10/09/14 00:23:07
(アメリカの出版業界で働く方のブログからの寄稿記事です)
ポケモンが98年に大ブレーク、2002年にジブリの『千と千尋の神隠し』がアカデミー賞をとったことで、アメリカでも「日本のマンガやアニメがクール!」という風潮は確かにあった。
日本の方も「へぇ~、けっこう意外なモノがウケるんだ」という驚きもあっただろう。
とりあえずマンガに限定して話をすると、2007年の年間総売上2億1000万ドルをピークにここ数年落ちている。
リーマンショックの前だから、アメリカの不況とは関係ない。なんで売れなくなっちゃったの?とアメリカ人の人に理由をきけば、こういう答えが返ってくるはずだ。
「The market is over-saturated.」(※市場は飽和した)
これを日本人の人にもっとわかりやすく説明すると、アメリカでも日本みたいに老若男女がマンガを読むのがあたりまえ~になるんじゃないかと最初から期待しすぎた。
どういうマンガが売れそうなのか調べもしないで、日本で一般書を出している感覚で“とりあえず色々ちょこっとずつ出してみた”のが裏目に出た。
“マンガブームが起こるんじゃないか”と錯覚した、ということなのだ。ぜーんぶ、日本の供給側の責任だよ、ハッキリ言って。
まず、そもそもアメリカ人にとって初めて見るmangaがどういうものだったかを説明する。
アメリカでコミック、といえばDCやマーベルが出している『スパイダーマン』や『スーパーマン』といった、ヒーローものが中心で、読者対象は男の子が中心だった。ぶっちゃけ、コミックは子供が読むモノ、だったわけ。
しかもこの“アメリカ人の男の子”というデモグラフィック、一番お金を使わない消費者層なんである。
アメリカでティーンエイジャー向けにオモチャかゲームか、本が売れている、って場合は、その人気を支えているのは女の子の方なのだ。
なにせ、彼女たちの方が若いときからベビーシッターをしたりして、男の子が買い食いしている間にしっかり貯金して、好きなモノにお金を使うのである。
そして、アメリカでいうYA(Young Adult)、ティーンエイジャー向けの本も、女の子に支えられているジャンルになる。
今、こっちでは『トワイライト』シリーズがいまバカウケしてて、大人まで吸血鬼ものの読み物にドップリはまっているけど、これはそもそも『ハリーポッター』を10歳前後の時に読んだ女の子たちが、
少し大きくなって淡い初恋なんぞを経験しているときに来たブームで、来るべきモノが来たというだけの話なんだよね。
だから、アメリカでマンガを出そうとする版元は、まず、男の子向けのマンガじゃなくて、女の子向けのタイトルをしっかり吟味して出していた。
ちゃんと女の子たちが買えそうな値段に設定し、女の子に人気のあるメディアで宣伝して、ファンを育てていったと言える。
なのに、日本のマンガ供給側と来たら、少女マンガが売れるんだ、へぇ~、なら少年ものもいけるンじゃん? と雑誌の『少年ジャンプ』まで出す勇み足ぶり。
あのねぇ、男の子はヒーローもののアメコミを読んでいると言ったでしょ? それと市場で競合することになるってわかってた? そもそも、お小遣いだって大して持ってないんだよ。
そこで、日本は考えた。大人向けのマンガだっていいのがあるじゃん? 大人ならマンガ買うぐらいの金も持ってるだろ? とばかりに今度は『週刊モーニング』に連載されてそうなマンガをジャカジャカ出してみたわけだ。
でも、大人のアメリカ人にとって、コミック=子供が読むモノ、という刷り込みがあるので、そんなに急にはムリだったんだよねー。
日本の“グラフィックノベル”と位置づけるのならどうしてもニッチ的な、アングラな広がり方しかないのに。
アメリカの出版社は、少女マンガが受け入れられたので、この読者がどんどん大きくなって大人になっても読めるマンガが途切れないように、少しずつ読者といっしょに成長しよう、
そして少年は、まずアニメで売れたものの原作からスタートさせようっていうスタンスだったのにね。
しかも少女モノといっても、日本には萌(も)え系、つまり大人が少女キャラを愛でるジャンルがあるわけだけど、性的表現に関しては厳しいアメリカのマスコミのことを全然わかっていなくて、いきなりビニ本にされてたりとかw。
せっかくアメリカが、少女マンガ出しましょう、とコンテンツ探しているのに、いきなりエロマンガに出くわしたりするわけだ。そりゃ、引くだろ。
(>>2に続く)
(一部略)
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