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<前略>
■旧来の国内ビジネスは急速に収縮している
日本IBMが11月30日に都内で開催した「IBM SMARTER PLANET GO GLOBAL FORUM」において、
東京大学大学院 経済学研究科の伊藤元重教授が「グローバル成長戦略」をテーマに基調講演
を行った。その内容を基に、企業が採るべき戦略のポイントをまとめると次のようになる。
まず今、企業に求められるのは、欧米の先進国と歩調を合わせることではない。伊藤教授は
「アジアに目を向けること」だと言う。
この10年を見ると、先進国が落ち込む一方で、新興国、特にアジア各国の成長ぶりは目覚
ましいものがある。10年前にアジアでは日本のGDPが1番大きく、中国は3分の1、韓国は8分の1
程度だった。現在、日本と中国はほぼ並んだ。
10年後には、中国は日本の3倍程度になるという予測がある。さらに25年後は中国、インド
、東南アジア諸国連合(ASEAN)が日本を超えているだろう。企業がグローバル化を進める際
の前提として、「この変化のスピードを理解しておく必要がある」。
伊藤教授は「アジアで日本が圧倒的に大きな市場だったという過去の残像を捨てなければ
ならない」と強調する。旧来の国内ビジネスは急速な勢いで収縮しているのだ。
■他のアジア諸国の成長を悲観的に見てはいけない
ただし、そうした状況の認識は必要だが、決して悲観する必要はないという。伊藤教授は
ノーベル賞学者の経済理論を引き合いに出して、次のように説明する。
1969年に第1回ノーベル経済学賞を受賞したオランダのヤン・ティンバーゲンという経済学
者がいる。ティンバーゲンが唱えたのが、「貿易における引力の法則」という理論。2つの国
の距離が近いほど、そして、それぞれの国の経済規模が大きいほど、2国間の貿易額が大きく
なるというものだ。
これを裏付ける例として、日本とドイツの貿易依存度の違いが挙げられる。日本のGDPにお
ける輸出・輸入を合わせた貿易額の割合は約30%。一方、ドイツは約70%もある。ドイツの
近隣にはフランス、英国、スペイン、イタリアといった大国があるからだ。一方、日本の近隣
には大国がなかった。
だが、これからは日本の近隣の国がどんどん大きくなっていく。ティンバーゲンの理論にな
らえば、日本の周辺に大国ができるにつれて日本の貿易額はどんどん拡大していくはずだ。
「だから、アジアの成長で日本の国内産業が空洞化して落ち込んでいく、という視点で見て
はいけない。日本の産業にとって大きなチャンスでもある」
ただし、チャンスを生かすには、アジアで「勝てる」商品をつくらなければならない。例え
ば、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズのスマートフォン「Xperia(エクス
ぺリア)」は半年で50万台ぐらい売れ大成功した。しかし、インドでは昨年、2億台の携帯電
話が売れたと言われている。国内市場だけに目を向けていると、日本企業はアジアの企業か
らますます取り残されることになってしまう。
<後略>
ソース:JBpress
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