できたためしがない・・・。
 もちろん職場で母親の携帯を取り出すことなんて、ほとんどない。
 しかし、この時は周りに若槻とプッシーしかいなかったので、俺はすっかり油断してしまっていた。

875:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 21:10:15.79 0
 そこへ出し抜けに、小林アヤカが一直線に俺に向かって、珍しく早足に歩いてきた。
 母親の携帯の電源を切って、それを上着の内ポケットに捩じ込む暇さえなかった。
「おはようございます」と小林は俺に向かって言って、「あのぉ、土曜日、今度の土曜日なんですけど、
仕事早く終わりますか?」
「なんにも(トラブルが)なかったら、いつもと同じ。週に一度のノー残業デイ、全員定時後に一斉退社」と俺は答えた。
「あの、それだったら、仕事の後、ユウさん、お時間とれますか?」その予期せぬ小林の一言に、
 ―? 俺は一瞬考え込んで、それまで弄っていた母親の携帯の画面から、ようやく顔を上げた。
 しかし俺より早くガタガタと音を立てて椅子に座り直し、顔を上げて反応したのは、なぜか若槻だった。
 若槻は食い入るような視線で小林の顔を凝視している。
 その若槻に向かって小林が「若槻さんと中山さんも・・・」と言い添えた。

876:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 21:13:16.18 0
 なんのことはない。今週の土曜日(15日)に職場の世話役である、孤独なオバサンが40歳の誕生日を迎える。
 40歳という節目である。なのにそのオバサンというかババアは現在ご亭主と別居中で小さなアパートに1人住まいで、
誰も祝ってくれる者がない。
 これではあんまり可哀想なので、うちの現場にいるハーモニーの従業員でささやかなお誕生会を開いてあげることにした。
 場所はすでに押さえてある。ハーモニーのリーダーである山内が馴染みの中華料理屋兼飲み屋だ。
 もちろん主賓のババアは無料、それ以外の参加者は会費3000円~3500円の自前参加で、
その席に出来たら俺と若槻とプッシーもどうかと言うのである。

877:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 21:16:16.52 0
「ハーモニーの人はみんな出るの?」と俺は訊いた。
「はい。佐々木さんは用事があって、ちょっと来れないんですけど」と小林がニコニコしながら答える。
 俺は内心やっぱりな、佐々木丸は来ないよな、と思いつつ、それは口には出さず、
「じゃあ、小林さんは出るんだよね?」
「はい、出ます。私、幹事なんですよお」小林が恥ずかしそうに笑う。
「じゃあ、俺も出る。小林さんが幹事なら、俺、絶対出る、いや出ちゃう、出しちゃうw」俺が言うが早いか、
「あー、あーっ、わかった!」と突然、若槻が大声を上げた。そして俺が手にした母親の携帯を指差した。
 俺はすごーく嫌な予感がした。

878:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 21:19:13.69 0
「あー、わかった。先輩やたら小林さんにだけいつもやさしいと思ったら、その携帯―」
 したり顔で声を張り上げる若槻を俺は「言うな、言うな若槻、黙ってろ。それ以上言うな」と
慌てて制止したが、若槻はまるで聞きやがらねえ。
「その携帯、ユウさんが今持ってる携帯って、去年なくなったお母さんの携帯なんですけどー、
小林さん誰かに似てると思ったら、ユウさんのお母さんだあ!」
 俺は貧血でも起こしたように、急に目の前が真っ暗になった。
「ユウさんのお母さんもすっごくやさしくて、ほのぼのしてて、やっぱすごく小っちゃい人だったんですよお!
小林さんにそっくりだ。あー、なんか顔も似てるし、声も似てるかもー、話し方とか・・・」

879:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/16 21:21:58.06 0
「ちげーよ、全然似てねーよ」と俺。「俺のおふくろに似てるだなんて、小林さんに失礼じゃねーかよっ!」 
 せいぜい取り繕って言ってはみたが、焼け石に水。俺の狼狽ぶりは誰の目にも明らかで、
おまけに若槻の声が大きすぎて、現場にいた者のほぼ全員が呆気にとられたようにこっちを見ている。
 その視線の中央で共に真っ赤になって、なんと言ったらいいか言葉も見つからず、
俯いて、もじもじしている小林と俺・・・。
 最悪だ。
 今思い出しても恥ずかしいし、同時に無神経な若槻のおしゃべり野郎に憤りさえ覚える。
 その若槻は確かに俺の母親の生前に何度かうちに遊びに来て、3人で一緒に飯をくったりしていた・・・。

880:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/17 00:24:37.22 0
 ハーモニーのリーダーの山内という男、背が高く、180㎝弱くらいか、
痩せて頬がこけてはいるがそれなりに筋肉質で、サイボーグのような肉体だ。
 実用的で無粋なメガネをかけており、七三分けっぽい髪型、
見た目は神経質なガリ勉秀才タイプだが、
キャラまで真面目一徹で無味乾燥、口数が少なく、あまり笑わず、
何の面白みもない本当にサイボーグのような男である。
 年齢は俺よりも上、高田と同じくらいで多分40手前だと思う。
 酒が入るといくらか陽気になるが、それでも口をついて出るのは
パソコンと車の話ばかり。酒は好きだがギャンブルも夜遊びもやらず、
きっと女なんかにも興味ないんだろうなあと思っていたところ、
去年の夏前、うちの現場にもちょっといたことがある沼倉という、
これも生真面目で大人しい元ハーモニーの女と突然入籍した。

881:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/17 00:26:44.59 0
 俺はハーモニーとはかって山内に一週間の休みを進呈したんだが、
山内夫妻は新婚旅行に出るわけでもなく、その代わり双方の親と兄弟の一部だけで
都内で結婚式を挙げ、披露宴はなし。披露宴の代りに懐石料理屋で身内だけの
お披露目お食事会を催して、新郎新婦双方の関係者ということで、
ハーモニーの営業担当者と、うちの会社から俺と若槻が招待されて列席した。
 そのお食事会に親族以外で出席したのはこの3人だけだった。
 新郎新婦の地味で非社交的な暗い性格がしのばれる。

882:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/17 00:28:14.38 0
 本来俺は仲人を頼まれるべきポジションだったのかもしれないが、
残念ながら俺には嫁もなければ、彼女さえいたことがない、
過去に浮いた話の一つすらない筋金入りの真性童貞である。
 その代わり、会食の途中で急にスピーチを頼まれたので、
俺はここぞとばかりに、あることないこと、2人の謹厳実直な仕事振りと誠実さを
9割くらい作り話して、口角泡を飛ばすように30分あまりも喋り続けたら、
そのうち新婦と双方の母親が大泣きしはじめて、しまいには
ハーモニーの営業となぜか若槻まで泣いているという大盛り上がりの展開とあいなった。
なんでみんな泣いてたのかは知らんが・・・。

883:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/17 00:29:22.09 0
 しかし次の週の頭にはハーモニーの営業が「感動しました。
うちの社長もユウさんのスピーチ、ぜひ聞きたかったって。
あの、これ社長から」と言って俺にハムの詰め合わせギフトを持ってきた。
 その後山内から「うちに遊びに来てください」と何度か誘われたが、
正直言って話していてもちっとも面白い奴じゃないし、
いまだにずっと他人行儀でよそよそしいし(それが山内の持ち味なんだが)で、
実際に山内夫婦の家に寄ったのは一度きりである。
 沖縄出身のアンフォーチュンの社長が里帰りした際に土産として俺に持ってきた
純度60%の泡盛を持参して仕事帰りに山内の自宅である都営住宅を訪ね、
次の日が休みだったこともあり、明け方くらいまで酔った山内とベランダで話をしていて
隣の部屋の住人に「うるせーぞ、死ねよ、おまえ等」と怒鳴られたことを覚えている。

884:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/17 00:32:45.98 0
 そんな面白みのない山内の行きつけの店で15日土曜日の就業後に
野口のバブアの40歳のおめでたい誕生パーティーは開催された。
 出席するにあたって、俺は2万円、若槻とプッシーは5千円ずつ出して、
計3万円を心づけとして店主に渡すべく、プッシーに持たせた。
 そして俺が便所に立った際に店主のオヤジが傍に来て、
「あんなにいただいていいんですか? 派遣会社の内輪の宴会と聞いてたもんで、
正直これといって何も準備してないんですよ。まさか親会社の方まで見えるとは思ってなかったんで」と
しきりに恐縮している。そして俺に媚を売るように「大きな会社で払いがいいそうじゃないですか。
いつも山内君から聞いてますよー。今後とも何かあったらご贔屓にお願いします。
あの、うち出前とかもやってますんで。大量の注文は受けられないんですが、
昼休みとかに利用される方がいたら、よろしくお願いします」と俺に店の名前と電話番号が記された
献立表を渡しやがる。

885:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/17 00:37:58.24 0
「いえいえ、たいした会社じゃありませんで。私のような者が仕切るヤクザな会社でしてw。
それから、うちの事業所、大きな食堂はあるんですが、
厨房がなくて調理人もおりません。毎日仕出し弁当を取り寄せているんですが、
出前の件は前向きに考えてみますから」と俺は店主に名刺を渡した。
 店主は今いる客がみんな帰り次第、今日は店を貸し切りにしますから、と言って
調理場に引き上げていった。

886:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/17 00:39:24.08 0
 その後本当に貸し切りになって、店主の女房や娘まで出てきて、
わいわいがやがや、野口の40歳の誕生記念式典は22時過ぎまで賑々しく続いた。
 みんなでハッピーバースデーを歌ったり、野口は泣いたり笑ったり、
小林は終始ニコニコ笑ってて、慣れぬ手つきで、しきりにみんなに酒を次いで回り、気を配り、
若槻は酔って「カラオケないのー?」とか言い出すし、プッシーはプッシーで
店主の娘と英会話のやりとりしてるし、山内と山根は2人で株の話をしているしで、
みんなてんでに和んで楽しんでいるようだった。

887:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/17 00:43:13.73 0
 そんな中で野口が長距離トラックの運転手だという別居中のご亭主について訊かれ、
いきなり俺を指差して「あー、なんか、ちょっとこの人に似てるかもねー」と言い出した。
「うそつけババアw」と俺。「この前はてめー、旦那は宅間守に似てるって言ってたじゃねーかよっ!」
「たくままもるって誰?」女性陣が顔を見合わせる。
「ほら、アレだ。大阪の小学校で包丁振り回した奴」と俺。
 それを受けて若槻が「ああ、通り魔で死刑になった人ねっ」と嬉しそうにほざく。
「そうだけどよお、それじゃなんか俺が通り魔みてえじゃねーかよっ!」
「えっ、違うの?」と山根。
「ふざけんな。おい野口のバブア、この酔っ払い女になんとか言ってやってくれ」
 野口はゲラゲラ笑いながら、「いや、向こう見ずな性格がね。何でも思い込みや勢いだけでガーっとやっちゃうような所?
よく言えば男気があるっていうかね。そういうところがユウさんとうちの亭主は似てるかもってw」

888:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/17 00:45:51.90 0
「じゃあ通り魔はぁ?」若槻が口を挟む。「うるせー、てめーはすっこんでろ」と俺。
「ああ、うちの亭主もちょっと女にだらしないんだよね。宅間も三回くらい離婚したりしてるでしょ。
浮気性っていうかね」
「じゃあユウさん似てないじゃん。三回も結婚できないもん。多分一回もできないんじゃね?w」と若槻。
 毎度のことながら、こいつの酒癖はあまりよろしくない。
 ハハハと声を上げて笑いながら野口が続ける。「あと衝動的で暴力的なところかなあ。うちの亭主も気が短くて、
すぐ喧嘩とかしちゃうのよねえ・・・、ちょっと幼稚でワガママだし・・・」
「ああ、それは似てるかも」と山根。なんだか俺に対するイジメみたいになってきた。
「ちげーだろっ! 運転手で暴力的だったら斉藤だろーが!w」
 俺は冗談のつもりで言ったんだが、なぜかみんな顔を見合わせて静かになった。店主の奥さんが隣にいたプッシーに
「斉藤さんって誰?」と訊く声だけがかすかに聞こえた。 

889:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/17 00:50:28.57 0
 それから小林が出し抜けに「野口さんの旦那さんもこんな小っちゃいんですか?」と俺を見ながら口にして、
みんなは再びゲラゲラ笑い出したが、俺は正直思い切り傷付いた。
「まさか」と野口が手を横に振りながら、「肉体労働だもの。ガタイはいいわよ。うーん、ちょうど斉藤クンくらいかな、
もうちょっとあるかな?」
「じゃあ、ユウさん全然似てねーじゃんw」と悪乗りする若槻に俺は「なんだよ、それ、似てんだか似てないんだかはっきりしろよ」と
無理におどけて見せて、一切はまた緩やかな笑いの渦に飲まれていった・・・。
 小林の不用意な発言の後、半ばやけ気味に無理矢理流し込んだ酒のせいもあって、その後のことはあまり覚えていない。

890:('A`)
11/10/18 07:39:30.96 0
つくずく孤独な男だな・・・・

891:('A`)
11/10/18 11:45:19.12 0
劉ってさ、背が平均身長あれば、絶対にリア充にカテゴライズされてただろうね
スピーチも上手い人ってそうもいないと思うし。

892:('A`)
11/10/18 13:26:36.86 0
話し上手なのはなんとなくわかる
これだけ面白かったらモテそうだし飲み友達くらいいそうだけどね

893:('A`)
11/10/18 17:00:50.74 O
この会社は電通だな。電通の計算センターだろ?

894:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/18 19:49:59.86 0
 ―17日、今週月曜日の始業前のことだ。
 現場で何名かの者達が屈みこんで机の下を覗いたり手で探ったり、
ゴミバコや机の上の備品をガサゴソ動かしたてみたりしている。
 その中で泰然と椅子に座っている佐々木丸の所へ行って俺は訊いた。「みんな何やってんだ?」
「ああ、あれ」佐々木丸がたいして関心なさそうに言う。「隠しカメラや盗聴器がしかけてあるって、みんな探してんですよ」
「ふっw」思わず鼻から鼻水が噴き出しそうになった。「ずいぶん病んでんな、この職場はw」
 しかし佐々木丸の次の一言に、一気に鼻水が引っ込んだ。
「ユウさんがみんなが帰った後にみんなの机の下に盗聴器や隠しカメラを仕掛けて回ってるのを見た人がいるって」
「だっ、誰だ、そんなこと言ってるの?!」
 佐々木丸が無言で顎をしゃくる。その尖った顎の先には
一塊になって話し込んだりふざけあったりする派遣の若い男どもの姿があった。その中に河野と今野のもいる。
「なんだ、あいつらか・・・。で、佐々木はどうなんだ? それ信じるか?」
「ははっ、馬鹿馬鹿しいっww」クールな佐々木丸が珍しく笑い崩れる。「そんなことして何のメリットがあんだかwww」
 特に俺が面白いことを言ったわけでも笑う所でもないと思うが、俺は頼もしい佐々木丸の一言に、ともかくちょっと安心した。

895:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/18 19:57:12.63 0
 その俺の背後から、「あの2人放っておいていいの?」と、野口が小声で話し掛けてくる。「あの子ら全然ゆうこときかないし、
金曜日も山内さんが手を出すなって言ったのに暇だからって勝手に(伝票の)仕分けやっちゃって
拠点も期日もごっちゃごちゃにしちゃったし・・・」
「ああ、高田から聞いた。おまけにそれが終わらないと帰れないと思って焦って手付かずの奴、
そっくりシュレッダー行きの箱の中に押し込みやがったんだろ? 土曜日に二人呼んで注意したら、
あいつら何て言いやがったと思う? 『それはちゃんと(やり方を)教えない方が悪いでしょ?』だってよw。」
「それにさ・・・」野口が俺の背中に隠れるように身を屈めたまま続ける。「あの子ら女の子達にうるさく電話番号とかメアド訊いたりして困ってる子けっこういるのよ。教えないと帰り道で待ち伏せしてるんだって・・・」
「待ち伏せ? ・・・マジかよ? 女の子達にうるさく話し掛けてんのは見てて知ってたけどよ、待ち伏せっていうのははじめて聞いた。それ、“裏”とれるか?」
「とれますよ・・・」
「じゃあ、いつものように、頼む・・・」

896:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/18 20:00:09.90 0
 俺は内心ぞっとしなかった。
 俺はもちろん盗撮カメラや盗聴マイクなど仕掛けたりはしないが、
全員帰宅して現場に自分1人になった後に
色々と趣味の世界を展開していることはこのスレに既に書いてきた通り。
 いや、まだまだ書いていないこともある。例えば派遣の女達の靴箱を開けて中の臭いを嗅いだり、
室内履き用のサンダルやスリッパ(派遣会社によってはその会社が支給した静電靴だったりする)に頬擦りしたり舐めまわしたり。
 まっ、たいていの女は靴箱の中に消臭剤や除湿剤を忍ばせているわけだが、中には元ヤン西野のように、
出社時に雨でびしょ濡れになった靴下をそのまま靴箱に置いて帰るようなツワモノもいるわけで……。

897:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/18 20:04:03.47 0
 もちろんそれを持ち帰ったりはせんよ。そんなことをしたら窃盗罪になっちまう。
俺はこう見えても良識と節度と、ある程度の品位だけは持ち合わせた男だから。
 しかしそんな俺の行状を誰かが、例えば忘れ物を取りに戻ってきた従業員が偶然目撃してしまうといった可能性は否定できない。
 それを防ぐには守衛室のセキュリティー・システムをONにして侵入者があればわかるようにしておけばいいのだが、
しかしそんなことをしたら俺の行状が現場や通路に設置された監視カメラによって記録されてしまう。
 これは由々しき問題だ。これからは充分に気をつけることにしよう。

898:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/18 20:07:29.03 0
 ただ一度だけ、俺はとんだ失態をやらかしてしまった。
 今年の盛夏のことだ。就業時間中にこっそり現場を抜け出して、
守衛を警戒しながら屋外の自転車置き場に赴いた俺は、
元ヤン西野の自転車のサドルに思い切り頬擦りしたり、臭いを嗅いだり、硬いサドルの先を、
つまり西野の股間が間接的に押し当てられるその爆心地を
思う存分舌先でねぶり倒したりしていたわけだが、
どういうわけかこの現場に若槻が現れた。
 若槻は作業上のことで至急俺に相談したいことがあって、
姿が見えない俺を方々探し回ったあげく、ここに辿り着いたと言うのだが。
俺は「てめー、どういう了見だ、失礼な野郎だな。どうして事前に電話を寄越さないんだよ? 
話はそれで済むだろがよ? チキショー、俺のお楽しみを邪魔しやがって!」と若槻を叱ったが、
若槻に指摘されて自分の業務用携帯を取り出してみたら、なんと電池が切れていたのである。そんな肝心な時に限って! である。

899:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/18 20:10:31.16 0
 西野という女は前に書いたかもしれんが、アレだ。
結構かわいいヤンキー系の娘であるが、どうもだらしがないというか、
粗忽で細かいことを気にかけないような豪快な女である。
夏場なんて「それ寝巻きだろ?」みたいな薄汚れたスパッツや
ジャージやらを履いたまま遅刻間際にギリギリ出社(西野の派遣会社カーニヴァルには上下の制服があるので現場には制服に着替えてから降りて来る)、
きっとこの女のことだから夏場でも平気で3日くらい風呂に入らず、従ってパンティーも履き替えず、
その代わりショーツ・ライナーだけを取り替えて誤魔化すような生活を送っておるに違いない。
 そんな元ヤン西野愛用のチャリの、正しく垂涎のサドル様である。
これが万一ヤフオクなんかに流出したら、俺は迷わず1万円程度で即落してしまうだろう。
 そんな俺に向かって若槻はその場で嬉しそうな顔をして「Back In The Saddle ・・・」とほざきやがった。

900:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/18 20:16:53.70 0
 古い洋楽のハードロックが大好きな若槻によると
エアロスミスの楽曲であるこの「バック・イン・ザ・サドル」は、
女の自転車のサドルの中に宿った男の霊がどういうわけかその安住の地を追われて、
再び女の自転車のサドルの中に戻りたがって魂の叫びをあげるという歌詞内容らしいw。
 まあ若槻なんかの言うことだから嘘か本当かわからんが、
もし本当だとしたら江戸川乱歩の『人間椅子』よりははるかに見所のある文学的な内容で
正に俺向きである。
 それ以来、つか今年の夏以降、こうして俺のカラオケのレパートリーが一曲増えた。
 そうして俺は若槻と2人でカラオケ・ボックスに行った折に必ず2人して
この「 Back In The Saddle」を熱唱し、共に魂の咆哮を上げながら秘密を共有し続けるのである。
 かくして俺の秘密は封印された。まっ、若槻のことだから誰にも喋らんだろ、喋ったら殺すと脅してあるしw。

901:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/18 23:06:39.23 0
 「もしも世界の屋根を撃ち落せるなら―」と、中学の時の卒業文集に、
俺は書いている。
「もしも世界の屋根を撃ち落せるなら、僕はためらうことなく引き鉄(トリッガー)を引く。
 だけどそれが出来ないのなら、銃口を自分のこめかみに当てて引くだけだ。」
 将来有望な革命家かテロリストにでも成長しそうな際どい少年を想わせるが、
その成れの果てが今の俺だ。
 いまだ世界を変えることも死ぬこともできずに煩瑣でけち臭い日常の中で毎日喘ぎ、もがいている。
 世間ではどうやら秋葉原の無差別殺人事件が映画化されるようだが、そう言えば以前、
うちの職場にも、かつての俺のようなことを真顔で言った奴がいる。

902:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/18 23:09:21.18 0
 極楽ピエロからスポットで来ている古溝で、若槻と双璧をなす
うちの現場の二大モテメンの1人である。
 (>>440-441参照 そうだ、古溝に見た目そっくりなのがいる、
GLAYとかいうバンドでギターを弾いてるTAKUROという野郎だ。
こいつを茶髪にした感じと言えば間違いない)
 この古溝をチャラチャラしたキムタク気取りの勘違い野郎と前に書いたが、それは外面的な話で、
内面的には責任感が強く仕事ができて、俺に対していつまでも初対面の時と変わらない
乱れのない敬語を使い続ける
(そういう男は珍しい。現場ではこの古溝とハーモニーの山内くらいか・・・)、
なかなか見所のある野郎である。

903:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/18 23:16:41.59 0
 この古溝は月に8日前後、スポットとしてうちの現場に来る。
 それ以外の日はほぼ一日中パチンコ屋にいるらしい。
 大阪の眼鏡屋だか傘屋だかの1人息子だが家庭に問題があるらしく、
中学卒業後に家出同然で上京した。
 一時は白蟻駆除会社の社員として働いたことがあるという苦労人でもある。
 しかしある時サッカークジだか宝くじだかで億まで行かないが、それなりにまとまった金を手にしたという。
 それ以来毎日働きに出るのは止めて、好きなパチスロを打ちながら、
今のような気ままな生活を送っているのだという。
 そして金が尽きるまでそうしているだろうと。
 俺は古溝の仕事ぶりを高く買って何度か、
スポットではなく常雇いで毎日仕事に来てほしいと水を向けたことがある。

904:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/18 23:19:31.55 0
 古溝は自分には今の暮らしがあっていると言って、上に書いた当選金の話をしてくれた。
 ただ古溝も派遣という人種を信用していないみたいで、
どんな奴が紛れているかわからないから、絶対にこの話は他言しないでほしいと言い添えた。
 俺は奴に、その金を浪費するばかりでなく事業を起こすとか、
何かまとまったことに使う気はないのかと訊いてみた。
 古溝は答えた。世界を変えられるような金ならいざ知らず、
この程度の金で買える夢なんてちっぽけなもんだろうと思う。
だったら俺はその金で自分自身を滅ぼすことを考えると。
金が尽きるまでふらふら生きて、その時までに自分が本当にやりたいことが見つからなかったら、
その時は死んだ方がマシだ。自分にもこの世にも生きる価値なんか
最初からありはしなかったのだと潔く散るつもりだと。
 それを聞いて俺は感動したよ。
 古溝は「笑わないで聞いていただいてありがとうございます。
(常雇いに誘ってもらって)お心遣い感謝します」と深々と頭を下げた。
 心底かっこいい野郎だと、俺は感心した。

905:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/18 23:22:48.66 0
 その古溝が最近、現場に来ない。
 気になったので、今週のスポットの作業者を依頼する際に極楽ピエロに訊いてみると、
古溝は既に退社して大阪に帰ったという。なんでも急に実家を継ぐことになったとか。
 俺はちょっと寂しかった。なんだ、あの野郎、俺にはさよならも言わずにおさらばかよ。
 しょせん俺なんて、そのくらいな存在のもんだろう。
 そう言えば、先週退社したローサ嬢も結局俺の所には挨拶に来なかった。
 入力指導担当の若槻の所へは挨拶に行き、プッシーのところへは、
うちの会社が貸与している制服やIDカード等の返却物を持って挨拶に来たらしいが。
 その際にプッシーは俺に言われた通りのことをローサに告げた。
つまり、そばに置いてあるダンボールを指差して、「制服はこのままクリーニングに出すから、
気にせずその中に入れといて下さい」
 しかしローサ嬢は急がないのなら持ち帰って洗って返したいと申し出て、実際にそうしたようだ。
 最後までエレガントなローサ嬢の今後に幸あれ・・・。

906:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/18 23:26:39.47 0
 どうにもこうにも俺は心底ちっぽけな存在のようである。
 今日も帰宅する際に近所のコンビニで弁当を買い、電子レンジで温めてもらうことにした俺。
 支払いを済ませ、弁当がチンされるまでの間、レジの傍らに立ってじっと待っていた。
 その間にも、わりとかわいいレジの娘は後続の客の対応に追われている。
 そしていつまで経っても俺に弁当を渡そうとしやがらない、つか俺の5人後の客がやはり
弁当チンを希望して、その際に電子レンジの扉を開けて、「あっ!」とやっと気づいた様子。
 それから店員はきょろきょろ辺りを見回して俺を見つけると、「あっ小さいから見えなかった。
もう帰ったのかと思ってました」と真顔でぬかしやがった。
 んなわきゃねーだろっ! うざけんなボケがっ! 一体どーゆー言い訳なんだよ?
 ったく人をなめやがってっ! 償いにオマンコ開け! カウンターの上で潔くやらせろっ!!

907:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/19 01:23:27.53 0
>>749-751

 ―まあな。確かに贈られた絵を送り返したりする俺も変だけど、
そもそもこの絵を送りつけてきたプッシーもちょっと変なんだよ。
 なぜなら「着払い」で送られてきたんだよ。
 俺も差出人が中山じゃなかったら受け取りを拒否しただろうと思うよ。
 だから当然プッシーに送り返したときも着払いで送ってやったよw。
 それから自滅かどうかは解らんが女に対して自信が持てないのは確かだな。
 最大の理由は俺のあまりの背の低さだ。
 もちろん仕事上で指図する際にはそんなの関係ないから俺が上から目線で一直線にやれるが、
プライベートだと勝手が違う。世の中のたいていの女は俺より目の位置が、
つまり、視点や視線が高いところにあるんだぜ?
 どうしても見下ろされてるみたいで萎縮しちまうんだよな。
 これは精神的な問題というより物理的な問題だ。俺にはどうすることもできない。
 それからこれまでに書いてきた通り、プッシーには性欲を感じない。まるっきりだ。
 自分でも不思議なんだが、俺の中では彼女は身内みたいな感覚なんだろな、
よおわからんが・・・。

908:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/19 05:43:02.29 0
 ここで佐々木丸についても記述しておかねばなるまい。
 既にこのスレでも現場の華、綺麗どころの一人として紹介されながらも、
地味で無骨な性格のせいもあって、現場でもこれまでに、
これといったエピソードもなく、詳述する機会がなかった。
 この佐々木丸が質実剛健にして実用的派遣会社ハーモニーの派遣従業員の中で唯一の20代で
綺麗どころであることは既に書いた通り。
 この佐々木27歳はうちの現場に来る直前までずっと歯科助手をやっていた。
その間に医療事務やらPC関連の資格を取り、「歳のせいか腰が痛くなってきた(本人談w)」と
いう理由で、座り仕事メインのうちの事業所に来た。

909:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/19 05:47:47.09 0
 俺も知らなかったのだが歯科助手には国家試験・資格の類がまったくなく、
歯医者で働けば誰でも歯科助手だということで佐々木の時給はたったの900円だったという。
 それで時給1000円スタートのハーモニーを通じてうちの現場にきて
「こんな楽な仕事でこんなに貰えるのか」とびっくりしていると言う。
 うちの仕事が楽かどうかは別として、仕事振りは他のハーモニーの派遣同様、
真面目一徹、覚えが早く、毛深く、歯科助手をしていただけあって手先が器用、
入力業務にもそこそこ適正があり、仕事中にもそれ以外にもほとんど喋らない。

910:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/19 05:53:21.81 0
 身長は若槻と同じくらい(166、7㎝)だと思うが、
腰が痛くなってきたという割にはすこぶる姿勢が良く、
女にしてはがっしりした体育会系ボディー、手首なんか俺より太い。
 そして何より凛々しい。眉毛が太い、つか全身毛深い。
 ご両親が鹿児島だか宮崎だか、その辺の南部九州の人らしく、
現在の沖縄県人やアイヌ人のように縄文人の血を色濃く体現した、
ちょっとエキゾチックでエトランゼな女だ。
 顔立ちは端正そのもので佐々木希の眉を太くし、
顎をがっしりさせた感じの美形であるが、
いかんせん化粧気がまったくなく、お洒落でもなく、毛深い。
 コロンや香水の類もまったく用いず、毛深いせいで夏場は汗臭さむき出し。
 野性味溢れる佐々木希、もしくは孤島に漂着し1年4ヶ月くらいサバイバル生活を送った後に
日本の巡視艇に発見され本土に帰還する直前の佐々木希といった感じである。

911:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/19 06:02:36.20 0
 性格も体育会系で男っぽいが、口数が少なく、さっぱりしていて
周囲と揉めることもない。放っておいても着々と自分の道を行く、
自分の仕事をするといった、逞しく堅実な女である。
 ちなみに佐々木丸という愛称は仕事中に長い黒髪を後ろに束ねた姿が
野武士のように凛々しいことから俺が勝手に呼んでいるものである
(うちの現場では女子は髪を束ねる必要がないのだが、佐々木は自主的に
このスタイルを貫いている)。

 この女はうちの会社の(つまり俺の)面接を通さず、
いきなりハーモニーの営業が現場につれて来たのだが、
最初に見た時にあまりの毛深さに驚き、同時に素材はすごくいいのにもったいないと
思ったことを覚えている。

912:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/19 06:06:57.59 0
 なにしろ女なのに肘から手首の辺りにかけて、うっすらと毛が生えてやがる。
 俺はその腕をめちゃくちゃ毛深い自分の腕と見比べながら、「君はすごく毛深いなあ」と
漏らした。「すごく綺麗なのにもったいない」と。
 すると佐々木は「申し訳ありません」と低い声で答えて頭を下げようとした。
 俺はそれを制して、「いや、何も謝ることはないよ。ほら、あそこにいる、
男のくせに腋毛すら生えてないツルツル坊ちゃん(若槻)に比べたら大いに見所がある。
それに毛深い女性は情が深いっていうしな。
毛深いだけに、情け深い、なさ、毛深い、なさなさなさw なんちゃってww」と言った後、
この時即興で口にした自分のシャレのあまりの面白さに俺が声を上げて笑っていると、
「あの、それ面白いですか?」と頭上から重たい声が落ちてきた。
 俺が思わず顔を上げると、ごく至近距離でまじまじと目があった。
 銀の矢を思わせる無情な視線だった。
 その瞬間俺は、野性の肉食獣か猛禽類を想わせる鋭く、
気高く精悍なその眼差しにすっかり魅了されてしまった。
 この女もツンデレなんだろうか? ベッドではあられもない喘ぎ声をあげまくるのだろうか?
 一生に一度はこんな気丈な美人を自分の指やチンポコで、
それこそ狂った獣みたいに喘がせてみたい・・・。

913:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/19 06:18:48.44 0
 まあそんな無骨な女で愛想も何もないし、職場での付き合いも悪そうだから、
この佐々木丸だけが野口のお誕生会に不参加だと聞いた時、俺はさもありなむと納得した。
 しかし土曜日の誕生会の席で小林から聞いた話だと佐々木はバンドをやっていて、
その練習でスタジオの予約をとってあるから来れなかったらしい。
 しかも来れないから申し訳ないと言って、会費だけ払おうとしたらしい。
 見かけによらず女性らしい気遣いもしやがる。ますます気に入った。
 さらに小林の話だと佐々木はそのバンドでドラムを叩いている二十歳の大学生の男と付き合っているという。
 ―畜生、7歳も年下の男か・・・。きっと問答無用の逆レイプも同然に違いない。
 俺は思った。今頃練習も終わって、メンバーも三々五々に帰途につき、
佐々木はそのまま交際相手のワンルームに楽器を持ったまま上がりこみ、
ついでにその男子大学生とやらの上にも上がりこみ、そいつの華奢で生っ白い手首を押さえ込んで
のしかかるように跨り、全身の剛毛を逆立てながら、そこら中に汗を撒き散らし、
獣のような咆哮を上げて髪振り乱し、天を突くような勢いで狂ったように腰を振りたくっていやがるに違いない・・・。
 小林の酌でビールを飲みながら俺は密かに勃起して、
人知れずブリーフにヨコシマな染みを滲ませていた・・・。

914:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/19 06:25:52.24 0
 ・・・そういや、その飲み会の後半、お開きになる直前か、
野口が最後にみんなに挨拶し、「これからもよろしくお願いね」と全員と熱い握手を交わした後に、
「ほら、あなた達もみんなに発表することあるんじゃない?」とか何とか言って
小林とプッシーに何か促したような気がするのだが、
あれは夢か現か……、とにかくその頃になると俺は無理矢理流し込んだ自棄酒のせいで
腹の底が焼けるように熱く、タクシーに乗る前から既に吐きそうな按配で
意識もかなり怪しかったので最後の方は良く覚えてないし、思い出せもしない。
 結局小林もプッシーも何も言わなかった気がするから、
その全部が俺の得意の妄想なのかもしれない。
 今になってふと、そんなことを思い出した。

915:('A`)
11/10/20 08:44:42.82 0
>>1
ちんちん丸だかってネガティブ恋愛口座の人か?

916:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/21 04:24:35.35 0
■マンピーの話■

 マンピーというのは、小宮の前任者、つまりマルクス産業の前の営業担当者で
虚栄心の強いガマガエルのような女に俺がつけてやったあだ名であるが、
よく言って片桐はいりか田嶋陽子風の、霊長類というより明らかに爬虫類か両生類に近い風貌の
このデブサ女は着任後はじめて俺のところに挨拶に来た際に、わざわざ自書の履歴書を持ってきやがった。
 これまでにも何人もの派遣会社の営業がうちの事業所というか、俺のところに挨拶に来た(そして去って行った)が、
自分の履歴者を持参した奴なんてこの女がはじめてある。
 元々マルクス産業というのはソフト会社を脱サラした、プログラマーでもある社長がバブル崩壊後に
資本金1500万円で興した新興の人材派遣会社である。
 入力オペレーターだけを専門に派遣し、
自社内で派遣従業員のスキル向上と徹底した教育や管理を施しているという点では他の派遣会社と違い
見所があるが、しょせん派遣以外の正社員が7、8人しかいないという零細企業である。(※)
 その末端である営業担当者の移り変わりは激しく、俺が今の事業所に来てから小宮で既に4人目となる。

 (※)派遣従業員として登録している者は200名近くいるらしいが、その全員が常時この会社を通じて仕事に就いているというわけでは決してない。現在小宮ともう1人の営業で抱えている現役の派遣従業員は50~60名程度である。

917:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/21 04:28:05.24 0
 ―で、満田(ミツタ)という当時28歳のこのガマガエルのような女が俺のところに
「ほれ見て下さいよ」といわんばかりに持ってきた履歴書だが、
学歴は津田塾大仏文科卒、職歴は地方銀行の行員を振り出しに旅行代理店勤務、広告代理店勤務、
複数の派遣会社の営業歴任等とある。
 年齢からしてこの雑多な職歴自体が既に怪しいが、趣味欄には「海外旅行」「オランダ美術鑑賞」とあり、
この趣味のことを尋ねると「ロッテルダムには学生時代も含めて5回ほど行ったことがある」と本人が言う。
「ん? ロッテルダム? アムステルダムじゃなくて?」と俺が突っ込むと、「ああ、そうです、すいません、アムステルダムです」と言う。
「まあロッテルダムもオランダじゃ二番目か三番目の都市だから、まあロッテルダムでもおかしくはないけどね・・・」と俺が言うと、
今度は「ロッテルダムにも何回か行ったことがあります」と言う。
 どっちなんだよ? つか、話自体がどうも怪しい・・・。

918:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/21 04:32:16.43 0
 俺はその後一人一人うちの社員の所を回って引き合わせするつもりだったが、
いち早く、この現場では俺の次、というか、サブリーターに当たる若槻王子を呼んだ。
「こちら、うちのホープの若槻君、26歳独身、一橋大卒。津田塾なら馴染みあるでしょ?」と満田に言ってから、
若槻に向かって「津田塾って一橋と合コンばかりしてんだよな?w 
だからこの若槻も津田塾に関してはその筋のエキスパートなんだよ。ご覧の通りのイケメンだし・・・」と言って、
若槻に満田が持参した履歴書を手渡した。
 すると挨拶もそこそこに満田の履歴書に目を落とした若槻が開口一番、
「え? 津田塾に仏文科なんかありましたっけ?」と言う。
 なんのことはない。この満田の経歴は嘘八百そのものだったのである。
 若槻との質疑応答でしどろもどろになり、それでも満田本人はまだばれてないとでも思っているような強気な姿勢、
まあ現場でもそうだが、肝心なことが出来ない者にかぎって余計なことばかりする。
 そして余計なことをして墓穴を掘りまくるわけだが、
この満田という糞女もそんな浅薄な愚か者の典型だったということだ。

919:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/21 04:40:04.61 0
 勝負はあった。
 俺は満田に向かって言った。「満田さんか……、じゃあ、ここじゃ“マンピー”って呼んでいい?」
 満田が一瞬「えっ?」という顔をする。それを無視して俺は若槻に向かって、「なんかサザンの曲にそんなのなかったか?
ほら」と言って「あれは~っ、♪マンピーのぉ~ Gスポット Gスポット ♪Gスポット」と歌って見せた。
 若槻は「あるあるあるw なんかハードロックっぽいグループのやつでしょ?w」と喜んで、
二回目からは、「♪マンピーのぉ~ Gスポット Gスポット Gスポット」のGスポットのところを俺と一緒に声を合わせて歌う。
 俺は故意に満田に対して悪意をこめてやっているわけだが、若槻、こいつは天然。こういう幼稚なことが大好き、
つか現場でもよく1人で、鼻歌を通り越して完全に歌詞つきで色んな歌を歌ってやがる。
 そして計三回、若槻と二人でこの“♪マンピーのGスポット”を繰り返してから、
真っ赤になって俯いている満田に向かって俺は言ってやった。「ところで、ねえ、このGスポットって何?
無学で無教養で低学歴な俺らに教えて、偉い人?w」

920:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/21 04:44:50.08 0
 すると満田は憤然として「私、こんな失礼なこと言われたのはじめてです・・・」
 俺は若槻の方を振り返って、「えっ? 俺らなんか失礼なこと言ったあ?」、
それから満田に向き直って、「何がそんなに気に触ったのかな、マンピーは?」
 満田は消え入るような声で「だから、その・・・」
 「その何よ?」と俺。
 「・・・そのマ、マ、マン・・・」言いよどむ満田の横から、「マンピぃーっ!」と、若槻が嬉しそうに口を挟む。
 「へ~っ? これ、かわいくていいと思うがな俺は・・・」さらに続けて俺は、
「じゃあ、これまで何て呼ばれてきたの、マンピーは?」
 満田が不服そうに答える。「みっちゃんとか、ミッチーとか、おみつ、とかですけど・・・」
「みっちゃん、って、ひょっとしてアレかあ?」そして俺はまた歌ってみせる。「♪みっちゃん、道々うんこ垂れてぇ~ 
紙がないからぁ 手で拭いてぇ~♪ もったいないから 食べちゃったぁ~の、みっちゃんかあ?」
「あはははは」と若槻が腹を押さえて笑い転げる。「あはははw もうやめてww 
今日の先輩おもしろすぎw あははははwww」
 背後からは休憩から戻ってきて現場に入ってくる作業者達の「ああ、またやってるよ、
所長の新参イジメ」みたいなささやきが聞こえて来て、満田は顔を真っ赤にしたまま緘黙、
これがマンピーの輝かしい現場デビューの初日となった。

 ―その後、この浅はかな満田が俺を誹謗中傷し陥れようとして、
逆に自分が職を追われることになった経緯は>>243-260に書いた通りだ・・・・・・。

921:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/21 06:41:26.39 0
 ・・・そう言えば先週野口の誕生パーティーを開いた中華料理店だが、
店のオヤジにもらった献立表をうちの事業所の食堂に置き、
派遣を含むうちの従業員が各自自己責任で出前を頼めるようにしたんだが、
早速昨日、木曜日に俺の名前でヤキソバを十人前注文した馬鹿がいる。
 もちろんイタ電だ。まったく小学生並の悪ふざけだ。誰の仕業か現場で問いただしても
当然誰も名乗り出やしない。
 店を紹介した山内が責任をとって全額払うと言うので、
結局俺が全額負担して「希望者は勝手に食いやがれっ!」ということになった。
 そうしたら案の定、今野が我先に喰らいついて二人前を平らげた。
 今野はいつもは業者の仕出し弁当を食っているのだが、この日だけは
頼み忘れていたようだ。イタズラ半分と本人がヤキソバを食いたかったのと、
まったくこいつの精神構造は劣悪な幼稚園児そのものだ。
 その今野と河野の2人は派遣の女達につきまとい、
帰り道で待ち伏せしているという件の裏が取れたので、
就業態度や仕事内容が不適切という件と併せて、
奴らの派遣会社カーニヴァルに来月15日付けでの契約打ち切り(解雇)を通達してやり、
先方も承諾した。
 ザマアだw。
 
 ―さて、今日も仕事に出る時間だ。。。

922:('A`)
11/10/21 20:22:40.26 O
若槻とのやり取りを読んでると、ホントはリア充側なんじゃ…と勘ぐるんだが

923:('A`)
11/10/21 20:28:06.46 0
人事権を持ってる喪や孤なんかありえねぇ

924:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/21 23:14:04.89 0
■夢見る劉 陳邦 『私の顔面王子「ゴルトベルク変奏曲」』■

 ―派遣がメインのうちの現場には様々な職歴や経歴や肩書きを持った者達が流れてくる。
 たいていは高校を出てから地元の工場やスーパーやコンビニで働いてきたという、
これといって資格や技能のないフリーター風情だが、
既に書いたように、ベッキーは携帯ショップの看板娘で売り上げがそのエリアで断トツだった。
 ローサ・デラックスは元大手化粧品会社の美容部員、
短大では保育科で実は保育士の資格を持っている中川嬢(ただし実務経験も保育士登録もなし)、
美容室で働いていて着物の着付けの民間資格を持っている山根、
佐々木丸はうちの現場に来る直前まで歯科助手をやっていた。
 変わったところでは元バスガイドや、地方の水族館で学芸員というのか研究職にあったという者、
また寺田のように《お水》として働いていた経歴を隠さない者もいる。
 もちろんマンピーのように脳内早稲田の類も大勢いて、
例えば3月の地震の際に避難を拒んで俺に「馬鹿じゃね?」と言ってクビにされた関口(>>451- >>470)。
 この関口は高卒のくせに、常々司法試験合格を目指して勉強中で、その片手間に仕事に来ていると
のたまっていたが、この馬鹿はきっと知らんのだ、ここ何年かで法律が改定されて、
今では大学の法学部を出ていないと司法試験の受験資格すら選らないということをw。

925:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/21 23:20:57.74 0
 ついでに言っておくと、満田がはじめてうちの事業所に挨拶に来た日に、
俺はマルクス産業の本社(※)に「早速うちでこういうことがあったが、この人物は
本当に信用できるのか」と問い合わせをかけた。
 折り返し返ってきた回答によると、マルクス側が知っている満田の最終学歴は成蹊大中退、
職歴は旅行代理店勤務と二社の派遣会社での営業職のみである、本人には充分注意するから
今回は大目に見てやってくれ、つまり多少の経歴詐称くらいではクビにする気はない、ということだった。
 しかしこの「成蹊大中退」ですら虚偽であることがその後はっきりしている。
 満田がマルクスの営業としてうちの事業所に出入りするようになってからしばらく経って、
本当に成蹊大出身のプッシーが新卒の社員としてうちの現場に配属されてきたからである。
 (若槻の時と同様、2人を話させてみればそんなのすぐにバレる)。
 そして満田は津田塾大云々こそ口にしなくなったが、
その代わり現場のマルクスの派遣の女の子たちに
「慶応卒」やら「立教卒」やら「ICU卒」やらとその場その場でいい加減な履歴を吹聴し威張り散らして、
俺と同じくらい嫌われていた。

(※)本社と言っても聖蹟○ヶ丘駅近くの瀟洒な雑居ビルの中にある、50㎡程度の貸し事務所に過ぎないが。

926:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/21 23:26:12.25 0
 その因業女のマンピーがある時、うちの現場に正真正銘、音大出のピアノ講師を連れてきた。
 退職者の中では俺が一際熱い思いを寄せる、神楽みなこ嬢である。
 彼女は音大を卒業してから、ずっと自宅で近所の子供たちに月謝をとってピアノを教えていた。
 彼女の父親もまた同じ自宅で音大受験志願の高校生や浪人生、
社会人~子供にピアノとバイオリンを教えているという優雅な家庭環境にあった。
 しかし少子化が進んで教え子の数が減り、さらに不況で月謝の相場が目減り、
こんな時勢にあって子供にピアノをという家庭も激減し、
少ない教え子を父娘でとりあって共倒れになっても仕方ないと、
彼女は週に5日だけ外に働きに出ることにした(土日はやはり自宅でピアノ教室)。
 そして近所のPC教室に駅前留学(このあたりは中川嬢と同じ)、
マルクス産業の入社時の適性試験にギリギリで合格した。
 入力オペレーターを志願したのは、元々ピアノが弾けるから、
キーボードを叩く仕事は向いているんじゃないかと思ったからだというw。

927:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/21 23:38:19.87 0
 何しろ外に働きに出るのは生まれてはじめてだという、おっとりとしたお嬢さん育ちの女性だった。
 神楽嬢の履歴書(のコピー)に国立音大卒業とあるから、彼女を連れてきたマンピーに俺は
「満田さんは津田塾だったよな、たしか? だったら学校も近いし、
君ら年齢も同じだし(2人とも当時28歳)、ひょっとしたら学生時代に合コンとかでかち合ってたかもしれないよな?
その昔、実は一橋のイケメン奪い合って、オッパイつかみあって喧嘩してたりして・・・ww」と、皮肉を言った。
 (満田は胸より腹の方が出っ張っているくらいの貧乳だった)
 すると神楽嬢が出し抜けに「ええっ? 合コンなんて、そんな。。。
私、男の人とは1度もつきあったことがないんですよー」と、
面接にしてはえらく場違いで的外れなことを言って、
顔を真っ赤にして、椅子に座ったままスカートの太腿の間に両手を挟んで、
身をよじりながら恥ずかしそうに笑ったことを今でも昨日のことのように覚えている。
 正直この時既に俺の中にも「本当に大丈夫か、この女? 海千山千のマルクスの女達の中でやっていけるんだろか?」
という思いは、あるにはあった。
 とにかく神楽みなこ嬢はそんな世間知らずの、ちょっと“ 薹(とう)が立った ” 筋金入り、箱入りの真性お嬢様だった。

928:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/21 23:43:58.68 0
 そして言葉に困った俺はその席で「ピアノが弾けるなんて素敵な趣味をお持ちで・・・」と失言してしまった。
 彼女にとってピアノを弾くという行為は優雅な趣味などではなく、生活がかかった本業なのである。
 それに自分で気づいて慌てた俺は「これは失敬、ピアニストなんていうと、自分はグレン・グールドくらいしか思い浮かびません。
何しろ毎日仕事に追われるばかりで、これといった趣味すらもてないような按配でして・・・」とさらに失言を塗り重ねてしまった。
 すると神楽嬢が「ええーっ?」と身を乗り出して、「グレン・グールドをご存知なんですか?
そんな方、私、学校以外でははじめてお会いしました」と言う。元々澄んだ大きな目がさらに大きくなってキラキラと輝いている。
 グールドを知っていると言っても俺は単に、生涯を独身の喪男として通した奇行の天才ピアニストとして、
例えば演奏会でピアノを弾きながら大声で唸るように歌いながら弾くといった独特の演奏スタイル、
極端な人間嫌いで誰にも会おうとせず自宅に引きこもり、そのくせ突然動物園に出かけて行って
熊と象の檻の前で動物達のためにマーラーを歌って聴かせる、
生涯パン以外の食べ物を口にしなかった、30代で隠遁し、後はもっぱら哲学的な書き物をして過ごしたとか、
そんな孤高の奇人変人ぶりが
自分自身と重なって興味を持っているだけで、音楽的な造詣や知見はまったく持ち合わせていないのである。

929:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/21 23:47:16.18 0
 苦し紛れに俺は「いや、まともな教育を受けた者ならグールドくらい誰でも知ってるでしょ」と言って、
困ったときの若槻王子頼みで、「おーいっ!」とその場に若槻を呼んだ。
 そして「お前もグレン・グールドくらい知ってるよな?」と振ると若槻は「ああ、ミュージシャンですよね?
・・・あの楽器を弾きながら歌う独特の・・・」と事も無げに答えやがる。
 それを聞いて神楽嬢は「すごーい!」と感心して「こんなレベルの高い会社なんて、夢のようですっ!」と
惚れ惚れしたように若槻を見上げている。
 その若槻は直後に「ほら、♪BUR~nN!」と言って歌いだし、なんてことはない、
それが若槻が好きなディープパープルのグレン・ヒューズのことを言っているのだとわかった俺は、
「失せろボケ」と若槻のケツを軽く蹴って向こうに押しやったが、
神楽嬢は陶然と、♪You know we had no time~と声高に歌いながら去っていく若槻王子の後姿に見とれているようだった。

930:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/21 23:56:09.99 0
 ともかくそんなグダグダ感の中でとりあえず「採用」に漕ぎ着けた神楽嬢であるが、
仕事に来はじめてからも、正直仕事そっちのけで休み時間や昼休みになるのと同時に
辺りかまわずスリッパを鳴らして俺の席に走り寄ってきて、熱い視線で俺の話を聞きたがった。
 俺もこんな女はじめてである。
 俺はインターネットの発達で、かってのレコードでは決して聴けなかった、
ピアノ演奏時のグールドの歌声まで簡単に聴けるようになったとか、そんな話をして、
神楽嬢は「それ本当に聴けるんですか? どこで売っているんですか?」と
的外れな質問を繰り返し、俺はYouTubeにあるグールドの動画を挙げて、
「これなら神楽さんも自宅のパソコンで今晩にも無料で観れる、
ただしYouTubeはデフォルトでダブル・クリックだかなんだかのスパイウェアを送りつけてきやがるから気をつけて」などと
得意顔で説明し、神楽嬢が???という顔をするので、そのいちいちを説明し、
神楽嬢は「どうしてそんなすごい技術をお持ちなんですか? どこでお勉強されたんですか?」と感心し、
さらにピントのずれた質問を募らせる。
 パソコン教室に通ったとはいえ、神楽嬢は元々通俗的なインターネット・サービスにはまったく興味がないらしい。
 したがってその方面の知識も0で、俺は仕方なく自宅のPCで自分で落としたグールド関連の動画をフラッシュ・メモリに詰め合わせにして連日彼女に渡し続けた。
 それを観た翌日の彼女の素直な喜びよう、始業時間前に俺の席に来て、
それこそ感極まったように「夢のようです。こんな現実があるなんてっ!」と、はしゃぐのである。
 夢のようなのは俺も同じだった。その当時、俺は得意の絶頂にいて、すっかりのぼせ上がってしまっていた。
 Glenn Gould plays Bach   URLリンク(www.youtube.com)

931:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/22 00:18:41.70 0
 そしてそんな俺の現場の管理者としてはだらしない態度が神楽嬢に対する周囲の非難を余計に募らせる結果となってしまった。
 つまり俺が神楽嬢を依怙贔屓(えこひいき)していると。
 人によっては神楽嬢が俺の加護を得るために意図的に俺に取り入り、
俺に媚を売っているものと勘違いする者もいたようだ。
 神楽嬢への周囲からの非難・・・。それはごくまっとうなものであったが、彼女の仕事が遅すぎる、というものだ。
 いくら新人とはいえ、許容範囲がある。
 元来がおっとりしたマイペース型の彼女は席についてから髪をかき上げ、ヘアバンドの位置を直し、
それから書類やスキャナーで取り込んだモニター内の書類情報にじっくり目を通し、自分で納得してから
一枚打ちはじめ、打ち終わるとまた時間をかけて確認し、髪をかき上げるといった按配だったのである。
 書類上の諸々の確認は君の仕事ではないと言っても、彼女は「だってお仕事ですから」と言って聞き入れなかった。
 はじめて外に働きに出た神楽嬢にとっては、作業上の一つ一つの項目や手続きをすべて自分の目で確認し、
間違いがないことを確かめてから次に進むという丹念なやり方こそが本当の仕事であるという思い込みがあったようだ。
 あるいは自分自身が納得しなければ先に進めないという芸術家気質が災いしたのかもしれない。
 そう言えば彼女は自動車の教習場に通ったが、いくら時間やお金をかけても最後まで免許が取れなかったと言っていた。

932:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/22 00:24:35.45 0
 派遣会社から送られて来る派遣さんに対して、うちの会社では一律、「試用期間」を設けている。
 その試用期間に当たる二週間以内なら、無条件に(これといった理由を告げる必要すらなく)、
労働契約を解除できるというものであるが、最初の一週間で早くも高田、若槻、プッシーの3人から、
かわいそうだが神楽はここでの就業に適さないから辞めてもらったらどうかという意見が出始めた。
 確かに神楽の仕事量は通常のマルクスの新人の1/4にも満たなかった。
 もし彼女がマルクス以外の派遣会社の従業員ならそれでも良かった。入力に適性がなかったら、他の仕事に
回せばいいだけの話である。しかし彼女は入力専門に派遣されてきたマルクスの従業員だった。
 俺はここで変に意地を張ってしまった。神楽を辞めさせるどころか、逆に入力指導員の若槻に、
通常の新人には絶対教えることのない裏技や変則的な入力方法を叩き込んででも神楽の成績を上げさせるように命じたのだ。
 若槻は拒否しなかった。元来がどこか浮世離れした坊ちゃんお嬢ちゃん、
根がのほほんとした呑気者同士、神楽とは気が合うようで、一向に上がらない神楽の成績をよそに、
それでもほぼ一日中張り付いて、気長に熱心に指導を続けていた。


933:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/22 00:31:54.71 0
 そんなある日、突然現場に満田が現れた。
 神楽の仕事ぶりを見させてもらうと言う。他のマルクスの派遣従業員達から神楽に対する苦情が
(満田の元に)殺到しているという。神楽がうちに来てからまだ三週間目のことだった。
 満田は先ず神楽の勤務日報を見て、あまりの成績の悪さに驚き、
「なんでもっと早くおっしゃっていただけなかったんです?」と俺を責めた。
 それから神楽の席が見える壁際に立って、
授業参観日の父兄のような眼差しで、斜め後方から神楽の仕事ぶりを見学し始めた。
 その満田の姿に気づいた若槻(この時も神楽に張り付いていた)が俺の方を見て何事かを目顔で訴えている。
 俺は声に出さずに「余計なことせずに、そのまま席を離れろ」と口だけ動かして、
身振り手振りで指示を送った。それが解らないのか若槻はどうしようか迷っている様子。
 俺が小声で「ハウス! ハウスっ! シッ、シッ!」と言ってやると、若槻はようやく頷いて、神楽の席を無言で離れた。
 そんなことになっているとはまったく気づかないでいる神楽は相変わらずのマイペースぶり、
時折髪の毛に手をやって束ね直したり、打ち終わった伝票をスタッカーから取り出し、
デスクの隅でトントンやって揃えたり、小分けして輪ゴムで束ねたり、クリップで留めたりしているが、
それらは本来入力者の仕事ではなく、またそれを知らない満田ではない。
 見る見るうちに満田の鼻の穴が大きく膨らんで、俺はもう生きた心地がしなかった。
 それでも満田は辛抱強く、壁際に立ったまま30分近く神楽の仕事ぶりを目で追っていた。
 そしてとうとう「あの、申し訳ないんですが、神楽を今すぐここへ呼んでいただけないでしょうか?
(マルクスの)自社規定により、神楽を引き取らせていただきます。
このままでは他の従業員の士気にかかわりますので」と言い出した。

934:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/22 00:42:07.60 0
 なす術がなかった。俺が言われた通りにすると、満田は神楽を連れ立って現場の外へ出て行った。
 それから5分後、現場に戻ってきた神楽はすっかり表情が変わっていた。
 顔に紅白の斑状の筋が走り、急に5歳は老け込んだように見えた。硬い表情で俺の席まで来ると、
「申し訳ございませんでした。知りませんでした」と泣きそうな顔で俺に頭を下げた。
 俺は思わず「いや、俺じゃないんだ、この糞マンピーが、この両生類みたいな顔した強情女が、
いやマルクスが勝手に決めたんだ、俺はもっと君にここに、俺のそばにいてほしかったんだ」と口走りそうになったが、
満田に睨まれて口に出せなかった。
 ちらちらとこちらを振返る作業者たちの興味本位の視線を感じながら、
俺はこれではまるで見せしめみたいで可哀想じゃないかと思いつつも、
現場の責任者としてギリギリの平然を装い、「いや、こちらこそ。せっかく来てもらったのに申し訳ない」と
立ち上がって神楽に軽く頭を下げて、それが彼女との今生の別れとなってしまった。
 かくして俺の短い夢のような時間は費えてしまった。
 もちろんその後も音信不通。愛しのマイエンジェル、神楽嬢は携帯電話すら持っていない人だったのである。

935:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/22 00:45:09.37 0
 後でマルクスの作業者から聞いた話では、この時満田は俺に呼ばれて神楽を引き上げに来たと休憩室で言っていたらしい。
同じことを神楽本人にも告げたかも知れず、それを思うと俺までなんか泣きそうになる。
 胸が痛い。あれから約1年が経った今でもだ・・・。

936:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/22 06:01:45.34 0
 日本経済の閉塞感は大きい、と言うか年々ひどくなっている。
 俺の家の近所でも街道沿いの喫茶店やら園芸店やら自転車屋やら惣菜店やら蕎麦屋やら煙草屋やらが次々に潰れ、
「テナント募集」の看板を掲げたまま埃に埋もれる空き店舗となって軒を連ねている。
 ローカルな選挙の期間だけこれらの空き物件は選挙事務所となって賑わうが、
駅から自宅に向かう際の夜道は年を追うごとに確実に暗くなっている。
 うちの事業所も一階が大きく空いており実質使っているのは従業員の靴箱、守衛所、トラックヤードだけなので、
過去にはこの一階の有閑スペースを本格的なパーテーションで区切って、
運送会社やら菓子会社やら製薬会社やらの事務所や倉庫として貸してきたが、
一昨年、菓子会社の支店と製薬会社が相次いで潰れて以来、
新たな借り手も現れず、一階はずっと空いたままになっている。
 そしてうちの会社も御多分に洩れず年々業務収益は縮小、
伊藤が所長を兼任する近隣の事業所の一つが来年の頭からうちの事業所に併合されることが正式に決まった。
 現在その事業所に2人いる社員のうち、ひとりは年末いっぱいで退職、
1人はそのままうちの事業所に転属することになった。うちに来る方は松岡というバリバリのヤリマン、
違ったやり手の男勝りで気の強い28歳の独身女だ。
 来年からうちの事業所は女の社員が1人増えることになるが、
このもろサディスチックな女王様気質の松岡に年下のプッシーや若槻が
いじめられやしないか今から心配である。
 そしてその事業所の業務の引継ぎや設備の移管を速やかに履行すべく、
来月の頭から高田がその事業所に赴くことになり、年内いっぱいうちは社員4人で回さなきゃならない。
 これから年末~来年にかけて慌しい日々が続きそうだ。

 ―さてさて、今日も仕事である。この本降りの雨の中、防水コートを羽織って早めに出かけ行かなければなるまい。。。

937:('A`)
11/10/22 07:23:38.95 0
エロイムエッサイム
エロイムエッサイム
エロイムエッサイム…

938:('A`)
11/10/22 13:37:51.10 0
最近の劉、なんかセンチメンタルでつまんない。

939:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/23 09:03:41.63 0
 最近急に禁煙をはじめた若槻が休憩中に現場で、佐々木丸とバンドの話で盛り上がっている。
 日頃口数が少ない佐々木丸も趣味の話となると勝手が違うようだ。それとも相手によるのか・・・。
 そう言えば小学校三年までピアノを習っていて、本人によれば大学時代も友人のバンドで
クラリネットを吹いていた???という若槻である。
 何となくそばに寄った俺に若槻が「佐々木さんベースなんだって。ほら先輩、佐々木さんバンドで何やってんだろ?って
言ってたじゃん」と話しかけると、「何やってるんだろって、バンド(演奏)に決まってるじゃないですか」と佐々木丸は
相変わらず、俺には素っ気ない。
 その佐々木丸に向かって俺は「佐々木、騙されんなよ? こう見えてもこいつ(若槻)は
もう、けっこうジジイだ。ロックといっても、こいつの好きなバンドってディープパープルとかレッドツェッペリンとかエアロスミスとか、
そういう古臭いハードロックばっかなんだよ。今時ダセーよな?」
 佐々木は身を引くように椅子に座り直して下を向いたまま「けっこうジジイって、私も若槻君と同い年なんだけど・・・」
 ―あら? そういや2人とも27歳だ。・・・また、やっちまった・・・。
 それでも気を取り直すように俺は佐々木に向かって「で、佐々木はどんなのやってんだ? オリジナルとか?」
「いえいえ、まだまだ、そこまでは・・・。雑誌のメン募やネットでメンバー集めて最近やっとスタジオに入りだしたばかりだから」
「集めてって、じゃあ、お前がバンマスか?」
「ん?」 と佐々木が顔を上げて若槻を見る。「バ、バンモス? バンモスって何?」
「バ・ン・マ・スね」と若槻王子が教え諭すように優しく答える。「バンド・マスターの略。
つまり、バンドのリーダーってこと」それから俺を手で指して、「こう見えて、
つか、見た目どおり、この人けっこうジジイだからさ。俺も時々何言ってんだかわからない時あるんだよねw」
「あははははwww」と佐々木。
 ―畜生、2人して俺をコケにしやかって・・・。しかしそれは口に出さず、俺は「「で、どんなのやってんだ、佐々木のバンドは?」
 佐々木はじぃ~っと俺を見て、かなり間を置いてから、「ディープパープルとか
レッドツェッペリンですけど・・・」

 レッド・パープル。それが佐々木がやってるバンドのバンド名らしい。

940:('A`)
11/10/23 10:29:15.41 0
劉、リア充乙

941:('A`)
11/10/23 10:42:21.40 0
劉って、鯛男だよな。
板変えたら?

942:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/23 14:40:19.83 0
 篠崎というカーニヴァルの営業の男がバックレやがった。
 カーニヴァルの派遣従業員達に渡すはずの前借金や寮に入っている従業員の
年金手帳やら健康保険証やらを持ったままだ。
 今なぜかマルクスの小宮が篠崎の後を追っているという。もうすぐカーニヴァルから
俺の所へも連絡が行くだろうという。
 久しぶりの仕事の依頼だ。腕が鳴るぜ。俺は貸し金庫から持ち帰った鞄の中から、
油紙に包まれたスタームルガーを取り出し、皮手袋をした手で弾倉に弾を詰める。
皮手袋はもう10年も使っているやつで、柔らかくなった皮がしなやかに俺の手に馴染む。
 先週篠崎はうちの現場の様子を見に来ることになっていた。
 河野と今野だけでなく、実はカーニヴァルには他にも問題がある奴がいて、
俺としてはそいつらをまとめてクビにしてやりたい。カーニヴァルに電話して、
とにかく一度現場でのこいつらの態度を見に来いと要請したのであるが、
篠崎は二度も来ると約束して、遂に1度も来やがらなかった。
 女だと小宮はいう。俺と2人で篠崎が立ち寄りそうな女の所を潰そうという。
ブサメンの小男のくせに篠崎はなぜかもてて交際中の女が何人もいる。
自分のとこの派遣の女とも付き合っているかもしれない、誰か心当たりないか? と
小宮が言うので、俺は「ああ、あるな」と答えた。1人だけ・・・、元ヤン西野だ。

943:('A`)
11/10/23 15:18:19.41 0
劉って本当は殺し屋なのか?WWW

944:劉 陳邦 ◆JAPwm84zgg
11/10/23 16:03:53.50 0
 小宮と篠崎はギャンブル仲間で飲み友達でもある。
 苦労の絶えない派遣の営業職同士、気が合うのだろう。共に独身で年齢も近い。
 俺も一度だけ小宮にうるさく誘われて篠崎と3人で飲んだことがあるが、俺はどうも篠崎を好きになれない。
 理由ははっきりしている。この男が小宮に輪をかけて女にもてるからである。
 その小宮が探せば篠崎はすぐに見つかるだろう。
 元々青白い顔して縁なしメガネをかけた小心な男である。ペ・ヨンジュンのNGぽくはあるが・・・。
 そして俺の愛用のスタームルガー、KP85だが、もちろんオモチャだ。何の気なくネット通販で購入した
東京マルイのエアガンである。
 俺は時々こいつを忍ばせた鞄を貸し金庫や駅のコインロッカーに預けて、
ふやけて退屈な日常に非日常的な緊張感をかもそうと試みているというわけ。
 シークレットブーツの靴音高く、エポレット(肩章)付のミリタリーコートの裾をなびかせて、
押し黙ってロッカーや金庫の前に歩み寄る俺は何かの間違いで、
光線の悪戯とか周囲が小学生ばかりとかの状況によっては、かっこいいのではないかと期待して。
 しかし手袋をした手で弾倉にBB弾を無理矢理押し込もうとしたから、
途中で暴発して飛び出してきたBB弾が俺の顔をしこたま撃ち、目に当たって右の瞼が腫れ上がっちまった。
 そしてコンビニで買った弁当を温めるか訊かれ、「はいっ」と頷いた拍子に、
天パー気味の前髪の中に紛れていたBB弾が落ちてきてカウンターの上に硬い音を立てて跳ね返り、
けっこうかわいいいつものレジの娘に「馬鹿じゃね?」みたいに、変態でも見るような目つき、
侮蔑のこもった視線で一瞥され、「すみません」と呟いて萎縮し肩を丸めて立ち尽くす俺の日常・・・・・・。


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