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中国人民銀行の周小川総裁が、英金融専門誌「ユーロマネー」の選ぶ今年の最優秀中央銀行総裁賞を
受賞した。
9月末に行われた授賞式で、周氏は中国を見舞うインフレへの対応と、金融市場の安定という
2つの責務を挙げ、「中央銀行は重要な責務を果たしている」と胸を張った。
同誌の選考理由は、
「中国経済の運営と、国際貿易・投資で中国の門戸を広げた功績」を認めたのだという。
だが、このところ行われている急激な金融引き締めが中国各地に広げた実体経済の混乱を見るとき、
この選考には疑問がわく。
民間中小企業の活発な経済活動で注目を集めていた浙江省温州では、
大手銀行が「貸し渋り」を強めた結果、資金繰りがつかなくなった経営者の夜逃げや
企業倒産が社会問題となった。
今年4月から10月半ばまでの累計で、海外に逃げた経営者が90人、飛び降り自殺も3人出た
という。
これがどの程度の衝撃かといえば、ワシントンでの同賞の授賞式からわずか10日もたたないうちに、
温家宝首相が自ら温州に乗り込み、事態収拾の陣頭指揮に当たらざるを得なかったほどだ。
石炭マネーが不動産投機をあおってきた内モンゴル自治区のオルドスでも
開発業者の自殺と夜逃げが中国メディアを騒がせた。
局地的には、もはやバブル経済崩壊としか形容しようがない風景が広がりつつある。
経営者が追い込まれる背後には、「地下銭荘」と呼ばれる中国の民間金融業者、すなわちヤミ金融が
関与している。
「貸し渋り」で資金調達が難しくなった企業は、苦し紛れにこうした金に手を出すのだが、
金利は年60%を超える高利だ。
ヤミ金融とはいうが、中国のアングラ経済がもつ正確な規模は計り知れない。
こうした民間金融業者が融資した資金量は、温州地域だけで推計「140億元」(1元=約12円)。
中国全土では、当然「数兆元」単位に上るとみられる。
これが不良債権化して表の経済に跳ね返ったとき、何が起きるのか。考えるだけでもおそろしい。
経済改革が本格化した1980年代以降、中国経済の過熱状態は4回あった。
だが、リーマン・ショックで冷え込んだ景気の刺激を狙った2009年の財政出動に始まる
今回(4度目)の過熱は、未曽有の不動産バブルを招いた点でこれまでと様相を大きく異にしている。
中国の金融政策は「緩めれば乱れ、乱れれば締め、締めれば死ぬ」と形容されるようなもので、
激震を経済に与えてきた。
今回も引き締めは体力のない中小企業を最初の犠牲にした形だが、誰もが恐れているのは、
全国レベルでのバブル崩壊という恐怖のシナリオだろう。
とすれば、周氏が最優秀の総裁かどうかは、むしろこれから試される。
(産経新聞東アジア室長 山本秀也)
ソースは
URLリンク(sankei.jp.msn.com)
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