11/07/02 08:56:55.18
世界経済危機が始まってから3年近く経ったが、大半の先進国ではこのところ、新種の
妖怪が出没するようになっている。市民の過半数は今後何年も所得の伸び悩みに直面すると
いう、恐ろしい見通しが広まりつつあるのだ。
第2次世界大戦後の先進国には、生活水準は世代を経るごとに向上し、親よりも物質的に
豊かになれるという考え方があった。しかし今、所得の増加を期待することは過去にほとん
ど例がないほど難しくなっている。
一部の中所得者層にしてみれば、所得の伸び悩みや減少は今に始まった話ではない。例え
ば、英国のフォークリフトドライバーは2010年には1万9068ポンドの所得を期待できたが、
インフレを考慮すればこれは1978年の値を約5%下回ることになる。
■日本でもドイツでも実質世帯所得が減少
また、米国男性の実質所得のメジアン(中央値)は1975年以降増えていないし、日本では
2000年代半ばまでの10年間で実質世帯所得(税引き後)の平均値が減少した。ドイツの世帯
所得もここ10年間で減少している。
中所得者層にのしかかるこうした圧力の一部は、少なくとも一時的には空前の信用バブル
によって覆い隠されていた。借金をして収入以上の消費をすることが可能だったからだ。
しかし、お金を低利で借りられる時代が終わりを迎えて3年が経ち、先進国が経済成長をな
かなか再開できずにいる今、世界中の中所得者層が状況の厳しさをひしひしと感じるように
なっている。
これは政治家たちにとっても望ましい状況ではない。政治家たちは、財政を立て直すため
に増税と歳出削減を検討せざるを得なくなりつつあるからだ。しかもその後には、ますます
伸びる寿命と人口の高齢化への対応というさらに難しい課題が控えている。
このように世帯所得や賃金のトレンドを観察していくと、先進国の人々の所得に一体何が
起こっているのか、なぜこんなことになったのか、という2つの疑問が浮かび上がってくる。
<中略>
しかし、近年の格差拡大は米国に限られた現象ではない。経済協力開発機構(OECD)に
よれば、データが十分にそろっている先進国22カ国について調べたところ、1980年代半ば
から2000年代後半にかけて所得格差が拡大した国は17カ国を数えたという。
「(格差の)レベルが以前よりも高い平均値に収斂しつつあるのではと思わせる兆しが
いくつか見られる」とOECDは最近のリポートで指摘。また、「これまで格差が小さかった
デンマークやドイツ、スウェーデンといった国々も、格差拡大のトレンドを免れているとは
もう言えない」と記している。
格差の拡大はほとんどの国で、労働市場のトレンドによってもたらされている。大半の
OECD加盟国は、国からの在職給付金を増やしたり低所得者層の給与税を軽減したりして賃金
格差の拡大を抑えようとしてきたが、さらに累進度の高い税制や給付金制度を導入しようと
いう意欲を上回る勢いで格差が広がってきたのが実情だ。
ソース:JB PRESS
URLリンク(jbpress.ismedia.jp)