11/10/03 19:03:28.08
『最後の特攻隊の真実 消された偵察機「彩雲」』を読了。
途中まではよかった。うん、途中までは。
内容として偵察飛行隊から見た特攻という切り口は新鮮だし、
光の当たりにくい偵察隊に主眼を置いたところといい、戦争末期の鹿屋基地の混乱を
上手く描写したところといい、「彩雲隊戦記」としてもよく書けていると思う。
また、宇垣長官の行動に関してもよく追いかけていて、なかなか痛烈な批判になっている。
さて、何が問題かというと、終盤で追求され本作の根幹を成す筆者が再発見した
金子某なる搭乗員の手記が非常に怪しいシロモノだということ。
末尾に全文が転載されているので概略を書くと、
宇垣長官の突入に先立って偵察に出撃し、長官隊の突入を見届けた後に被弾して
米軍の捕虜になった――という内容。
読めば分かるんだが、金子某の部隊が雷装した彩雲で編成された偵察雷撃特攻隊である
という設定でもう化けの皮がはがれる。
あちこちに矛盾があってそれは本作内でも触れられてはいるけれども、
明らかに「彩雲」を知らない人が聞き書きか何かでまとめた戦記に色をつけたものだろうと思う。
金子某の手記が本作を書き上げたきっかけとはいえ、そのくだりを全部削って
純粋に「彩雲隊戦記」に特化したほうがよかった。
もしそうだったらベストに近い戦記物だと思う。