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日本人類学会(2009)
“大阪府堺市から出土した近世人頭蓋の計測的特徴”
長岡朋人(聖マリアンナ医科大学医学部解剖学教室)
嶋谷和彦(堺市文化財調査事務所)
安部みき子(大阪市立大学大学院医学研究科器官構築形態学)
平田和明(聖マリアンナ医科大学医学部解剖学教室)
熊倉博雄(大阪大学大学院人間科学研究科)
URLリンク(www.jstage.jst.go.jp)
【要約】
古人骨の形態学的研究は,当時の人々の姿かたちを明らかにし,日本人の身体形質の時代的な移り変わりや地域間変異を理解する手がかりになる。
特に,近畿地方における古人骨の形態学的特徴の解明は,日本人形成史の研究に不可欠である。それは,近畿地方が日本人の地域差研究の鍵を握るからである。
例えば,現代日本人の生体計測値や頭蓋計測値において,近畿地方の人々は短頭で,比上肢長・比下肢長が小さく,日本列島の他地域の人々と異なる形態的特徴を持つ。
しかし,近畿地方では古人骨資料の出土例や報告がきわめて少なく,近世やそれ以前における地域間変異を実証した研究は皆無に等しい。
本研究の目的は,まず,大阪府堺市から出土した近世人頭蓋の計測を行い,近畿地方の近世人頭蓋の計測的特徴を明らかにすることと,次に,近世における頭蓋形態の地域間変異を検討することである。
資料は,堺市の堺環濠都市遺跡から出土した32体,向泉寺跡遺跡から出土した2体の成人男性の頭蓋である。
本研究の結果,堺近世人は関東地方や北部九州・山口地方の近世人よりも短頭傾向が強かった。
また,顔面が狭く,頭蓋全体の高さが高い傾向があり,現代人的な特徴を示した。
今回の結果から,近畿地方の近世人頭蓋は他地域とは異なる形態的特徴を持っていたと推測される。