11/09/24 09:36:40.66
消費者庁発足から9月で2年がたった。
東京電力福島第1原発事故を受け、放射性物質への不安は広がり、消費者の「安心・安全」への
関心はかつてないほど高まっている。
政府の消費者行政の「司令塔」の役割を担う消費者庁は、本来なら大いに頼りになるはずだ。
にもかかわらず、その存在感は薄い。経済界の論理が優先し、縦割り行政の弊害は残ったままで、
政治の関心も薄れているからだ。今こそ、生活者を守る原点に立ち返るべきだ。
野田政権で消費者行政担当相に就任した山岡賢次氏は、早くも7代目。次々と大臣が代わっている。
山岡消費者相は、就任会見で「ころころ代わるのは事実だが、政府は一体で人が代わっても目的は
一つ」と釈明した。だが、こうも短命では、腰を据えて業務に当たることはできない。消費者
行政の弱体化につながりかねない。
職員も他省庁からの出向者が多い。このような体制では、消費者の立場で、中長期的な視野に
立った仕事ができるか疑問だ。
生肉料理のユッケを食べた4人が死亡した焼き肉チェーン店の集団食中毒では、内閣府の消費者
委員会から、対応の遅れが指摘された。
同庁が発足した背景には、冷凍ギョーザ事件などの対応が後手に回った反省がある。担当省庁が
明確ではない「すき間事案」を取り扱うとの目的もある。こうした原点を忘れないでもらいたい。
原発事故後、被災地の生産者を支援する目的で、東北の農産物を積極的に買う動きがある。
その一方で、放射性物質への不安から「過剰反応」も起きている。福岡では、福島県産農産物
加工品の販売所を開く計画に、抗議メールが相次ぎ、断念に追い込まれた。
「食べても安全か」「放射能汚染の危険はないか」―。原発事故以来、消費者は不安を抱え続け
ている。それが過剰反応の一因にもなっている。だが、当初の政府の対応は鈍く、データの公表が
不十分であったり、分かりにくかったりで不安の払拭(ふっしょく)には程遠い。
各機関が公表するさまざまな情報を、消費者目線で、分かりやすく納得できる形で示すよう、
消費者庁はもっと前面に出るべきだ。
食の問題以外にも、震災に便乗した消費者トラブルが後を絶たない。不安をあおったり、復興を支援
しようとする善意に付け込んだ悪質商法にも、徹底した対応が必要だ。
消費者庁は、所管する独立行政法人国民生活センターとの組織一元化という課題を抱えている。
重複する機能が多いためだが、自治体の相談員や消費者問題の関係者から「統合は、消費者行政の
強化にならない」と懸念の声が上がっている。
法的な根拠を重視する消費者庁と、迅速な対応を旨とするセンター。立場はそれぞれ違う。
両者の統合によって、注意喚起などが遅れる恐れがあるという。
消費者のためには、どうすべきなのか。消費者庁そのものの在り方とともに、議論を深めてもらいたい。
◎URLリンク(www.okinawatimes.co.jp)