10/11/05 19:56:04
まるで「金本位制」に逆戻りするかのような動きである。タイと国境を接する
マレーシア北部クランタン州政府が8月、イスラム式の金貨・銀貨を正式な通貨
として採用すると発表した。
現在、州都コタバルでは地元の約1000の商店で金貨・銀貨を取り扱っている。
市民は税金や水道代などを、同国の公式通貨リンギットのほか、この金貨・銀貨を
使って支払うことができる。
クランタン州政府が導入したのは、金貨「ディナール」と銀貨「ディルハム」。
1ディナールは189ドル(約1万6000円)、1ディルハムは4ドルほどに相当する。
初回の発行額64万ドル分はたちまち売り切れた。
ディナールとディルハムはかつて中世のイスラム世界で鋳造されていた硬貨で、
いまでは廃れたが、アルジェリアやモロッコなどアラブ世界の公式通貨の名称と
して残っている。
イスラム通貨導入の背景には、基軸通貨ドルが支配する国際経済システムへの
反発がある。同州は、イスラム原理主義派の政党が力をもつ保守的な地域。
ほかの国と違って、米政府はドル紙幣を刷ればいくらでもお金を増やせるという
のだ。コタバル市内で仕立屋を営む男性は「金貨は人々を(欧米による)搾取から
救ってくれる」と期待する。
マレーシアの通貨リンギットは1997年のアジア通貨危機でヘッジファンドの
空売りのターゲットとなり、通貨価値が1年間で半減するという深刻なダメージを
受けた。そして翌年に変動相場制を廃止し、ドルペッグ制に移行したという経緯が
ある。
金貨・銀貨であれば為替相場変動のリスクが少なく、現在のような空前の不景気でも
信頼性が失われることはない。2002年のイスラム諸国会議機構(OIC)では、同国の
マハティール首相(当時)も貿易決済用の通貨としてディナール構想を提唱した。
とはいえ今後、金貨・銀貨の利用が広がっていくかどうかについては懐疑的な向きも
多い。実際、購入した市民もほとんどは売買に使わずに貯め込んでいるという。
◎ウォール・ストリート・ジャーナル(USA)
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