10/11/24 00:24:02
人口の減少は、かつてのような経済成長の再開とデフレの克服を難しくする。
日本経済は第2次世界大戦後の数十年間、新しい世代が労働力に加わるのを背景に繁栄を謳歌した。
本田宗一郎や盛田昭夫といった傑出した起業家が未来を築き始めた。
政治の世界では、男爵夫人だった経歴を持つ加藤シヅエが国会議員になり、男性議員が大半を占める国会で産児制限を容易にする法律を成立させた。
コンドームが広く行き渡るようになり、出生率は1947年から1957年にかけて半分に低下した。
このことは、養わなければならない子供の数が減る一方、給料が増えていくことを意味した。
勤続年数に応じて自動的に昇給する年功序列制度のおかげだ。
生産年齢人口が1950年の5000万人から1975年の7500万人へと増加するにつれ、貯蓄が増加し、企業はこれを元手に恐ろしいほどの急成長を成し遂げた。
これが1990年代までの日本経済の大まかなパターンであり、1990年の金融バブル崩壊後もしばらく続いた。
経済成長は1996年までピークを迎えることがなかった。
さて、この構図を反対にしてみるといい。
日本経済が失速し始める直前の1995年に生産年齢人口は8700万人で頭打ちとなり、それ以降急減している。
国立社会保障・人口問題研究所によれば、現在のトレンドが続けば、20年後にはピークに比べて2000万人減ることになる。
2050年には5000万人の大台を割り込み、1世紀かけてほぼ完璧な正規曲線(左右対称の釣り鐘状のカーブ)を描くことになるという。
同様な労働人口の減少を今後経験するのは、先進国ではドイツだけだ(図3参照)。
経済成長の源泉は主に2つあり、そのうちの1つが労働力である。
労働者の数が減る中で生産の水準を維持するためには、労働者1人当たりの生産高を増やさなければならない。
人口減の悪影響を緩和する方法はいくつかある。
働いていない女性や高齢者、外国人の労働を奨励したり、成長率の高い市場を海外に求めたりすることがこれに当たる。
だが、労働者の減少を相殺できるペースで生産性を高めることができなければ、生産は減少し、生活水準もいずれ低下する。
今のところ、日本の労働人口の減少はまだ加速している。
同時に、アジアの企業と競争する日本の輸出企業は人件費の圧縮を強いられている。
おまけに、日本は2008年の世界金融危機の悪影響からまだ完全には立ち直っていない。
ニューズレター「オリエンタル・エコノミスト」のリチャード・カッツ氏は、
日本企業は過去20年にわたって労働を資本で代替してきたため、総労働時間が減少していると書いている。
「1991年以降の日本の国内総生産(GDP)成長はすべて生産性の向上により達成されている・・・もし日本がより高い成長率を望むなら、生産性を高めなければならない。
この人口構造で移民を受け入れないなら、そうする以外に道はない」
その意味では、「失われた20年」と称される1990年以降の日本経済の停滞は異常な事態ではなく、これから生じることの前触れなのかもしれない。
なるべくしてなったと言うべきか、かつて日本の経済成長を支えた人口構造が、今後は日本経済に重くのしかかり始めることになろう。
政策研究大学院大学の松谷明彦氏は2004年の著作『「人口減少経済」の新しい公式』で、
この人口構造が日本の経済成長率を主要先進国の中で最も低いものにすると述べている。
>>2に続く
ソース:JBpress
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