10/11/05 19:14:09
「未払い残業代」―。
これがいま、多くの経営者や役員、人事部の社員たちを苦しめている。最近は退職者が
数人で徒党を組んで、かつて勤務した会社に「未払い残業代を支払え!」と訴える
ケースが増えているのだ。
未払い残業とは、労働者が、労働基準法に定められている「労働時間」を働いたにも
関わらず、支払ってもらえない賃金の総称を言う。詳しくは、のちほど解説する。
厚生労働省は毎年秋に「賃金不払残業(サービス残業)是正の結果まとめ」を発表
するが、先日、2009年の調査結果が明らかになった(参照リンク)。それによると、
2009年4月から2010年3月の間に、全国の労働基準監督が定期監督および申告に
基づく監督などを行った。そして企業に是正指導を行い、不払いになっていた割増
賃金が労働者に支払われた。その額が100万円以上になった企業は1000社を超えた。
・是正企業数:1221企業
・対象労働者数:11万1889人
・ 支払われた割増賃金の合計額:116億298万円
(企業平均は950万円、労働者平均は10万円)
1企業の最高支払額ワースト3は、以下の通り。この数字を見ると、経営者や役員、
人事部の社員たちは考え込んでしまうのではないだろうか。
・1位:12億4206万円(飲食店)
・2位:11億561万円(銀行・信託業)
・3位:5億3913万円(病院)
私が2年前の冬に取材した中小企業(東京墨田区、社員数50人ほど)でも、同じ
ようなことが起きた。退職した元社員(30代男性2~3人)がその会社を「残業代が
未払い」として労働基準監督署に訴えた。50代の経営者は監督署から呼び出しを
受け、そこで数回に渡り、話し合いをした。結局、会社は 2~3人に600万円近い
金額を支払うことになったという。
ここに出入りする業者(印刷会社)によると、経営者がこのメンバーのリーダー格を
厳しく叱責(しっせき)し、彼がそれに逆恨みをしたことが一因だという。いまや
会社員の企業への意識は変わりつつあるのだ。次の図は、労働者が全国の労働基準
監督署に持ち込んだ労働相談の件数だが、年を追うごとに増えている。ここがまず、
未払い残業代の争いが増える一因だと私は考えている。
もう1つの理由は、一部の弁護士や司法書士などの存在である。彼らはここ数年、
消費者金融などを利用する人に対し「支払いすぎたお金を取り戻そう」と呼びかけて
いる。先日も、私の住むマンションのポストにそのチラシが投かんされていた。
しかし改正貸金業法の施行により、いわゆる“グレーゾーン”金利が撤廃された。
こうした動きは利用者からすると、金利を払いすぎることがなくなるということ。
そこで、一部の弁護士や司法書士などは新たなビジネスチャンスとして、未払い
残業代に目をつけた。ある法律事務所のチラシには、このようなことが書かれてある。
(ある法律事務所のチラシ)
「残業代の請求は、退職後さかのぼって2年間分はできます。初期費用は〇万円。
裁判のための印紙代などの実費は、当事務所で立て替え支払いをします。会社から
残業代の支払いを受けたときに精算していただきます。成功報酬は、会社から支払い
を受けた金額の20%(税別)となります」(※続く)
◎URLリンク(bizmakoto.jp)