11/03/08 11:22:42.45
以前紹介した、戦前の小学生向けの冊子『小学生全集』。
実に85巻まで刊行されていたらしい壮大な全集で、前回はその中から「昭和初期のなぞかけを
読み解く」といった内容で、おもに子供の遊びについて解説された「面白文庫」という巻を紹介したが、
今回は、その第85巻「小学趣味読本」(昭和4年刊)を、古書店で入手した。
タイトル通り、小学生に向けた趣味のハウトゥ本なのだが、当時の児童界では、どんな趣味を
たしなむことがイケてるとされていたのだろうか。
まず冒頭で紹介されている趣味は、「花言葉の話」。なるほど定番だが、気のきいた花言葉を
2つ3つ知っていれば、なかなかイカした小学生かもしれない。
<明治の末から大正の時代へかけて、盛に用ひられるやうになり、現在では社會的儀禮の
一つとして数へられてゐます>(引用原文ママ)んだそうで、たとえば病気にかかった友達に
送ったりすると効果的だという。
<おゝ、それは何といふ嬉しい友の情でせう! そしてまた、何といふ優しい花の囁きなんでせう!>
と、解説文も、かなり興奮ぎみだが、ダリヤは「氣の變りやすい」、水仙には「冷淡」「不人情」、
赤いヒヤシンスには「悪ふざけ」という意味があるらしいから、気をつけて。
他に紹介されている趣味には、「刺繍」「写生」「編物」などおなじみのものがある一方で、
「唱歌」「俳句」「和歌」など、今の小学生からしたらかなり渋めのものも紹介されている。綺麗な
情景を見て、一句詠む。ある意味ステキな小学生ではある。ただし、<自分の力量を考へずに、
たヾ上手な歌を作らうとしたところで、その結果は無駄骨にをはることは、明かです>から、
そこは注意したい。
時代を感じるのが、「信號のいろいろ」として手旗信号やモールス信号の一覧が紹介されていたり、
「家庭の伝書鳩の飼ひ方」なんてものがあって、鳩の入手法(軍用鳩の払い下げを、とか書いてある!)
や小屋の作り方(ビールの4ダース箱が一番手軽らしい)、餌、放し方など解説されている。…
もっとも、この昭和4年の時点でも、<科学文明の著しく進歩した今日、電話、電信が、すべて
無線になった今日、そんな鳩のやうな小さな動物が、そんなに國家のために有用な働きをするとは、
うそのやうな氣がするでせう>と書かれてもいるのだが。
なかでも興味深かったのが、「切手言葉」というもの。切手の貼り方で、気持ちを伝えることが
できるというもの。
かつて、「中国では切手の貼り方でメッセージを伝える!?」という記事でも紹介しているが、
この時代の日本の少年少女たちにも、同じような文化があったらしい。
本書には、<今の日本の少年少女諸君は、中々生活が詩的になつて来ましたので、同じ通信を
するのにも、「切手言葉」などがあつたら、さぞ趣味が深くて樂しからうと思ひましたので、この
「小学趣味読本」へ、私たちの考へた「切手言葉」を入れることにしました>とあって、どうやら
オリジナル切手言葉を追加収録しているみたいだ。
その切手言葉、どんな感じかといえばたとえば、左上右斜めに傾けた貼ると、「君は怒つてゐる
ね?」。逆に左斜め貼りにすると、「許してくれ給へ」。左上に右向き横倒しにすると「遊びに来てくれ」
で、右上の右向き横倒しが「あれは駄目です」。それから右上に右下向きに貼れば「返事によつては
承知せぬぞ」となって、右下斜め左向きだと、「君よ、僕を憐れめ」などなど……。
……覚えきれんわ! しかも、63パターンも紹介されてるし。
とはいえ、こういった贈った花や切手の貼り方で思いを伝える遊び心は、この先も何らかの形で
受け継がれていったらいいな、とは思います。
(太田サトル)
▽ソース:exciteコネタ (2011/03/08)
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