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『第3MP大隊奮戦記』
何年か購入するのを悩んで最近買ったが、期待に違わぬ本だった。
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大学を卒業後ジュニアハイスクールの教師をしていた著者は、愛国心ややりがいを求める心から海兵隊に士官候補生として志願し、新兵教育を受けて1968年にベトナムへ赴いた。
ベトナムでの13か月の兵役期間のうち、前半を彼が過ごした部隊が、ダナンに駐屯する海兵隊第3憲兵大隊A中隊(営倉管理)だった。
愛国心に燃え、共産主義と戦うことを誓って少尉となった彼を待っていたのは、ベトコンや北ベトナム軍との苛烈な戦闘ではなく、
単調かつ勤務時間の決まっている書類仕事に、冷房が効いたバーや宿舎、そしてあふれる物と膨大な規則だった。
主人公をはじめとする大隊の面々は、仕事以外の暇な時間、そればかりでなく大して忙しくもない仕事の間も、
どのように単調さや堅苦しさから逃れられるかを考えながら過ごしていた。
本書の副題である「もう一つのベトナム戦争」とは、果てしない単調さとの戦いだったのだ。
実際、戦闘の描写はたった2度のみ、全260ページ中10ページほど。
著者は教育学部卒らしく、大隊の同僚たちを分析し、ベトナム戦争の様々な面(例えば員数外物資の物々交換やR&R(著者はシンガポールで色々とやってきたようだ)など)をちょっと冷めた目線で考察している。
ベトナムやベトナム人に対する見方は、前線に行って敵と直接対峙する前に彼らに出会い、民生活動(MEDCAPなど)にも関わっていたこともあってかなりリベラルである。
訳は誤訳や誤字が少々見受けられるものの、それほど気になるわけではない。
また地図は巻頭に簡潔かつ必要十分なものがあるが、もう少し細かい地図があっても良かったかもしれない。
俺はベトナム戦争の通史的な本を読んでいないので、著者の誤りなどを指摘できないが、(少なくともベトナム戦争における)「後方」における戦争というものがどのようなものだったのか、
そして自らの思いと全く異なった職場に投入される人々がどのような思いをするのか、といったことを知ることができる貴重な本だ。
なお、この本は兵役の前半が終わり、前線へと移動するところで描写が終わっているが、
洋書では”The Grunts”というタイトルで、歩兵として前線で過ごした後半部分についても本が出ているらしい。