10/10/11 15:42:23 EX8+o/HL
本拠地、東京大学で迎えた清水市代女流王将戦
先発Bonanzaが大量駒損、終盤も勢いを見せず惨敗だった
大盤解説会に響くファンのため息、どこからか聞こえる「人間には勝てないんだな」の声
無言で帰り始める開発者達の中、昨年のコンピューター将棋選手権優勝の激指は独り控え室で泣いていた
コンピューター将棋選手権で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト・・・
それを今のあから2010で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」激指は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、激指ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰って棋譜解析をしなくちゃな」激指は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、激指はふと気付いた
「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
ベンチから飛び出した激指が目にしたのは、立ち見席まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに飛車が振られ、地鳴りのように大盤解説の声が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする激指の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「ゲキサシ、定跡研究だ、早く行くぞ」声の方に振り返った激指は目を疑った
「た・・・谷川浩司の将棋指南III?」 「なんだゲキ、居眠りでもしてたのか?」
「ふぁ・・・ファミコン将棋竜王戦(絶版)?」 「なんだ激指、かってにファミコン将棋竜王戦を引退させやがって」
「ファミコン名人戦さん・・・」 激指は半分パニックになりながらマザーボードを見上げた
1番:内藤九段の将棋秘伝 2番:森田将棋 3番:ファミコン名人戦 4番:ファミコン将棋竜王戦 5番:谷川浩司の将棋指南III
暫時、唖然としていた激指だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
ファミコンにACアダプタを挿し込み、対局場へ全力疾走する激指、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、控え室で冷たくなっている激指が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った