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去る1月25日、中国科学院(the Chinese Academy of Science)が“戦略的・先端
科学技術特別プロジェクト”として、トリウム溶融塩原子炉の研究開発を行うと
公式に発表した。その内容については3月3日の当コラムで紹介した。
そして、3月11日の大震災による福島第一原子力発電所の事故だ。
3・11震災発生までは、中国科学院の発表に対して世界のメディアのメイン
ストリームはほとんど反応しなかった。しかし、3・11以後は変わった。
米国は持っていたボールを落としてしまった
3月21日に英国のデイリー・テレグラフ(The Daily Telegraph)に掲載された
「中国がトリウムでリードする(China is Leading The Way With Thorium)」と
題する記事を見てみよう。要訳すると次のようになる。
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津波が福島ウラン原子力発電所を襲い、原子力に対する国民の信頼を失うことになる
数週間前のこと。中国はトリウムをベースとする原子力発電の技術開発に乗り出した
ことを公式発表した。このことは、あまり注目を浴びることなく見過ごされた。
中国科学院は、「トリウム溶融塩炉システムを選択した」と述べている。
この、液体燃料のアイデアは、もともと1960年代に米国のオークリッジ・国立
研究所の物理学者たちによって切り開かれた。しかし、米国は持っていたボールを
落としてしまったのである。
中国の科学者たちは有害廃棄物がウランより1000分の1以下になり、トリウム
溶融塩炉は、本質的に悲惨な事故を起こしにくいシステムなのだ。
(Ambrose Evans-Pritchard)
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この記事の中では、元NASAのエンジニアで、トリウムの専門家であるカ-ク
・ソレンセンのコメントも紹介している。
「この原子炉は驚くほど安全な構造になっている。もし、過熱し始めると、小さな
栓が溶けて溶融塩は鍋の中に排出される。津波で損傷して使えなくなるコンピュ-
タ-も、あるいは電動ポンプも不要である。原子炉自体で安全が守られる」
「日本で見られたような水素爆発のようなことも起こらない。それは大気圧で
運転されるからである。放射能漏れもなく、スリーマイル島、チェルノブィル
あるいは福島のように制御不能状態が長く続くようなことはありえない」
■同じ量の燃料からウランの約90倍のエネルギー
もう1つ、3月19日、ウオール・ストリート・ジャーナルの「この先に異なる
原子力はあるか(Does a Different Nuclear Power Lie ahead ?)」という
タイトルの記事を要約して紹介しよう。
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福島原発事故は、結果的に原子力産業に再度“足かせをはめる”契機となりそうだ。
日本に設置されている固形燃料ウラン原子炉は時代遅れの技術であり、より安全で
かつコストの安い、全く異なった種類の核エネルギーによって置き換えられ、次第に
消えていくだろうといった議論がここ数年の間に始まっていた。それが、トリウム
液体燃料原子炉である。(※続く)
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