11/07/03 21:50:20.01
菅政権が検討に着手した発送電分離だが、欧米では既に取り組んでいる。
先駆けとなった英国と米国の現状を報告する。
「電気代節約のため電力会社を変えるのは日常茶飯事よ」。
ロンドン市内で夫と年金生活を送るレイナ・ウルフさん(70)は話す。
英国では、利用者が複数の配電会社から料金などを比較して選べる。
市場原理を重視するサッチャー政権が電力自由化に着手。
90年には国有電力会社を発電会社3社と送電会社1社に分割・民営化した。
消費者に配電する小売市場も自由化された。独仏などの企業も相次いで参入。
会社員のベッキー・ハバートさん(31)は自宅購入を機に電力会社選びを始めた。
「調べてみてびっくり。会社によって年間200ポンド(約2万6000円)も料金が違う」と自由化の効用を強調する。
ただ、コスト競争への対応で経営効率化を迫られ、
巨額の費用が必要な発電所への投資が滞るなど自由化の弊害も出始めている。
英政府は09年2月、「20年までに総額200億ポンド(約2兆6000億円)の投資をしなければ、
電力供給が不足し、大規模停電が起きる可能性がある」との報告書を発表し、電力業界に警鐘を鳴らした。
米国でも90年代以降、電力自由化が各州に拡大し、発送電分離の動きが相次いだ。
09年末時点で3000社超の事業者が乱立。
20年近くに及ぶ電気料金値下げ競争とコスト削減で設備投資の遅れが指摘される点は英国と共通している。
特に送電網の老朽化は深刻だ。
首都ワシントン郊外のメリーランド州ロックビル市に住むアリッサ・ウィーナーさん(43)は買い物から戻り、
自宅の電気がつかないことに気づいた。
「また停電ね」。動じることもなく、ランタン型の懐中電灯をテーブルに載せ、読書を始めた。
「半年に1回は停電しているから慣れているの」と平然。冷蔵庫の中身は停電のたびに全て廃棄し買い直しているという。
ワシントン周辺では年2~3回の停電が当たり前だ。原因は雷雨や強風などだが、
今年1月には10センチの降雪で24時間以上停電した地域もあった。
カリフォルニア州で00~01年に大停電が発生したのは、州当局の勧告を受け、
電力会社が発電設備を売却するなどの発送電分離が進み、設備投資が滞ったためだ。
03年にはニューヨークなどで北米大停電が発生し、電力自由化を取りやめる州も出ている。
オバマ大統領が「スマートグリッド(次世代送電網)推進」を掲げたのも
脆弱(ぜいじゃく)な送電網への危機感が背景にある。
続きます>>2-10
(立山清也、三沢耕平、宮崎泰宏、野原大輔、和田憲二、ロンドン会川晴之、ワシントン斉藤信宏が担当しました)
各国の電気料金(09年)
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毎日新聞 2011年7月3日 8時50分(最終更新 7月3日 10時57分)
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