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企業が人材を採用する際に、学歴という情報を重視することがある。受験戦争を勝ち抜い
て、有名大学を卒業した人は仕事を遂行する能力が高いはずで、採用すべきという判断から
だ。「有名大学を卒業した人は仕事もデキるはず」という部分が「学歴シグナル」だ。
日本は、高い学歴が、高い収入をもたらすという学歴社会であった。しかし、この学歴
社会と学歴シグナルは崩壊しつつあるようだ(図参照)。
高学歴=高収入の時代が終わったことは、過去10年の日本の歩みを見ればわかる。有名
大学を卒業した高学歴グループに占める「高い能力」を持つ人の割合も減っている。
理由はいくつかある。例えば、一般の入学試験によらないAO入試(アドミッションズ・
オフィス入試)で入学する学生が増えている。入試の科目数を減らす大学も多い。また、
受験テクニックを重視する塾や予備校も増えている。こうした中で、受験生は勉強にさほど
労力と時間をかけなくても有名大学に入学できてしまうのだ。
高額の教育投資が行える親は、子供を海外留学させて、帰国子女枠で大学に入学させる
。あるいは、子供を小さいころから塾に通わせて有名大学に入学させようとする。これは、
お金をかけて高学歴を買うのであって、「高い能力」を養っているわけではない。
これまでは、高学歴は「仕事上の能力の高さ」を示すシグナルだったのが、「親などの
教育投資が高額なこと」のシグナルになってしまった。
こうして高学歴を獲得して社会人になっていくのだが、彼らは、社会人になってからの
勉強が苦手だ。例えば、コミュニケーション能力である。社会人になれば、幅広い年齢の
人たちとの間でこの能力が求められるが、同世代の間では可能でも、世代間のコミュニケー
ションはおぼつかない。激しい受験戦争によって、そうした能力を鍛える場所が非常に少な
くなっている。
また、私が社会人になって身近に見てきた例をあげれば、エリートコースに乗る人は、
必ず勉強している。一橋大学を卒業している先輩は、土日はいろいろな女の子と遊びに行く
ような人だった。しかし、仕事でどんなに疲れていても、夜中に必ず勉強していた。睡眠
時間を削って勉強していたのだ。
もう一人は、上智大学を卒業した後輩である。英会話能力の高い人だったが、やはり
必ずNHKラジオの英会話放送を録音していた。英語力を落としたくないと、仕事でどんなに
遅くなっても録音を聴きながらテキストをめくっていた。
二人とも、その勉強に関連した仕事をしているかどうかとは別問題で、社会人になった
自分が勉強すべきことを学んでいたのだ。
社会人になれば、受験生のときのように、勉強に集中できる環境が整えられ、勉強だけを
していればいいというわけではない。たとえ肉体的に、そして精神的に大変な状態であった
としても、勉強を続けられるかどうかが重要になってくる。社会に出て体育会系が重宝され
ることがあるが、これには一理ある。社会人になってから必要な勉強をするには、体力が
必要なのだ。
仕事のできない高学歴者が増えているのは、こうした勉強をしなくなっているからだ。
入社がゴールではないことに気づいてほしいものである。
ソース
URLリンク(zasshi.news.yahoo.co.jp)