11/02/08 04:19:49 ybMKr7cS0
分厚い黒雲の影が地上を覆い、昼の時間をまるで夜のように見せています。その猫も夜のような色で、
その眼は星のような黄色でした。猫は傷一つ無く、餌を好きなだけ食わされた後でしたので、全身から生命力が溢れているようでした。
小さな雪が、ひらひらと舞い降りて来ました。一つ、二つ、地面に触れると溶けて消え、三つ、四つ、次第に数を増し、少しも経たない内に
景色を霞ませる程の雪が降ってきます。風も出てきました。今日これから激しく吹雪く、そう聞いていました。
私は楽しげに雪と共に庭を駆け回る猫をそっと抱え上げ、テープで素早く猫の四肢を封じます。猫は突然の事に牙を向いて威嚇してきますが、
私を微笑を返すだけ、猫を庭の真ん中に持っていきます。猫は簀巻きになった身体を魚のように跳ねさせていましたが、四肢を封じるテープを破るには至りません。
雪がどんどんと大きく強く、苛烈なまでの勢いで降ります。土や芝生はあっという間に白く染まり、溶け消える事も無く、上へ上と積もっていきます。
私は温かい室内の中から窓硝子越しにそんな冬の光景を見守っています。未だ暴れる猫の身体の上にも、雪は等しく降り注ぎます。