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[ソニーのテレビを買ってしまった人へ]
HX920は最高画質でもなければ、ソニーのテレビは高画質でもありません。こ
う言うと、ソニーがどう反論するかは、おおよそ見当が付きます。高画質の基
準は一つではなく、ソニーが考える高画質と、お客様が考える高画質に違いが
あっただけで、我々はこれを高画質と考えて出しております、と。しかしそん
な虫のいい屁理屈は通用しません。「面白い本」、「おいしい料理」というのは主
観ですが、高画質には客観的な基準があります。「ソースを、制作者の意図を、
忠実に再現できている」ものが高画質であり、「より忠実に再現できる」もの程、
高画質な映像機器ということになります。
しかし、皆さんがテレビの購入のため量販店を訪れたときに目にする店頭モー
ド(ダイナミックモード)は、「忠実」とは真逆の画質になっています。つまり、
一番低画質な映像で展示しているということです。無論、量販店が勝手にして
いる訳ではなく、これはメーカーの意向です。
ところで、どうしてメーカーはそんなことをするのでしょうか?店頭モードに
ついて、「量販店の店内はものすごく明るいから、その明るさに負けないよう
に、明るく見映えよく見せるための画質モード」と説明する人を時折見かけま
すが、もう少し付け加えて説明したいと思います。
メーカーがそんなことをする理由は、所狭しと大量のテレビがデモンストレー
ションされている、量販店という環境の特殊性にあります。もし、店頭で一台
だけ「高画質」モードで展示されていたら、そのテレビはまず売れることはない
でしょう。その特殊な環境下では、消費者は多くの場合、極端に色を濃くし、
極端に輪郭をクッキリさせ、黒は潰し、白は飛ばして、そしてコントラストを
めいっぱいに上げて明るくした、ダイナミックでインパクトのある画質(一番
低画質)のテレビを選ぶ傾向があるからです。当然メーカーは消費者の、その
「習性」は熟知していて、だから敢えて日常では使わないような、店頭専用の
画質で展示しているのです。