11/06/13 12:20:32.57
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以前、ちょっとした理由で関東近県の貯水ダムを見学してまわったことがある。
ダムに行くと、たいていどこでも見学者向けの資料館が併設されており、ダムの仕組みや、
ダムがいかに人々の暮らしに役立っているかを解説した展示が、これ見よがしにかかげられていた。
巨大土木としてのダムには心をときめかせつつ、どことなく違和感もぬぐえなかった。
なぜなら、どの説明展示にも奇麗事しか書かれていないからだ。
それでも、ダムはまだマシな方だ。
同じような展示スタイルは原子力発電所でも見られるが、こちらは問題がもっと深刻だ。
原発を運営する側─電力会社は、口を揃えて「原発は安全で、コストが安く、クリーンな
エネルギーです」とアピールしてきた。でも、ひとつも根拠のないお題目だったことを、
福島第一原発が証明してしまった。
なんでこんなことになってしまったんだろう。
いまからおよそ30年前に、みずから原発労働者の中に身を投じた人物がいた。
その人物、ドキュメンタリー作家として活躍していた堀江邦夫は、政府や電力会社、関係団体など
原発推進側が過剰に安全性をアピールする一方で、それ以外の側からは頻繁に危険性を訴える情報が
出てくることに、いらだちを感じていたという。そのいらだちの元を確かめるために、
作家の身でありながらわざわざ原発の中に労働者として入り込んでいったのだ。
作家から原発労働者となった堀江は、1978年9月28日から1979年4月19日までのおよそ
約半年のあいだ、美浜原発、福島第一原発、敦賀原発という3ヶ所を渡り歩いてきた。
そこで見聞きしてきたことの記録が、「原発ジプシー」(1979年/現代書館)というタイトルで
刊行された。
原発の内部では何がおこなわれているのか? 本当に原発はクリーンなのか?
そうした疑問に対して、著者自身の実体験を元に書き記された「原発ジプシー」は、
日本の原発事業が“それなりに”運営されていた当時でさえも、あまりにショッキングな内容で
かなりの注目を浴びた。
現在では入手困難となった「原発ジプシー」だが、それを一部改稿、改題して発売されたのが、
今回、講談社文庫として刊行された『原発労働記』だ。
元本からは労働者仲間の詳細や、彼らが抱く心情といった部分を削除しているが、著者本人が
体験した労働の実態については、ほとんどそのまま収録してあるという。
わたし自身「原発ジプシー」の噂は知りながら、なかなか入手できずにいたのだが、今回の復刊で
ようやく読むことができた。
そこには、想像をしていた以上に劣悪な現場の実体が書かれおり、愕然とさせられた。
原発運営の杜撰さに、怒りを通り越して悲しくなった。
労働者は、メンテナンスのために分離加熱器や低圧タンクに入らされる。
その中は窮屈で、息苦しく、おまけに放射線被曝の危険性もある。
著者は「原発の設計には、定検作業が考慮に入れられているのか」との疑問を抱く。
どう考えても、人間が中に入って作業することを前提に設計されていないのだ。
ここは本当に人間が働く場所なのだろうか?
-続きます-