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三浦知良、44歳。恐るべし。
March 30, 2011 09:27
岩政は闘莉王にヘッドで競り負けろと言われたのだろうか。森脇はそのこぼれ球への反応を遅らせろと
指示されていたのだろうか。瞬間、僕は眼下で起きている光景に目を疑い、そして言葉を失った。
100点満点の演技。ケチの付けようのない完璧な芝居。芝居や演技だとしても、二度とお目にかかれない離れ業。
斎藤佑樹投手をはじめ、世の中に「持っている」選手は多々いるが、ここまでのものを持っている選手はそう
多くない。まさに神がかり的。神秘的で魔術的で。長い間サッカーを見てきたけれど、ここまでの非現実的な
プレイを僕は見た試しがない。
三浦知良、44歳。恐るべし。前から少し、変わっているなと思っていたけれど、突き抜けてしまった感じがある。
誤解を恐れず言わせてもらえば、変態度はスポーツ界ダントツのナンバーワン。ここまでおめでたい選手を。
僕は見たことがない。さすがに「キング・カズ」と、自ら名乗るだけのことはある。天晴れ!カズ。
(中略)
日本代表対Jリーグ選抜。このチャリティマッチは、エキシビションマッチなのか真剣勝負なのか。試合前、
選手は全力で戦うことを誓ったが、やはり100%ではない。8割程度が良いところだ。中にはもう少し頑張って
いる人もいたが、そのあたりがあやふやだったことは否めない。
チャリティマッチを強化試合と銘打つのはやはり変。欲のかきすぎだ。相手のJリーグ選抜は、急造チーム。
失点シーンにも象徴されるように、コンビネーションに大きな問題を抱えている。そうした相手にどこまで本気で
向かっていくべきか。立ち振る舞いには、まさにプロっぽさが求められていた。だが、日本人選手は、あまり
チャリティマッチ慣れしていない。ファンもしかり。頃合いを承知している人は少ない。
これが単なるチャリティマッチでないことも輪を掛けた。東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティマッチ。
日本を襲った戦後最大の災害の復興の手助けになれば、という試合。とてつもなく重いテーマを背負った試合。
なおも、福島第1原発は、危機的状況にある。事態は深刻化を辿る一方だ。世の中は、笑える状態には一切ない。
だが、100%大真面目というわけにもいかない。魅せる試合でなければならない。長友のプレイには、この試合の
矛盾点が見え隠れしたわけだ。
だからこそ三浦カズのプレイには救われた。繰り返すが、彼は44歳だ。プレイしているのはJ2の横浜で、
Jリーグ選抜に選ばれるような活躍をしているわけではまったくない。こう言っては何だが、お祭りに欠かせない色物、
人気者として、彼は長居のピッチに立っていた。瞬間、代表チームの強化という視点は、とても嘘臭いものに
なっていた。だが、その彼が、一番魅せるプレイをした。チャリティマッチに相応しいプレイをした。
「自軍の失点をここまで喜んだ経験はない」とは、試合後のザッケローニの言葉だが、そこにこの試合の本質を
見る気がする。
(以下略)
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