10/10/25 12:57:54
自動車から電機まで幅広い分野の日本の製造業各社が生産拠点の海外シフトを加速
させている。円の対ドルレートが史上最高値に近づき、日本経済は大きな構造変革を
余儀なくされている。
海外シフトにより、日本経済は急激な円高による悪影響を緩和させることはできるが、
経済成長維持に向けた政府の努力を脅かすもので、過去30年、日本の政治家が内需
主導型成長の必要性を声高に唱えていたにもかかわらず、輸出依存から脱却できない
でいることを浮き彫りにしている。
円高にもかかわらず、今期の増益予想を維持しているトヨタ自動車では、5年前48%
だった海外生産比率が今年、57%に達する見込みだ。同社は先週、来月からタイで
ハイブリッド車「プリウス」を生産すると発表した。プリウスが海外で量産されるのは
初めてだ。
一方、昨年同比率が66%だったライバルの日産自動車は、71%が海外生産となる。
今年の夏、日産は、タイで生産した大衆車「マーチ」を日本に逆輸入、主力車種を
海外で生産し、逆輸入した初の日本の自動車メーカーとなった。
村田製作所は、2013年度までに海外生産比率を倍増し約3割まで引き上げることを
目指している。キヤノンも、今年上期の海外生産比率が過去最高の48%に達した。
経済産業省が8月に行った調査では、4割の企業が、円が1ドル=85円となった場合には
生産と研究開発の海外シフトを進めると回答している。現在はそれ以上の円高水準だ。
今年4―6月期のドルの対円レートは、期初の1ドル=93.50円付近から6月末時点の
88.50円前後まで、5.3%下落。その後、円高はさらに進み、今月22日のニューヨーク
市場終値は81.35―36円だった。円の対ドル史上最高値は1995年に付けた79.75円。
ソニーは4―6月期にテレビ事業が7年ぶりに黒字転換した。海外生産を増やしたことが
一部寄与しているという。同社はさらに海外生産比率を高める計画だ。
みずほ証券リサーチ&コンサルティングによると、東証一部上場企業の24%が今上期の
税引き前利益を上方修正しており、下方修正した企業はわずか3%にとどまったという。
海外シフトの加速が貢献しているとみられる。
しかし、事業の海外移転は現在の日本にとって好ましくない。海外移転は、日本経済に
弾みをつける輸出の減少につながり、個人消費を促進する努力を弱めるからだ。
7月の製造業の労働人口は1029万人と、総務省が月間統計を取り始めた2002年(当時
は1200万人)以来、最も少ない。失業率は依然として5%台で推移、昨年記録した戦後
最悪の5.6%を若干下回っている。
経済産業省によると、4-6月期の日本企業の海外法人が行った設備投資は、前年比8.2%
増の47億ドル(約3800億円)と、6四半期ぶりに増加した。
「円高が、生産の流出プロセスに拍車をかけている。投資の観点からすると、製造業が
日本に投資するインセンティブはない」とクレディ・スイス証券のチーフ・エコノミスト、
白川浩道氏は言う。(※続く)
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