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福島第一原発はなぜ未曾有の大事故に至ったのか、その原因は徹底的に究明されなければ
ならないが、政府・保安院の調査だけでは到底十分とはいえない。そこで元原子炉設計者で
もある大前研一氏が、専門家らの協力のもと独自調査し、「福島第一原発事故から何を学ぶ
か」という中間報告をネットで公表した(報告書の内容はBBT〈ビジネス・ブレイク・スル
ー〉のサイト〈URLリンク(pr.bbt757.com)〉やYouTubeで全面公開している)。
報告書のポイントを大前研一氏が解説する。
* * *
調査をした結果わかったことは、政府が説明していること、今やろうとしていることには
真実のかけらもない、ということだ。
たとえば福島第一原発1号機は、東日本大震災が発生した3月11日の午後6時46分頃、すでに
メルトダウン(炉心溶融)が始まり、翌12日の午後3時36分に水素爆発が起きている。水素
爆発はメルトダウンしないと起きるわけがないのだが、政府がメルトダウンを認めたのは、
それから2か月後のことである。
原子力安全・保安院が実施しているコンピュータ・シミュレーションによるストレステスト
(耐性検査)も、電力会社に指示している安全対策も完全にポイントがずれている。なぜ
なら、そもそも政府は福島第一原発の事故原因を間違えているからだ。政府がIAEAに提出
した報告書は、今回の事故原因について「津波の発生頻度や高さの想定が不十分であり、
大規模な津波の襲来に対する対応が十分なされていなかったためにもたらされた」として
いる。つまり、想定外の大津波が来たから起きた、と言っているのだ。
しかし、事故を起こした福島第一原発1~4号機と同じ大津波に襲われながら、福島第一原発
5、6号機、福島第二原発、女川原発、東海第二原発は事故にならなかった。ということは、
大津波は事故のきっかけにすぎず、メルトダウンに至った直接の原因は他にあることになる。
そこで我々は、福島第一原発1~4号機と他の原子炉ではどのような違いがあったのかという
視点から調査・分析を行なった。すると両者の間には、全電源を喪失したか否かすなわち
原子炉に冷却用の水を送り込むポンプを動かすための非常用発電機が1台でも生き残ったか
否かの違いしかなかったのである。
たとえば福島第一原発5・6号機の場合、1~4号機と同様に地震で変電所が壊れて外部交流
電源を喪失したが、幸運にも6号機の非常用ディーゼル発電機が1台だけ動いたおかげで5号
機にも電力を融通して冷却を行ない、2機とも冷温停止まで持っていくことができた。
その発電機だけが生き残った理由は「空冷式」で、しかも水没しない高所に置いてあった
からだ。設計当初はなかったものだが、数年前に保安院から非常用発電機の増設を命じられ
、たまたま水冷式よりコストが安い空冷式を選択した。空冷式は冷却水を取り入れる必要
がないから高所に置いた。そんな偶然が重なって5、6号機が命拾いをしたのである。
ソース:NEWSポストセブン
URLリンク(www.news-postseven.com)
(つづく)