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>>1のつづき
■素晴らしい職とろくでもない職しかない
所得格差の拡大に拍車をかけているのが、中程度のスキルを必要とする雇用の減少である
。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)経済パフォーマンス研究センターの
アラン・マニング教授は、先進国では労働市場が「素晴らしい職とろくでもない職」に二極
化しつつあると指摘する。
中程度の所得が得られる職の割合が1993年から2006年にかけて低下した一方で、所得が
高い職と低い職の割合は上昇したというのである。また、この傾向は経済の特性や政治文化
の違いに関係なく、ほぼすべての先進国で共通に見られるという。この類似性は、国内政治
や労働市場の特性よりも大きな力が働いていることを示唆するものだ。
所得格差や労働需要のトレンドの原因を巡っては、既に相反する様々な説が唱えられて
いるが、その過程でいくつかのトレンドが浮き彫りになっている。
まず、所得分布の最上層に着目すると、仕事で優れた業績を上げている人々の多くは、
通信革命のおかげで自分の住んでいる地域だけでなく世界各地から売り上げや収入を得て
いる。また、これは金融セクターで特に見られる傾向だが、他人のお金で相場を張って財を
なした人もいる。
大卒者の多くは、その柔軟性のあるスキルをコンピューターやインターネットで補強し、
仕事に就く機会を増やしている。出版社はコンテンツを全世界に販売できるようになり、
会計士や建築家は遠く離れたところにいる顧客にサービスを提供できるようになった。
大学教授は、自分の大学の学生だけに講義するのではなく、ブログを使って世界中に自分
のアイデアを披露できるようになっている。高度なスキルが必要な仕事への需要は数十年前
から大卒者の数を上回る伸びを示しており、これが所得の増加につながっているわけだ。
■政治家にとっても悩みの種となる中間所得層の苦悩
片や所得分布の最下層では、情報技術(IT)はまださほど重要ではない。清掃やお年寄り
の介護といった仕事では、ITはほとんど役に立たないのだ。しかし、スキルは必要だが一定
の型にはまった仕事に対する需要は、ITのおかげで大幅に減っている。
工場労働者や銀行の事務職員、フォークリフトドライバーなど、かつて先進国の雇用の
大黒柱を担っていた職種の需要は激減しているのである。
物流倉庫が完全に自動化された世界でフォークリフトドライバーになっても面白いことは
ない。平均的な仕事やその所得を巡って起きているのは、どうやらそういうことなのだ。
中所得者層は選挙の結果を左右する存在だけに、この現象は政治家たちにとっても悩みの
種になるだろう。
By Chris Giles
-以上-