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日本ではほとんど毎日のように、どこかの企業が生産の海外移転を発表している。その結果、
「将来日本には、空洞化した製造業と破綻に瀕した中小規模のサプライヤーしか残らない
のではないか」という懸念が高まっている。
日本において、外国への直接投資を先導しているのは、国内の不利な条件を回避する必要に
迫られたトップ企業である。
たとえばトヨタ自動車は、自動車の80%を海外で販売しているが、生産は国内と国外が
半々なので、海外需要の4割は日本からの輸出で賄っていることになる。同社の豊田章男
社長は、今の円高水準では「理屈上は(国内での)ものづくりは成り立たない」と述べている。
これから数年は、現地生産がますます増え、輸出は減るだろう。トヨタは300万台の国内
生産は維持しようとするだろうが、2008年の400万台からは減少するはずだ。
海外移転が進む要因は、円高だけではない。東日本大震災をきっかけに、多くの企業が、
電力供給と電気料金を不安視するようになった。日本の優良企業の取引先の多くが、
「ジャスト・イン・タイム」よりも「ジャスト・イン・ケース」(万が一の場合)を重視する
ようになったのだ。ルネサスエレクトロニクス、HOYA、三井金属などの企業に対し、
取引先は、生産の一部を日本以外の国に移転させることで地理的なリスクを分散させるべきだ、
と主張してきた。
また日本の輸出企業の一部は、日本と異なり、米国、EU、中国と自由貿易協定(FTA)を
締結している国々へと生産を移転しなければならない、と考えている。ジェトロの調査によると、
ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国を起点に輸出している日本企業のうちの40%は、
「FTAの利点を生かすこと」を、ASEANを起点とする理由の一つに挙げている。
生産の一部を海外生産に移行している製造業者を見た場合、海外生産比率は、1990年の
17%から97年には31%へと上昇している。その後は30~33%あたりで推移してきたが、
今後この比率は大幅に上昇するだろう。
■海外への投資は国内にも好影響
しかし、米国の例を見ればわかるように、生産の海外移転は必ずしも空洞化を招くわけではない。
逆に、前向きなグローバル化が国内の経済成長を後押しする可能性もある。企業の海外での成長
と国内での成長との間にプラスの相乗作用を生み出すこともできるのだ。
たとえば米国では、異論はあるものの、海外直接投資が国内投資、研究開発、雇用にプラスの
影響を与えたことが証明されている。企業は、国内からの輸出だけに頼っていた場合よりも、
海外市場でのシェアを拡大できたからだ。
また、海外直接投資は、コストの低下と競争力アップにも貢献する。米経済研究所が米国の
メーカー数百社を対象に行った05年の調査では、80年代から90年代にかけて、「海外への
資本投資が10%増えると国内投資が2・2%増え、海外の従業員に支払う給料が10%増える
と国内の従業員に支払う給料が4・0%増え、海外への投資が増えると国内からの輸出と研究
開発費が増えた」ことが明らかになっている。(※続く)
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