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企業が経営戦略の前提となる為替レートについて、従来の想定よりも円高に修正する動きを加速させている。
予想を超える円高の長期化で、戦略の仕切り直しを迫られたためだ。
パナソニック、ソニーはテレビ事業の不振に円高が追い打ちをかけ、
来年3月の通期決算で赤字を見込まざるを得なくなった。
輸出比率の高いマツダも、通期で最終赤字に転落する見通しだ。
輸出型企業はそれまでの1ドル=80円台だった想定レートを70円台半ばあたりに修正した。
市場の動向次第では、さらに修正を迫られる恐れがある。
企業は10月下旬からの中間決算の発表にあわせるなどして、想定為替レートの変更を相次いで表明している。
変動が激しく「高いハードルを設定しないと今後の戦略が立てられない」(製造業幹部)ためだ。
決算発表でも「個別企業の努力を超えるレベル」(東芝の久保誠専務)、
「もはや日本で事業投資するのは難しい」(パナソニックの上野山実常務)などの悲鳴が上がった。
為替相場をめぐっては10月31日、政府・日銀が円売りドル買いの介入に踏み切り、
一時、1ドル=74円台に迫った為替レートを79円後半まで押し戻した。
企業の中には「このレベルなら正直、助かる」(ホンダの池史彦取締役専務執行役員)と安(あん)堵(ど)感も漂ったが、
ギリシャ政府のユーロ支援策の受け入れをめぐる混乱が、再び円買い機運を誘った。
市場では介入効果が吹き飛び、円相場は一時、1ドル=77円台に高まってきた。
すでに多くの企業は「介入効果が長続きするか楽観はしていない」(富士重工業の吉永泰之社長)と警戒を強めている。
このため「継続的な介入をお願いしたい」(村田製作所の村田恒夫社長)と政府に介入継続を求めながら、
同時に企業自身の自衛として円高対策の強化を始めている。
中心となるのはコスト削減だ。
「採算が悪化している製品については、輸出を絞ったり、減産調整をしたりする」(三菱ケミカルホールディングスの吉村章太郎専務)
といった短期的な取り組みとともに、海外生産拡大といった中長期的な取り組みも、各社のテーマになりつつある。
為替レートに影響されにくい環境整備にも乗り出す。
「国内販売の再強化」(ホンダの伊東孝紳社長)に取り組むところが多い。
ただし、国内市場の活性化は、国内の制度改正と絡む。
自動車業界でも「国内需要低迷の原因の一つは高い税負担」(日本自動車工業界の名尾良泰副会長)と税制改正をにらんでおり、
狙い通りに経営環境が整う青写真は描けない。
日本の製造業は、今後コスト削減と、自動車取得税の廃止などの要望に力を入れる。
だが、「コスト削減目的の海外生産拡大は国内の産業空洞化につながりやすく、減税は時間がかかるうえ、
国内の財政悪化につながりやすい。どちらも簡単ではない」(アナリスト)といわれる。
今後も眉間にしわを寄せながら為替レートをにらむ日々が続く。(平尾孝)
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