10/11/24 00:24:21
>>1の続き
松谷氏はまた、過去に例のないスピードで進んだ日本の生産年齢人口の減少は景気減速を悪化させており、
若い労働者の減少は日本のイノベーション(技術革新)の能力にも悪影響を及ぼしているかもしれないと考えている。
東洋のアルゼンチン
日本の将来の経済成長率について悲観的な立場を取っているのは松谷氏だけではない。
日本は先に、世界第2位の経済大国の座を中国に明け渡した。
ゴールドマン・サックスの予測によれば、2050年までにはインドとブラジル、インドネシア、メキシコ、トルコにも追い抜かれるという。
政治学者の猪口孝氏は、日本は「東洋のアルゼンチン」になりかねないと悲観している。
アルゼンチンのように世界有数の裕福な国から悲しいほど衰えた国へと、ほんの数十年間で転落してしまうかもしれないというわけだ。
既に日本の企業は、将来に強気になれないために投資を絞り込んでいる可能性がある。
松谷氏が指摘しているように、労働力人口が増加している時には過剰投資してもこれをカバーすることができた。
過剰な部分、すなわち遊休設備はいずれ吸収されるからだ。
しかし、人口が減少している時には遊休設備は時間とともに増大してしまい、デフレスパイラルを引き起こす。
UBS証券会社のエコノミスト、会田卓司氏によれば、日本企業はここ数年間、貯蓄率を大幅に引き上げており、現在の企業貯蓄のGDP比は10%に迫っているという。
これについては、バブル期に過剰な債務を積み上げた後遺症だと見る向きもある。
しかし会田氏は、人口減や円高、冴えない経済見通しなどに対する警戒感の表れかもしれないと述べている。
同氏が描くシナリオには、企業があまりにも多く貯蓄をするために15年後にはネットデット(純有利子負債)がゼロになるというものもあるそうだ。
本当にそうなれば、日本の将来の経済成長にとって非常にまずい事態となる。
政府はこれを埋め合わせるために、借り入れをさらに増やさねばならないかもしれない。
日本の企業経営者たちは口を揃え、既に消費者層の縮小による痛みを感じ始めていると言う。
実際、コンビニ業界や百貨店業界では、スケールメリットを享受するための合併が相次いでいる。
昨年は、キリンホールディングスとサントリーホールディングスが国内市場の落ち込みをカバーするために経営統合を模索し始めた(ただし、統合比率などで折り合いがつかず破談に終わっている)。
ゼネラル・エレクトリック(GE)の日本法人、日本GEの藤森義明社長は、
自分の会社がここ5年間成長していないのは高齢化の影響によるところが大きいと苛立ちながら語ってみせる。
お年寄りは夜早めに床に就くから、その分だけ電力が消費されず、同社の電力関連事業に悪影響が及んでいる。
お年寄りがあまり旅行をしないことも、同社の航空関連事業に打撃を与えている。
さらにはお年寄りが最新の情報技術の利用に熱心でないことも、ヘルスケア事業が伸び悩む一因になっている、というのである。
デフレが味方になる時
影響はこれにとどまらない。
高齢化が進めば進むほど、その社会は無意識のうちにデフレを―少なくとも、今の日本で見られるような緩やかなデフレを―奨励するようになる可能性がある。
貯蓄のある人々にとって、物価水準の下落は財産が実質ベースで増えることを意味するからだ。
>>3に続く