10/09/08 12:45:30
円高下で、日本の自動車メーカーがタイへの生産投資を急加速している。世界への
輸出拠点としての期待から、国内とは対照的に大型投資が相次ぐ。税優遇、FTA
(自由貿易協定)の優位性は、日本の無策の裏返しでもある
「タイのバンコクでは日本食レストランがどこも驚くほど混雑している。自動車
業界の関係者が多くて、安心して仕事の話ができないほどだ」。最近タイに出張した
日本の自動車メーカーのある幹部はこう話す。
日本の自動車産業が総出でタイに引っ越しする。そう思えるほどに、タイへの日本
メーカーの投資は急増している。日産自動車が新型「マーチ」をタイから日本に
逆輸入し始めたことは有名だが、それは氷山の一角にすぎない。
8月26日、マツダは米フォード・モーターとの合弁会社、オートアライアンス
・タイランド(AAT)に、3億5000万ドル(約300億円)を投資すると発表した。
2011年半ばから次世代ピックアップトラックの生産を始める。
マツダは昨年7月にもタイで最新鋭の乗用車工場を稼働させており、既にAATで
「マツダ2(日本名デミオ)」と兄弟車の「フォード・フィエスタ」を生産している。
道路事情が悪い新興国では、ピックアップトラックの需要も高いことから、新規投資
を決めた。
「タイは国内市場が好調なだけでなく、輸出拠点としても魅力的。工場の稼働から
10年以上が経ち、技術レベルも高まっている。追加投資のチャンスをずっと探って
いた」(マツダの古賀亮・執行役員)
三菱自動車も2011年度に投入を予定する排気量1000~1200cc程度の世界戦略車を
タイで生産する。約400億円を投じ、年間20万台の生産能力を倍増させる計画だ。
日産と同様に、次世代の小型車を、日本などに輸出することも計画している。
■トヨタは「プリウス」を現地生産
これまでタイで生産していなかった自動車メーカーも積極的だ。スズキは2012年春
の稼働を目指して、タイに新工場を建設中。200億円を投じて、日本で9月に発売
する新型「スイフト」などを年間10万台規模で生産する。
最先端のエコカーを現地で生産する動きさえある。トヨタ自動車はハイブリッド車
「プリウス」の生産を年内にもタイで開始する見込みだ。トヨタはタイで、新興国
向けの戦略車である「IMV」を100万台以上生産して、輸出した実績がある。高度な
生産ノウハウが必要なハイブリッド車も量産して、海外にも輸出する。
完成車メーカーの現地生産が拡大すれば、自然な流れとして、部品メーカーも投資を
積極化する。
ブリヂストンは、タイやインドネシアにおける生産投資を急ぐ。2010年末までに、
タイの生産能力を2割、インドネシアの生産能力を5割増やす計画だが、それだけに
とどまらない。
「タイでの自動車生産の拡大は予想以上だ。追加投資を検討中で、今年秋までに詳細
を固めたい」と、ブリヂストンの荒川詔四社長は意欲的だ。
さらに、ベアリング大手のミネベアなど、様々な部品メーカーの大型投資が目白押し
になっている。
猛烈な勢いで進むタイへの投資の背景には何があるのか。 (※続く)
●表/タイにおける自動車関連メーカーの主な生産・投資計画
URLリンク(business.nikkeibp.co.jp)
◎ソース
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