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芸能界から政界まで、弁護士たちが華々しく活躍している。タレント弁護士がテレビの
バラエティー番組でトークに興じ、橋下徹大阪府知事や自民党の谷垣禎一総裁など
弁護士から転身した政治家の発言力が増す。経済界やスポーツ界でも、不祥事が発覚
すれば、頼みの綱となるのは弁護士たち。再発防止を名目に立ち上げる「第三者委員会」
には、必ずと言っていいほど大物弁護士が名を連ねる。
そんな華やかで、頼もしい弁護士の世界が今、一大事だ。2002年に当時の小泉内閣が
閣議決定した司法制度改革がきっかけだ。「最難関の国家試験」と言われた司法試験を
廃止し、格段に高い合格率を想定した新司法試験への移行することを決めた。
年間500~1000人程度で推移していた合格者数は、現在2000人程度に達している。
このほど法務省が発表した2010年の新司法試験合格者は2074人だった。政府は当初
「2010年頃に3000人程度に引き上げる」ことを目標としていたが、達成できなかった。
受験生の学力不足などが原因だが、それでも弁護士の数は現在2万8800人と、10年前
より7割近くも増えた。急増の結果、新人弁護士の就職難など、様々な歪みが表面化
している。全国の弁護士で組織する日本弁護士連合会(日弁連)の宇都宮健児会長は、
合格者数を年1500人に抑えるべきだと訴えている。真意を聞いた。
■司法試験の合格者を年1500人に減らし、増員ペースを抑えるべきだと
主張しています。なぜですか。
弁護士の就職難が大きな問題になっているからです。司法試験に合格すると、裁判官、
検事、弁護士のいずれかになる道が開かれます。しかし、裁判官と検事の採用人数は
ほとんど増えておらず、弁護士にシワ寄せがきています。
弁護士の増員に、法的な需要が追いついていません。通常、新人弁護士はまずどこかの
法律事務所に就職し、先輩から現場教育を受けながら一人前になります。しかし、
仕事が不足し、就職できずにいる新人たちの数が年を追うごとに増えています。
【遅れる日本の法基盤整備】
司法試験の合格者を増やすのなら、まずはその人数に見合った司法基盤の整備を行って、
法的な需要を掘り起こすべきです。例えば、経済的な理由から、弁護士を雇えずにいる
人々を支援する、国の法律扶助予算の増額です。ほかの先進国と比べても、日本の法律
扶助予算は極めて少ないのが実情です。また裁判官や検事も増やして、より多くの事件
に対処できる体制を整えなければなりません。
日弁連としても、子どもや障がい者、外国人など、国の法律扶助制度の対象にならない
経済的・社会的弱者の事件を独自に支援したり、弁護士のいない地域に弁護士を派遣
したり、中小企業を対象に電話で法律相談を受け付けたりするなどして、需要の掘り
起こしに取り組んでいます。ただ、それでも限界があります。
関係者みんなで、多くの司法試験合格者を受け入れられるだけのしっかりとした法的
基盤を整備するまでは、より緩やかなペースでの増員を図る必要があると考えています。
※続く
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