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福島第1原子力発電所の危機により、原発を設計し造ってきた東芝や日立製作所などの
メーカーは、少なくともこの先5年の経営計画を見直す必要がある。
「われわれのエンジニアや研究者たちをもっと使ってくれれば、もっと早くに事態を
収束できたはずだ。東京電力の地震後の対応にはがっかりだ」─。
ある東芝首脳はこう吐き捨てた。危機的状況から脱せない福島第1原子力発電所の
状況にいらだちを隠せない。
東芝には最先端の原子力技術を研究する磯子エンジニアリングセンターがある。
福島第1原発とはホットラインで結ばれており、地震後も、衛星通信によって
正確な情報を得られる状況だったという。「エンジニアがいつでも動けるような
体制は整っていた」(同首脳)。
加えて「日立製作所の設計した4号機についても、うちのエンジニアが対応できる
ように考えていた」(同首脳)。日立は茨城県の日立事業所が被災している。
その対応に追われるだろうと、東芝は配慮していたのだ。メーカー側は企業の枠を
超えて、福島第1原発の危機に対応する準備を整えていた。
しかし、次々と起こる危機的状況に東電と政府は混乱していた。せっかくの準備を
よそに、なかなか東電や政府から支援要請の声がかからない。それでいて状況は
悪くなるばかり。前出の東芝首脳がいらだつのも無理もない。
両メーカーは、日本の原発の歴史に深くかかわってきた。日々の点検や管理などで、
実際に現場で手を動かすのはメーカーである。ゆえに、原発構造に関する知見も、
当然ながら蓄えている。
「東電に原子炉に関する知見がないとはいわない。でも燃料や炉心、格納容器など、
それこそなにからなにまでいちばんよく知っているのは実際に図面を描いたエンジ
ニアでしょう」。メーカー側は口を揃える。
■メーカーが福島の平穏を切望する最大の理由
メーカー側には、福島の状況が一刻も早く落ち着いてほしいという自分たちなりの
事情もあった。原子力は二酸化炭素を出さないエネルギー源として注目を浴びていた。
また、爆発的に増える新興国でのエネルギー需要を賄うための救世主として、建設
ラッシュが始まる、“原子力ルネサンス”の本格的な幕開けを目の前にしていた。
地震大国の日本で、世界で最も厳しいといわれる耐震基準をクリアして原子炉を開発、
設計してきた東芝や日立の技術力は、世界から求められていた。メーカーもそれを
売りに世界中の原発需要でひと儲けしようと、そろばんを弾いていたところだったのだ。
東芝は2006年2月に米大手原発プラントメーカーのウェスチングハウスを54億ドル
(当時の為替レートで約6210億円)もの巨費を投じて買収。さらに、いちプラント
メーカーにとどまらず、燃料調達なども手がける“原子力の総合企業”に生まれ
変わるべく舵を切り、07年8月にはカザフスタンでウラン権益を確保するなど、
事業構造の転換を急いできた。(※続く)
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