11/04/24 12:14:29.72
>>1の続き
こうした点において、東電が銀行のように特殊でないことは明らかだ。1つ目について
は、東電の調達資金の大半は長期債券であり、債権者の大半が直ちに返済を要求する
仕組みにはなっていない。2つ目については、東電には安定的な収益源があり、その
金額は比較的容易に推定できる。しかも東電は競争にさらされていない地域的独占企業
であり、通常の企業以上に収益予想は容易なはずだ。
したがって、東電が金融債務の返済に十分な収益を得られるかどうかを見極めるのは
簡単だ。会社更正法に基づく通常の破綻処理では、それを見極めた上で必要に応じて
債務を再編する。破産手続きが必要だと判断されても、企業は営業を続けたまま何の
問題もなく手続きを進めることができる。
しかも、東電の破産によって他の電力会社が危機に陥ることはない。それどころか、
顧客による電力会社の乗り換えが可能であれば、他の電力会社はむしろ得をすること
になる(ただし、これには現行法の改正が必要)。
電力会社が破綻しても、銀行破綻のときのようにシステム全体を機能不全の危機に
陥れることもない。東電の債務を保有する金融機関が債務の棒引きを迫られる事態に
なった場合は、東電を下支えするのではなく、それら企業が監督することで直接問題
を処理させるようにすべきだ。
東電を通常の破綻処理から免責しようとすれば、別の新たな問題が発生する可能性が
ある。これについては預金保険機構の例から学ぶべきことがある。
政策当局は長年、預金保険を与えることで銀行を保護したために、銀行経営者は手堅い
経営を、預金者は銀行に対する監視をそれぞれ怠ることになり、モラルハザード(倫理
の崩壊)を招く結果になったと考えてきた。これを是正するため、銀行規制は強化され、
無謀な経営は抑制されている。
政策当局は、東電は地域的独占企業であり、その業務の性質上、危険な各種のモラル
ハザードを引き起こす可能性があると考えた。そのため特別な規制を設けることで
それを防ごうとした。だが、その規制はうまく機能しなかった。
今ここで東電に特別な保険を提供すれば、安全性と効率の向上を求める市場のプレッ
シャーから東電をさらに隔離することになる。
日本政府は、東電を銀行ではなく、元世界最大手のエネルギー取引会社、米エンロン
と同様に考えるべきだ。エンロンは誤った経営判断で会社を危険に陥れ、その結果
破綻に追い込まれたことで知られている。同社の破綻は混乱を引き起こしたが、
システム全体を不安定化させることはなかった。
東電は重要な日本企業だ。だが、通常の企業に課された法律を免れるほど重要ではない。