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福島第1原子力発電所での過熱事故や放射能漏れとの闘いにおいて、脚光を浴びているの
は「フクシマ50」と呼ばれる消防士や自衛官、工場職員だ。
だが、日本史上最悪の原発事故の鎮静化に向けた辛い裏方作業の多くは、原発業界の数百
人の名もない現場作業員の身に降りかかっている。高まる被ばくの脅威にさらされながら、
パイプの運搬やがれきの撤去などさまざまな肉体労働で現場を支えている。
福島第1原発では通常、日常的な原子炉の保守作業を行う数千人の労働者が働いている。
だが今その多くに対して、事故を起こした現場に自ら志願して乗り込むことが要求されて
いる。しかも、通常の賃金でだ。
怖いが、誰かが行かなければならない、と多田堅司さん(29)は話す。多田さんは、東京
電力の下請け会社、東海塗装に勤務する保護塗装のスペシャリストだ。
多田さんの通常の職務の一つは原子炉設備の腐食箇所の塗装。多田さんは21日から福島
第1原発で働く数百人の待機要員の一人に加わる予定だ。待機要員はエンジニアや機器操作
員のほか、電力ケーブルの運搬と給水パイプへの接続など原子炉の過熱を収束させるために
必要なあらゆる力仕事を担う人たちだ。
現場要員の任務の内容は主にまた聞きしたものだ。彼らの一部は、福島原発周辺の退避
指示圏の端に位置する大型トレーニング施設、「Jヴィレッジ」に待機しており、外部との
接触はほとんど断たれている。電話もあまり通じない。
物腰の柔らかい、人好きのする丸顔に黒縁のメガネをかけた多田さんは、取材に応じ、
現場の同僚が給水に必要なポンプの設置を行っていたことや、放射線量はそれほど高くない
ことを電話で伝えてきたことを教えてくれた。
東電や事故現場に要員を派遣しているその他の企業によると、それら要員には、特別な
報酬や既存の災害・疾病保険以外の特別手当ては支払われていない。緊急事態への対応に
追われ、そうしたことを検討する時間はないという。また、それを問題にする派遣要員も
いないという。こうした危機に際して報酬を要求するのは、さもしい行為とみなされている
日本ならではだ。
東海塗装の池田義専務取締役は、カネのためにこの任務を引き受けている者は誰一人い
ないと述べた。また、要員の多くは退避指示が出された地域の住民であり、事態収拾のため
には支援を惜しまないとした。
多田さんによると、多田さんの通常の月給は約20万円で、日本のサラリーマンの平均月給
29万1000円をはるかに下回る。それでも多田さんは、仕方ない、誰かが行かなくてはなら
ないと話す。だが、多田さんの母親は行かせたがらなかったという。
ソース:ウォール・ストリート・ジャーナル 日本版
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