10/08/12 16:37:35
杉本和行・元財務次官(東京大学公共政策大学院教授)は12日、為替市場で
15年ぶりの円高が進行していることへの政策対応について、日銀はもっと
流動性を供給していくことを考えてよいのではないかと述べ、金融政策面からの
対応を求めた。
一段の金融緩和は、デフレ状況にある日本経済や円レートに影響するとも語り、
円高是正に資するとの認識を示した。
一方で、為替介入については市場動向が無秩序で一方的な状況であれば当然介入
するとしたが、実際に介入に動くかどうかは、欧米諸国に対して、今の水準が
行き過ぎた円高であると説得的に言えるかどうかだと述べた。
インタビューの概要は以下の通り。
■急速な円高が進行している。政策対応は必要ないか。
「何をやるべきかは、世界情勢のもとで考えないといけない。各国の中央銀行は、
リーマンショック後、バランスシートを大きくして対応策を打ってきた。FEDは
(リーマンショック前に比べ)2倍以上に、ECBも1.5倍弱になった。それに
比べて日銀はあまり変わっていない。日銀(のバランスシート)はGDP比で
大きいためそれほど動かさなくでも流動性は供給できていると主張するのだろう。
しかし、基本的には変化率の問題だ。日銀は、もっと流動性を供給していくことを
考えてよいのではないか」
「日銀は効果がないと言うが、マーケットへの心理的影響は大きい。スタンスを
見せることが重要だ。効果がないと言いながらやると、効果がなくなる側面がある
のではないか。日銀はオーソドックスな中央銀行のあり方にこだわり過ぎている」
■量的緩和に踏み込むべきと思えるほど、今の円高は危機的状況との認識か。
「円だけでなく、日本経済全体を考えるとそういうことが必要だ。円レートのために
行うというだけでなくて、もう一段金融措置を講じることによって、デフレにもまた
円レートにも影響する」
■為替介入は。
「いざという時にはやってもよい。無秩序で一方的な動きが強くなったと判断される
かどうかだろう」
■84円台と15年ぶりの円高水準となった今ではないのか。
「非常に政治的な判断で、総理と財務大臣が決めることだ」
■国際的な理解は得られるか。
「今の水準が行き過ぎた円高だという議論を、欧米に対して説得的に言えるかどうか
というのはあるだろう。ただ、市場動向が無秩序で一方的になりすぎる状況になったら、
当然介入する。だからこそ、むしろ日本経済のことを考えると、金融的な手法を考える
ほうがデフレにも、また、結果として円高が進まないことにもなる」
「為替はゼロサムゲーム。どこか(の通貨)が上がればどこか(の通貨)が下がる。
ゼロサムゲームである以上、利害は対立する。特に、いまのように低成長時代だと
ますます利害が対立する面がある」
※続く
◎ソース
URLリンク(jp.reuters.com)