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2008年秋のリーマン・ショック以来の不況にもかかわらず、ここ数年、就職率
100%を誇る高校がある。奈良県立王寺工業高校だ。大手企業からも毎年のように
求人票が来るという人気の理由を探った。
■あいさつ・部活動・先輩の「遺産」・・・
「失礼します」「もっと声出るやろ!」。今月初旬、校舎内から教師と生徒のやりとり
が聞こえた。1週間、連日続いた面接の練習だ。
生徒たちは志望動機はすらすらと言えたが、予想外の質問に急に声が小さくなることも。
「そこはちゃんと調べときや」。教師の指摘を受け、弱点をつぶしていく。緊張感を
出すため、校長や教頭が面接官を務めることも。「期待してもらっている分、いい人材
を送り込むため総力を挙げてます」と進路指導部の岡本哲至教諭(49)。
来春卒業予定の206人のうち163人が就職を希望する。これに対し、8月23日
時点で求人票が来ている県内外の企業は341社。ここ数年は毎年就職率100%を
たたき出している。就職先の半数以上がトヨタやシャープなど一部上場企業で、不況の
中でも新たに求人票を出す企業も少なくないという。
同校を訪れる企業の求人担当者が印象を受けるのは「あいさつ」だ。すれ違う生徒から
一様に「こんにちは!」とお辞儀され、「礼儀正しさは面接の時だけではない」と確信
して帰るという。
あいさつ指導が始まったのは、15年ほど前。「せめてあいさつだけでも」と、荒れた
同校立て直しの第一歩だった。入学時から徹底的に指導され、職員室や進路指導室に
入る際はノックした上で、クラスと名前、用件を述べる。声が小さければ、容赦なく
何度でもやり直しを求められるという。
同校のもう一つの魅力が「部活動」だ。若者の離職が増える中、「3年間一つのことを
やり通した」ことを重視する企業は多く、8割の生徒が何らかの部活動に取り組む。
2008年に発電用風車の研究が国際大会で2位に輝くなど、「ものづくり」の分野
での部活動は特に活発だ。
部活動が志望動機に直結するケースも。電気研究部の杉山真也さん(18)は、1年
以上かけてエコバイク作りに取り組んだ経験から、「電車の整備をやりたい」とJR
西日本の技術系を志望した。過去に求人のない部門だったが、熱意を知った教師が
同社に売り込み、求人票を獲得した。(※続く)
●集団面接の練習に臨む3年生。
「手は軽く握って」「肩の力は抜いて」と教師の細かいチェックが入る
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