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地震による津波で建物の屋上に取り残され、ヘリコプターで救助された医師が避難所で
救護に奮闘している。中心部が壊滅した岩手県大槌町の医師植田俊郎さん(56)。
「大丈夫だよ、頑張ろうなあ」「ありがとうな、先生」。避難所の一角に、父親の代から
50年以上続く町の医院の「診察室」があった。
大槌町では津波到来時、町役場で対策会議をしていた町長を含む職員らが行方不明になった。
植田さんの医院は役場にほど近い場所にあり、4階建ての3階部分まで一気に津波に
のみ込まれ、周囲の民家はあっという間に流されていった。
植田さんや看護師ら18人は屋上に逃げ、昼間は必死に手を振り助けを待った。
12日昼、自衛隊のヘリに救助され、ヘリポートとなった野球場に隣接する避難所に
たどり着くと、休むこともなくすぐ救護に当たった。
植田さんらは逃げる時、聴診器と血圧計が入った往診用カバンや自動体外式除細動器
(AED)、ガーゼを一つずつ抱えた。「うちの家族は全員無事に助けられたから、
次は助ける番。医者だから」。
電気、水道、ガスなどが復旧していない中、夜はランプやろうそくが頼り。苦難を
ものともしない笑顔をみせた。
避難所に身を寄せる約400人の6割が65歳以上の高齢者。懸念されるのは、
衛生状態の悪さからまん延するかもしれないノロウイルスだ。「高齢者が多いので
感染すれば脱水症状で命にかかわる」と植田さん。薬も降圧剤や胃薬、鎮痛剤と
限られた種類で数も少ないのが現状だ。
「町には当分戻れない。まだこれからが正念場」。気を引き締めた。
避難所で診察する植田俊郎さん(左)。自身も被災し避難所で過ごす
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中日新聞
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