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<前略>
■必要なのはTPPによるブロック化でなく人的交流
対外関係において日本が進もうとしている方向は、基本的に誤っている。
第1に、本来必要なのは新興国の人材の活用であるにもかかわらずそれをせず、日本企業
が生産した製品を新興国の貧しい人々に売り込もうとしている。何度も述べたように、高所得
国である日本が生産した製品を低所得国の消費者に売るのは、経済原則から見て正当化でき
ない。このまま進めば、日本企業の利益はさらに縮小するだろう。
「FTAが経済開国を進める」と考えられているのも誤りだ。FTAは「自由貿易協定」
と訳されるが、その実態は「自由化」ではなく「ブロック化」である。つまり域内諸国間で
関税を引き下げ、非加盟国との間に関税障壁を作ろうとするものだ。日本企業の生産工場が
新興国にある場合、日本で生産した部品を関税なしで工場に送ることができるから、生産
コストは引き下げられる。それは関係企業の利益には寄与するだろう。
しかし、その半面で、非加盟国との貿易が阻害される危険がある。EPA(経済連携協定
)はFTAより広範囲の経済活動を対象とするが、中心が財の貿易であることに変わりは
ない。このような政策が是とされるのは、現存する製造業をそのまま残すことが前提とされ
ているからだ。
いま議論されているTPP(環太平洋経済連携協定)は、さらにおかしい。その実質的な
内容は日米間のFTAである。つまり中国と韓国を排除した貿易ブロックを作ろうとする
考えであり、製造業の立場から見てさえ望ましくない協定だ。中国が排除されることは、
長期的観点から見て日中経済関係を悪化させる危険をはらんでいる。
日本にとって必要なのは、一部の国と経済ブロック化を図ることではなく、新興国からの
人材受け入れを円滑に行える制度的な仕組みを整備することだ。それらは、EPAやTPP
の一部として含まれているとはいえ、これらの協定がなければできないことではない。
日本が一方的に受け入れの制度を整備すればよいのである。そして、特定国との間だけで
なく、世界に向けて日本の労働市場を開放する必要がある。
ソース:東洋経済オンライン
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